時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

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※ お知らせ
前回のアンケートの結果、ルビは一話に付き一回でいいということで、そのようにしました!
それと、ドラクエ用語が分かり難いのではないかと思い、各話の後書きに、その回に登場したドラクエ用語の解説を入れました。「この特技・アイテムが分からなかった」という方は、是非、見直してみてください。





49話 堕天使の日常

  

 

 レイナーレside

 

 

「やあ、久しぶりだね」

 

「ああ、あのレーティングゲーム以来か……」

 

 

 暖かな昼下がり。みんなと一緒に暮らすアパート。

 今、私の目の前で、紅髪と黒髪の美男子が朗らかに言葉を交わしている。

 果たして二人のうち、どちらの容姿が上かしら? 本当に甲乙付け難い。

 華があるのは紅髪の方だろう。すれ違えば思わず見返してしまう大きな存在感を放っている。

 黒髪の方は幾分かおとなしい風貌だ。けれど明らかに普通じゃない。

 凛々しさと清浄さ、快活さと落ち着きという、本来なら相反しそうモノが同居している、不思議な雰囲気の持ち主だ。

 そして何よりその瞳、ただの単に美しいだけではない。

 まるで吸い込まれるかのような黒曜石の輝き―――

 

 そんな二人の談笑。両者を見比べて見ても、緊張感や敵意は無い。全く以って穏やかなもの……。

 

 

「それにしても変わった家だ。魔術で面積は広げられているようだが、たった一間では色々と不便じゃないかい?」

 

「う~ん……どうだろうね。『住めば都』というし」

 

 

 魔王サーゼクス・ルシファーの問い掛けに、御主人様―――リュカはやんわりと答えた。

 今、二人はイシュダルの空間操作で広げられた元は六畳一間のアパートで、ちゃぶ台を挟んで向かい合って座っている。

 その周囲をリュカの“仲間”達が取り巻く。私もその一人だ。

 

 それにしても、どうしてこうなったのかしら……?

 

 私――レイナーレは元々ただの中級堕天使に過ぎなかった。 

 男を誘惑し堕落させ、上の命令で世界にとっての害悪となり得る神器(セイクリッド・ギア)所有者を始末する。ただそれだけの存在。

 上の連中は私達を見下し、それに耐えかねて暴走した。

 同志を募り、教会を追われた『聖女』アーシア・アルジェントを騙して『聖女の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』を奪おうとした。

 ……でも、失敗した。目の前にいる男のせいで。

 

 リュカ、私の新しい主。

 初めてあの広場で出会ったとき、私はこの男を殺そうとした。

 だが、出来なかった。

 その理由は単純だ。強過ぎたのだ。出鱈目なほどに。

 

 私レベルの堕天使では相対したことのない強者。おそらくSS級はぐれ悪魔以上。

 怪しげな協力者から貸し与えられた、見たこともない魔物達を瞬く間に屠ってみせた魔法に、数々の人間離れした特技。

 

 だけど、私は愚かだった。ただの人間に過ぎない彼が堕天使の私に勝てる筈がないと、そう思い込んでしまった。

 たぶん目が曇っていたんでしょうね。

 結局、カラワーナに預けた最高戦力のスーパーキラーマシンもリュカに倒された。

 

 私自身も兵藤一誠にやられ、リアス・グレモリー達によって追い詰められた。

 あのときはもうダメかと思ったわ。でも、助かった。助けられた。

 私の計画を破綻させた、他ならないリュカによって……

 

 

 ――……レイナーレ、君は君だ……。たった一人のレイナーレだ。

  珍しい『神器』の持ち主でなくてもいい……。

  力など持ってなくてもいい。

  ただ、君がレイナーレであるというだけで、僕は君を愛そう

 

 リュカのあのときの言葉は今でも忘れられない。

 これまで散々馬鹿にされてきた、この私を愛してくれている。

 その言葉を聞いたとき確信した。もう私はこの人とは離れられない。側にいたいと……。

 

 同志のカラワーナ、ミッテルトも同じ気持ちだったようだ。

 今では三人揃って御主人様と同居している。他に余計なヤツらも大勢いるが―――

 

 

「でも、こんなに大勢いたら少し窮屈じゃないかい? 君には妹も世話になっているし、住む場所ならこちらで手配してもいいよ」

 

「そこまでしてもらうのも気が引けるなぁ……」

 

「いいではないか、御主人! 魔界のエリートたる私に相応しい邸宅を建ててもらうとしよう!」

 

 

 リュカと魔王の会話に割り込んだのは橙色の肌をした長身の悪魔だ。……お邪魔虫共め。

 彼が元居た世界で仲間だったという魔物達の一人、ライオウ。高慢な男だけど実力はあるのよね……高慢過ぎてうざったいが。

 

 

「あはは……でも、確かにそうだ。ここのアパートほど強力な存在が密集してる場所はないだろうね。

 リアスからは聞いていたが、はぐれ悪魔や堕天使ともいっしょとは……」

 

 

 そう口にするサーゼクス・ルシファーは私達の方を睥睨してくる。こっちを見るな!

 冗談じゃないわ。魔王と同じ部屋にいるだなんて、まな板の上の鯉の気分よ。

 それに、御主人様の飼ってるはぐれ悪魔……バイサーとクモりんも顔が真っ青だし……。

 「魔王なんてさっさと追い出しなさいよ!」と言いたくても言い出せない自分がもどかしい。

 

 

「まあ、引っ越すにしても今すぐというわけにもいかないしね。考えてみるよ。

 ところで、今日は何をしに来たんだい?」

 

「ああ、そうだったね。実は―――」

 

 

 紅髪の魔王がようやく本題を話し始めた。本当に“ようやく”だ。一体どれだけ話し込んでいたんだか……。

 この男が尋ねてきたのは数時間前だ。玄関を開けたとき、笑顔の魔王が立っているのを目にした瞬間 卒倒しそうになった。「神の子を見張る者(グリゴリ)」にいた頃なら尻尾巻いて逃げるわね。

 それに対して、まるで旧友と再会したかのように応対し始めたリュカ……。その光景にも驚愕した。

 そりゃあ、リュカはバケモノじみて強いわよ。そんなのは私が一番良く分かっている。 

 でも、それにしたって……。

 

 そんなこんなで現在だ。全く、世の中どうなってるのかしら。

 

 

「へぇ~、駒王学園で三大勢力の会談するのかい? いいんじゃないのかな。争いより話し合いの方がよっぽど建設的だ」

 

「そう言ってもらえて助かるよ」

 

 

 三大勢力の会談―――確かリアス・グレモリーも言ってたわね。コカビエル様があれだけのことをして、あんなことになった以上、何らかの話し合いが行われるとは思っていたけど、この街で開催されることになるとは驚いたわ。

 でも、それがリュカと何か関係あるのかしら?

 

 

「それで、その場に君も出席して欲しいんだ」

 

「僕も……? いや、それはおかしいだろう。僕は異世界人で部外者だ。君達の問題に、そこまで関わる訳にはいかないだろう」

 

 

 リュカが困惑した表情を浮かべる。いつもそうだ。どうかしてるんじゃないかってぐらいのお人好しのクセに、「この世界の問題はこの世界の住人が解決するべきだ」ってスタンスで居ようとする。でも、結局は見過ごせなくて、ついつい手を貸してしまう、そんな人だ。

 あまり乗り気じゃないリュカに、サーゼクス・ルシファーが説明した。

 

 

「確かにその通りだ。けど、リアスの話ではコカビエルの一件に介入した謎の集団に君の知り合いがいたそうじゃないか」

 

「……イブール」 

 

 

 リュカの表情に影が濃くなった。

 あの夜、駒王学園に乱入したという謎の男。私達は気絶していたせいであまり覚えていない。

 けど、学園のプールに遊びに行った時に、グレモリーに質問責めにあった。

 あれ以来、リュカは時々上の空になり、何かを考え込んでいる。

 気になって尋ねてみたものの、ハッキリとした答えは得られていない。

 

 

「サーゼクスくんの言う通りだね。そのことについては説明した方がいいだろう。

 分かった、行こう」

 

「助かる」

 

 

 リュカの返事を聞き、顔をほころばせる魔王サーゼクス。

 そこに―――

 

 

「失礼します。サーゼクス様、リュカ様」

 

 

 畳の上に魔法陣が現れ、そこからメイド服を身に纏った銀髪の女性が現れた。

 誰かに教えられるまでもない。「銀髪の殲滅女王」グレイフィア・ルキフグス―――魔王サーゼクス・ルシファーの女王(クイーン)だ。

 かつて、セラフォルー・レヴィアタンと最強の女性悪魔の称号を懸けて争ったという冥界の大物。そんなのがまたしてもこのオンボロアパートにやってきた。

 ……もう勘弁してよ。

 

 

「やあ、グレイフィアさん。久しぶりだね。元気にしてたかい?」

 

「はい、御蔭様で」

 

 

 やっぱり、リュカはこちらとも知り合いらしい。そう言えば、リアス・グレモリーの結婚騒動のときに「とっても強そうなメイドさんに会ったんだが、この世界じゃ家政婦がボディーガードも兼業してるのかい?」などというトンチンカンな質問をしてきたが、この悪魔(ヒト)のことだったのねと、今更ながらに納得したわ。

 

 

「それにしても―――」

 

 

  ドキッ……!

 

 一瞬、グレイフィアと目が合った。その瞬間、心臓を握り潰されるかのようなプレッシャーを感じた……!

 というよりも、魔王と同じ部屋で過ごすというありえないシチュエーションに置かれてたから今まで感覚が麻痺してたようね。

 サーゼクス・ルシファーはまるで敵意など無い穏やかな目をしてるけど、この女はほんの刹那ではあるが、明らかな殺気を放った……!

 

 

『グオオオオゥ?』

 

 

 すると、私の後ろから野太く重厚な、魔獣の声が響く。

 振り返ると、そこにいたのはさっきまで寝ていたのに、少しだけ警戒心を刺激され、顔を上げた黄金の巨竜、グレイトドラゴンのシーザーだった。

 

 

「あら、申し訳ございません。起こしてしまいましたか?」

 

『グゥゥウウ……』

 

 

 どうやら、この女が敵意を向けたのはこの魔物だったようね……。

 まあ、それも仕方がない。私だって最初は恐かったもの。慣れって恐ろしいわ。

 

 

「それにしてもドラゴンを室内で飼うとは……、些か狭苦しいのでは?」

 

「……ああ、それもそうだね。やっぱり引っ越そうか―――」

 

 

 また、リュカは引っ越しの話をしてるし……、そういう問題じゃないでしょ!

 私の内心のツッコミなど露知らず、魔王が何かを思い出したのか、リュカに付け加えるように依頼する。

 

 

「それと、君に会わせたい人物がいるんだ。明日の午後ニ時頃、駒王学園に来てくれるかい?」

 

「ふむ……でも、その時間帯は授業中じゃないか」

 

「いや、明日は授業参観でね。父兄ということにすれば学内に入れる、

 実を言うと私も妹の授業を見に……「ゴホンッ」来たというのもあるが、会談の会場の下見が主目的だ、うん」

 

 

 嬉々として妹の話をし出すサーゼクス。それをグレイフィアが咳払いで改めさせる。

 どうやら、この女は主君を尻に敷いてるみたいね。

 

 

「いいよ、どうせ暇だし」

 

「ありがとう、恩に着るよ」

 

 

 魔王の言葉に簡単に折れるリュカ。本当に人が好い。断ればいいのに……。

 そのとき、部屋の外からカツカツと階段を上る音が聞こえてきた。

 

 

「おや、オークス達が帰ってきたか……」

 

 

 リュカが呟く。

 オークキングのオークス―――御主人様配下の魔物の一体で、冷気魔法と回復魔法、神業に近い槍術を操る獣人。仲の良い魔物連中を引き連れて、ここ最近 街に繰り出している。

 あんな、バケモノが街中をうろついていたら目立つだろうと言ったら、リュカは「彼らは“ステルス”を体得したからね」と言ったわ。

 

ステルス―――気配を遮断し、敵に発見されなくなる技。

 

 オークスが目の前でステルスを使うのを見せてもらったが、まるで魔法の様に姿がかき消えた。

 まあ、ただの町人Aが見抜けないだろうってのは確かね。

 

 そんなことを考えていると、件の足音はどんどん近付いていてくる。

 そして―――

 

 

  ピンポーン……

 

 チャイムが鳴った。

 

 

「あれ? オークス達は合鍵を持ってるから呼び鈴なんて鳴らさないよね……。

 来客かなぁ、レイナーレ、すまないけど出てくれるかい?」

 

「え、ええ……」

 

 

 リュカに呼び掛けられ、立ち上がって扉の前に行く。

 そして、ドアを開ける。

 

 そこにいたのは、悪そうな雰囲気のイケメンだった。

 ……あれ? なんか既視感があるような、ないような…………。

 

 

「……え、えーーっと……、どなたかしら……?」

 

 

 

「おいおい、堕天使のくせに自分達の頭が分からないのかよ―――」

 

 

 は? は? ナニヲイッテルノ、コノヒト? 私が言葉の意味を理解できず戸惑っていると、男の背に私のものとは比べ物にならない程 薄暗く、常闇のような漆黒の翼が十二枚現れた。

 

 

「俺がアザゼルだ、堕天使の総督をしている」

 

「……ア、ア、アザ……ゼル……様……? あばばばばばば……――――」

 

 

 その言葉を聞いたとき、私の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、う~~ん……」

 

 

 目を覚ますと、私は布団に寝かされていた。窓の外を見るとすでに夕暮だ。しばらく気を失っていたらしい。

 見渡すと、すぐ側にリュカがいた。それ以外にもミッテルト、カラワーナが私の周りで固まっている。

 

 

「大丈夫? 無理をさせてゴメンね。レイナーレ」

 

 

 起き上がった私とリュカの目と目が合う。

 彼の表情には、私を心配する感情に溢れ出ていた。

 これっぽっちの打算や嘘偽りのない純粋な愛情に満ち満ちている。

 

 

「アザゼルくんなら帰ったよ。『ウチの者をよろしく頼む』って言ってた」

 

「そう……」

 

 

 リュカの言葉に少しホッとする。

 私達は上を騙して勝手にことを起こした。断罪されても不思議はない……というよりそうなって当然だったはず。

 多分、アザゼル様もリュカに遠慮したんでしょうね……。

 そう、考えた途端、何だか今まで抑えていた気持ちが込み上げてきた―――

 

 

「……それにしても、アンタもモノ好きよね。私みたいな“お荷物”を抱え込むんだから」

 

「“お荷物”?」

 

 

 私の言葉を聞いても、彼は何を言っているのか分からない、と言いたげな顔だ。

 

 

「……だって、そうでしょ!? 私は『神の子を見張る者』の規範を乱した罪人よ! その上、グレモリーからも睨まれている。

 私なんか、いない方が好都合じゃない!!」

 

 

 愚かしいことだとは分かっていても、ついヒートアップしてしまう。自分を抑えることができない。

 

 だが、彼は―――

 

 

 

 

 

「君が無事で良かったよ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 彼の表情は何も揺らがない。

 リュカは静かに私の手を取り、彼の胸に当てる。

 

 

 

「本当の気持ち。僕は何も我慢していない」

 

 

 彼の温もりが、私の手に伝わって来る。

 

 

「こうすれば、わかるだろう? 君が僕にとって、どんなに大切な存在かって」

 

「リュカ……」

 

 

 彼は私を抱きしめた。

 そのとき、改めて理解した。「ただ、君がレイナーレであるというだけで、僕は君を愛そう」という言葉の意味を―――

 

 

 そこに……

 

 

「ねえ、お兄さま。ウチらもそういうことしちゃダメなの?」

 

 

 ミッテルトが心底うらやましそうにこっちを見てる。……ってか、空気読みなさいよ!

 折角、いい雰囲気だってのに!

 

 

「―――何を言ってるんだい? 勿論いいさ!」

 

 

 おぃぃぃいいいい! 何、いい笑顔で言ってくれてんのよ、リュカァァアアッ!!

 

 

「「「「わ~~~~~~いっ♪」」」」

 

 

 しかも、一斉に来やがった!

 ミッテルト、カラワーナ、バイサー、クモりん、スラ太郎、触手丸、ディーネ、イシュダル、ヘルヴィーナス共、ジュラすけ、ヒュドまる、スプろう、プックル……その他、名前を上げてたらキリが無いほど沢山の連中が自分達の主人に突撃する。

 

 当のリュカは―――

 

 

 

 

「かかって こいやぁぁぁぁっ!」

 

 

 

 すべて受け止めます! と言わんばかりに仁王立ちし、魔物達の方に向かって行った。

 

 

 

 

「どうしてこうなんのよ!!」

 

 

 

 




ステルス:DQⅨ 、DS版DQMシリーズなどに登場した特技。敵に見つからずに移動することができる効果を持つ。以前のトヘロスのようなもの。


最近あった出来事 初めて0評価を付けられてゲロ吐きそうになるくらい落ち込む。
「作者は豆腐メンタル」とでもタグを増やそうか悩む今日この頃。
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