長かった、本当に長かった!!
……それはそうと、まだ三巻なのに最終話のタイトルのネタが無くなりかけている。
〇〇な仲間たちってそんなにパターンがないんですね。
堕天使コカビエル襲撃事件から数日がたった。
僕は自宅アパートでのんびりと過ごしている。
結局の所 僕は部外者であるわけだし、この街の管理はリアスの仕事だ。
しかし、あれからも一悶着あった。まずは駒王学園の修理だ。あの夜はほとんど徹夜での作業だった。僕達の手だけでは足りず、街の警備に当たらせていたギーガ達も動員して、なんとか間に合わせた。
そのあともいくつかの騒動が起きる。
まずはゼノヴィアが教会から追い出された。何でも神の不在を知られた以上、いられては不都合らしい。
そのようなことで信者の切り捨てを行うとは……。教会側にも何か理由があるのかもしれないが、けして気持ちの良いモノじゃない。
いくつもの世界を渡ってきたから解ることだが、一概に神と言ってもいくつかのパターンがある。人間に対し好意的で、積極的に守護してくれる者。そして、守護も一応してくれるがどちらかというと厳格な裁定者としての側面が強い者の二種類だ。僕の世界の神であるマスタードラゴンもどちらかというと後者だろう。何でも伝説では先代「天空の勇者」の父親を殺したとも云われている。
この世界の神はすでに死んだそうだが、その神もまた後者なのだろう。
そして後継者たるミカエルとやらもその精神を引き継いでいる……。
まあ、それはともかくゼノヴィアの事だが……追放された事も驚いたが、もっと驚いたのはリアスの眷属になったことだ。
彼女曰く「神がすでに死んで、居なくなった以上、私の人生は破綻した」そうだ。
それにしても極端から極端へ走り過ぎだろう。僕が彼女と似た状況に置かれたとしても……そう、仮にマスタードラゴンが死んだとしても、悪魔になろうとは思わない。
良く分からないが、恐らくそういう性格なのだろう。何でもキバくんとアーシアとも和解したらしい。
後々しこりになるのではないかと心配していたが、そうはならず安心した。根は素直で良い子なのだろう。
それでこっちはと言えば―――
「手が痛~~い、ねえ、お兄さま、アーンして♡」
「ちょっと、ミッテルト! 何、御主人様に甘えてんのよ!
リュカ~~、こっちにもちょうだい♡」
「……ハハ……、はいはい」
今、僕はレイナーレ、カラワーナ、ミッテルトの看病をしている。三人ともエルギオス≒の一撃を受けた。その攻撃には膨大な暗黒闘気が篭められていたのだ。暗黒闘気は回復魔法を阻害する作用がある。
そこで、アーシアに協力してもらい治療はしたが……三人とも、まだ本調子ではないようだ。
傷は完全に癒えている筈だが……。
「フッフッフ……。何と脆弱な堕天使共だ。ッゴッホゴホゴホッ…!!
魔界のエリートたる私はこの通り、完全に元どお………ブェェエエックションッ!!!」
こっちの様子を見ていたライオウが何やら尊大な態度で話しかけてきたかと思ったら盛大に咳込み、くしゃみした。
……どうやら風邪を引いたらしい。
彼の言う通り、身体的ダメージは快癒したがエルギオス≒の『絶対零度』で体を冷やしてしまったようだ。
呪文耐性と風邪への免疫は別モノということか……。
どう見てもライオウの方が看病を必要としていると思うんだが……。
「寝てなくていいのかい?」
「何を言うか、我が主! これくらい何て事は……エックションッッ!!」
まあ、いいか……。
ライオウ達は本当に良くやってくれた。他の皆もだ。おかげで学園の外では全く被害が出ていない。
相当な数のゾンビモンスターが街中を徘徊していたにも関わらずだ。
……あれ?
そういえば何体かの姿が見当たらない。
ここ最近そうだ。あれ以来、偶に何匹かいなくなるんだが……。
「……オークス達、一体何処に行ったんだ……?」
◇
街中の高級マンションの一室
「イエェェ~~~~イッ♪
一番、ホークマンのホー、アゲアゲダンス踊りまーーす!!」
「いいぞ、やれやれ!」
品のある高級な調度品に溢れた室内は濃密な酒気に満ちている。現在、部屋の中では三体の魔物と一人の男が酒盛りをしていた。
三体の魔物とは猪頭のオークス、鳥人ホークマン、赤肌のサーラである。
「ガッハッハッ!! いや~、悪いですな、アザゼル殿。こうも毎日、酒宴に招いてもらって」
「ハハハハハッ! 気にする事はねぇよ。こっちも暇だったんだ。良い相手が出来て良かったぜ」
オークスが豪快に酒を呷りながら礼を言い、浴衣姿のアザゼルが笑いながら断る。
「それにしてもこの世界の酒は旨い! 以前、主に少しだけ飲ませてもらったルラフェンの地酒にも勝るとも劣らぬわい。ガッハッハッ!!」
「ルラフェンの地酒? そいつはお前さんの世界の酒かい?」
「おう、『人生のオマケ』という銘柄だ。“これを飲んでいる時以外の人生はオマケに思える”というのが名前の由来らしいぞ!」
「へぇ~~、そいつは飲んでみたいね」
アザゼルとオークスが酒を飲みながら雑談を交わし、ホーくんがリズムに乗りながら軽快に踊る。その脇でサーラが楽しげに手拍子を打っている。
そこに一人の男が入ってきた。若々しい装いの鋭い目つきの銀髪の美青年である。
「おう、ヴァ―リ! お前も飲め!」
「……アザゼル」
部屋の惨状を見回してヴァ―リと呼ばれた青年が呆れた顔をする。
それもそうだろう。部屋中に日本酒、ワイン、ウイスキーなど種類を問わず飲み散らかされた空き瓶があちこちに転がり、ついさっき遊ばれたのであろうゲーム機とゲームソフトがいくつも散乱していた。
「少しは片づけろ、アザゼル」
「……分かった分かった。ところでお前は今までどこに行ってたんだ?」
苦言を呈する銀髪の美青年に、ごまかすように受け答えする堕天使の男。
その問いに顔をしかめつつもヴァ―リが答える。
「あの夜に遭遇した黄金のドラゴンと牛頭の悪魔を探している」
「あ~、お前と互角に戦ったとかいう奴か? そんなのが街中をうろついてるもんかねぇ?」
「黄金のドラゴンと牛頭の悪魔? シーザーとアクデンのことか?」
「……って知り合いかよ!!」
アザゼルとヴァ―リの会話にオークスが大声で割って入り、それにアザゼルが盛大にツッコんだ。
「おう、儂と同じ勇者の父親にして伝説の魔物使いたるリュカに仕える者だ!」
「……へぇ~、ところでさ――――」
アザゼルの瞳がいたずらっぽくキラリと光った。
「今度、この世界の天使と堕天使と悪魔で会談をするんだが、お前達の主にも来てくれって伝えてくれねえか?」
◇
冥界の廃屋――― そこは悪魔・堕天使両陣営はおろか魔獣でさえも立ち入ることのない荒れ地にあった。
その屋敷の一室に巨大な水槽が設置されている。その水槽の前に二人の男がいた。
一人は小柄な魔族の老人、ザボエラだ。
その顔は緊張に引き攣っている。理由は目の前にある水槽の中身だ。
それを見つめる、もう一人の長身の男が言葉を発した。
「ほっほっほっ。……肉体の損傷個所は数十、超魔生物としての回復力の限界を超え、復元は絶望的……ですか。
前回の作戦で鮮度の良い不死鳥の涙を態々入手させ、地獄を通じ異世界からオリジナルの暗黒皇帝ガナサダイの死体を取り寄せ、それを蘇生させて……ね」
「…………」
そう、水槽の中にいるのは、痛々しく傷付いた姿でプカプカと漂うエルギオス≒だ。
水槽の中に満ちているのはただの水ではなく蘇生液と呼ばれる薬品。
だが治癒は遅々として進んでいない。ただ漂っているだけだ。
「邪配合完了次第、さっさと制御下に置き撤収する手筈だったと思いますが……これはどういうことでしょうか?」
「そのことですがのう、ワシの作戦には不備は無かったのですじゃ……。
あの男から受け取った『魔砲珠』が欠陥品だったのですわ」
ザボエラの打った手は責任転嫁だ。確かに制御用に用意した『魔砲珠』は全く機能しなかった。
しかし、その言葉に対するローブの男の反応は芳しいものではなかった。
「……? 何を言っているのですか? 『魔砲珠』が未完成である事は御存じであったと思いますが」
「……へ?」
ローブの男の返答は予想外だったのだろう。ザボエラが間の抜けた声を上げる。
「あの方から貴殿に伝言があったかと思いますよ。机の上に書き置きがあったでしょう。
……ぬん!」
男の手から紫色の瘴気が溢れだす。そこから何も無いはずの空間に一枚の紙切れが出現した。
その紙にはザボエラも見覚えがある。確かに自分の机に置いてあった物だ。
ローブの男がその手紙を老人に手渡しする。そこには送り主の知性を象徴するかのような流麗な筆致で長々とした文章が書かれている。
……だが、内容は九割以上がどうでも良い雑談だ。そう九割は―――
親愛なるザボエラくんへ
にゃはははは! やあ、最近 調子はどうだい? 僕はバッチり元気さ!
それにしてもこの世界は面白いね!
特に神器の中でも『
なんたって僕の大好きなモンスターが創り放題らしいじゃないか! それの持ち主はまだ見つかってないそうだけど早く会えないかなあ?
出来れば、その神器は譲って欲しいんだけど無理かなあ。
それに『悪魔の駒』を作った、え~っと、何て言ったっけ? ア何とか・ベルゼブブくんにも会ってみたいよ。
この世界の技術はホント~に興味深いからね。
ああ、それはそうと、あのね…………僕のお気に入りのブラックドラゴンのブラっちーがね………………………、
でね…………が………………………可愛くてね…………たまらん………くう………………。
…………更に…………もう………凄過ぎ……………で……………………。
そう思うか…………どうして………………好き…………………はー!
…………………抱きしめて…………寝るときも………………でしょ………………………………。
素晴し…………! ……美し……………………………。
……ありゃ! もうこんな文量か! ちょっと書き過ぎちゃったね。
そんじゃ、よろしく頼むよ~。
Kより
P.S. ああ、そうそう制御用の新型魔砲珠なんだけど、未完成だから気をつけてねん。
「……えっ、えっ、えーーーーーーッッ!! い、いや、これは違うんじゃッ!!!」
改めて書き置きの内容に目を通したザボエラは吃驚した。作戦の遂行で忙しかったせいで追伸の部分は読んでいなかったからだ。……というより、ザボエラにとってほとんどが下らない戯言であった為に最初の三行で読む気が失せてしまった。
失態を犯し罰せられるのではないかという焦燥感と「なんで一番大事なことを最後に、それも追伸の部分に書くんだ!」という怒りが同時に、強烈に込み上げてくる。
目の前にいる男のフードの奥にある黄色い
非情さと残酷さにおいては自分を一回り、いや二回りは上回るだろう。
汗が噴き出す。この窮地から逃れるために『悪魔の頭脳』と称された悪知恵をフル回転させる……が、何も打開策が思い浮かばない。
男の手に握られる大鎌が自分の首を刎ねるビジョンがハッキリと目に浮かぶ。
往生際の悪さにおいては傑出した才能を持つ彼も これはもうダメだ、そう思いかけた―――
だが、ローブの男の視線はザボエラから不意に外れた。
「ほっほっほっ……まあ、いいでしょう」
そう言うと蘇生液にエルギオス≒が浮かぶ水槽の表面を、まるで蜘蛛のような長い指で撫でながら囁くように話し始めた。
「我々が必要とするのはエルギオス≒の“強さ”ではありません。彼がいた世界の“天の
“天の
三人の堕天使の女が吶喊していくも、エルギオスの一睨みで、まるで金縛りにあったかのように動けなくなり、為す術もなく叩きのめされる姿………。
「……かつてオリジナルの堕天使エルギオスがいた世界。その世界にはとある
それは『天使・堕天使は実際の実力の如何に関わらず位階が上の者に逆らう事が出来ない』というものです」
位階、それは産まれ持った天使としての位。その掟は厳格で、例え戦闘力が高くても位階が低ければ適用されてしまう。
本物のエルギオスの野望を阻んだ勇者は元天使であったが、天使としては位階が低かった為に“天の理”からは逃れられず、一度は戦うことも出来ず退けられてしまう。そこで彼は自ら天使である事を捨て人間となりエルギオスを倒したのだ。
「別にただのエルギオス≒を造るだけであれば態々このような面倒なことはしませんでした。
何故こうしたのかと言えば、この世界の堕天使であるコカビエルの“因子”が必要だったからです」
この言葉を聞いた瞬間、ザボエラの脳裏に電流が走った。
ずっと疑問には思っていたのだ。ただの『堕天使エルギオス≒』を造る為であればコカビエルを使う必要などない。他に材料となり得る者を他から調達すれば良い。それは暗黒皇帝ガナサダイにしてもそうだ。オリジナルを蘇らせて使うなど面倒以外の何物でもなかった。
何故、悪魔・堕天使陣営を敵に回す危険を冒してまでコカビエルの使用に固執したのか?
それが今になって漸く、この男が何をしようとしていたのか理解したからだ。
「この世界において高位の堕天使であるコカビエルの因子を取り込ませれば、この世界の天使、堕天使にも“天の理”が適用されます。
コカビエルよりも高位の者などそう多くはありません。精々天使陣営では天使長ミカエルを始めとするセラフの面々。堕天使陣営であれば『
我々は戦わずに天使、堕天使陣営を制圧することが可能でした」
男の話に妖魔司教は戦慄した。正に深謀遠慮、狡猾で恐ろしい計画だった。
この世界の三大勢力のうち二角が、全く無警戒の内に落ちかけていたのだ。
オリジナルガナサダイを使ったのもそのためだろう。かの皇帝は一度死んだあと、エルギオスの手で蘇生し怪物となった。つまり、その死体にはオリジナルエルギオスの力の残梓が残っているということだ。
それを用いることで“天の理”を再現しようとした……。
となると残るは悪魔陣営だけである。それも大したものではないであろう。人間に頼らねば存続すら危うい者達が一体どれ程のモノか。天使・堕天使陣営を掌握すれば赤子の手を捻るが如く、簡単に征服できたに違いあるまい。
真に恐ろしいのは、此処まで三大勢力にほとんど警戒されず進めてきたということだ。
冥界の僻地に雌伏し謀略を巡らせ続けているが、天界首脳部、『神の子を見張る者』、四大魔王、いずれも自分達の実態に迫った者がいない。どの場合も巧妙に疑いの目を逸らし、隠しおおせている。
最近になりやや失敗が重なってきたが、それでも問題は生じていない。
スーパーキラーマシンは『神の子を見張る者』、古の魔人は旧魔王勢力、今回の一件は近年になり目立ち始めた例のテロ集団……と、それぞれの陣営に偽りの情報を流し、別の者を容疑者に仕立て上げることで目を眩ませているからだ。
「ほっほっほっ……、それでも、一応はエルギオス≒を回収できました。
ザボエラ殿、貴方はこれから“天の理”だけでも抜き取ってください。それさえ確保できればあとは不要です。
貴方の超魔生物の技術を応用すれば可能ですね?」
エルギオス≒の天の理以外は不要と言い捨てるローブの男。この堕天使は……少なくともこれのオリジナルは神殺しの怪物だ。模造品とはいえそれ程の大戦力なのだが、それすらも必要ないとは……。
どれ程優れた者であっても目的を為す為にいらないと見ればさっさと見切りを付ける、正しい判断ではあろう。
確かに超魔生物の技術の真髄とは『複数の生物から長所のみを取り出し繋ぎ合せる』ことにある。
この堕天使から天の理だけを抽出するのもおそらく不可能ではない筈だ。
「分かりました。勿論できますじゃ。キッヒッヒッヒッ……」
おもねるような口調で承知する老魔族。その冷や汗をかく皺くちゃの顔から警戒の色は消えない。
何故なら長身の悪魔の言外の意図を察したからだ。
“これが最後だ。次は無い”
この挽回の機会をふいにすれば自分は必ず処断される―――
そうならない為には何としてでも成功させねばなるまい。
一方、ザボエラの覚悟など気にも留めず、長身の男は思案の表情を浮かべていた。
そして、しばらくすると独り言のように静かに、それでいて残忍な喜びが篭った声色で呟く。
「……それにしても あの彼が………ほっほっほっ、これはまた―――
楽しめそうですねぇ、ほっほっほっ……!」
男達が陰惨な策謀を張り巡らせている廃屋の、更にその地下室。大量の本棚が所狭しと並べられた書斎のような雰囲気の一室。
そこに一人の初老の男性が立っていた。品の良い学者のような服装、アシンメトリーに整えられた紺色の髪。
丸眼鏡をかけた顔立ちは実に知性に溢れている。まるで皺の一本一本に蓄積してきた知識が宿っているような、そんな雰囲気を漂わせていた。
だが――――
「にゃはっ♪」
老人の口から出てきたのは、その知的な佇まいからは懸け離れた印象のおどけた、そして若干ではあるが、どこか狂気を含んだ笑い声であった。
「にゃははははははははっ!!!
いや~~~、この世界は本当に面白いねえ。
『
そして『
この世界には興味深いモノがあり過ぎて困っちゃうよ。
でも、これだけあれば創れるかもしれない………」
―――― モンスターの
アゲアゲダンス:DQⅨに登場する敵専用の特技。味方のテンションを“アゲ”る踊り。このダンスでテンションアップした敵からダメージを受けるとかなり危険。
一応、色々と伏線を引いてあって、それを結構回収しました。
まとめてみると……
謎の男達の目的
天の理(DQ9)を使って天使・堕天使陣営を戦わずに征服。
その為、2巻でレーティングゲームを襲撃し新鮮な不死鳥の涙を入手。
更に、取り寄せたオリジナルのガナサダイの死体を蘇生させる(27話)。
コカビエルを捕らえて“この世界の高位の堕天使”として邪配合に使う。
……って感じです。
御意見・御感想 お願いします<m(_ _)m>
それと新しく出てきた某会長のイニシャルってKでいいですよね? Cかもしれないし……、判らん(~_~;)
6/10追記
活動報告にて「シーザーとアクデンがヴァ―リと互角というのはどうか」という貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございます。
一応、釈明をさせていただきますとヴァ―リは覇龍を使っておりません。その上での互角です。