時を失った英雄 in ハイスクールD×D   作:ksb

53 / 58
何だかんだでドラクエで一番チートなのは「ロト紋」のカダル様だと思う。



52話 ストップ・ザ・ワールド

 

 

 時を止める魔法。それは以前、異世界の賢者から教わるも、あまりの難易度に会得することが出来なかった魔法だ。

 「蜃気楼の塔」という巨大な建造物で出会った彼と、僕はいくらかの時を一緒に過ごし、互いの持つ情報を交換し合った。

 その賢人は世界のバランスが善と悪の対立によって崩れたとき、蔓延った魔のものに対抗すべく現れた勇者を導く為に何千年何万年もの間、転生を繰り返してきた男だった。

 塔の賢者――べゼルの扱う魔法の中で最も特異で、一番高度なもの、それが“時”に関する魔術。

 

 その中の一つこそ 時の砂の呪文 ストップ・ザ・ワールド だ。

 

 

「―――ぐはっっ!!」

 

 

 襲い来る痛みに耐えかね、口から声が漏れてしまった。一発一発の威力はイオラ程度だが、それを何十度も繰り返していると流石に堪える。

 自分で流した血だまりに反射した己の姿を冷静に観察するが、なかなかに酷い。

 皮膚が裂け、血が流れ出している。あちこちに石のかけらが刺さり、些か痛々しい。

 痛みには慣れているから僕は問題ないが、こっちを脅えながら見ているオカルト研究部の面々にとってはキツいのかも知れない。それはちょっと計算外だったか……。

 

 僕が考案したギャスパーくんの修業内容。それはまず、僕が時間を制御してみせ、それを手本にしてもらうというものだ。

 この世界の昔の偉い人の格言に「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」というのがあるそうだがなかなか含蓄のある言葉だと思う。

 まずは“やってみせる”べきだ。誰もできないことをやれと言われてもギャスパーくんも困惑するだけだろう。

 

 

「―――にしてもコレはやりすぎっスよ。つーか、何でこんな危ない方法でやるんスか?」

 

 

 イッセーくんが蒼褪め、困惑した顔でそう言った。

 

 ギャスパーくんの紹介を受けたあと、僕は彼に見せたいモノがある、と言ってギャスパーくん、イッセーくん、トウジョウ、アーシアを連れて、旧校舎の中庭に来た。

 そして、異世界に時を止める魔法があることを伝え、今からそれを習得するところを見せたいと言った。

 

 確かに僕用に考案した修行内容はちょっとハードだと思う。爆弾石―――衝撃を加えると爆発する性質を持つ石 をトウジョウに思い切り投げつけてもらい、それを僕が時間を止めて防ぐ。

 少々乱暴な鍛錬となったのは、出来るだけ早く目に見える成果を上げたかったからだ。それに実戦を想定すればこれくらいじゃないの危機感がないと意味がない。

 やがて、爆音を聞いて、一体何事か! と思って駆けつけて来た生徒会のサジくんも見物に加わった。

 だが、オカルト研究部やサジくんからすれば僕の修行方法は少しドラスティック過ぎたようだ。

 

 

「ははは……、だけど何となく出来そうな気がするよ。何となく、だけどね……」

 

 

 そうだ。もう少しでコツが掴めそうなのだ。

 そもそも、僕と時間魔法の親和性はそれほど悪くない。パルプンテを用いれば完全な運頼みではあるが、今現在でも一応の時間停止ができるのだ。

 あとはこれを確実に発動できるようにすればいい。その為の呪文も知ってるし、賢者の職も極めているから問題ない。

 

 

「“ただの人間が0からでも時間停止と、それの制御ができる”……。それならギャスパーくんも怖がることはない。そうじゃないか」 

 

 

 木の陰から脅えながらこちらを窺う少年に目をやる。

 

 

「いや~、異世界人のリュカさんが時間を止めれても今更驚かないっつうか何て言うか……う~~ん」

 

 

 イッセーくんが遠慮しがちに苦言を呈する。

 彼の言う事も一理あるだろう。世界が異なれば常識も異なる。しかし、指針となるべきものがあるのと無いのとでは大きく違う。

 

 

「まあ、世界が違っても人間は人間だ。時間を自在に操れる人間がいる世界なんて……多分そんなにないよ」

 

「“多分”ッスか!?」

 

 

 イッセーくんのツッコミは取り敢えず無視して、トウジョウに目配せをする。

 

 

「じゃあ、次のを頼むよ」

 

「……まだ、やるんですか。もう、やめませんか?」

 

 

 少女は躊躇う。どうやら、気を使われてるらしい。元々トウジョウは敵には容赦しないが根は優しい娘だ。ヒトを傷つけるのには忸怩たるものがあるのだろう。それに罪悪感か。彼女には悪いことをしているみたいだ。

 

 

「ああ、思いっ切りやってくれ。見た目ほど大したことはないから」

 

「……では」

 

 

 頷いたトウジョウは振りかぶり、豪速球を投げ付けてきた。

 唸りを上げ、爆弾石が猛烈なスピードで差し迫って来る。

 

 それを目にやりつつ、呪文を構築し、展開する―――

 

 

「ストップ・ザ・ワールド!!」

 

 

 

  ド カ ン ッ !!

 

 

 しかし、その直後に爆弾石が僕の体に直撃した。

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

 痛い。慣れた痛みではあるがやはり痛い。闘気を身に纏えば相当な威力を軽減できるが、魔法の構築に集中するため防げない。

 体中から肉が焼き焦げるにおいがするがべホマで回復しつつ前を向く。

 

 今回も失敗ではあった。―――だが、手応えがあった。ほんの僅かではあったが確かに感じた。

 異世界でべゼルに見せてもらったときの感覚が、パルプンテで偶然 時を止めたときの感覚が、そして今日ギャスパーくんが僕らを怖がり、逃れようとして時間を止めたときの感覚が確かにあった。

 

 

「今のは……」

 

 

 吸血鬼の少年が僕を見る。どうやら彼も感じたらしい。

 

 

「もう一度だ。もう一度頼む」

 

「……イヤです」

 

 

 トウジョウが首を振る。彼女もこれ以上一方的に他者を傷つけるのは限界らしい。けれど、僕は断言する。

 

 

「次が最後だ。次は絶対止める」

 

 

 小柄な戦車(ルーク)が目を瞠った。僕がそう言い切ったことに驚いたらしい。

 

 そして、構える。

 

 

「……いきます!」

 

 

 爆弾石が飛んでくる。空気の壁を突き破りながら。

 

 そんなことは意に排し、時の砂の魔法を組み上げる。

 

 どんな呪文、どんな技術も成功させる秘訣はたった一つだ。

 

 ――“自分にはそれが可能だと信じる”ということ。――

 

 魔物を仲間にするのだってそうだ。たとえ相手が腐乱した死体であろうが、黄金の巨竜であろうが、血の通わぬ殺戮兵器だろうが、真の愛情を注げば通じ合える。そう思う事が魔物使いのコツではないか。

 

 そうだ。僕は時間が止められる。

 

 

 

「 ス ト ッ プ ・ ザ ・ ワ ー ル ド !!!」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――その瞬間、あらゆるものが静止した。

 

 風に棚引く木の葉も、砂埃も、そして、イッセーくんもアーシアもゼノヴィアもトウジョウもサジくんも。

 例外は二人……僕と、そしてギャスパーくんだけだ。

 ニ十回目の挑戦で漸く成功できた。

 

 

「ほ、本当に止まった……!」

 

 

 少年が驚く。どうやら、僕が時間を止めれるとは思っていなかったらしい。

 

 宙に浮かんでいる爆弾石を回収しつつ、彼に向き直る。

 

 

「―――これで分かっただろう? 神器なんてあっても無くてもいいんだ」

 

「……え?」

 

 

 戸惑う少年に近づき、その肩をそっと掴む。

 

 

「大事なのは“心”なんだ。君はこう言ったね? 『僕に外の世界なんて無理なんだ。どうせ、僕が出てっても迷惑を掛けるだけだ』ってね」

 

「……はい」

 

「君が神器を制御できないのは、君自身がその力を怖れているからだ。だけど、そんな必要はない。

 僕はただの人間だ。そのただの人間の僕がどうして時間を止めれたのか分かるかい?」

 

「え……」

 

「それは君のおかげなんだ。僕は君を助けたいと思った。少しでも“勇気”を与えられたら、そう願った。その気持ちが力になった……。

 君にもそういう人はいるだろう。そう、君の周りにこんなに沢山の仲間達がいるじゃないか」

 

 

 ギャスパーくんの表情は依然として曇っている。僕の言葉を理解は出来ても、どうしても怖れを克服できないのだ。

 でも、やり方は示したんだ。あとは、ゆっくりと進んでいけばいい。リアスやグレモリー眷属達が支えてくれる。

 

 

 ギャスパーくんが救われることをイッセーくん達に託そう、そう思ったときだ。今この瞬間において、起こり得ないことが起こった。

 

 ザッザッザッザ……

 

 何かが近づいてくる気配がしたのだ。

 どういうことだろう。今は時間が止まっている(・・・・・・・・・)はずなのに。

 現れた人物の顔には見覚えがあった。

 

 

「おいおいおい、一体何がどうなってんだ? こりゃ」

 

「ああ、こんばんは。アザゼルくん」

 

 

 現れたのは浴衣姿の中年の美男―――堕天使総督アザゼルだった。

 彼は困惑しているらしい。

 

 

「こんばんは、じゃねえよ。コレ、アンタの仕業か? 取り敢えず解除しろよ」

 

「ああ、そうだったね」

 

 

 彼の指摘を受けて呪文を解く。すると世界に色が戻り、周りにいたイッセーくん達が一斉に動き出した。

 

 

「ア、アンタは―――ッ!?」

 

「お? ああ、いたのか悪魔君。いや赤龍帝、元気そうだな」

 

「アザゼル……! 何で急にッ!!?」

 

 

 イッセーくんが盛大に驚き、慌てて赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を起動した。

 しかし、察するに二人は顔見知りらしい。

 

 

「アザゼルくんと知り合いなのかい?」

 

「そうッス。コイツは自分の正体を隠して何度か俺を召喚したんあるスよ!!……ってリュカさんも知り合い何すか!?」

 

「まあ、そうだね。前にウチに来たことがある」

 

 

 そのときは先客の魔王に気を使ったのか、軽い挨拶をし合っただけで、すぐに帰ってしまったが。

 

 一方、他のオカルト研究部の面々も戦闘態勢を取る。

 それも仕方がないだろう。堕天使と悪魔は敵対している。だが、アザゼルはほとんど(・・・・)こちらに敵意を向けていない。

 ハッキリ言えば歯牙にも掛けていない。……僕だけを除いて。

 

 

「おいおい、やる気はねぇよ。第一、お前等が束になっても傷一つ付けられんぞ? いくら下級悪魔だってそれくらい分かるだろう?

 ……だが、そっちの異世界人の兄ちゃんとは戦いたくはないがね。

 結界・空間断絶の無力化に魔物の使役。おまけに時間停止とは……、全く……未知数過ぎてイヤになるな」

 

 

 僕に向けて興味深げな視線を投げ掛けてくるアザゼル。僕なんてそこまで面白いものでもないと思うんだが……まあ、いいか。

 

 

「んで、お前さんは一体何をやってるんだ?」

 

「ああ、ここにいるギャスパー・ウラディくんに“勇気”を与えようかと思ってね」

 

「はあ?」

 

 

 怪訝な顔をしたアザゼルにギャスパーくんのこと、停止世界の邪眼という神器のこと、異世界で聞きかじった時の砂の魔法のことを一通り説明していった。

 僕の話を黙って聞いてたアザゼルは最初こそ神妙な顔付きだったが、次第に呆れたような表情に変わっていった。

 

 

「そりゃあ、神器は持ち主の想いに反応するモンだ。だから別に『勇気を与えよう!』ってのは間違いじゃない。間違いじゃあないがねぇ……」

 

 

 顎鬚を撫でながらそのようにぼやくアザゼル。

 そう言えば以前レイナーレがアザゼルの為に『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』を欲していたが、彼は神器に興味があるのだろうか。

 

 

「結構詳しそうだね」

 

「ん? ああ、自慢じゃないがこの世界で神器に関しちゃ俺より詳しい奴なんていないだろうぜ。

 元々『神の子を見張る者(グリゴリ)』には学者肌の奴の方が多い。コカビエルみたいな戦争バカの方が珍しいんだ」

 

 

 なるほど、確かに学問の探究者達の中にあんなの(コカビエル)がポツンといたら孤立するだろう。その結果が前回の騒動という訳か。

 僕が一人で納得していると、アザゼルはサジくんに目を向けた。性格には彼の腕にある黒い神器に、だ。

 

 

「停止世界の邪眼、このタイプの神器は、持ち主のキャパシティが足りないと危険極まりない。それは黒い龍脈(アブソーブション・ライン)だな? 訓練ならそいつをヴァンパイアに接続して、余分なパワーを吸い取りつつ発動させるといい。暴走も少なくて済む」

 

「ッ!? 力を……吸い取る?」

 

 

 サジくんが驚く。この神器の本来の用途は、行動封じだけでなくマホトラも……、ということか。

 

 

「何だ、知らなかったのか? ったく、最近の神器所持者は自分の力を知ろうともしない。 そいつは五大龍王の一角、黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)ヴリトラの力を宿している。物体に接触し、その力を散らせる能力がある。短時間なら他のモノに接続させることも可能だ」

 

 

 なかなか詳しい説明だ。やけに親切だ。アザゼルは存外にいいヒトなのかもしれない。

 

 

「あぁそうだ、もっと手っ取り早い方法があるぞ、赤龍帝の血を飲むことだ。ヴァンパイアには血を飲ませるのが一番だしな。ま、後は自分達でやってみろ。

 ……それと、聖魔剣使いはいるか? 本当はそいつを見たくて来たんだが……」

 

 

 ギャスパーくんに更なるアドバイスをしつつ、不意に思い出したかのように尋ねてきた。

 

 

「キバくんならいないよ。サーゼクスくんの呼び出しだってさ」

 

「なんだ、聖魔剣使いはいねぇのかよ。……ま、別にいいか。じゃあな」

 

「―――待てよ!」

 

 

 僕の返答にかなり落胆した様子のアザゼルは、後ろを向き立ち去ろうとしたが、イッセーくんが呼び止めた。

 

 

「何で正体を隠して俺に接触してきた!?」

 

 

 イッセーくんが問い詰める。アザゼルと会ったのはまだ二回目だが、彼の人柄は何となく分かったと思う。

 多分、ただの趣味じゃないかな。

 

 

「……それは、俺の趣味だ」

 

 

 あ、当たった。

 

 それだけ言うと、堕天使総督はゆっくりと立ち去っていった。

 

 

 

 いずれにせよ、僕がギャスパーくんにしてあげられるのはここまでだろう。

 あとはアザゼルくんも言ったが「自分達でやる」しかない。

 

 僕もギャスパーくんとオカルト研究部の皆を信じて立ち去ることにした――――。

 

 

 そして数日後、ついに行われた「駒王会談」で事件は起こる。

 

 

 

 

 




ストップ・ザ・ワールド:漫画「DQⅦ」に登場する呪文。賢者ベゼルが使用。「時の砂の呪文」の名を冠し、その名前のとおりに使用者以外の時間を凍結する。

蜃気楼の塔:漫画「ロト紋」・「DQⅦ」に登場。ロト紋では賢者カダルが住まう魔法の塔。蜃気楼のように現れたり消えたりし、 内部には書庫や菜園などの他に、平原や湖すらも存在する。アルスやキラ、ポロンの両親がこの塔の中で修行を行った。
漫画版「DQⅦ」でも登場し、賢者ベゼルの住処となっている。グリンフレークをグレンが解放した後に、アルス達の前に姿を現した。

ばくだんいし:DQⅤ、Ⅸ、DQMJ2、DQMJ2P 、テリワン3D、イルルカ3Dに登場するアイテム。『ばくだんいわ』が残していった破片。


カダルは「賢者の力を受け継いだとき、その者は子供を作る能力を失ってしまった」という設定がありますが、別の場所でカムイ先生が「カダルは実はナルシストだから自分と似た人間に転生したかったんです。そう言う理由から結婚もしなかったと」とも発言されています。
…………ど っ ち や ね ん !!

この小説では様々なところから面白そうな設定を引っ張ってきてますし、「ロト紋」基準の賢者の力を引き継いだわけでもないですので、リュカに子供が出来なくなるという事はないです。

(細かいことは) 気 に す る な !(チャー研)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。