時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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しっかし、本当に46歳で病死するのだとしたらこんな所でリュカに油売らせていいのか、という葛藤を覚え始めました。
さっさと返して家族サービスさせるべきでは……(^_^;)


45話 決戦の時 2

 

「持ち堪えろ、踏ん張るんだ!」

 

 

 ライオウ達を激励し、展開しているマジックバリアにより一層の魔力を込める。 

 これで破られたら、僕らもリアス達も数十本の矢を受け串刺しだ。僕達はともかく、悪魔のリアスとその眷属達は一堪りもない。おそらく全員 棺桶送りだ。だから、何としてでも凌ぎ切らなくてはならない。

 

 だが、そんな思いとは裏腹に、がんがん音が鳴り響き、ぶすぶすとマジックバリアに光の箭が突き刺さっていく。

 一枚目が乾いた音と共に破壊され、そのまた数十秒後に二枚目が破られる。三枚目も、もうあと数秒も持つまい。

 

 だが、相手の箭ももうすぐ尽きる。ここは―――。

 

 

 

 パ リ ン !!

 

 ついに最後の魔法障壁が粉々に砕け散った。障害を突破した矢が次々に此方へ降って来る。

 光の雨を注視しつつ、ライトシャムシールを起動させ……

 

 

「『海波斬』!」

 

 

 マジックバリアが破られるのと同時に跳躍し、海波斬で光の矢を斬り払う。

 ほとんどの箭は消失した。

 

 だが―――

 

 

「そっちにいったよ! 躱して、リアス!!」

 

 

 やはり打ち漏らした。九割以上は防げたが、それでもまだ結構な数の矢が残っている。

 機動力に優れ、躱すことができるであろう騎士(ナイト)のキバくんならともかく、他の皆は拙い!

 

 

『Transfer!!』

「いったッスよ、部長ッ!」

 

 

「ええ、イッセー! はあああああアアッッ!!」

 

 

 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)によって強化されたリアスの滅びの魔力が残りの弓矢を掃海した。

 どうやら、僕らがマジックバリアで守っている間にイッセーくんが再び倍化をしていたようだ。いつまでも守られるだけの存在ではないということだろう。

 彼らもまた日々成長しているというわけだ。その姿が息子と娘に重なり、ちょっと泣けてきた。歳を食うと涙もろくなっていけない。

 

 

 一方、エルギオス≒は必殺の特技である『シャイニングボウ』を凌がれたことで、一時、自失茫然としていたが、やがて、最後に決め手となった滅びの魔力を放ったリアス・グレモリーに、その赤い憎悪に満ちた眼差しを向けた。

 

 

「…………罪。

 存在そのモノが……罪なのだ。神の創りしこの世界はありとあらゆる罪で溢れている。

 全ての罪に裁きを下そうというのであれば、もはや世界を滅ぼす以外にない。

 紅髪の悪魔の少女よ。お前は飽く迄 私を阻むつもりか!?」

 

「……何度も同じことを言わせないでちょうだい。私達の街を、私達の学園を、これ以上 好きにはさせないわ!」

 

 

 憤怒の表情を浮かべ詰め寄る堕天使に対し、怯みつつも飽く迄 気丈に振舞う紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)

 その後ろ姿を見るグレモリー眷属の面々も、エルギオス≒のこれまでの敵と隔絶した力に絶望しかけていたようだが、次第に活力を取り戻した。

 

 

「……愚かなことだ。貴様如きでは我が敵にはなるまい。身の程を知るがいい!」

 

 

 これはいけない!

 エルギオス≒の怒りの矛先がリアスに向いた。

 絶望の堕天使は大地を蹴り跳躍、そして翼をはためかせ急上昇し結界の天井ギリギリまで昇る。そこで止まると凄まじい速さで急降下してきた。

 巨大な暗黒闘気を身に纏うその姿はさながら黒い隕石。

 最大級の悪意が悪魔の少女に向かう。

 

 

「部長ォォォォオオオオオッッ!!!!」

『Explosion!!』

 

 

 主の危機に咄嗟に飛び出すイッセーくん。先程、リアスに譲渡したばかりだが、もう倍化を済ませたらしい。

 ……いや、かなり無理をしているようだ。すでに三回も譲渡を使用している。

 すでにイッセーくんは疲労の極地だろう。しかし、目をらんらんと輝かせてエルギオス≒に向かって行く。

 主人への忠誠心か、それとも恋心によるものか、いずれにせよ素晴しい。素晴しいが……

 

 

「少し向こう見ずに過ぎるな……。バトラー! 援護を!」

 

「了解いたしました。しかし、参りましたね。補助呪文の類ではどうにも出来ませんし……。

 仕方ありません。グレモリー眷属の皆様は耳を塞いでおいてください」

 

 

 青紫の獣人型悪魔の忠告を聞いたリアス達は困惑しつつも耳に手を当て塞ぐ。

 その様子を確認したバトラーに極めて強大な魔力が集まり出す。

 

 

「 究 極 爆 裂 呪 文 ―――

 

   イ オ グ ラ ン デ   」

 

 

 その言霊が吐き出されると共に、駒王学園上空の大気が一瞬にして歪み、瞬く間に集束していく。

 そして、地獄の戦士の最強呪文が炸裂した。

 まるで大地が崩壊するのではないかという錯覚を抱いてしまうほどの圧倒的な衝撃が全身に襲い掛かる。

 正に想像を絶する大爆発。

 

 

 

「グ、グヌウウ………!」

 

「今だ、イッセーくんッ!」

 

「ウオオオオオオオオッ!!!」

 

 

 猛烈な爆風に煽られ、突進の勢いが衰えたエルギオス≒にイッセーくんが赤龍帝の籠手を装備した右腕を振りかぶる。

 

 

  バギィィィィイイイッッ!!

 

  会心の一撃!

 

 

 イッセーくんの今 出すことができる全力が込められた拳は絶望の堕天使の左頬を見事に貫いた。エルギオス≒の吶喊は完全に殺す事が出来た。

 ……だが、まだだ。バトラーの究極爆裂呪文(イオグランデ)によりかなりのダメージを与えたが、エルギオス≒を沈黙させるには至っていない。

 

 逆に間合いを詰め過ぎたイッセーくんに対し、堕天使の無慈悲な手刀が襲い掛かった。

 その一撃はイッセーくんをふっ飛ばし、運動部の用具をしまう物置に叩き付けられる。

 

 それでもイッセーくんはよろめきながらも起き上がった。

 

 

「ぬぅ……。脆弱な下級悪魔め。何故、私に逆らう?

 力の差を理解できないのか?」

 

「そんなもの……、 知るかよ……。

 俺はなぁ……、俺は、ハーレム王になるんだよ!!

 俺の街を、俺の仲間を、そして俺の部長のおっぱいを傷つける奴は絶対許さねえっ!!

 お前の良く分かんねえ勝手な理屈で世界が滅ぼされてたまるかよ!!

 邪配合? 人間の罪? そんなもの知るかよ!!!

 お前は俺の大切な(ひと)と、そのおっぱいを傷つけようとした。俺がお前を倒すのはそれだけで十分だ!!!!」

 

 

「は?」

 

 

 

 ……? …………おっぱい?

 

 え? え?? どうしておっぱいが此処で出てくるんだ?

 ……う、うーん。 彼のこういう部分が良く分からないんだよな……。

 おっぱいか……。まあ、僕も嫌いじゃない。寧ろ、好きだと言ってもいい。だが、ここまでは……。

 いや、そうでもないか。ポートセルミにある『グレイトドラゴンと踊る宝石亭』で、二階から踊り子達の胸を覗いている男がいた。

 その男に「場所を譲ってやる」と言われ「はい」と答えたら、それを見ていた妻にキレられた。あの時ほど妻が激怒したこともまずない。

 まあ、それよりもその覗きスポットが世襲制であることに驚いたが……。

 

 まあ、どの世界もおっぱいが好きな男はいるということなのだろう。

 それにしても彼はとても面白い。あの張り詰めた空気があっという間に弛緩した。グレモリー眷属達も晴れ晴れとした顔付きだ。

 イッセーくんのようなタイプの人間は名の知れた勇者達のパーティの中に必ず一人はいると言っていい。

 チーム全体のムードメーカーになる存在だ。

 僕達のパーティでは城の兵士にピピンがその役割を担っていた。自国の王が目の前に入るにも拘らず、自分の城を持つ野心を語るなど、本当にユニークな青年だった……。

 それだけリアス達にとっても重要な人材と成りうるだろう。

 

 僕も何だか気が楽になってきた。

 改めてエルギオス≒に向き合うこととしよう。

 

 

「君がどうして それほど人間を憎んでいるのか、僕は知らない。

 確かに君の言う通り、人間には醜いところがある―――」

 

 

 思い出されるのはカボチ村での一件だ。村の畑を荒らす魔物を退治して欲しいと言われ、その魔物が住むという巣に赴いた。そこで出会ったのが生き別れになっていたプックルだ。プックルを仲間にし、もう安心だという事を知らせようと村に戻ったが……、僕は魔物と……プックルとグルだと言われ、村を追われた。

 あのときはとても……、とても悲しかった。

 

 

「だが、他の生き物は違うと どうして言えるのだろうか……? 他の生き物……悪魔、天使、堕天使、魔物、どの種族も自身の脅威となる者は取り除こうとすることはある。

 それに人間には良い部分も……美しい部分もたくさんある」 

 

 

 数年後、カボチ村に戻ったときだ。昔はヨソモノには厳しい視線が向けられていたが、今ではそうではない。

 明るく、開放的な村となっていた。

 人間は反省し、変わる事も出来るのだ。

 

 

「人間も悪魔もドラゴンも堕天使も……、それほど大きな差は無い。

 大事なのは『愛』だ。

 それに……、憎しみとは『愛』の裏返し。君も人間を愛し、愛されることを望んでいた……そうじゃないのかい?」

 

 

 そうだ。彼は……少なくとも、オリジナルのエルギオスはきっと愛を欲していたはずだ。

 僕の推測はおそらく間違ってはいない。そう確信させるものが 彼の振る舞い、そして彼の慟哭の内にあった。

 

 エルギオス≒は僕の言葉を聞き、呆気にとられたかのように しばらく茫然自失としていたが、やがて、顔を歪め哄笑し出した。

 

 

「クックック……。愉快、実に愉快だ。人間への憎悪によって堕天使となった私の前に立ちはだかるのが、悪魔でありながら人間を守ろうとする小娘、女の乳を欲さんが為に命を張るドラゴン、悪魔も(ドラゴン)も堕天使も問わずに愛を注ぐなどと戯言をぬかす愚昧なる人間とはな……」

 

『グッ……、女の乳を欲するドラゴン、だと………!?』

 

「ど、どうしたんだ ドライグ!?」

 

 

 何やらイッセーくんの神器(セイクリッド・ギア)に宿るドライグが精神的ダメージを負ったらしいが、今は気にしないでおこう。

 

 

「だが、どのような耳あたりの良い言葉を弄そうとも、我が憎しみは消えるモノではないッ!

 その憎悪の激しさを、絶望の深さを……思い知らせてくれるッ!!!」

 

 

 再び 怒りと憎しみのオーラを撒き散らし、向かってくるエルギオス≒。

 しかし、それに相対するリアス達の表情に怖れの色は無い。

 

 

「私達はまだ負けていないわ! イッセーとリュカさんに続くわよ! みんなっ!」

 

「「「はい!」」」

 

 

 グレモリー眷属が一斉に動き出す。

 まずは戦車(ルーク)のトウジョウが持ち前のパワーを生かした打撃を見舞おうと、猫の如き敏捷性でもって接近するが、蹴撃を放つ前に簡単に足首を掴まれ、そのままぶん投げられる。その先にいたのはヒメジマだ。砲弾の如き亜音速の速さで打ち当てられ、二人ともすっ飛んで学舎に衝突する。

 

 

「小猫ちゃん! 朱乃さん! ……くっ、聖魔剣よ!

 ハァァァァアアッッ!!」

 

 

 あっという間に蹴散らされた二人を一瞬 気に止めたものの、キバくんが騎士の速さで以って斬りかかる。

 絶望の堕天使は光で剣を形成し迎え撃った。しかし、その剣戟はほとんど一瞬で終わる。

 キバくんの聖魔剣を一撃で粉砕したエルギオス≒は、そのまま返し刃で彼を袈裟斬りにしたのだ。

 その剣圧で以ってキバくんが叩き返され、そのまま倒れた。

 

 急いで駆け寄るが……。酷い傷だ。しかし、辛うじて致命傷ではない。彼は斬られる瞬間、咄嗟に飛び退いていた。だからだろう。

 

 

「べホマ!」

 

 

 回復魔法を掛けてみるが……治りが遅い。暗黒闘気の為か!

 暗黒闘気には回復魔法の効き目を遅らせる作用がある。それが原因だ。

 ……これは参った。治せない事もないだろうが時間が掛かり過ぎる。僕が戦線を離れればライオウとバトラーの負担が増える。

 まあ、あの二人なら何とか出来そうな気もするが、危ない橋は渡らない方がいい。

 

 すると、そこに―――

 

 

「私が治します!」

 

「アーシア!」

 

 

 現れたのは金髪の少女 アーシアだ。

 そうか、彼女の『女神の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』なら……!

 

「頼めるかい?」

 

「はい! 皆さんのお役に立いたいんです!」

 

 

 彼女は倒れ伏すキバくんの元に近づくと、跪き、一心に祈り始める。

 すると、少しずつ暗黒闘気が抜けてきた。そのおかげで僕の回復魔法の効きがずっと速くなる。

 

 

「ううっ……」

 

「大丈夫かい、キバくん?」

 

「ええ」

 

 

 傷はあっという間に治った。だが、休んでいればいいのにキバくんはふらつきながら強引に立ち上がる。

 たぶん、止めても聞かないだろう。彼らの力を上手く活用するにはどうすればいいか……

 

 

 

 

「爆煉斬り!!」

 

「雷神斬り!!」

 

 

 その一方で、まだ戦いは続いている。今はライオウとバトラーがそれぞれ“爆煉斬り”と“雷神斬り”で、エルギオス≒の腕を一本ずつ斬り落とした。流石は僕の最も頼りにする魔物達だ。

 

 しかし、絶望の堕天使は怯まない。大きく息を吸い込み、全身を震わせ『絶対零度』を吐き出した。

 

 

「ぬぅっ!」

 

「魔界のエリートのこの俺がーーーーっっ!!」

 

 

 前衛を務めていた大悪魔達を直撃する冷凍ブレス。その威力は凄まじいものだった。

 まさしく極寒地獄。冷凍ブレス系最高位の技だけはある。以前、旅した氷の世界やオークニス地方を思い出す程だ。

 そのブレスをもろの受け、二人とも氷の彫像と化してしまった。

 二人とも冷気に耐性がある。しかも、ライオウはかなり強いのだ。たぶん、一時的に凍りついてしまっただけでダメージはそこまででもないと思うが……。

 

 ともかく、二人とも一時的に戦闘不能だ。

 そこでキバくんと共に前に出る。

 

 

「いいかい、一人一人じゃ駄目だ。僕と君とゼノヴィアでやる。僕に君の力を委ねてくれ。いいね?」

 

「はい……!」

 

 

 僕の問い掛けに、決意の篭った表情で頷くキバくん。

 ゼノヴィアにも目配せをする。

 

 

「ぐっ……! 人間がァァァアアアアッッ!!!」

 

 

 両腕を失った堕天使が吠える。すると、切断されたされた諸腕の付け根が隆起し、瞬く間に復元してみせた。なんとも恐ろしい回復力だ。

 だが、そんなことにはお構いなしに、真ん中に僕、右にゼノヴィア、左にキバくんの陣形で攻めかかる。

 

 一気に体内の闘気を爆発させ、僕だけではなく、キバくん、ゼノヴィアの二人を包むように闘気で覆い、纏め上げる。

 

 

 僕がリードすることによってキバくんの双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)とゼノヴィアのエクスカリバー、そして僕自身のライトシャムシールの切っ先が一つに交わり、一振りの光の剣と化す。

 

 

「「「ト リ プ ル ソ ー ド !!!」」

 

 

 

「ぐぎゃああああああああッッッ!!!」

 

 

 堕天使が今度こそ甲高い悲鳴を挙げる。三本の剣は邪悪な秘術によって造られたエルギオス≒の肉体を引き裂いて見せたのだ。

 

 

「「やった!」」

 

「いや、まだだ!」

 

 

 キバくんとゼノヴィアが喜色を浮かべたが、僕がそれを制した。

 

 確かに大ダメージを与えることには成功した。今度はなかなか回復しない。おそらく(エルギオス≒)の回復力を上回るダメージを与えることに成功したおかげで、肉体の再生が始まらないのだろう。

 

 しかし、それにしても様子がおかしい。戦意と憎悪で彩られていた彼が、心ここに在らず、当惑の海に沈んだかのようだ。

 

 堕天使は、自らの体に出来た大きな傷をまるで信じられないモノでも見るかのように見詰めている。

 

 

 

「ググッ……。何故だ。神をも殺した私が……どうして押される? 何故、この私が傷を負う?」

 

 

 エルギオスは何かに憑かれたかのようにぶつぶつと囁きだした。何やら錯乱し、記憶が混濁しているようだ。一つの肉体で二つの記憶(たましい)がぶつかり合っているかのように……

 その様子は非常に不気味だ。空恐ろしいモノを感じる……。

 

 

「神? 私が殺した……? 違う……、もう死んでいるのではなかったか?」

 

 

 ふと、気付いた。前の呟きとは内容が異なっている。

 彼は先程『しかし、その憎悪が私に力を与えたのだ。今や私の存在は神をも超越した。今こそ神に成り変わり、この私が至高の玉座に着こう……』と言った。

 それなのに、今の言い方では“神はすでに自分が倒した”と言っているのと同じではないか? 「これから倒そう」と言っていたのに「すでに倒した」?

 ……一体何が起きているんだ?

 

 

「どの神のことだ……? グランゼニス………いや、違う。『聖書の神』だ」

 

 

 また新しい名前が出てきた。今度はこの世界で信仰される『聖書の神』――――

 その事を口に出すという事はコカビエルの記憶が混ざり出したということか……。

 おそらく、この異形の堕天使の中で『堕天使エルギオスの記憶』と『堕天使コカビエルの記憶』がせめぎ合っているのだろう。

 

 

「グランゼニスは殺した……。『聖書の神』はどうなった………」

 

 

 エルギオス≒ は 何かを 思い出そうとしている!

 

 尚も自問自答を繰り返す。その姿はどこか猟奇的ですらあった。

 それにしても神――― グランゼニスを殺したとは……。穏やかじゃないな……。

 

 僕がそんなことを考えていたとき、唐突にエルギオス≒が顔を上げた。どこか狂気すら感じる表情だ。

 そして、とんでもないことを叫んだ――――

 

 

 

 

 

 

「クククッ……! ああ、そうか。そうだった! 思い出した……!」

 

 

 

 

 

 ―― この世界の神は……『聖書の神』は死んでる……! 以前の大戦の際に魔王と共に死んだのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばしの静寂……最初にそれを破ったのはリアス・グレモリーだった。

 

 

 

 

「どういうこと!? そんな戯言、冗談でも言わないでちょうだい!」

 

 

 彼女の悲鳴にも近い詰問の声が荒れ果てた駒王学園に響いた。

 そんな彼女をエルギオス≒……いや、彼の中に組み込まれたコカビエルだろうか? は、明らかに嘲笑っている。

 

 

「いや、戯言ではない……。私の……コカビエルの記憶にはっきりと残っている。

 お前達は知らなくて当然だ。『聖書の神』が死んだなどと 一体誰に言える?

 人間は神がいなくては心の均衡と定めた法も機能しない不完全な者の集まりだぞ?

 我ら堕天使、悪魔さえも下々にそれらを教える訳にはいかなかった。どこから神が死んだと漏れるか分かったものじゃない。三大勢力でもこの真相を知っているのはトップと一部の者達だけだ……」

 

 

  僕を除く全員が途轍もないショックを受けている……。この世界に生きる者にとってはこれ以上の事は無いほどの最重要事項なのであろう。

 特にゼノヴィア、キバくん、アーシアの三人はこの世の終わりに直面したかのような形相だ。

 

 

「戦後残されたのは、神を失った天使、魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外のほとんどを失った堕天使。もはや、疲弊状態どころじゃなかった。

 どこの勢力も人間に頼らねば種の存続ができない程に落ちぶれたのだ。

 特に天使と堕天使は人間と交わらねば種を残せない。堕天使は天使が堕ちれば数は増えるが、純粋な天使は神を失った今では増えることなどできない。悪魔も純血種が稀少だろう?」

 

「……嘘だ。………嘘だ」

 

 

 後方から動揺しかすれた声がした。振り返ってみると青い髪にメッシュを入れた少女ゼノヴィアだ。

 脱力し項垂れている。ひょっとすればガナサダイが現れたときよりも蒼白だ。

 

 僕はあまりこの世界の宗教には詳しくない。だが、彼女の嘆きようを見ればエルギオス≒の言葉の重要さはイヤでも察しが付く。

 おそらく、僕達の世界では「マスタードラゴンが死んだ」くらいの事だろうか。

 確かに大事だ。天空のベルが使えずセントべレス山へ行けない……ぐらいしか実害が思い付かないが、他にも色々と問題が起きるだろう、多分。

 

 

「正直に言えば、もう大きな戦争など故意にでも起こさない限り再び起きない。それだけ、どこの勢力も先の戦争で泣きを見た。御互いが争い合う大元である神と魔王が死んだ以上、戦争継続は無意味だと判断しおったのだ。

 アザゼルの奴も戦争で部下を大半亡くしたせいか『二度目の戦争はない』と宣言する始末だ!

 耐え難い! 耐え難いんだよ! 一度振り上げた拳を収めるだと!? 巫山戯るなッ!

 あのまま継続すれば、俺達が勝てたかもしれないのだ! それを(アザゼル)はッ!

 人間の神器所有者を招き入れねば生きていけぬ堕天使共に何の価値がある!?」

 

 

 どうやら、増々コカビエルの人格と記憶が表面に出てきたようだ。

 これが邪配合の欠点かもしれない。異なる魂を強引に繋ぎ合わせる為に安定しないのだ。人格、記憶、魂、それらの歪なパッチワーク。

 生命(いのち)への冒涜。最悪の涜神。

 

 だが、この世界に生きる者達にとってはそれどころではなかった。

 特に、信心に厚く、敬虔な信者だったアーシア・アルジェントは消え去りそうな声で囁く。

 

 

「……主が……死んでいる? ……そんな……、では主の愛は……?」

 

「……そうだ。神の守護、愛なぞ無くて当然なのだ。神はすでにいないのだからな。

 ミカエルは良くやっている……。聖書の神の代わりをして天使と人間をまとめているのだからな。

 まあ、神が使用していた『システム』が機能していれば、神への祈りも祝福も悪魔祓い(エクソシスト)もある程度動作はする。 ―――ただ、(聖書の神)がいるころに比べ、見捨てられる信徒の数が格段に増えたがな。

 そこの聖魔剣の小童が聖魔剣を創り出せたのも神と魔王のバランスが崩れているからだ。

 本来なら、聖と魔は混じり合わない。聖と魔のパワーバランスを司る神と魔王がいなくなれば、様々な所で特異な現象も起きる」

 

 

 ふぅむ……、キバくんの聖魔剣も『聖書の神』とやらがいないから成立したという訳か……。

 という事はマスタードラゴンがいなくなればデイン系呪文とドルマ系呪文が混じったりするのだろうか?

 あるいはこの世界でなら……いかん、いかん、不謹慎に過ぎる。

 

 皆の動揺を気にも留めず、エルギオス≒は天に その兇猛なる拳を突き上げる。

 

 

「私は今一度 戦争を始める。これを機に! お前達の首を土産に! 俺だけでもあの時の続きをしてやる! 我ら堕天使が最強だと、サーゼクスにもミカエルにも見せ付けてやるのだ!」

 

 

 人格がコカビエルとエルギオスが入り混じり不安定なものとなっていたが、ついにコカビエルが競り勝ったらしい。

 怨敵への再戦を高々と宣言する。

 

 邪配合の素材とされても尚、消えることのない戦意、妄執。

 やはりこの世界の神話に名を刻む傑物であったということだろう。

 その底抜けの執念深さに皆が恐怖している。

 

 

 そのときだった―――

 

 

「……ザボエラの奴は失敗したか。それにしても随分な大言を吐くではないか、失敗作め」

 

 

 誰もいないはずの場所だった。少なくともつい先程までは……。

 そこに一人の男が佇んでいた。

 

 灰色のローブに身を包んだ幽鬼のような男だ。

 伸びっぱなしの髪が、夜風をはらんでふわりと靡く。するとその冷たく冴えた瞳と、浅黒い肌が顕わになった。

 痩せぎすな頬、高い鼻、薄く引き締められた唇。毒持つ花の美のような、一種、殺気だって研ぎ澄まされた容貌。

 

 そして、その男の顔には見覚えがあった。

 

 

「イブール……!」

 

 

「久しいな、マーサの息子よ」

 

 

 




シャイニングボウ:DQⅧなどに登場する弓の特技。敵全体に光の矢が降り注ぎ、ダメージを与える。

イオグランデ:DQMJで初登場し、攻撃呪文の系統がそれと同じになったDQⅨでも登場する呪文。イオナズンを上回るイオ系最強呪文。

爆煉斬り:「れっぱ斬り」の上位特技に当たる剣技。DQMJで「ばくれんざん」という名前だった。イオ、ベタンの複合属性の斬撃を放ち、敵に通常打撃の1.2倍のダメージを与える。

雷神斬り:DQMJシリーズ及びテリワン3Dに登場する技。「いなずまぎり」の上位特技に当たる剣技。雷神の力が宿した一撃を放ち、敵に通常打撃の1.2倍のダメージを与える。

絶対零度:「かがやくいき」の上位特技として登場した冷凍ブレス系特技。DQMB2Lで真エルギオスも使用する。「こごえるふぶき」の強化版で、物理行動不能効果が付加されている。


実のところライオネックは冷気への耐性がかなりあります。
しかし何故、凍ったのかと言えば……

展開の為です(笑)


ライオウ「ジーーーーーー・・・・・・」

作者「ス、スイマセンッ!!!」
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