「三竦みの外側に居ながら世界を動かすほど力を持っている、赤龍帝、白龍皇、お前らの考えを聞いときたい。なあに、前対戦が休戦状態になったのはお前らの
堕天使総督アザゼルが会議を仕切り直して、二人の青年……イッセーくん・ヴァーリくんを見据えた。
「まずはヴァーリ、お前がこの世界をどうしたい?」
「俺は、強い奴と戦えればいいさ」
「へっ、戦争しなくたって強い奴はごまんさ。そこにいる異世界人とかな」
「……フッ、だろうな」
どうやら、僕とヴァーリくんが戦うのはすでに既定のことらしい。まあ、別に構わないが……。
「じゃあ、赤龍帝、お前はどうだ?」
「えぇっと……、『いきなり世界をどうしたいか』なんて、小難しいこと振られても……」
アザゼルの問いにイッセーくんは困惑する。それは無理もないだろう。彼はつい数か月前までただの学生だったのだ。
そんな彼に向けて、アザゼルは人の悪い笑みを浮かべながらとんでもないことを言い始める。
「では、恐ろしいほど噛み砕いて説明してやろう。
――兵藤一誠、俺等が戦争してたら……リアス・グレモリーは抱けないぞ」
「…………うぇッ?!」
「なっ!?」
イッセーくんだけでなく、後ろに控えてたリアスまで狼狽えた。
「だが、和平を結べば、その後大事になるのは、種の繁栄と存続だ」
「種の………繁栄ッ!!」
「おうよ! 毎日リアス・グレモリーと子作りに励めるかもしれん」
「っ――――なんてことを?!」
…………これはまた……、とんでもない理論だ。
いや、しかし平和になれば子供を作るというのは人間にも言えることだ。けれど、この二人はそんな関係だったのだろうか?
前回のライザーくんとの決闘騒動の後からかなり親密になった様子だったし、お互いに好意は持っているのだろうけど、“平和になったら子作りする”というにはまだまだだと思うんだが……。
「和平なら毎日子作り、戦争なら子作りなし。どうだ? 分かりやすいだろ?」
リアスは赤面しているが、イッセーくんはお構いなしだ。
『毎日、毎日子作り………部長と!? そうか! 平和なら、部長とエッチ出来るのかッ!
……いや? 俺ってそういう立場だっけ?? でも平和が続けば! いつかその可能性だってェェェ!!』
―――そう思っていることが、この場にいる全員にモロバレの表情でイッセーくんが叫んだ。
「和平でお願いしまぁぁぁす! 平和が一番ですッ!! 部長とエッチしたいですッ!!!」
……いや~……、イッセーくんは凄いな……。僕じゃとてもダンカンさんやみんなの前で『ビアンカとエッチしたいですッ!!』なんて言えないもん。
「……イッセーくん、サーゼクス様がおられるんだよ?」
「あ」
「ふふふふ……」
……そして、この魔王殿もかなりの大物だ。“妹とエッチしたい”と眼前で宣言されても笑っている。
もし、ルドマンさんが目の前で『フローラとエッチしたいですッ!!』宣言を耳にすれば、大富豪ルドマン家の総力を挙げて発言者を抹殺しようとするだろう。
「もう、あなたって人は……!」
「あらあら、うふふ」
一方、目の前で『エッチしたい』と言われたリアスも、プール開きの際にイッセーくんを散々誘惑していたヒメジマもさほど悪くは思っていないらしい。
この辺りの関係性は良く分からない。リアスもヒメジマもイッセーくんのことが好きだとすれば、二人は恋敵ということになる。だがイッセーくんのリアスに対する欲望が前面に出過ぎた告白を聞かされたヒメジマが笑っているというのは不思議だ。本当に異世界の事情は複雑怪奇だ……。
興奮のあまり、自分がとんでもないことを口走っていることに気が付いたイッセーくんが仕切り直す。
「……ゴホン! ……っと、とにかく! 俺の力は、リアス様と仲間達のためにしか使いませんッ! これは絶対です!『
イッセーくんがたどたどしくも一所懸命に胸の内に秘めた決意を述べているなか、突然、本当に突然に、恐ろしい感覚にとらわれた。
これは―――この場にいないリアス・グレモリーのもう一人の
が時間を止めたときの感覚だ……。
◇
「おっ、赤龍帝の復活だ」
「な、何があったんスか?」
突如、時間が停止した会議室の中で、イッセーくんが動き出した。それを見たアザゼルが皆に知らせ、イッセーくんは戸惑った様子で辺りを見回した。
イッセーくんの質問に対するアザゼルの答えはたった一言だった。
「テロだよ」
「テ、テロォォォォォォッ!?」
テロ――― まさか、今日のこの会談を狙ってくるとは僕も思わなかった。何故ならここを襲うということは魔王、堕天使総督、天使長の三人を相手にするということだ。つまり、襲撃者達には相当な自信があるのだろうか。
今、室内にいる者は、時間が静止してしまい動けなくなった者とそうでない者に分かれる。分かれた理由をリアス・グレモリーが推察する。
「サーゼクス様とセラフォルー様、それとグレイフィアにアザゼルとミカエル……各勢力のトップは問題なく時間停止を無効化できるようね。イッセーと白龍皇はドラゴンの力。ゼノヴィアと祐斗は聖剣が力を防いだのかしら。私が大丈夫なのは、多分イッセーのおかげね。
……リュカさんは動けているのは……考えるだけ無駄ね」
「え、なんで?」
なんかリアスの僕に対する扱いがだんだん雑になって来てないか? いや、別に構わないのだが……。
嫌われるようなことをしたかな……。そんなことを考えていると窓の外から眩い閃光が目に飛び込んできた。
良く見るとローブを身に纏った者達が次々と上空に描かれた巨大な魔法陣から転移してきて、校舎へギラのような魔法で攻撃を仕掛けているのが見えた。
「なんだ、あの連中!?」
「あれは魔術師ね☆ まったく! 魔女っ娘の私を差し置いて失礼なのよ!」
「しかし、この力は……?」
「おそらくは、あのハーフヴァンパイアの小僧を強制的に
敵さんもなかなかやるな。グレモリー眷属を利用するとは……。停止能力を持つ者は、滅多に存在しない」
「そうも言えないんじゃないのかい? つい、この間だが僕も時間停止が使えるようになったし」
「リュカさんは例外中の例外ですッ!」
僕も意見を述べたが思いっ切りイッセーくんにツッコまれた。
「部長、ギャスパーが! それに小猫ちゃんも!!」
「私の眷属がテロリストに利用されるなんて、これほどの侮辱はないわ!」
リアスが屈辱に顔を歪める。だが、そうこうしている間にも学園上空の魔法陣から次々と魔術師達がやって来る。
「……転移魔術? この結界にゲートを繋げている者がいるようですね」
「逆に、こちらの転移用魔法陣は完全に封じられています。リュカ殿、貴方の世界の魔法はどうです?」
「うぅんとね……、ルーラ!」
ミカエルが尋ねてくる。なので念を込め、試してみたが―――
僕は ルーラ を唱えた!
しかし 不思議なチカラで かきけされた!
…………これは不味いな。
僕は母マーサの血が覚醒したこともあって、結界だの世界の壁だのには結構強い方なのだが……。
その僕を封じ込めることができる相手が、敵の中にいると言うことだろうか?
――やはり、『光の教団』が?
「どうやら無理みたいだね」
「そうですか……」
「やられたな」
「このタイミングといい、リアス・グレモリーの眷属を逆利用する戦術といい……この中に裏切り者でもいるのかねえ」
アザゼルが軽口を叩くが、この状況では冗談に聞こえない。一体誰なのだろうか……?
「このままじっとしているワケにもいくまい。ギャスパーくんの力がこれ以上増大すれば、本当に我等とて……」
「サーゼクス様達まで? アイツにそこまでの力が!?」
「彼は
「様々な特異現象を起こす駒のことよ。ギャスパーに使用した僧侶の駒だけは、本来複数の駒が必要な転生体を一つの駒で済ませてしまう変異の駒だったの」
「アイツ! そんなに凄かったのか!」
リアスの説明を聞いて、イッセーくんが驚く。僕も初耳だ。『悪魔の駒』というものは、どうやら相当奥が深いらしい。
「あの子の潜在能力は計り知れないわ。だから封印されていたの」
「とにかくハーフヴァンパイアの小僧をなんとかしねえと、危なっかしくて反撃も出来ねえぞ。俺達は結界の維持のためにここから離れられねえし、この新校舎から旧校舎までには大勢いる魔術師共の相手をしなきゃならん」
「お兄様、旧校舎に未使用の
「……ふうむ、
また、『悪魔の駒』の話か……。ちょっと、機能が多すぎない? と思わず感じてしまうが、今はとりあえず彼らの説明を聞こう。
「きゃ、きゃすりんぐ?」
「戦車と
サーゼクスの説明を聞いて、たしかどこかの異世界の魔王がオリハルコンのチェスの駒に命を吹き込んだときも、この機能を取り入れたと、どっかの文献で読んだことを思い出した。
その魔王といい、この世界のアジュカという魔王といい、魔王はチェスにこだわるという習性でもあるのだろうか……?
「だが、リアス一人を送り込むのは……」
「ギャスパーは私の眷属です! 私が責任を持って、奪い返してきます!」
躊躇う兄に、つっぱねる妹。そこにメイド長のグレイフィアが前に出た。
「サーゼクス様の魔力をお借りできれば、もう一方まで転移は可能かと」
「なら、俺に行かせてください! 俺が部長を守ります!」
「……!」
僕も名乗り出ようかと思ったが、それより前にイッセーくんが進み出た。その彼をサーゼクスが厳しい眼差しで見据える。
「…………君に任せよう」
「はい!」
紅髪の魔王は少しの間だけ考え込んだようだが、結局は認めた。
そこに、皆の話し合いを静観していたヴァーリが割り込む。
「テロリストごとハーフヴァンパイアを消し飛ばす方が簡単じゃないか? 俺がやってもいいぞ」
「テメェ!!」
「冗談でも言ってはいけないことがあると思うよ」
「少しは空気読めよ、ヴァーリ。和平を結ぼうって時だぜ? アンタも落ち着いてくれ。バカみたいな殺気を放つのは止めてくれよ」
ん? ちょっと怒りが表情に出てしまったのか。まあ、僕如きの殺気で怯むような青年ではない。反省した様子もなく続ける。
「じっとしてるのは性に合わんのでね」
「なら、外で敵を撹乱してくれ。白龍皇が出れば、奴らも少しは乱れるはずだ」
「……フッ、了解」
アザゼルの命に従い、早速ヴァーリくんが窓から飛び出していった。
そして、白銀に煌めく翼を展開する。
「
『Vanishing Dragon Balance Breaker!!』
―――そして瞬く間に
その直後、上空で光が瞬いたかと思うと、数十人の魔術師がまとめて薙ぎ払われた。
「あんな簡単に!? 俺なんか、左腕を対価にして、それもテン・カウントしか出来なかったんだぜ!? それに強ぇ! 無茶苦茶強いじゃねえかッ!!」
「まあ、そうだけど、焦ることはないんじゃないのかな。ゆっくり君は地力を付けていけばいいさ。でも、まずはギャスパーくんを助けることに専念すればいいと思うよ」
僕のごくありきたりなアドバイスを受けて、イッセーくんは瞳に闘志を燃やす。
「そうッスね! ……部長! 必ずギャスパーを取り戻しましょう!!」
「あー、ちょっと待ちな。コイツを持っていけ。その腕輪が“対価の代わり”になってくれるはずだ」
イッセーくんを呼びとめたアザゼルが懐から二つの腕輪を取り出した。それにしても対価の代わりとは―――『メガザルの腕輪』の亜種だろうか。
「対価? ……禁手になれるってことか!?」
「最後の手段にしておけよ? 体力の消費までは調整出来んからな」
「っ……分かってるさ、一度それで失敗しかけてる」
「もう一つはハーフヴァンパイアに付けろ。暴走を抑える効果がある。いいか? よく覚えておけ、今までは運良く勝てたが、お前は人間に毛が生えた程度の悪魔だ。力を飼いならせなけりゃ、いずれ死ぬぞ? お前自身が神器の弱点なんだからな」
「リアスを頼んだぞ、一誠くん」
「はい!!」
魔王に妹を託された青年は魔法陣の中に消えた。
「う~ん……、ちょっと心配だね。やっぱり僕が付いて行った方が良かったかな」
「いえ、それには及ばないさ。私の妹はきっと上手くやるだろう。それに赤龍帝も付いている。……さて、私達はリアス達がギャスパーくんを確保出来たら、反撃に移ろう」
僕の呟きに、サーゼクスは確信を込めて否定した。それだけ妹とその眷属を信頼しているという証だろう。
「いや、それには及ばないかもしれないぜ。しばらくここで籠城してれば、敵の親玉が痺れを切らして出てくるかもしれん」
アザゼルはそう言うが、ここまで手の込んだことをしておいて、それは堪え性が無さ過ぎるのでは―――
「サーゼクス様!」
次の瞬間、室内の魔力の乱れを感じ取ったグレイフィアが、一早く主人に知らせた。
彼女の目線の先には何やら魔法陣が展開されている……って、噂をすればさっそくか。
このまま時間を稼ぎさえすれば、三大勢力トップを一網打尽にできたのに……どうやら、合理的な計算より、ここにいる皆に対する敵愾心が勝ったということだろうか?
「っ!? この魔法陣はレヴィアタンの、まさか……?!」
どうやら、サーゼクスはこの魔法陣に見覚えがあったらしい。
やがて、そこから一人の女性が現れる。
褐色の肌に眼鏡をかけた女魔族だ。
「御機嫌よう、現魔王、サーゼクス殿、セラフォルー殿」
「あ、貴方がどうしてここに!?」
「先代レヴィアタンの血を引く者、カテレア・レヴィアタン!」
魔王にカテレア・レヴィアタンと呼ばれた女は杖を掲げ――――
「世界に破壊と混沌を!」
彼女の叫びと共に、駒王学園会議室は破壊の光に満ちた。
メガザルの腕輪:DQⅥで初出、後にリメイク版DQⅣなどにも登場する装飾品。装備したキャラが死亡するとMP消費なしでメガザルが発動するという便利なモノ。貴重品の上に消耗品。
作者はもったいなくて一度も使ったことが無い。