時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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イブールの設定は小説版に近い感じにしています。
ゲーム版しかご存じない方には違和感があると思いますがご了承ください。


46話 大教祖と白龍皇

 

 

 たった一晩の間に、フリード・セルゼン、暗黒皇帝ガナサダイ、堕天使エルギオス≒……いずれも恐ろしい強敵(フリードはキバくんにとって)との連戦が行われた駒王学園の敷地。そこは激戦の爪後で荒れ果て、校舎は今や半ば瓦礫と化していた。

 

 だが、それ程の損害を被って 漸くエルギオス≒を追い詰めた……そう思ったときだった。

 校庭の片隅、横倒しになった朝礼台の傍に一人、男が佇んでいる。

 その男は、まるでこれまでの戦いから生じた瘴気と、学園を覆う結界の外に広がっているであろう闇夜を凝縮し、抽出し、ヒトの姿にしたかのような男だった。

 肌は青黒く、身に纏うローブは垢じみて、薄汚れている。おそらく、この男にとって外見など取るに足らないモノなのだろう。整えさえすれば相当な美男に見えるに違いない。

 しかし、その蓬髪には白い物が混じり、骨ばった体躯に疲労と倦怠感を滲ませていた。

 その姿は老人のように見え、同時に経験の浅い若者のような青さも感じられる、異様な存在感を放っている。

 

 男は底の知れない力を宿す、錐の如き鋭い視線を僕に向けていた。

 その眼差しからは殺気も戦意も感じ取れない。ただ……そう、ただじっとこちらを見ている。男の顔に浮かぶのはほんの少しの驚き、そして懐かしさ―――であろうか?

 自分では分からないが、多分 僕の顔にも同じ物が浮かんでいる筈だ。

 

 大教祖イブール……この男と異世界で再会することとなるとは、まさに夢にも、ほんの僅か一寸たりとも思わなかった。

 

 かつて、僕のいた世界で邪教『光の教団』を率いた男。それが彼だ。僕を含む、大勢の人間を奴隷に貶め、酷使し、死に至らせた元凶……いや、元凶はかの大魔王か。しかし、人間界の魔王軍の中では最高位に君臨していた者だ。僕にとっては宿敵と言ってもいい。

 その正体は母の同郷の出身者。エルヘブンでは『イーブ』という名前だったらしい。母の幼馴染で、ライバルで、そして母マーサに恋心を抱いていた……。

 

 しかし、この男がここにいる筈がない。いる訳が無いのだ。

 

 セントべレス山頂上、『光の教団』大神殿の大決戦にて、この男は壮絶な最期を遂げている……。否、僕が殺した。

 それがどうして現世に、それも異世界にいるのだろうか……。

 何かあり得ない事が起きている。

 

 僕とイブールはしばらくお互いを見つめ合っていたが、イブールが先に目を逸らした。その先には治癒不能な傷がパックリとでき瀕死の堕天使エルギオス≒に向けられている。

 その視線に窮地に追い込まれた堕天使が反応する。

 

 

「ガァァァアアアッッ!! メラゾーマ!!」

 

 

 エルギオスが満身の力を込め高位火炎魔法を放つ。古の堕天使の膨大な力が込められた一撃だ。その火力は並の術者が唱えた者とは比較にならない。

 地獄の業火の如き火焔の玉がジリジリと辺り一面を焦がしながら黒衣の男に差し迫る。

 だが……

 

 

「――マホカンタ」

 

 

「――――ッ!?」

 

 

 イブールのあまりにも敏速な魔鏡反射呪文(マホカンタ)によって撥ね返されたメラゾーマが堕天使に向かって行く。

 そして、それは轟音と共にエルギオス≒に直撃した。

 

 

「ギャアアアアアアッッッ!!!」

 

 

 業火に焼かれ絶叫する異形の堕天使。劈くような悲鳴にオカルト研究部の皆は思わず耳を塞いでしまう。

 一方、イブールはそんなことには囚われず次の行動を起こしていた。何と両手に高度な魔法……あれは転移魔法(ルーラ)か? を展開していた。そして、その両の掌を重ね合わせる。

 

 

「右手からルーラ、左手からルーラ……、合体魔法オクルーラ!」

 

 

 

  フッ……!

 

 

 消えた。

 傷つき、瀕死であった堕天使エルギオス≒が目の前から一瞬でいなくなった。

 “合体魔法”……聞いた事がある。異世界の賢王が使ったとされる大魔法。単体でも強力な魔法を組み合わせ発動させる大魔術……。

 この男の実力は自分が一番良く分かっているつもりだった。何せ母を攫った者達の頭目として長年追いかけ、そして自分達の手で倒したのだから。そのときの死闘の際も、イブールの、大教祖として長きにわたるであろう研鑽の粋をたっぷりと味わわされたのだ。

 

 ……更に腕を上げたか……厄介な。

 

 

「イブール、お前に聞きたい事は山ほどある。何故 此処に……この世界にいる? 此処で何をしている……? 答えろ!!」

 

「……答える義務は無い……が、そうだな、此処に来たのはエルギオス≒とザボエラの回収の為だ。

 この世界にいる理由は……自分でも良く分からん。まあ、我が主に御仕えする事はどの世界においても変わらん」

 

「我が主……だと……?」

 

 

 それは――あいつ(大魔王)か、あいつの事か! しかし、かの者もすでに滅びた。それがどうしてこの世界にいる?

 色々と余計に分からなくなった。

 

 此方が困惑していると、黒衣の大教祖はくるりと背を向けた。

 そのままひたひたと歩いて行き、近くに転がっていたザボエラ親子の襟を掴むと、乱暴に担ぎ上げる。

 そして、全身に魔力を纏わせ始めた。ルーラで去るつもりだ。

 

 

「ま、待ちやがれッ!! ドラゴンショットォォォオオオッッッ!!!」

 

 

 このままでは逃げられると思ったのだろう。

 イッセーくんが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)から赤い闘気弾を打ち出した。

 イブールは此方に背を向けていたが、イッセーくんの叫びに振り向き、自身に迫って来る闘気弾を一瞥した。

 

 

  ジュッ……!

 

 

 イッセーくんのドラゴンショットは一瞬で掻き消された。まるで蒸発したかのように。

 

 これは……以前、何処かで……?

 

 その様子を見たイブールはイッセーくんを嘲笑するかのように小さく笑ったが、そのままルーラを発動させ消え去った。

 

 

「…………」

 

 

 辺りを沈黙が支配する。当初の目的であるコカビエルは撃退した。だが、その後に起きたことがあまりにも大き過ぎた。フリードの暗黒闘気、ザムザ・ザボエラ親子、暗黒皇帝ガナサダイ、堕天使エルギオス≒、そして大教祖イブール……。いずれもこの世界にはいるはずの無い異物。明らかなイレギュラーだ。一体、どうしたものか……。

 

 

「ま、まあ、コカビエルはいなくなったんだし、良しとしましょうよ、部長!」

 

「そうね……、そうも言ってられないけど、今は良いわ」

 

 

 無理に明るく振舞おうとするイッセーくんに対し、溜息混じりに答えるリアス。

 彼女の気持ちも分かる。これだけの事があったのだ。色々思うところがあるのだろう。

 取り敢えず彼女の兄サーゼクスに相談すべきだ。これからの対処を考えねばなるまい。

 

 

「そうだね、これからの事はまたじっくりと考えればいい。お兄さんにも相談してみなさい」

 

「お兄様に……そうね」

 

「ああ、彼ら……イブール達は些か君の手には余るだろ……ん? ―――ッ!!」

 

 

 

 

 次の瞬間、結界の上、駒王学園の上空からなかなかに強烈な力を感じた。

 他の皆も感じたらしい。青ざめた表情で結界に覆われた夜空を見上げる。

 

 結構な存在感、以前 会ったサーゼクスくんはコカビエルよりは上……。また、手強そうなのが来たか。今日はもう勘弁して欲しいが……。

 

  カッ!!

 

 

 空から一本の光線が一本、結界を貫通し、真っ直ぐ大地に降り注いできた。

 ソーナ達が懸命に支えてきたであろう結界が音を立てて崩れていく―――。……と言うより、今まで無事だった事の方が凄い。あとで生徒会の皆にお礼を言わねば……。

 

 そんなことを考えていると、白い姿の何かが、空から降ってきて、駒王学園の地に降り立った。

 

 

「………」

 

 

 その男の姿をじっくりと観察してみる。全身を纏うのは目が眩むような白の全身鎧(プレートアーマー)

 所々に光輝く宝石があしらわれている。それも、ただの宝石ではなく、かなりの魔力を内包しているのがひしひしと感じ取ることができる。

 そして背には八枚の光の羽根。鎧の力の大本はそれらしく、神々しいオーラのような物を纏っている気がする。

 その姿は、何処か……何処か(ドラゴン)を思わせた。鎧の形状に似通っている特徴が見受けられる。

 

 

「……『白い龍(バニシング・ドラゴン)』!!」

 

 

 リアスが叫んだ。

 ふーむ……。またもや知らない名前だ。彼女が知っているという事はこの世界の存在……しかも、彼女の驚きようから察するに、この世界ではかなりの大物ということだろうか。

 次から次へと……、僕もちょっと疲れてしまった。今日は厄日だ。

 まずは彼について尋ねてみることとしよう。全てはそこからだ。

 

 

「あー……、こんばんわ。初めまして。僕はリュカと言います。ただの旅人さ。いきなりで失礼だが……『白い龍』ってなんだい? 誰か教えてくれないかな?」

 

 

 敵意を抱かせないように笑顔を浮かべ、出来るだけ好意的に聞いてみる。

 すると彼ではなく、後ろのリアスが慌てて前に出てきた。

 

 

「もうっ! リュカさんってば、こんなときまで……、いい? 『白い龍(バニシング・ドラゴン)』ってのはね―――」

 

 

 リアスが僕に説明をしてくれた。彼女の話をまとめるとこうだ。

 

 神と天使、堕天使、悪魔、この三者が戦争をしていた頃の話―――― このとき、妖精、精霊、西洋の魔物、東洋の妖怪、人間……様々な勢力がそれぞれの勢力に力を貸した。しかし、一種だけどの勢力にも与しなかった種族が存在した。ドラゴンだ。

 

 彼らはいずれも力の塊で、自由気ままで我儘だった。中には悪魔になったり、神に味方したりした者もいたが、大半は戦争など知らんぷりして好き勝手に生きていた。

 ところが、三大勢力が戦争をしている最中、大喧嘩を始めた豪胆な二頭のドラゴンがいた。それが赤龍帝ドライグと白龍皇アルビオンだ。

 その二頭はこの世界に存在するドラゴンの中でも最強クラスで、なんと神や魔王に匹敵する程の力を持っていた。その二匹のドラゴンは戦争なんて知るものかと、天使・神、悪魔、堕天使の三陣営を一切問わず、片っ端からぶっ飛ばしつつ二匹だけの決闘をし始めたのだ。

 三者にとってこれ程 邪魔な存在も無かった。何故なら真剣にこの世界の覇権を廻り戦っていたというのに、そんなものはお構いなしに戦場を乱しに乱したからだ。

 一方、それ程の大喧嘩をしているにも関わらず、その二頭は戦いの方に熱中してしまい、喧嘩を始めた理由などすぐに忘れてしまったようだが……。

 そのことが三大勢力の怒りに火を注いでしまった。「このままでは戦争どころではない。先に協力してこのドラゴン達を倒そう!」と、今まで相容れることのなかった三者を協力させる事態にまでなった。

 そのことが二匹の(ドラゴン)の逆鱗に触れたようだが……、そりゃ完全に逆切れだろうに……。

 

 結局、二匹は三大勢力の手によって幾重にも切り刻まれ、その魂を神器(セイクリッド・ギア)に封じ込まれた。二頭は人間を媒介にして、お互い何度も出会い、何度も戦いをするようになってしまった。

 毎回、どちらかが勝ち、どちらかが死ぬ。偶に片方が早死にしで出会わない事もあるが大抵は出会う。

 それを幾百幾千年も繰り返してきた――――。

 

 

 何ともスケールの大きい話だ……。ハッキリ言って大き過ぎてついていけない。

 強引に僕の世界に当て嵌めるのであれば『マスタードラゴンとミルドラースが真剣に争っているのに無理矢理 割って入って、勝手に喧嘩を始める』ようなモノだ。

 そんなことができる奴はまずいない……。いや、いることはいる。地獄の帝王エスタークだ。かの帝王であれば――――

 

 

『我が名はマスタードラゴン!天より世界の全てを見通す竜の神なり!!』

 

『私が魔界の王にして 王の中の王 ミルドラース! 気が遠くなる程の時をかけ、今や私の存在は神をも超えた!!』

 

『グゴゴゴ……そんなことはどうでもいい。昼寝の邪魔だ。グゴゴゴ……』

 

『『!?!?!?』』

 

 

 う~~ん……考えてみたがなかなかシュールな光景だ。

 それよりも、真剣にマスタードラゴンが戦うというのを想像できない。

 

 

「それで、その白龍皇がどうしてここへ?」

 

 

 僕が改めて白銀の全身鎧に身を包む男に声をかける。すると、彼は話し始めた。

 

 

「堕天使総督アザゼルの依頼でね。コカビエルとフリード、バルパーを回収に来た。それで彼らは何処にいる?」

 

「ああ、バルパーは死んだ。フリードくんはそこで倒れている。コカビエルは……先客がいてね。そいつに連れて行かれた」

 

「先客だと?」

 

 

 白龍皇が訝しげな声で尋ねてくる。だが、そんなことはお構いなしにリアスが食って掛かってる。

 

 

「アザゼルですって? 一体どういう事!?」

 

「ん? ああ、そうだな……今回の一件は堕天使の総意ではない。俺は彼に事態の収拾も頼まれていた」

 

「なら、もっと早くに来なさいよ! こっちは大変だったのよ!!」

 

 

 激昂する紅髪の少女。うん、怒るのも当然だ。彼女がどれ程の心労を心に受けたか……。ことは彼女自身とその眷属達に留まらず悪魔陣営全体に関わる問題だったのだ。

 それに対し、白龍皇は戸惑いながら釈明する。

 

 

「俺ももっと早くに来たかったのだが……。

 街の上空になかなかの強者が居てな、灼熱の炎を吐き出す黄金の巨竜と三つ又の矛を持つ牛のような顔に紫色のブツブツした身体の悪魔の二人組だった……。

 良い勝負だったが時間が無い事を思い出して、何とか出し抜いたのだ」

 

 

 そう言う彼の声は疲労の色を帯びていた。その身に纏う竜の鎧も所々焼け焦げている。

 

 それってアクデンとシーザーじゃ……、そう思ったが今は黙っておこう。

 

 

「ともかくフリードは此方で処罰する。ではな……」

 

 

 そう言うと、彼は倒れているはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)を担ぎ上げると、そのまま空に飛び立とうとする。

 だが、イッセーくんの腕に装備されている赤龍帝の籠手の宝玉が光り出し、そこから声が響いて来た。

 

 

『無視か、白いの』

 

 

 それに応えるかのように白龍皇の鎧の宝玉からも声がした。

 

 

『起きていたか、赤いの』

 

 

 どうやらドライグとアルビオン、二人で会話しているようだ。その声色からは憎しみのような物は感じられない。まるで旧友とでも再会したかのような感じだ。だが、どこか闘志のような物が滲み出ている、そんな声だ。

 

 

『折角 出会ったのにこの状況では……な』

 

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』

 

『しかし、白いの。以前のように敵意が伝わってこないが?』

 

『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』

 

『お互い、戦い以外の興味対象があるということか』

 

 

 興味の対象……。それは御互いの宿主だろう。確かにおっぱいの為に命を懸けるイッセーくんような存在は珍しい……。

 僕はそう思ったがオカルト研究部の皆の視線は僕に集中していた。何故だろう?

 

 

『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。偶には悪くないだろう……? また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

 

 宝玉の輝きが消えた。二頭の会話が終わったようだ。 

 白龍皇は今度こそ立ち去ろうと背を向ける。しかし、何かを思い至ったのか此方に振り向いた。

 

 

「ではな、強くなれよ、俺の宿敵くん……。それと、そっちの……リュカと言ったか、あんたともいずれ戦ってみたいものだ」

 

 

 そう言い終えると、今夜 最後の来訪者も去っていった。

 

 漸く、僕とオカルト研究部の皆にとって長い一日が終わった…………。

 

 

 

「ああ、リュカさん、貴方にも手伝ってもらうわよ。―――コレ」

 

 

 リアスが何かを指さす。それは駒王学園の校舎……だったものだ。

 辺り一面、クレーターだの瓦礫だのが散見している。明日は平日。朝までに校舎を何とかしなくてはならないようだ。

 

 

「はは……、頑張るよ」

 

 

 どうやら、長い一日はもう少し続きそうだ。

 

 

 

 

 




オクルーラ:漫画「ロトの紋章」に登場するルーラ同士を組み合わせた合体呪文。対象の人物を使用者の指定した場所に送り届ける。

合体魔法:漫画「ロトの紋章」に登場する魔法。左右の手から2つの呪文を同時に繰り出し合体させた、強力な魔法を発動させる。その効力は二つの魔法の特性を兼ね備えたものや、同じ呪文の効力を倍加させたものなど様々。


低評価を下さる方の共通する評価理由に「戦闘シーンの地の文が少ない」というのがあります。3巻は1巻、2巻に比べ結構増やしたつもりですが……。いかがだったでしょうか……?

できればでいいですので感想、御意見、お待ちしております<m(_ _)m>

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