時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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戦闘シーンまさかの一行。
リュカの説教が長くなりすぎました。


4話 悪魔の仕事

 

「やあ、こんばんは」

 

 

 深夜、駒王学園の校門前で僕は彼―――ヒョウドウ イッセーくんと再会した。

 その気配は以前とは異なり、人間のものではなく魔族……悪魔のものだ。

 

 

「アンタは―――、あの時の!?」

 

「リュカだ。久しぶりだね、イッセーくん」

 

 

 挨拶を済ませると、彼はこれから召喚者の元に行かねばならない、と言ってくる。

 魔法陣で転移するのではないのかと問うが、何でも彼の魔力ではそれができないらしい。

 彼は自転車という乗り物を手で押しながら、僕と並んで夜道を歩きながら話をする。

 

 

「まず、君に謝らねばならない。僕の不注意で君を死なせてしまった。すまない」

 

「いや、リュカさんのせいじゃないッスよ!!

あやまらないでください!!」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

 

 彼は僕のせいではないと言ってくれたが―――

 しかし、確認しておかなくてはいけないことがある。

 

 

「君の言葉はとてもありがたい。―――だが、僕は君が悪魔になったことに責任を感じている。君はどうなんだい? 

 こんな真夜中に召喚者の呼び掛けに応じたり、リアスさんに従属しなければならなくなったことを不安に感じたり、辛いと思ったりはしてないかい?」

 

「いや……、そんな辛いってことはないッス。部長も優しいですし……。それに―――

 

 それに俺には夢があるッス……」

 

「夢?」

 

 

 それは悪魔としての夢だろうか?

 力か? 地位か? それとも富か?

 

 

「ハーレム王に俺はなる!!」

 

「………………は?」

 

 

 それから、彼に聞かされた話のあらましはこうだ。

 なんでも、彼はおっぱいが好きらしい。

 おっぱいの大きい女性を囲うのが人間であった頃からの夢だったという。

 しかし人間時代はあまりモテず、希望を持てない日々を過ごしていたという。

 ところが悪魔となり状況が一変した。

 リアスの話によれば、純粋な悪魔は過去の戦争で多くが亡くなったという。

 そのため、必然的に下僕を集めるようになった。

 以前の様な軍勢を率いるほどの力も威厳も消失してしまったが、それでも新しい悪魔を増やさなくてはいけなくなった。

 悪魔にも性別はあるから悪魔の男女にも子供は生まれる。

 しかし、悪魔という存在は極端に出生率が低く、自然出生で元の数に戻るには相当な時間がかかってしまう。

 そこで素質がありそうな人間を悪魔に引き込み、堕天使に対応することにしたらしい。

しかしそれでは下僕の力を増やすだけで力のある悪魔を再び存在させることにはならない。

 故に、悪魔は新しい制度を取り入れた。

 力のある転生者―――つまり、人間から悪魔になった者にもチャンスを与えるようになったのだ。

 力さえあれば、転生者にも爵位を与える、と――――

 

 

「つまり!! いっぱい仕事して、爵位もらって、俺だけのハーレムを作るんス!!」

 

「…………ふむ」

 

 

 確かに、リアスの話の筋は通っている。

 悪魔の数を増やす、そのために人間を転生者として引き込み取り立てる―――確かに有効だろう。

 

 だが―――

 

 

「……だが、自分の欲望の為に女性を囲う、というのはあまり感心しないな」

 

「えっ?」

 

「僕が異世界人と言うことは聞いてるね?」

 

「ええ、はい」

 

「僕の元居た世界にラインハットという国がある。その国の昔の王様にライデンブストという人物がいる。

 この人はあまり賢明な王とは言えなくてね。毒を盛られて死んだとき、世継ぎ候補の王子が四十六人もいた。彼らがみな母の栄誉をかけて王位を争ったから、大陸中、すさまじい騒ぎになったんだ。御互いに手を組んだり、裏切ったりして………。

 それから八代は数日ごと王位が入れ替わった。大半が死んで、何人かは家や名を捨て、他国に渡ったり山賊になったりもした」

 

 

 イッセーくんはあまりピンと来ていない様子だったが、構わず話を続ける。

 

 

「それから何代かのちに即位したのがベルギス王だ。彼には二人の子供がいてね。病死した前妻との間にできたのがヘンリー王子、僕の親友だ」

 

「えっ!? 王子様と友達なんスか!?」

 

「もう一人が後妻との間にできたデール王子だ。二人の仲自体は悪くなかったんだが……。

 デールの母、つまりベルギス王の後妻が自分の息子を溺愛してね。まあ、実の母子なんだし当たり前だが……。邪魔になったのがヘンリー王子だ。

 それで人攫いに依頼し、拉致させて、僕もなんだかんだで巻き込まれた……で、いっしょに奴隷をするハメになった」

 

「ええぇぇぇ!!奴隷ですか!!」

 

「それで、一緒に逃げて……ラインハットに戻って政変を裏で操っていた魔物を倒した。

君に話したいのはその後だ」

 

「その後?」

 

「ヘンリーはそのあとマリアという女性と結婚し第一王子のコリンズが産まれた。

 それでデールはどうしたと思う?」

 

「どうしたって……。うーん、分からないッス……」

 

「生涯未婚の誓いを立てたんだ。もう二度と王位をめぐった争いが起きないように……」

 

 

 僕の話を聞いたイッセーくんはなんだかバツが悪そうな顔をしている。

 

 

「別に君の夢を否定するつもりはない。だが複数の女性を囲うというのは当然リスクがある……。

 それに対する覚悟は必要だ。そうじゃなければ君も、女性も、周りも不幸になる……。 おっと、話し込んでしまったみたいだね。時間は大丈夫かい?」

 

「あっ! やばい!! 依頼主に怒られる!!」

 

 

 僕の指摘にイッセーくんが慌てた。彼を諭すのに随分と時間を使ってしまった。イッセーくんに迷惑をかけるのは本意ではない。

 

 

 ああ、ちょうどいい所に駐輪場がある。

 それにもう深夜だし少しくらいはいいだろう―――。

 

 

「イッセーくん。あそこに駐輪場があるだろう? その自転車をそこに止めてくれるかい?」

 

「えっ!? でも自転車じゃないともっと遅れ―――分かりました」

 

 

 イッセーくんも僕が異世界の術を使うつもりだということを察したらしい。

 自転車を駐輪場に止めてくれる。

 

 

「それじゃあ僕に摑まって……トベルーラ!!」

 

「うわああぁぁぁ!!」

 

 

 イッセーくんの持っているスマホなるからくりに標された依頼主の家の方角に向かって飛ぶ。

 夜風が気持ちいい。眼下に夜の街の風景が過ぎ去っていく。

 依頼主の住むというアパートまではあっという間だった。

 

 

「さあ、着いたよ」

 

「うっ……びっくりした……。いきなり飛ぶなんて……。

その前に一言言ってくださいよ~……」

 

 

 

 ◇

 

 

 

『開いてます。どうぞにょ』

 

 

 イッセーくんが呼び鈴を鳴らすと野太い男性の声がした。

 彼と共に部屋の中に入室する。

 

 

「いらっしゃいにょ」

 

 

 そこに居たのは変わった風体の男だった。

 長身に良く鍛え上げられた肉体。

 あらくれ? いや、戦士なのだろうか?

 しかし、それだと格好がおかしい。

 それは、自分の知識の中にあるものの中では魔女の装備『マジカルスカート』の形状に近い。

 だがそれにしては魔力を感じない。

 イミテーションなのだろうか?

 

 

「あ、あの……あ、悪魔を……グレモリーの眷属を召喚されましたか……?」

 

 

 イッセーくんが恐る恐るという感じで尋ねる。

 その気持ちは理解できる。

 この男は並ではない――――

 

 

「そうだにょ。お願いがあって、悪魔さんを呼んだにょ」

 

「ミルたんを魔法少女にして欲しいにょ」

 

 

 魔法少女……? それは「魔法使い」と同じものなのだろうか?

 どうやらこの男は「魔法使い」に転職したいらしい。

 

 

「異世界にでも転移してください」

 

 

 イッセーくんが呆れた様な表情で言うが――――

 

 

「異世界に転移? そんなことが君に可能なのかい!?」

 

 

 異世界への任意での転移―――そんなことが、もし可能ならこれからの苦労を大幅に削減できる―――。

 

 

「リュカさんには言ってないッス!! そこは反応しないでください!!」

 

「それはもう試したにょ」

 

「試したのかよっ!」

 

 

 えっ―――。この男は異世界に転移する術を知っているのか―――?

 

 

「でも無理だったにょ。ミルたんに魔法の力をくれるものはなかったにょ」

 

「いや、ある意味、今の状況が魔法的だけどさ……」

 

「もう、こうなったら宿敵の悪魔さんに頼み込むしかないにょ」

 

 

 悪魔が宿敵―――?

 彼は魔物ハンターなのだろうか。

 

 

「悪魔さんッッ!」

 

 

 とてつもない大音声をあげる。

 建物全体が揺れたような錯覚に陥る。

『おたけび』? 彼は戦士ではなく武闘家か?

 

 

「ミルたんにファンタジーなパワーをくださいにょぉぉぉぉッ!」

 

「いえ、もう十分にファンタジーですよ! 俺が泣きたいくらいだ!」

 

 

 頭の中でこれまでの話を整理する。

 どうやら目の前の男は職業「武闘家」でかなりの実力者。

 しかし、魔物ハンターとして「武闘家」から「魔法使い」に転職する必要がある。

 そのために、イッセーくんを自宅に召喚した―――

 

 

「ミルたん、といったね―――?」

 

「にょ?」

 

「君の熱意は良く伝わった」

 

「ホントかにょ!?」

 

「ああ、君を『魔法使い』に転職させてあげよう―――」

 

 

 そう言って僕は彼に手を翳す―――。

 

 

「ダーマの悟り!!」

 

 

ダーマの悟り―――それはそれを開くことによってダーマ神官と同じ力を得て自身や仲間を転職させるという技。

 

 

「これで君には魔法の力が宿った」

 

「ホントかにょ!?」

 

「ああ、だがただ単に才能を得ただけでは意味はない。――――鍛えて、実践で磨いて、はじめてモノになる」

 

「わかったにょ! 頑張るにょ!!」

 

「ああ、僭越だが僕が色々と教えてあげよう―――」

 

 

 横でイッセーくんが信じられないものを見た! という顔をしているがそれは問題じゃない。

 (ミルたん)純粋(ピュア)だ。

 それは瞳を見ればわかる。

 きっと、人々にとって希望、そんな魔法使いに成長するだろう。

 

 

「それでだが……、君の目指す魔法使いがどんなものかを教えてほしい」

 

「わかったにょ! あなたのことは師匠と呼ぶにょ! じゃあ、三人で『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』を見るにょ。そこから魔法が始まるにょ!」

 

 

 

 ◇

 

 

 彼に見せられたその『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』とやらは実に感動的だった。

 愛、勇気、友情、熱意、努力―――

 そんな古典的なものがいかに重要かひしひしと伝わってくる、そんな内容だった。

 だが、横でイッセーくんがうなだれている。

 

 

「どうしたんだい? イッセーくん」

 

「また、契約が取れなかった……。部長に怒られる……」

 

「だが、彼は僕だけでなく君にも感謝していた。一人の悩める男を救うために奔走する……、立派なことじゃないか」

 

「ア、アハハハ……」

 

 

 夜道を並んで歩きながら彼を慰める。

 確かに結果は残念だったかもしれないが(ミルたん)にとっては有意義な時間だったに違いない。

 

 すると、後ろから誰かが歩いてくる足音がした。

 

 

 殺気――――!

 

 

 後ろに居たのは胸元の開いた赤いボディコンスーツに身を包み、紺色の髪を夜風に靡かせる妙齢の美しい女であった。

 

 

「妙だな……。人違いではなさそうだ。

 足跡を消すよう命じられたのはこのカラワーナだからな。真に妙だ」

 

 

「まさか!!」

 

「何故貴様は生きている!!」

 

「「堕天使!!」」

 

「貴様はあのお方が殺したはず!!」

 

 

 

 そう言うと、その女性は背に漆黒の翼を大きく広げ、僕たちに光の槍を投げつけてきた――――

 

 

 

 

 

 




マジカルスカート:Ⅵで初登場し、以降の作品やリメイク版Ⅲ・Ⅳでも登場している女性用の防具。
魔力を込めた生地で作られた、機能性と見た目の両方にこだわるオシャレな女性冒険者のためのスカート状の法衣。どの作品でも呪文に対する耐性が付加されている。

ダーマの悟り:Ⅸから。


デール王は意外と名君だと思う。
あと、ミルたんはこのからインフレしていきます。
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