時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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最近、ネットで調べていたら「小説版だとリュカは46歳で病死する」と書いてあって凄い驚きました(・。・;

そこで読み直してみましたがそのような記述はありません。ですが、〈本書は一九九三年九月に発行された『小説ドラゴンクエストⅤ天空の花嫁3』を加筆修正したものです〉と書いてある。

つまり、加筆前のはそうなのでしょうか? 確かめようにも近所の本屋にもBOOK OFFにもない。

密林で買おうか迷ってます(^_^;)


44話 決戦の時 1

  

 

「キ~~~~ヒッヒッヒッヒィィィ~~~ッッッッ!!

 大、大、大成功じゃあッッ!! これで何もかも上手くいった! ワシの洋々たる未来は約束されたも同然じゃ!!」

 

 

 狂喜し、辺りにいる者に一切憚ることなく哄笑するラエボザ。まるで一生分の幸福が一刹那に訪れたかのようだ。

 その横でザムザは若干怯んでいるかのような顔をしている。その目線の先には未だに微動だにしない、自らを『堕天使エルギオス』と名乗った者の姿があった。

 

 

「ち、父上……本当に大丈夫なのでしょうか? こやつの制御は……」

 

「な~にを言っておる ザムザよっ! ワシの計算に狂いは無い! それにあの男(・・・)からの預り物もあるからのう!」

 

 

 ―――そう言うなり老神父は懐から何かを取り出す。それは大きな黒真珠のようにも水晶玉のようにもに見えた。

 そいつをコカビエルとガナサダイであった者に向け、高々と掲げる。

 

 

「そら、『魔砲珠』よッ!」

 

 

 老人が叫ぶ。すると、珠から真っ黒い瘴気のような霧が溢れ出し緑色の堕天使に纏わり付いた。

 そのドス黒い霧はみるみるうちに堕天使の身体へ吸収されていく。

 

 

「キヒヒッ! 我が名は妖魔司教ザボエラ、貴様の新しい御主人様じゃッ! さあ、ワシに従えッ!!」

 

 

 耳障りな甲高い声で命令するラエボザ―――真の名は『妖魔司教ザボエラ』というらしいが。

 それに対し、堕天使は全く気にする素振りは無い。自分の両手をしげしげと眺めている。指の関節を折ったり伸ばしたり……どうやら動作の確認をしているらしい。

 

 だが―――

 

 

 

 

  ブワァアンッ!!

 

 

 

「ぎょ、ぎょええええ~~~~ッッ!!!」

 

 

 旋風、そして悲鳴とともに吹き飛ばされる魔族の父子。

 

 突然の出来事であった。……一薙ぎ、僅か一薙ぎである。

 全く、力が篭らぬ……少なくとも傍目からはそう見える動きであった。

 ザボエラ親子に向けて右腕を無造作に振り降ろしただけである。

 それだけでザボエラは朝礼台に、ザムザは植木に叩き付けられた。

 だが、確かに感じた。今の一撃には相当な闘気……それも暗黒闘気に近いモノが篭められていたのだ。

 闘気と風圧のみで薙いた……。それも準備運動レベルの動きでだ。

 

 どう見ても只者じゃない。コカビエルやガナサダイとは比べようもない強大な力を持つ存在だと容易く理解できる。

 

 その一方、自身を産み出したのであろう父子を薙ぎ倒したことなど気にも留めず、肉体の状況確認を済ませた異形の存在は再び俯き、何やら考え込み始めた。

 

 そんな中、意を決した表情で紅髪の少女が前に進み出る。

 

 

 

「……それで……一体これはどうなっているのかしら?

 あなたはコカビエル……よね? それともさっきの暗黒皇帝ガナサダイとか言う奴かしら?」

 

 

 この異常な状況下においても顔色が蒼白になりながらも気丈に振舞おうとするリアス・グレモリー。だが、その努力はあまり実っているとは言えない。何故なら声が明らかに震えているからだ。彼女が無理をしていることはあまりにも見え透いていた。

 

 そんなリアスの必死の問い掛けに対して、目の前にいる異形の堕天使はまるで気にも留めず、怨念と怨嗟が滲み出たかのような声色でぽつりぽつりと呟いている。

 

 

「……罪。

 存在そのモノが……罪なのだ」

 

「え?」

 

 

 眼前のリアスという存在に全く関心を払わず、尚も独白を続ける堕天使。

 その唇から紡がれる憎悪に満ちた言葉が一つ、また一つと積み重なるごとに彼から放たれるプレッシャーは急速に増大していく。今や、その重圧はかつて相対したかの大魔王には届かぬものの、けして軽視することのできない強烈なものとなっている。

 

 

「存在すること自体が罪……。

 人間とはそういうものだ。

 人間を守ろうとするセレシア。滅ぼそうとしながらも放置したグランゼニスも同罪……。

 罪は裁かれねば……。誰もやらぬというのであればこの私が手を下そう……」

 

 

 譫言のように、囁くかのように話し続ける堕天使。

 だが、その言葉の中に気になる単語があった。セレシア……? グランゼニス……? いずれもこことは異なる世界で聞いた名だ。この世界の者ではない。確か、ゼノヴィア達の信仰する『聖書の神』は違う名前の筈だ。

 

 僕はそんなことを思案していたが、しかしそんな悠長なことをしている場合ではない。

 そいつは急に振りかぶり、強烈な目線でこちらを見据えた。そして咆哮する。

 

 

「我が名はエルギオス。かつて大いなる天使と呼ばれし者!」

 

 

  ぞわっ…………!

 

 

 その憎しみに満ちた激しい視線に曝された瞬間、全身の体毛が逆立つのを感じた。

 彼の憎悪の対象たる人間の一人としてなかなかの恐怖を覚えざるを得ない。ここまでのは本当に久方ぶりだ。

 

 異形の堕天使―――エルギオスの眼差しはリアス・グレモリーへと向けられる。

 幾筋もの冷や汗が頬を伝う彼女に鋭い詰問の声が飛んだ。

 

 

「問おう 悪魔の小娘よ。お前は人間に守る価値があると思っているのか?」

 

「何よ 突然に……。この街にいる者を守るのは上級悪魔グレモリー家の者としての当然の義務だわ……!」

 

 

 唐突なエルギオスの問い掛けに怯みながらも毅然とした態度で答えるリアス。

 

 

「ならば黙って我が手に掛かれ! 神も人も、我に逆らう悪魔も 全て皆、滅びるがいい!!!」

 

「ッ!?」

 

 

 明確な拒否、そう意思表示するリアスの返答。それを聞いた途端、エルギオスの放つ重圧が爆発的に増えた―――。

 目の前の男が膨大な魔力を内包する存在だという事は全身でひしひしと感じ取れる。

 

「どうしたというんですか、コカビエル様!?」

 

「下がるんだ、レイナーレ!

 彼はもう“コカビエル”ではない!!」

 

「そうは言っても……」

 

「ウチらの上司ッス! 何とかして止めましょう レイナーレお姉さま!!」

 

「……え、ええっ!」

 

 

 健気にも堕天使三人娘は変質し、もはや見た目からは堕天使であると到底見えず、寧ろ悪魔に近い姿と化した元上役に立ち向かおうとする。

 おそらく、同じ堕天使の自分達であれば、エルギオスも何らかのリアクションを取るのかもしれないと思ったのだろう。

 だが、それはあまりにも楽観的すぎる……!

 

 

「三人とも止めるんだ! 無茶をするな――――」

 

 

 吶喊していく三人を必死に呼びとめようとするが………

 

 

 

 

 

   ギ ラ リ……!

 

 

 

  レイナーレの 身体は 動かなくなった!

  カラワーナの 身体は 動かなくなった!

  ミッテルトの 身体は 動かなくなった!

 

 

 

 何と……レイナーレ、カラワーナ、ミッテルトの三人を一睨みで止めてしまった。

 彼女達はまるで石像になったかのように動けなくなっている。微動だにしない。

 そこまで三人と隔絶した力の差があるということか……。それとも―――

 

 

「上位の天使には逆らえぬ天の(ことわり)か。……貴様らとは戦う価値もない」

 

 

  ブワァンッ!

 

 再び、右腕を振るエルギオス。それだけでレイナーレ達は弾き飛ばされ、地面に打ち据えられた。

 どうやら、そのまま気絶してしまったようだ。起き上がる気配が無い。

 

 それにしても『天の理』か……。そんなものは聞いたことが無い。レイナーレ達からもリアス達からもだ。

 推察するに、このエルギオスがいた世界の(モノ)だろう。そいつを別世界であるここで適用させたというのか。

 そんなことは可能なのか? それともこの者エルギオスがそれ程までに強大であるということなのだろうか?

 

 

「……300年もの長き間…… 天使としての尊厳を奪われ捕らわれ続けた私の憎しみがどれ程のものか、お前達には想像も出来まい。

 しかし、その憎悪が私に力を与えたのだ。今や私の存在は神をも超越した。

 今こそ神に成り変わり、この私が至高の玉座に着こう……」

 

「一体、何言ってやがんだ、コイツ……!?」

 

 

 イッセーくんが引きつった表情で戸惑いの声を上げた。

 他のオカルト研究部の皆とゼノヴィアも恐怖と困惑が入り乱れた顔をしている。

 無理もない。僕でさえ状況を完璧に読み取るのは不可能だ。

 しかし、たとえそうであっても僕なりの推論を皆に述べるべきだろう。若人達を少しでも落ち着けるために……。

 

 

「……そうだな。僕は様々な異世界を巡り回って来たが『邪配合』という言葉は初めて聞く。

 だが、『配合』という言葉なら何度も聞いた」

 

 

配合―――― モンスター同士の結婚のようなもの。モンスターバトルが盛んな世界におけるM・M(モンスター・マスター)達のモンスターの強化手段。 ♂と♀のモンスターがそれぞれ一匹ずつ必要で、配合を行った二匹はいなくなってしまう。ただし、両親から特技などを受け継いでより強くなった子供が生まれてくる。子供の種族は両親で決まる。ただし、同じ組み合わせでも条件によっては違うモンスターとなることもあるという……

 

 

「―――要するに魔物と魔物を交配して新しい魔物を産み出すワケだ。

 しかし、『邪配合』はそうではなく、寧ろ“合体”に近い」

 

「合体ッ!?」

 

「そうだ」

 

 

 つまり、今 目の前にいるのはコカビエルとガナサダイを合体させたナニか、ということになる。

 その何かとは―――

 

 

「彼は自身を『堕天使エルギオス』と名乗った。この名も聞いたことが無い。しかし、彼が先程 発した『グランゼニス』『セレシア』。この二つは耳にしたことがある。どちらも此処とは異なる世界の神々の名だ」

 

 

 ふと、後ろを振り返ると、ゼノヴィアとアーシアが驚きに目を見開いている。相当なショックを受けているようだ

 彼女達の信仰する宗教では神は唯一神である『聖書の神』のみ……、確かそうなっていたはずだ。異世界にも神を名乗る存在がいることが驚きなのだろう。

 

 

「だけど『堕天使エルギオス』という名前も不思議な感じがするんだ……。

 何となくだけど、その言葉の響きに……どう言えばいいのかな? そう、強力な“言霊”が宿っている気がする。

 おそらく、『堕天使エルギオス』とは、『グランゼニス』『セレシア』が治める世界で極めて強大な存在だったのではないだろうか。

 そして、そいつをコカビエルとガナサダイを素材にして再現した……」

 

 

 オカルト研究部の皆は僕の言葉にしんしんと聞き入っているようだ。『堕天使エルギオス』らしき者も、真っ赤に光る(まなこ)でギロギロと此方を睨め回している。

 もうすぐだ、もうすぐ語り終える……。

 

 

「だが、目の前にいるのはあくまで複製品。『エルギオス』本人じゃない。もし、本人だとしたらこんなモノじゃないはずだ。

 たぶん、『堕天使エルギオス』という存在のあまりの大きさに、複製体が引き摺られてしまってる(・・・・・・・・・・・)んじゃないのかな? だから、コカビエルやガナサダイのとは全く違う……『堕天使エルギオス』の不完全な人格となっている。僕はそう思うよ」

 

 

 皆に注目が集まる中、僕は自分の推論を締めくくった。

 僕の話を聞き終えたエルギオス≒が口を開く。

 

 

「……つまり、私がニセモノだと? フ、フフフ……、ヒヒッ……ヒィィァァアアッハッハッハッハァァァアアアアッッ!!!!

 愚かなる人間め、この身から無尽に沸き立つ怒りが、憎しみが、擬い物であると!?

 

 ……許さぬ、許さぬぞ。……許さんぞォォオッッ!!!」

 

 

 堕天使が絶叫した。 

 鼓膜が破れるのではないかと思えるほどの大音声が駒王学園に轟く。

 

 僕の言葉がエルギオス≒の逆鱗に触れたようだ。しかし、これは思わぬ僥倖だろう。

 何故なら彼の怒りが自分に向いた。イッセーくん達が狙われ難くなる―――!

 

 

「ガァァァアアアッッ!!!」

 

 

 怒声を上げ、物凄い速さで接近してくる堕天使の両の拳がぼやけ、霞み、見えなくなる。

 ……否、目で追えぬほどの連撃、『超高速連打』だ!

 

 

「『爆裂拳』!」

 

 

 堕天使の剛拳を迎え撃つべく、僕も格闘の奥義の一つ『爆裂拳』を放つ。

 連打 対 連打。堕天使の拳と僕の拳が何度も撃ち合わされ、一合一合、空気が破裂するような音が鳴り響く。

 聞くだけでも痛みそうな音だが実際にかなり痛い。これを数刻 続けたら拳が砕けてしまいそうだ。

 

 

「せいっ!!」

 

「ゴガッ!!」

 

 

 それでも何とか競り勝った。僕のパンチが一発 エルギオス≒の頬を打ち抜いた。

 それによって彼を後方に吹っ飛ばしたが、それでも異形の堕天使は空中で体制を立て直し、宙返りしつつその場に滞空した。

 

 

「そう簡単には負けないよ」

 

「フンッ! 人間が!!」

 

 

 益々憎々しげな眼差しを向けてくるエルギオス。

 

 次に彼は禍々しい模様の翼を大きく広げ、全身から恐ろしい魔の波動を放出し始めた。

 暗黒の力によって空間は歪曲され、地上に地獄が具現化し始める―――

 

 

「消えうせるがいいッ!

  ジ ゴ ス パ ー ク !!」

 

 

  堕天使エルギオス は 地獄から 雷を呼び寄せた!

 

 大地に異空間へのゲートが形成され、そこから真っ黒い雷撃が迸る。その雷火が辺り一面を薙ぎ払いながら向かってくる―――!

 

 

「ライオウ! バトラー! 『マジックバリア』だ!」

 

「「はッ!」」

 

 

 僕とライオウとバトラーの三人で魔法の障壁を張る。一枚一枚が脆弱な膜であっても三枚あればなんとかなる……と思いたい。

 

 表面が虹色に揺らめく魔法の壁が用意された、その次の刹那、途轍もない雷鳴が轟わたった!

 

 ド ッ ッ ッ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ オ オ オ オ オ オ オ オ ン ン ッ ッ ッ !!!!!

 

 

 それと共に打ちつけるかのような衝撃が五体に襲来する。

 凄まじい衝撃と熱。しかし、何とか全員持ち堪えることができた。

 

 雷が止み、寸毫ほどの静寂が訪れる。

 だが、堕天使のいる上空を見上げてみると―――

 

 

 

「……トドメだ。『シャイニングボウ』」

 

 

 そこには『ジゴスパーク』よりも更に憂虞すべき光景が広がっていた。

 駒王学園の上空には、無尽の光の矢が展開され漂っていたのだ。点ではなく面、さながら天に輝く星々を凝縮したかのような神々しくも、どこか禍々しい印象を受ける情景。

 

 

 エルギオス≒が腕を振り降ろすと、一斉に箭が解き放たれた。それはまさしく光の雨。膨大な数の箭がグラウンドに降り注いできたのだ。

 

 

「これで終わりだ。罪深き人間と愚かなる悪魔共よ―――!」

 

 

 

 




魔砲珠:???

邪配合:漫画「ドラゴンクエストモンスターズ+」より。ベースとなるモンスターに別なモンスターを吸収合体させる技術。

創造神グランゼニス:DQⅨに登場。神の国に居を構える、全知全能だという偉大な神。名前から察せられるとおり、DQⅨの世界のすべてを創造した最高神。

女神セレシア:創造神グランゼニスの娘である女神。基本的に主人公の味方で慈悲深い女神様なのだが、主人公ばかりに大変なことを押しつけて実質選択の余地がない過酷な運命を迫ったりする。サンディの話では今は美白だが昔はガン黒だったらしい。

ジゴスパーク:DQⅥ以降などに登場する特技。地獄の雷を呼び出し、敵全体を攻撃する。敵全体に250前後のダメージを与える最強クラスの特技。


なんか長くなってしまったので初めて前後編に分けます。
後編は近日あげます。
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