時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

49 / 58
やっと4巻です。ここまでお読みいただいた読者の皆様、本当にありがとうございます。
これからもどうか「時を失った英雄 in ハイスクールD×D」をよろしくお願いします。






停止教室のヴァンパイア
48話 ゼノヴィアとタマゴ


 

 夏―――

 

 抜けるような青い空、入道雲、燦々と降り注ぐ太陽の暖かな光。

 この世界は僕のいた世界に比べ文明が発達しているが、それでも自然が沢山ある。木々が、草が陽の光を一身に浴び、すくすくと育ち、様々な場所で生命に溢れている。

 

 そんな季節の昼下がり。僕は屋外、水の張っていないプールの中にいる。

 デッキブラシを握り、丁寧に床を擦っていく。地道な作業だ。だけど、嫌いじゃない。

 

 

「ふう……」

 

 

 炎天下での仕事だ。激しく動いていなくても、じんわりと汗をかく。

 だが、そんなときの微かな風が実に心地よい。とっても爽やかだ。

 

 そこに体操着姿のバイサーがやって来て、僕に声をかける。

 

 

「御主人様ー、終わりましたか? お茶が入りましたよー」

 

「ああ、だいたい終わった。今、行くよ」

 

 

 僕の返事を聞いた周りにいる者達も顔を上げた。紅髪の少女が自分の眷属悪魔達にむかって呼びかける。

 

 

「ええ、そうね。皆も休憩にしましょう?」

 

「分かりました、部長!」

 

 

 僕達は今、駒王学園のプールの清掃をしている。

 何でも、一年おきの大掃除だそうだ。それだけに大変に汚れていたが、全員で頑張ったおかげか、何とかきれいになってきた。

 しかし、一人、不満げな表情な者がいる。黒髪の堕天使の少女……レイナーレだ。

 

 

「……にしても、どうして私達が手伝わなくちゃいけないのよ、リアス・グレモリー」

 

「あーら、貴方達の御主人様は快く了解してくれたじゃない」

 

「…………チッ」

 

 

 レイナーレの渋い顔を見ると心苦しいが……。

 別にいいだろう。プールの清掃を手伝えば僕達も泳がせてくれると言ってたし、彼女も納得してくれるはずだ。

 

 

 

 それからしばらくして―――

 

 

「さぁ! 思う存分泳ぎましょう。……イッセー! リュカさん!」

 

「ハイッ!」

 

 

 大変だったプールの掃除がようやく終わった。綺麗になったプールにヒメジマが魔力で水を並々と張る。

 僕の仲間の魔物達……と言っても限られたスペースであるため、あまり大型の魔物は連れてこれなかったが、彼らもとても嬉しそうだ。僕達の世界では珍しい人工物に目をらんらんと輝かせている。

 

 一方、リアスは着用している水着をイッセーくんに披露していた。

 

 

「私の水着、どうかしら?」

 

「最高ですッ!この上なくッ!!」

 

「うん、僕も似合うと思うよ。守備力が低そうだけど」

 

 

 イッセーくんが鼻の下を伸ばし、興奮した様子で答えた。

 確かに、彼女の容姿は大変優れている。同じ年代の少女と比べスタイルが抜群に良い。家臣のピピンだったらイッセーくんと同じく熱狂するだろう。

 そんな彼女が着ているのだ。とっても良く似合う。白いビキニは彼女の紅髪に良く映える。

 ただ、まあ防御面では脆弱極まりないが……。

 

 

「イッセーさ~ん! 私も着替えてきました~♪」

 

「おお! アーシア可愛いぞ~! お兄さんご機嫌だ~!」

 

「うん、僕も似合うと思うよ。守備力が低そうだけど」

 

 

 アーシアが来ているのは確か“スクール水着”というものだ。これもまた実に愛らしい。シンプルなデザインだがそれが却って彼女らしいとも言える。

 ……とは言えこれも防御力が低そうだ。先程のリアスの水着よりは布の面積が大きいが、それでも「あぶない水着」と「布の服」程の違いもないだろう。

 

 

「ふふっ♪ 小猫ちゃんも正にマスコットって感じで、愛くるしさ全開だな!」

 

「…………卑猥な目付きで見られないのは、それはそれって感じで、ちょっと複雑です……」

 

「うん、僕も似合うと思うよ。守備力が低そうだけど」

 

 

「「「…………」」」

 

「……あれ? 皆、どうしたんだい?」

 

 

 先程から雰囲気が悪い。どうもオカルト研究部女子の皆から敵意のようなモノを感じる。

 

 

「さっきから一体何なの? 守備力守備力って……」

 

 

 ……え。

 

 

「守備力が低くそうだな~って思ったんだけど……」

 

「リュカさん……。あのね、他の世界じゃどうか知らないけど、この世界では水着に守備力なんか求めないわ。そもそも守備力が高い水着ってなによ!?」

 

「ああ、それなら―――」

 

「おまたせ~~、御主人様♡」

 

 

 そこにバイサー、レイナーレ、カラワーナ、ミッテルト、イシュダル、クモりん、スラ太郎、触手丸、ディーネがやってきた。全員、紐無し・ベアトップタイプのビキニを着ている。リアスの水着にも勝るとも劣らない過激なデザインだ。

 イッセーくんが盛大に歓声を上げる。

 

 

「おおお~~ッ!!」

 

「……あれが“守備力の高い水着”? そうは思えないんだけど……」

 

 

 リアス達オカルト研究部女子が厳しい目を向けた。所謂ジト目というやつだ。

 それならば、と思って、先にプールでパチャパチャと遊んでいた小さなドラゴンに声をかける。

 

 

「コドラン、頼めるかい?」

 

「キュ~~? キューー!」

 

 

 小さな竜族のドラゴンキッズ・コドランがバイサー達に向かって行き―――

 

 火炎の息 を はいた!

 

 

「わ~~っ! 何をするんスか!!…………って全然熱くないッス」

 

 

 ミッテルトが驚き声を上げたが、自分の体を確認してみても火傷の一つもない。

 それもそうだ。

 

 

「彼女達に着せているのは『きわどい水着』。炎・雷に対して強い耐性があって、ちょっとした鎧並に守備力があるんだ」

 

「へ~~……」

 

 

 僕の説明を聞いた紅髪の少女はほとほと呆れ果てたという顔をしたが、気を取り直したのだろう。輝くような明るい笑顔で宣言した。

 

 

「まあ、いいわ。リュカさんも今まで色々御世話になったしね。

 皆! 思いっ切り泳ぐわよ!」

 

「「「お~~ッ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

「気持ちいいね。コドラン」

 

「キュー」

 

 

 僕は連れてきた魔物達と一緒にプールで泳いでいる。

 全員、実に楽しそうだ。今日、呼んでくれたリアスには本当に感謝してもしきれない。

 

 他の皆はといえば、キバくんはクロールでプールを何度も往復している。なかなか上手だ。

 トウジョウは泳ぎが下手らしく僕の仲間の中で最高のスイマー……ネーレウスのネレウスに特訓を付けてもらっている。

 

 

「そうではない! 腕の角度はこう! 水を掻くように進むんじゃ!!」

 

「……にゃあ」

 

 普段の落ち着いた彼からは想像できないほどの大声での叱咤激励だ。

 猛烈なスピードでネレウスがプールを往復している。キバくんの1.5倍から2倍のスピードだ。全然、トウジョウが着いていけてない。

 元が海暮らしだからな……。巻貝を被った皺くちゃの老人が水中で高速移動する様はどことなくシュールだ。

 

 

 

 

 ―――そのときプールサイドから轟音がした。

 

 

 何が起こったのだろうか?

 様子を窺うと、リアスとヒメジマが胸をはだけさせて、何やら争っている。

 それも、だだのじゃれ合いではない。互いに魔力まで用い、折角、綺麗にしたプールを破壊している。

 

 雷と滅びの魔力が激突し、凄まじい爆音が鳴り響く。

 そして、その音に負けないぐらいの大声で、リアスとヒメジマが罵り合っていた。 

 

 

「イッセーはあげないわ。―――卑しい雷の巫女さん」

 

「可愛がるぐらいいいじゃないの。―――紅髪の処女姫様」

 

「あなただって処女じゃないの!」

 

「あら、そんなこと言うなら今すぐイッセーくんに処女を奪ってもらうわ」

 

「ダメよ! イッセーは私の処女がいいと言ったの!!」

 

「だいたい、朱乃は男が嫌いだったはずでしょう! どうしてよりによってイッセーにだけ興味を注ぐのよ!!」

 

「そういうリアスも男なんて興味ない、全部一緒に見えるなんて言ってたわ!」

 

「イッセーは特別なの! 可愛いのよ!!」

 

「私だってイッセーくんは可愛いわよ! やっとそう思える男の子に出会えたのだから、ちょっとくらいイッセーくんを通じて男を知ってもいいじゃないの!!」

 

 

 

 

 ――何と言うか……。喧嘩の激しさも然る事ながら口論の内容も酷い。

 まあ、二人とも本当に互いが憎くてやり合っている訳ではなさそうだ。僕の周りで言えば、バイサーとカラワーナが喧嘩するようなものだろう。

 

 ……とは言え、そろそろ止めた方がいい。

 プールから上がって二人に近づく。そして―――

 

 

 

「Aaaaaaaaaaaaaaaaahhh!!!」

 

 

 僕 は おたけびを あげた!

リアス は すくみあがった! ヒメジマ は すくみあがった!

 

 

 やはり、暴力は良くない。

 一時的に怯んで動きが止まった二人を落ち着けるべく、出来得る限りゆったりとした口調で話しかけた。

 

 

「…………二人とも、水練は真面目にやった方が良い」

 

「リュ、リュカさん……?」

 

 

 彼女らの実に楽しそうな振る舞いに水を差すのはかなり気が引けたが、そうであっても言うべきだろう。

 

 

「僕の経験則なんだけどね。

 ほら、以前に奴隷だったことがあるって話しただろう? そこから逃げ出すのに三人まとめて樽に詰められて海に放り出されたって」

 

 

 僕の言葉を聞いたオカルト研究部の皆の表情が引き攣った。僕の体験談は彼らにとっては些か重い……いや、重過ぎる話だという事は重々承知しているが、それでも話すべきだろう。

 

 

「想像してごらん。真っ暗な樽の中に鮨詰め状態で数日間だ。それも大海原のド真ん中で……。

 元々あの樽は死体を流す為の物だ。生きた人間を流せるようには出来ていない」

 

 

 そう、そうなのだ。死者と違い生きている人間は食事も、排泄も、呼吸もする。狭い樽の中ではそれも一苦労だった。それに―――

 

 

「更に僕らの世界には大型の魔物が海に居てね、“しんかいりゅう”とか“グロンデプス”っていうんだけど……。こっちの世界で言えば……そう、大昔の首長竜みたいな感じの奴かな。

 樽の中じゃ、そいつらに襲われたら一巻の終わりだ。なんせ身動きが取れないからね」

 

 

 リアスもヒメジマもより一層蒼褪める。

 どうにも肝を冷やさせ過ぎたようだ。そろそろ勘弁してあげるとしようか。

 

 

「君達は実に幸運だ。何と言っても学校に水練場がある! いくらでも練習し放題だ。しんかいりゅうに襲われても泳いで逃げられるようになるまで特訓すればいいんだからね」

 

「「「…………」」」

 

 

 束の間の静寂……そして―――

 

 

 ダダダダダッ!  ド ッ パ ァ ァ ア ア ン!

 

 

 リアス、ヒメジマの二人はプールに駆け寄り飛び込むと、一心不乱に泳ぎ始めた。

 

 ほほう……、二人ともなかなかのスピードだ。これなら例え海上で大王イカやギャオースに襲われても逃げ切れるだろう……。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「眷属悪魔の可愛がり方は……俺の想像を超えています……」

 

 

 一方、イッセーくんが少し離れたところで心底疲れたという雰囲気でぼやいていた。

 何と言うか……、あれだけ「俺はハーレム王になる」と言っていた割には全く余裕が無い。

 複数の女性を囲えば内部で対立することもあるだろうに……。

 それを上手く捌けないようではハーレムなど夢のまた夢だ。

 僕なんか一人の女性すら守れず出産直後に攫われた。

 ハーレムを目指すのであれば全員を安心させる器量は必要不可欠だと思う。

 

 そんなイッセーくんに近づき、声をかける者がいた。

 青い髪にメッシュを入れた少女―――ゼノヴィアだ。

 

 

「何をしているんだ?」

 

「ゼノヴィア? 今まで何やってたんだよ?」

 

「初めての水着だから、着るのに時間が掛かった。似合うかな?」

 

「あ、ああ、似合うと思うぜ。それにしても初めてって? いや、まぁ教会出身だからか?」

 

 

 自身の水着姿を披露するし感想を尋ねるゼノヴィア。確かにイッセーくんの言う通り良く似合っている。

 これもまた守備力が低そうだが……。そのことを言うとこの世界の女性は気分を悪くするみたいだし、口に出すのは止めておこうか。

 

 

「私自身、こういった娯楽に興味が無くてね……。実は着替えた後、少し考え事をしていたんだ」

 

「考え事?」

 

「……兵藤一誠、折り入って君に話があるんだが……」

 

「イッセーでいいよ。で、話って?」

 

 

 そう言って神妙な面持ちで語り始めるゼノヴィア。どうやらイッセーくんに相談があるらしい。

 一体どんなことであろうか?

 …………いかん、いかん。つい、ぼんやりと聞き入ってしまっていたが、このままでは盗み聞きだ。

 彼女が話したいのは飽く迄イッセーくんだ。ここは聞かなかったことにしてサッと引き下がることとするか……。

 

 

「―――ではイッセー、改めて言うが……

 

 私と子供を作らないか?」

 

 

 ………………は?

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 

 

 脱衣所側の用具室

 

 ビート板だのコースロープだのが散乱している室内に、ゼノヴィアがイッセーくんを引き摺って行き、そのまま力任せに押し倒した。

 

 

「ぐへっ!?」

 

「聞こえなかったのか、イッセー? 私と子作りをしよう」

 

 

 いかん……、盗み聞きはいけないことと分かりつつも、ついつい着いて来てしまった。

 まるで、盗人の様に外の壁に張り付き、中の様子を探っている。

 こんな真似は良くない、良くないが……。

 

 それにしても、何の前触れもなく「子供を作ろう」だ。これは誰であっても気になる。ならない筈がない。

 それに、いざそういうことになったら注意するのが大人としての義務だろう。止めない訳にはいかない。

 だが、ゼノヴィアがこんなことを言い始めるのには何か理由がある筈だ。止めるのはそれを聞いてからでもいい。

 全く、我ながら情けない。僕もいい歳だろうに十代の少年少女の話を盗み聞きとは……。

 

 

「以前は神に仕えて奉仕するという夢や生き甲斐があった。だが今はそういったモノがない。そこでリアス部長にその事を尋ねたら……

 

『悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望むモノ。好きに生きてみなさい』―――と」

 

「えぇぇ…………」

 

 

 リアスの言い分は、そりゃまた悪魔らしいというものだ。

 しかし、どうしてそれが“子供を作る”という話になるのだろうか?

 

 

「そこで私は女らしい新たな目標、夢を持つことにしたのさ。子供を産もうとね」

 

「いやいやいやいや……」

 

 

 ふむ……。確かに彼女の言う通りだ。子供を産み、育てる。女性の喜びの一つだろう。

 僕も 三人目を早く……と妻にせがまれていた。元の世界に帰ったら帰ったで大変そうではある。

 

 その一方で、ゼノヴィアは至って真面目な表情で朗々と語り続ける。

 

 

「コカビエルとの戦いを見て思ったんだ。君の潜在的な力は評価に値する。その上、ドラゴンのオーラを身に付けている。子供を作る以上、そういった特殊な、そして強い遺伝子を望みたい。

 『神器(セイクリッド・ギア)』は遺伝するモノではないが、君のドラゴンのオーラは引き継がれるかもしれないだろう?」

 

「そ、そんなこと力説されてもっ!?」

 

 

 ゼノヴィアの力強い演説を聞いたイッセーくんが戸惑いの声を上げる。

 それにしても、彼女の言い分は身も蓋もないというか何と言うか……。

 

 いや、僕に彼女を責める資格など無いのかもしれない。

 僕の妻がそうだ。結婚の直前、義父から“娘は実の子ではない”と言われた。その昔、翼の生えた美しい女性……おそらく天空人と思われる女性が倒れていた。急いで駆け寄ってみると、その女性はすでに事切れていたそうだ。そして、その腕の中から拾い上げたのが娘だと……。

 僕は彼女をたった一人の彼女であるから愛し、妻にと望んだ。だが、彼女はそう思ってくれたのだろうか?

 僕が 自分を貴重な種馬のように考えたから選んだ、とでも思ったのではないだろうか?

 

 否、そんなことはないだろう。僕と彼女の愛は本物だ。それだけは、決して間違っていない。

 

 だが、ほんの少し、僅かにでもそう思われていたとしたら―――

 

 それに、“子供を作る以上、そういった特殊な、そして強い遺伝子を望みたい”というのも引っ掛かる。もし仮に、ゼノヴィアとイッセーくんがまぐわって、彼女の望む所の『特殊な、強い遺伝子を持つ子』が産まれてきたとしよう。果たしてそのことが、その子は幸せだと言えるのだろうか……?

 

 またしても、人のことをとやかく言える事柄じゃない。僕の息子は世界を救った伝説の勇者だ。

 天空の血を引く妻に、伝説の勇者の息子。そのせいで彼らが味わった苦難を思えば……。

 

 しかし、これも傲慢な悩みなのかもしれない。自身の子が優秀であることを望まない親などいない。ゼノヴィアの言い分の尤もなのだろう。

 

 

「ここで二人っきりになれたのは好機だ。きっと神のお導k―――あうっ!?

 ……とにかく、早速試してみようじゃないか!」

 

 

 彼女はそう宣言するとイッセーくんににじり寄り、更に言い募る。

 

 

「抱いてくれ!」

 

「えぇっ!?」

 

 

 おいおいおい……、これは流石にマズい。そろそろ止めに入ろうか……。

 でも、何と言おうか?

 ふぅむ……、これは難問だ。

 

 そこに―――

 

 

「何しているの? リュカさん」

 

「へっ!?」

 

 

 後ろから突然声をかけられた。用具室でのやり取りに集中していたせいで第三者の接近に全く気が付かなかった。急な出来事に心臓が跳ね上がる。

 

 そんなことは露知らず、用具室の中にいるゼノヴィアはイッセーくんに更に迫る。

 

 

「残念なことに私は男性経験が無い。性知識の豊富そうな君に合わせよう」

 

「おぉぉぉおおい!?」

 

「子作りの過程をちゃんとしてくれれば、好きにしてくれて構わない」

 

 

 会話の内容が聞こえたのだろう。あとからやってきた少女達―――リアス、ヒメジマ、トウジョウ、アーシアの雰囲気が一変した。

 

 僕の前を通り過ぎて扉の前にツカツカと歩み寄り、ドアをバタンと開けた。

 

 

「イッセー……、これはどういうこと?」

 

「だぁぁあああああッ!?!?」

 

 

 突然、入ってきた主の只ならぬ雰囲気を察したのだろう。イッセーくんが盛大に悲鳴を上げる。

 無理もない。もし、妻があんな表情で迫ってきたら僕も尻尾を巻いて逃げるよ……。

 そんな彼に、更に追い打ちをかける者達がいた。

 

 

「あらあら、ズルいわゼノヴィアちゃんたら。イッセーくんの貞操は私が貰う予定ですのよ?」

 

「イッセーさんヒドイです~! 私だって言ってくれたら……!」

 

「……油断も隙も無い」

 

 

 ヒメジマがいつものおしとやかな口調でありながら何処か冷たい目で、アーシアは涙目で、トウジョウはジト目で睨み付ける。こりゃまた、おっかない。女性はこういうときが怖い。

 だが、ゼノヴィアは一切 意に介さない。

 

 

「どうしたイッセー? さぁ子供を作ろう」

 

「馬鹿! お前?! この状況分かってんのかァ!? ちったぁ空気ってモンをあばばばば……」

 

「全く……、どうしてイッセーはそんなにエッチなのかしら……」

 

 

 ゼノヴィアが空気の読めない発言を繰り返しイッセーくんが必死で止める。そんな彼らをリアスが冷ややかな目で見降ろした。

 いや、聞いていたが迫っていたのはゼノヴィアの方だ。まあ、イッセーくんも満更ではなさそうだったが……。

 

 

「いや、違うんだ。イッセーはただ、私と子作りをしようと……」

 

「のわぁぁぁあああ!?」

 

 

 教会出身の少女が全然フォローになっていないフォローを入れ、周りがより一層に剣呑な雰囲気になる。

 

 まあ、ここは年長者として何か言うべきだろう。見て見ぬふりはできまい。さて、何と諭そうか……。

 前に進み出て、僕がゼノヴィアと向き合う―――

 

 

「…………いいかい? 君の言っていることも良く分かる。確かに信仰の対象を喪失した悲しみは大きなものだろう……。だけど、子供を育てるのは本当に大変なことなんだよ?

 僕は幼い頃、母が側にいなかった。父は僕を赤子の僕を連れて旅をしていたが、本当に苦労していたと思う」

 

 

 ゼノヴィアを諭そうと、僕の身に、そして周りの人々に起きたことを語る。

 父とサンチョには本当に感謝している。もし、旅に連れて行ってくれなければ僕は父親の顔を知らない子供になっていた。そのことを想像すると背筋が寒くなる。

 

 

「ゼノヴィア、急ぐことはない。ゆっくりと目の前にあることを一つ一つ乗り越えていけば結果は自ずとついてくる。それでこそ、母になる準備ができるというものだ」

 

「しかし……」

 

 

 僕の言葉を聞き渋い顔をするゼノヴィア。一面の正しさを認めつつも納得しかねているようだ。

 

 そのとき、ふと面白いことが頭に浮かんだ。

 これならば彼女も喜んでくれるだろう。

 

 

「……そうだ、子育ての練習をしよう!」

 

「練習?」

 

 

 そう言って、いつも持っている袋から、一本の木が生えた鉢植えと大きなタマゴを取り出した。

 それをゼノヴィアに渡す。

 

 

「それは『モンスターのタマゴ』だ。以前、“ピピッ島”という不思議な島で購入してね。

 で、そっちのは『世界樹の苗木』。それらを一緒に置いておくとタマゴが世界樹の生命力を受けて、やがて孵化する」

 

 

 ゼノヴィアが興味深げに両方を観察する。

 

 

「千里の道も一歩から。先ずは魔物の育成から始めてみなさい。そうすればどんな種族の子であれ、親となることの大変さは分かるさ」

 

 

 僕の言葉にリアスも頷いた。

 

 

「そうね。確かに『悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望むモノ』とは言ったけど物事には順序があるわ。リュカさんの言う通り、まずはそこから始めてみなさい。

 それに、産まれてきた子を使い魔にする事もできそうだしね」

 

 

 

 こうして、波乱に富んだ一日が終わった。ゼノヴィアもより良い道が開けることを願って……。

 

 

 

 

 

 

 

 翌日―――

 

 

 

 さーて、今日は何をしようか。取り敢えずアフリカ、南アメリカはざっくりと見て回ったし、ヨーロッパとやらに行ってみようか。

 リアスの話だと『アースガルズ』の神々だの、ヴァンパイアの王国だのがあるらしい。実に楽しみだ。

 

 そのようなことを考えていると、自分のスマホが激しく鳴っていることに気付いた。

 

 

「もしm―――」

 

『す ぐ に 来 て !!』

 

 

 ブツッ ツー ツー

 

 

「んー……? 何か問題かな」

 

 

 出た途端、叫ぶように言われ、すぐに切られてしまった。声の主はリアスだ。それにしてもなんだろう? 何かのトラブルだろうか。

 まあ、取り敢えず行ってみるか―――

 

 

 

 

 

 

 

 数分後 ゼノヴィアのアパート……だった場所

 

 

 

 

 

『GYAOOOOOOOOOHH!!!』

 

「「「…………」」」

 

 

 あちゃー……、これはやっちゃったかな……。

 

 目の前の光景を見ない為に手で覆い隠したくなった。

 倒壊した建物の上で白銀に輝く小山の如き大きさのドラゴンが怒り狂って暴れている。

 

 そういえばあの卵からは“はくりゅうおう”も産まれるんだった。しかも、どういう訳かタマゴより大きい姿で産まれてくる。魔物の生態には色々と謎が多いが、その最たるものだ。

 

 

 その竜に懸命に呼び掛ける少女がいた。ゼノヴィアである。

 

 

 

「よーしよし、良い子だから泣くんじゃない! どうしたんだ? ミルクか? それともおしめか!?」

 

 

 

 

 

 

 




きわどい水着:Ⅸに登場。いけない水着の上位互換で、Ⅸにおける水着の最上位。守備力はあまり無さそうに見えるが何と上下合わせて64。特に上はドラゴンメイルよりも守備力が高い。しかも、炎・雷属性ダメージを軽減。

世界樹の苗木:リメイク版Ⅴに登場。天空城の名産品で、天空人により大切に育てられてきた世界樹の苗木。聖なる水差しを使うといきいきと育つようになる。 夜に聖なる水差しを使うことによって、1日に1枚だけ世界樹の葉を落とすようになるため、名産品の中では実用的。

モンスターのタマゴ:モンスターズシリーズには昔からあるアイテムだが、今回のはジョーカー2プロフェッショナル版より。ブランパレスにある不思議な木の側に置くことで孵化するという点で、上記アイテムと組み合わせられると思い、コレにしました。
狙いのモンスターが産まれないと精神的にかなりツラい。

はくりゅうおう:DQMJ以降のDQMシリーズに登場するドラゴン系のモンスター。姿はⅧの裏ボスである竜神王の色違い。


はくりゅうおう ですが、無印ジョーカーではマスタードラゴンと同じ存在とされていますが、この作品では別物とさせていただきます。

……というか名前は何にしよう。~~りん、~~すけ、~~まる、~~じろう、~~たろう、~~やん、~~ぼう は出しちゃいましたからなかなか思い付きません(^_^;)
ドラクエっぽいデフォってあと何がありましたっけ?


それと、これからについて活動報告にてアンケートを取ろうかと思います。出来たら構いませんので是非ご参加ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。