時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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やっとこさ40話。
これからも頑張ります。


40話 禁手

   

 

「何者か……かい?

 ふーむ、僕はリュカ。ただの旅人さ。リアスさん達の友人だ」

 

 

 ケルベロス達を手懐けた僕に対し、警戒感を露わにするコカビエル。

 彼の問いに対し、出来得るだけ真摯に答える。

 

 

「彼女達とはひょんなことから知り合ってね。今はこの近くのアパートに住んでるんだ。

 それから―――」

 

「そんな事はどうでもいいッ!」

 

 

 コカビエルに怒鳴られた。どうやら彼の望む答えではなかったようだ。

 しかし、『お前は何者だ?』という問いは些か抽象的すぎて答えづらい。

 

 

「そうだねぇ……。ケルベロスくん達を手懐ける事が出来たのは僕が“魔物使い”だからかな?

 いや、それを抜きにしても自慢じゃないが昔から犬には懐かれるんだ。僕から犬好みの臭いがするんじゃないのかな」

 

 

 (コカビエル)に納得してもらうために持論を述べてみる。

 魔物や動物からは懐かれやすい体質だが、犬からは特にだ。飼い主以外には懐かなかったリリアンとも友になれた。

 否、猫からも懐かれる。何せ最初の仲間モンスターたるプックルも猫だ。

 犬と猫、どちらにより好かれるか―――。正直、かなり微妙な差だ。

 

 

「うーん。僕は猫からも懐かれるんだが、犬も猫も両方好きなんだ。よく『貴方は犬派? それとも猫派?』なんて質問をされるが、僕はどちらも好きでね……。

 君はどうなんだい? ああ、いや……こうして二頭も大型犬を飼ってるんだ。言うまでもなく犬派なんだろうね」

 

 

 そう言いつつ、二頭いる三頭犬の三つある首の、それぞれその内一つの喉を掻いてやると、二匹とも三つ全ての頭の目が気持ち良さそうに細くなる。その様子は実に可愛らしい。

 

 

「で? この子達の名前は何て言うんだい?」

 

 

 宙に浮かぶ玉座に座るコカビエルを見上げながら、先程と同じ質問をする。

 しかし、古の堕天使はその問いには答えず、驚きの表情から、今度は何とも愉快だ、と言わんばかりの表情になった。

 

 

「ククク、アーハッハッハッ! リアス・グレモリー! 貴様の“友人”とは、何とも面白い男ではないか!

 サーゼクスが来ないと聞いてガッカリしたが、これは思ったより楽しめそうだ」

 

 

 その言葉を聞き、リアスは実に渋い顔をする。

 どうやら、僕はコカビエルに気に入られたらしい。

 この街の管理者たる彼女からすれば、自分達より僕の方が気を引くという言葉が気に食わないらしい。

 しかし、その一方でコカビエルに同意する部分もある、といった顔付きだ。

 

 

「そうね、この人は面白いわよ。色んな意味で」

 

「あらあら。そうですわね。リュカさんは……」

 

「……優しい人です。ぶっ飛んでますが」

 

「そうッスよね~……」

 

 

 オカルト研究部の皆も思うところがあるようだ。

 まあ、今は気にしないでおこう。あとでゆっくり尋ねればいい。

 

 

「まあ、ともかくだ。この街を破壊するのはやめてもらえないだろうか?」

 

「何?」

 

 

 気を取り直し本題に入る。

 僕の言葉を聞いたコカビエルは怪訝な、それでいて好奇心を引かれたような顔をする。

 

 

「君は力を振るいたいのだろう?

 それなら僕が相手になるよ」

 

「人間風情が何を言うかと思えば―――」

 

「人間風情でも君みたいな者はいるさ。

 強い力を持ち、尚且つその力を持て余してしまう。

 そういう者はヒト、天使、堕天使、悪魔、ドラゴン、魔物……種族を問わずに存在する。

 そうした欲求に答えてあげるのも、また“愛”なのだろう」

 

 

 人も魔物も堕天使も、相手を自分と同じ尺度で見てしまう。

 それでいて周りから自身が顧みられることが無いと、周囲に鬱屈とした感情を持つことになる。

 今の彼は正にそれなのだろう。

 現在、『神の子を見張る者(グリゴリ)』は総督アザゼルを始めとして停戦派が主流だ。彼の様な戦争再開派はほとんどおらず、不満が貯まっているに違いない。

 

 

「君は“戦争”がしたい。なら、相手は誰でもいいのだろう?

 では僕が相手になろう。それで不満が解消できたのなら、おとなしく冥界に帰ってくれないだろうか」

 

 

 僕の提案を聞いたコカビエルは鼻を鳴らした。

 

 

「フン、人間風情があまり調子に乗るな。それに―――」

 

 

 次の瞬間、強烈な殺意を感じた。

 

 

「ケルベロスはもう一匹いるぞ」

 

 

 僕らの背後から小山のような大きさの三頭犬が飛び掛かって来た。

 だが、その魔物の目標は僕ではない。リアス達だ。

 

 ―――しまった。

 

 自分に向けられた殺気にはかなり敏感だが、他者に向けられた者はそう簡単には気が付けない。

 どんなに熟練の冒険者であっても“身構える前に襲いかかって”こられたり、“いきなり襲い掛かって”こられたりすると対処できないのだ。

 

 

「リアス! ヒメジマ! 避けろ!」

 

 

 

 追加で現れた三匹目のケルベロスがリアスとヒメジマに差し迫る。

 僕が警告のために大声で叫んだが、彼女達の回避は間に合わない!

 

 だが、そこへ――――

 

 

「ハァァァァアアアアッッ!!」

 

 

 ズッガァァァアンッッッ!!!

 

 

 一閃!

 

 黄金に輝く剣を持った黒い人影が校舎の上から飛び降りてきて、その勢いのまま聖剣を振り降ろし、魔犬の首の一つを落とした。

 

 

「ゼノヴィアッ!」

 

「待たせたな!」

 

 

 現れたのはエクスカリバーを携えた教会からの使者ゼノヴィアだ。

 しかし、やって来たのは彼女だけではなかった。

 

 

「『魔剣創造(ソード・バース)』!!」

 

 

 三つある内の一つの頭が無くなったのにも拘らず、残る二つの首の大口から“激しい炎”を噴こうとするケルベロスがいる地面から大量の魔剣が生え、三頭犬を串刺しにする。

 

 

「木場っ!」

 

 

 木陰からキバくんが現れた。どうやら来ていたらしい。

 

 

「部長! 朱乃さん! 今のうちに止めを!」

 

 

 『魔剣創造』によって三頭犬を地面に磔にしたキバくんがリアスとヒメジマに呼び掛けた。

 それに応え、悪魔の少女達が宙を駆ける。

 

 

「はぁぁあああっ!」

 

「天雷よ! 鳴り響け!」

 

 

 二人がそれぞれ得意とする雷と滅びの魔力を最大出力で、深手を負ったケルベロスに放つ。

 

 

「ああっ……! ちょっと待ってよ、二人とも!」

 

「……少しは自重して下さい」

 

 

 折角、もう一匹いたのに黒焦げになっていく三頭犬の姿を見せつけられ僕が堪らず叫ぶ………だが、トウジョウに冷たくツッコまれた。

 

 仲間に出来たケルベロス達に目を向けると二頭とも計六つの目が全て痛々しい悲しげな目をしている。

 申し訳なさに胸が締め付けられる。

 

 

「ゴメンよ……! 君らの仲間を守ってやれなかった……!」

 

「「「クゥ~~~ン」」」 「「「バウ……」」」

 

「いやいや、それは悲しむポイントですかっ!?」

 

 

 僕とケルベロス達が悲しみを分かち合っていると今度はイッセーくんにツッコまれた。

 喪われた命を惜しみ、悲しみ、弔おうとする……それはそんなにおかしいのだろうか?

 

 ……と、一瞬考えはしたが、一応、彼らオカルト研究部にとってこのケルベロス達は残念ながら敵と言わざるを得ない存在だ。

 “愛”を以って戦い、命を奪わず勝利する……そして、互いに理解し合い誼を結ぶ。

 それは“愛”の行きつく先、言うなれば境地だ。

 無論、全ての敵とそのようにできれば越したことはないが、忸怩たる思いではあるがそうはいかない。

 この僕でさえそうなのだ。これまでの冒険で数え切れないほどの魔物を屠っている。

 より若い彼女達にどうしてそれを求められようか。

 

 全てを救おう等というのは傲慢だ。

 しかし、より多くを救おうと思うのであればより強くあらねば―――!

 そして、より深く、より強く愛さなければ―――!

 

 ……いや、それではただの押し付けだ。あまり一方的すぎるのもいただけない……。

 やはり“愛”とは奥深いものだ。それを彼ら(オカルト研究部)の皆に伝え、導く事が出来れば―――

 僕もまだまだ未熟だ。精進せねば……。

 

 僕が改めて、そう決意していると若人達に動きがあった。

 事前の打ち合わせ通りに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で力を増幅し、それをリアスに譲渡したのだ。

 それを紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)は滅びの魔力とし、コカビエルに叩き付ける。

 

 

「喰らいなさいッ!!」

 

 

 リアスが吠え、赤黒い魔力が奔流となって太古の堕天使に襲い掛かる。

 

 ―――しかし……

 

 

「フン! 赤龍帝の力があれば、ここまで力が引き上がるのか、面白い! これは酷く面白いぞ!!」

 

 

 コカビエルはリアスの魔力を片手で受け止め、往なし、逸らし切った。

 五対十枚の羽を持つ堕天使は悠然と佇んでいる。 

 その光景に魔王の妹とその眷属達は絶句した。

 

 その一方で、僕達の戦いを余所に黙々と自身の作業に徹していた男がいる。

 

 ―――バルパー・ガリレイだ。

 

 

「……完成だ!」

 

 

 バルパーが呟いた。どうやら儀式が終了してしまったらしい。

 宙に浮かぶ四本のエクスカリバーが強く輝き、光と共に集束していく。

 四振りの聖剣は一つの剣となる。

 

 

「ふはははっ! これでついに……!」

 

 

 自分の前に現れた聖剣の、神々しさと禍々しさを併せ持つその姿を見た老神父が狂喜の声を上げる。

 

 

「更に聖剣が一つに統合される際に生じる力を利用することで、下の術式も完成した。

 あと20分もしないうちにこの街は崩壊する」

 

 

 ふむ……まあ、これだけの魔力が篭った魔法陣だ。それぐらいの火力は出るだろう。

 

 差し詰めこの世界におけるマダンテのようなモノだ。

 暴走した魔力が全てを薙ぎ払うであろうことは容易に想像がつく。

 些か不味い状況だ。僕が闘気を全開にして封じ込めても防ぎ切れないかもしれない。相当なダメージを覚悟する必要がある。

 

 

「防ぎたければ、この俺を倒すしかないぞ。どうする? リアス・グレモリー!」

 

「知れたことッ!!」

 

 

 コカビエルの恫喝に怯むどころか向かって行く勇気を見せるリアス・グレモリー。その姿は実に雄々しく美しい。

 だが、この堕天使の前では、それはあまりにも儚い―――。

 

 

「破ッ!!」

 

 

 リアスが更に滅びの魔力を放つ。だが……

 

 

「フンッ! 馬鹿めっ!」

 

 呆気なく弾かれた。

 そしてその際に生じた衝撃波で彼女は吹っ飛ばされる。

 

 

「部長ッ!!」

 

 

 イッセーくんが慌ててリアスの方に向かおうとするが、彼女は(・・・)空中で体制を立て直した。

 だがもう一人はそうはいかなかった。吹き飛ばされたのはリアス一人ではなかったのだ。

 

 

「きゃぁぁああああ!?!!?」

 

「朱乃さぁぁぁアアンッ!!」

 

 

 ヒメジマもリアスに続きコカビエルに攻撃を仕掛けようとしていた。

 だが、リアスの攻撃をはじいた余波で吹っ飛ばされてしまい、地面に叩き付けられかけている―――

 

 

「ピオラ!」

 

 

 僕自身は離れた場所にいるため間に合わない。

 そこで一番近くにいたイッセーくんに加速魔法(ピオラ)を掛け援護した。

 

 僕の魔法の助力を得てイッセーくんが駆け出す。

 

 

  ガバッ!

 

 イッセーくんが何とかヒメジマを受け止めた。

 

 

「っ……イッセーくん!?」

 

「大丈夫ですか! 朱乃さん!」

 

「ごめんなさいね……。折角イッセーくんが……」

 

「そんなこと、どうだっていいんスよ!」

 

 

 危うく自分が地面に衝突しペチャンコになりかけたのに、ヒメジマは(イッセー)が作ったチャンスを潰してしまった事を悔いる。

 実に健気な娘だ。その様が何となく親友の妻を思い出させた。きっと彼女も良い奥さんになるだろう。

 嗜虐的なところを除けばだが―――

 

 

「テメェよくも朱乃さんをッ! 絶対に許さねェ!!」

 

「……やっぱり、男の子ですね」

 

 

 コカビエルに向かってイッセーくんが吠える。

 そして、その様子をヒメジマが熱っぽく見詰めてる。

 う~~ん……ヒメジマがイッセーくんに対して好意を抱いている事は何となく察していたが……。

 イッセーくんは大丈夫なんだろうか? 正直、電気系の魔物は素人にはキツい。痺れ海月のしびれんやメガザルロックのメガーザが痺れ攻撃だの稲妻だのを寝惚けて撃ってきたとき、初めのうちは感電死するかと思った。

 今のイッセーくんではフィジカル的にヒメジマの相手は些か荷が重いと思ってしまう。

 まあ、余計な心配かもしれないが……。

 

 いや、今はそんな心配をしている場面ではないが。

 

 

 すると、今度はキバくんが前に進み出た。

 その眼には強い決意が秘められている。いよいよ長年の宿願を果たす気らしい。

 ゆっくりとバルパーに歩み寄り、口を開く。 

 

 

「バルパー・ガリレイ、僕は聖剣計画の生き残り……いや、正確には貴方に殺された身だ」

 

「ん?」

 

 

 糾弾されたバルパーがキバくんを正視する。

 そして、キバくんは言い募る。

 しかし、上空から不穏な空気を感じた―――

 

 

「悪魔に転生したことで、こうして生き永らえている。僕は死ぬワケにはいかなかったから! 死んでいった者達の仇を討つためにッ!!」

 

 

 ブゥン―――!

 

 

「危ない! 祐斗!!」

 

 

 バルパーに詰め寄るキバくん。

 そこにコカビエルが光の槍―――先程、体育館を吹き飛ばした物に比べれば小振りだがレイナーレ達のより遥かに長大なものを投げつける。

 リアスが叫んで警告することで、キバくんも辛うじて避けたみたいだが、衝撃で体を地面に叩き付けられた。

 

 

「ぐはっ!」

 

「直撃は避けたみたいだな。フン、すばしっこい奴だ。フリード!」

 

「ハイな、ボス♪」

 

 

 コカビエルが下にいた者に呼び掛ける。

 出て来たのは暗黒闘気によって髪の色が白銀から漆黒に変質したはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)フリード・セルゼンだ。相変わらず口元に正気を失ったような笑みが張り付いている。

 獲物を見るような目つきでキバくんやリアス達を睥睨した。

 

 

「最後の余興だ。四本の力を得たエクスカリバーで、コイツ等をまとめて始末してみせろ」

 

「へへーい! 超素敵仕様になったエクスなカリバーちゃ~ん♪ 確かに拝領しましたでござますん!

 さァて~、誰から殺っちゃいましょ~かね~♪

 ……ってそんなモン、そこのイカれたバンダナ男から決ってるじゃん! 僕ちん、うっかり~~♪」

 

 

 ……う、う~~ん……どうやら、僕はフリードくんに完全に嫌われてしまったらしい。

 別に嫌われるような事をした憶えはないのだが……。

 

 人の心とは複雑なものだ。本人は良い事をしたと思っていても相手からすれば嫌なことだったというのは良くある話だ。

 彼と分かり合うにはもっと時間を掛けゆっくり話し合わなければならないだろう。

 

 一方、地面に叩き付けられたキバくんは、かなりのダメージを受けながらも気力で以ってゆっくりと立ち上がった。

 そんなキバくんをバルパーはジッと観察していたが、何を思ったのかキバくんに薄ら笑いを浮かべつつ話しかけてくる。

 

 

「ぐっ……はぁ、はぁ……くっ……!」

 

「被験者が一人脱走したままと聞いていたが、卑しくも悪魔に堕ちておったか」

 

 

 自身の所業は棚に上げバルパーはキバくんを侮蔑する。

 何と言うか……こう言った言葉を聞くと僕と彼らの間には善悪のあり様に大きな価値観の隔たりがあるようだ。

 その相違を埋めていくのはかなり骨だろう。

 

 

「しかし、なかなか数奇な運命を感じるぞ。こんな極東の国で出会うとは。

 それに君らには感謝している。おかげで計画は完成したのだからな」

 

「完成……!?」

 

「―――私は聖剣が大好きでね。

 幼少の頃、エクスカリバーの伝記を読み、心を躍らせたものだ……。

 それ故に、大人となり自分がエクスカリバーを扱う才能が無いと知ったときの絶望感といったらなかった」

 

 

 そこで一旦、話を切るバルパー。

 確かにその思いには共感できる。

 親友のヘンリーと共に潜ったサンタローズの洞窟。そこで自分では「天空の剣」を扱えないと知ったときの絶望は相当堪えた。

 このバルパーという老人も似たような思いをしたのだろう。

 

 

「それからというもの、私はエクスカリバーの使い手を人工的に生み出す研究に没頭した。

 それでようやく聖剣の担い手となるべき者はとある『因子』を持っていることが分かったのだ。

 故に、その因子を持つ君達を、適性者として集めさせた。

 

 ―――だが、君ら適性者の持つ『因子』は、聖剣を扱えるまでの数値を示さなかった!

 そこで一つの結論に至った。

 『被験者から因子だけを抜き出せばよい』!

 そして結晶化することに成功したのだ! これはあの時の因子を結晶化した物だ!」

 

「っ!!」

 

 

 老神父が懐から青い結晶を取り出した。

 それを皆が食い入るように見つめる。

 

 

「これが最後の一つになってしまったがね」

 

「グヘヘヒハハハハ!! 俺以外の奴等は途中で身体が因子についていかなくて死んじまったんだって♪

 そう考えると、やっぱ俺ってつくづくスペシャル仕様ザンスねー!!」

 

 

 フリードが悦に入って哄笑する。

 その姿を見ながら薄ら寒いものを感じた。

 

 “人工的に聖剣使いを産み出す”か……。

 

 あの時はそんなこと、考えもしなかったが……もし、それが可能だったら、僕はどうしていただろうか。

 

 人工的に勇者を生み出す。その考えのなんと恐ろしく、なんと蠱惑的なことか―――

 

 だが、そんなことは在ってはならない。

 

 勇者とは自身の意志によってなるものだ……とは言い切れない。

 だが、そうあるべきだと信じたい。

 息子に“天空の血を引く者”として勇者の重責を負わせた僕が言える事柄ではない。

 ―――だが、人工的に適性者を造るなど在ってはならない。まして他者の犠牲の上になど言語道断だ。

 

 また、何かに気付いたような反応を見せた者がいる。ゼノヴィアだ。

 

 

「あれは……聖剣使いが祝福を受ける時、あのようなモノを身体に入れられるが……。

 因子の不足分を、補っていたという訳か……」

 

 

 どうやら彼女には見覚えがあるらしい。

 しかし、ということは――――

 

 

「偽善者共めが! 私を異端として排除しておきながら、厚かましく私の研究だけは利用しおって! 

 どうせあのミカエルのことだ、被験者から因子を抜き出しても殺していないだろうが、な。その点だけ(・・)は私よりも人道的かもしれん」

 

 そんな計画の産物を利用するって―――。

 

『お優しいイブール様は、生贄共を屠る様を見たくないげる、弱気な事をおっしゃるげる……。

 ……あの方は、俺と違って、人間の肉を旨いと思わないらしいでげる……おかげで、好きなだけ喰えるげる!あはあは、喰って長生きできるげる!』

 

 バルパーの言葉を聞き、何故か光の教団で母マーサに化けていた魔物の事を思い出す。

 教会の指導者であろうミカエルとやらが何となくラマダっぽい奴に思えた。

 身内のおぞましい所業を自らの利益のために利用する。ただその構図が少し似ているというだけであるが……。

  

 

「僕等も殺す必要はなかったはずだ! どうしてッ!?」

 

「お前等は極秘計画の実験材料に過ぎん! 用済みになれば廃棄するしかなかろう」

 

 

 ……酷い。何と惨たらしい。

 光の教団の信者だった親友の妻マリアも同じような目に会ったことがある。奴隷を過酷に扱う教団のやり方に疑問を持った彼女を信者仲間のロリーが教祖の所持する皿を割ったという罪を着せ奴隷にしたのだ。

 秘密を握った者の口封じをする……イヤな共通点だ。尤も殺してしまうのと奴隷にすることのどちらがより酷いのか分からないが。

 あまりの非道さに、皆一様に言葉を失う。

 

 

「僕達は……主のためと信じて、ずっと耐えてきた……。

 それを……それをッ……実験材料……? 廃棄……!?」

 

「欲しければくれてやる! 最早さらに完成度の高めたモノを量産出来る段階まできているのでな」

 

 

 やり場のない怒りに、悲しみに、憎しみに悶え苦しんでいるキバくんに向かって、バルパーは因子の結晶を投げ捨てた。

 

 それを拾ったキバくんは哀しそうに、愛おしげに、懐かしそうにそれを握りしめる。

 

 

「皆……」

 

「許せねェッ! ジジイ、テメェェエエッ!!」

 

 

 イッセーくんが涙を流しながら激高する。仲間の思いを踏みにじるかのような振る舞いに忍耐の限界に達したようだ。

 

 

「バルパー・ガリレイ……あなたは、自分の研究、欲望のために……どれだけの命を弄んだ……?」

 

 

 キバくんが静かな口調で語り出した。これまでの怒りで冷静さを欠いたものではない。

 何かを悟ったらしい。

 

 

  そのときだ―――

 

 キバくんの握りしめる因子の結晶から強い力を感じた。

 その力はバルパーがまるではがねの剣を造るために集められた鉄鉱石の如く扱われたにも拘らず、そのような無機質さは一切なく、寧ろ強烈な遺志と慈悲を感じさせるものだ。

 

 それらは、やがてキバくんの周りに集まって行き、青白く輝く人のような形をとった。

 

 

「これは……?」

 

「……人……?」

 

「あぁ、そんな風に見えるな……」

 

 

 現れた人の影のようなものは皆若い。幼い少年少女達だ。

 無論、キバくんを除けば誰もその者達の顔など知らないだろうが、誰も何も言わずとも全員理解した。

 あの子達がバルパーの聖剣計画の犠牲者達だ。

 

 

「おそらく、この戦場に漂う様々な力、そして、祐斗君の心の震えが、結晶から魂を解き放ったのですわ」

 

 

 ヒメジマの解説が解説するが、詳しい事はわからない。

 だが、そんなことはどうだっていい。

 大事なことは、自分一人が助かったことをずっと悔やんできたキバくんが、やっと死者達の本当の思いを知れるということだ。

 

 彼の同胞達は、穏やかな眼差しでキバくんに語りかけている。

 

 

「……僕は、ずっと、ずっと思っていたんだ……。僕が……僕だけが生きていて良いのかって。

 僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子がいた……。

 僕だけが……平和な暮らしを過ごしていいのかって……」

 

 

『大丈夫―――』

 

『皆集まれば―――』

 

『受け入れて、僕達を―――』

 

『怖くない。たとえ神がいなくても―――』

 

『神様が見てなくても―――』

 

『僕達の心は、いつだって―――』

 

「っ………一つ……!」

 

 

 キバくんが強い意志の篭った眼差しで前を向く。

 その姿を見てイッセーくんが呟く。

 

 

「なんだ……、涙が……止まらねぇ……っ!」

 

 

 同じリアスの眷属として、友として、仲間として、漸くキバくんが同胞達の思いを知り、そして前を向いたのだ。

 我が事のように嬉しいのだろう。僕も全く同じ思いだ。

 過去を断ち切る、それがどれほど難しい事か、それは我が身に刻み込まれている。

 それを彼はやってのけたのだ。あんなに若いのに――――。

 

 だが、変化はそれだけではない。何やら強い力の高まりを感じる。

 まるでキバくんの意志が、彼の仲間達の思いが、そのまま形となっていくような―――

 

 そのことに気付いたのか、神器(セイクリッド・ギア)に封印された赤龍帝ドライグが自身の宿主に話しかけている。

 

 

『あの騎士(ナイト)は“至った”。所有者の想いが、願いが、この世界に漂う流れに逆らおうと、激的な転じ方をした時、神器は至る。

 

 

 それこそが、禁手(バランス・ブレイカー)だ』

 

 




この辺りって地味に「ハイスクールD×D」の二次創作では鬼門だと思う。

①主人公が首突っ込む→出しゃばりな感じがする
②ばっさりカット→D×Dに対する愛(特に木場きゅんへの)がないと思われる
③原作の展開のまんま→手抜きだと思われる

散々悩んで③にしました。いかがでしたでしょうか……
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