構成を見直してもうちょいササっと終わらせられるように頑張ります。許して。
「あらあら――随分と良い御身分です事。レロロ・レレレレーロ評議会員様」
「こんな身分欲しくはなかったわい!」
「流石は大貴族ともなれば、情婦の一人や二人連れ歩かなければ箔も付かないと」
「おいこらレミディアス。お前目ェ腐ってんのか。見ろあの給仕服を。ウチの使用人に決まっているだろが」
どうやらレミディアス・アルデバランお嬢様が激おこプリプリ丸な理由は、転移で連れてきたクレオの存在によるものであるようだ。
え、なんで?
――おいカス。助けろ。
たまらず、レロロはカスティリオに伝達魔法を行使する。
その瞬間。カスティリオの笑みはより悪辣な色を増していた。
――こんなに面白い見世物はない。断る。
――だったらせめて見世物を面白くする努力をしろ。情報格差があるままだと対等に言い争い出来なくてつまらないだろが。俺にも情報を寄越せ。何にあの女は怒ってんだ。
――奴の
――ざけんじゃねぇ何てことしてくれたんだクソカスバカ!あの女には無知を指摘する事が一番効くのはお前も知っているだろが.....!
――人が嫌がり、よく効く事をするのが戦場の鉄則じゃ。何を甘い事を言っておる。
――なあおい。ここは戦場じゃねぇんだよ。
――馬鹿者。常在戦場じゃ。
屋敷爆破されて、天使の襲撃まで乗り越えて命からがら逃げだした先。
何故出迎えてくれた仲間から殺意の波動を受け取らなければいけないのか。
自分はろくな恋愛の一つもしてない上にその事をカスティリオに煽られ。その上で同じように女日照り続きのパーティメンバーが領主の権力を振りかざしメイドとよろしくやっているように見えたのが怒りに琴線に触れたのだろう。なあその琴線の当たり判定のデカさどうにかならねぇか?
「――はじめまして。私、レロロ様の使用人、クレオと申します。主に変わりまして事情の説明をさせて頂きます」
「む...」
「端的に言えば。レロロ様が受け継いだ屋敷は仕掛けにより爆破され。その上で女神教の魔法により襲撃を受けました。襲撃から逃れ、また同時にクラミアン王に現状の報告を申し上げる為にこちらへ参りました」
クレオは、淡々とレミディアスに説明を行う。
――いいぞクレオ。凄いぞクレオ。偉いぞクレオ。お前は本当によくできたメイドだ。
レロロからの言葉全てが怒りに変換されそうなレミディアスの姿を見て、即座に自ら事情を話す側に変わったのは素晴らしい判断だ。
「....他の使用人は皆襲撃で死んだという事かしら?」
「いえ。レロロ様は私以外の使用人を事前に解雇されましたので、襲撃での死者はおりません」
「....成程ね。お気に入りの女以外は解雇した、と」
「解釈に悪意を混ぜ込むの止めろやこの馬鹿が!俺にそんな甲斐性があると思ってんのか⁉」
「甲斐性がない男が権力を持つと悲惨よねぇ....」
「うるせぇ!死ねクソ馬鹿!」
ああでも大分レミディアスの罵倒のキレが戻ってきているな。ちゃんと理性の部分が戻ってきている証拠だ。クソムカつくがまあよかろう。後はクラミアンにこの事を報告して然るべき対処をしてもらうだけだ。
「屋敷が燃えた者同士だ。ユーラン殿に今日の所は厄介になるかな....」
「馬鹿を言うなレロロ。彼奴は自ら燃やしたが貴様はただ燃やされた間抜けだろう。同列に扱うなど失礼にも程がある」
「うるせぇバーカ!どうせ俺は屋敷に仕込まれた術式に気付かなかった間抜けだよクソが!」
そもそも暗殺屋敷ってなに?
術式に関しては死ぬほど研究を行ってきた自負があるが。本来空間に刻み付ける術式を屋敷の構造で仕込む方式なんざ聞いたことがねぇ。一体何が目的でこんなもんがある。
というかアルスの口ぶり的に王宮にも仕込まれているっぽいのが笑える。笑えねぇよ馬鹿。
「あ~もう、こんなクソみたいな言い争いしている場合じゃねぇんだよ。クラミアン王に現状の報告しなきゃならねぇんだから。さ、どいたどいた」
「――レロロ様。報告は私の方から行います故、まずはご自身の治療を優先して下さい」
「大丈夫大丈夫。身体が動けるうちは怪我には入らん」
溜息をつきながら、レロロは王宮の中へ歩いていく。
「ちなみにじゃが。ユーランは今別邸にもおらぬぞ?」
「え、そうなの?」
「うむ。併合した領地の視察に向かっておる。城塞都市から離れておるな」
「そっか....。じゃあしゃーない。どっかで宿をとるか、王宮の空き部屋に泊まるわ。クレオをこのままにしておくわけにはいかねぇし」
また一つレロロは溜息をつくと、そう呟いた。
レロロ・レレレレーロ。新領主に正式就任する間もなく屋敷が爆発炎上を果たしました――。
▼▼▼
その後の話。
レロロはクラミアンに一連の報告を行うと共に、陳謝を受けた。
まあそうか....自分で分け与えた屋敷が実は暗殺用の術式が仕込まれ、新任の評議会議員が危うく爆殺されかけたともなれば。普通に王の責任まで及ぶのも当然の事か。
そういう事で。クレオ共々王宮の一室を貸してもらう事になった。
暗殺の下手人についても必ず見つけ出すとの言質も頂き。レロロはクレオと別れ、指定された客室へと向かっていった。
「.....」
客室へ、向かったのだが....。
「おい....」
まず室内に入ると、沼底に足を突っ込んだかの如き感覚が両足に走る。
その沼のような何かが一瞬全身を引き摺り込むような力を発揮しこちらを飲み込もうとするが、一瞬でその力は霧散していた。
室内は霧がかったように暗く不透明で、血色の靄が辺りを包んでいる。
「.....」
こめかみに青筋を浮かべながら、歩を進める。
誰が何をやらかしていているのか。レロロは本当によく理解していた。
「得おいdvhん;おいh子;dj;尾djcん;エぢf;いおじょジョイⅮ;jふぃdfhじぇw;尾fじぇおfjエ;尾fジェイfじぇwfじぇおふぃじぇ;fじぇ;。・」
「lkhこぢじょ;jふぉ;dじゃf;えdjf;pfじぇ;djふぇ;fじf;おじょs;あdじぇ;おdj;えjd;えwjふぇえ;f」
「ああああああああああああああああああああああああああああああぎゃああああががいぎああっぐががががががgヴぁヴぁヴぁやヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁ」
「えんあははははっはヴぁヴぁばばばままかけけけけけげうえうえうえうえうえうくくくくすすすす!」
「いうぇりぃおぺるえおるぺおるえおるぽえるえおぴるえおるおえるおえいるおえいいるおえいるおぺいりょえいほえうぃおれおいりょえいうろ~」
暗く、恐ろし気な力の奔流を両足からとめどなく感じながら歩を進めていくと。
迎え入れてくれたのは――ローブを纏った骸骨と素肌に鎧が付着した兵士でございました。
彼等は歓待を表しているのか。骸骨は肉も皮も無い両手でかちゃかちゃと骨がぶつかるだけの虚しい音が鳴り響くだけの拍手を送り、地獄の底みてぇな叫びを上げ。兵士は付着した鎧と手に持った剣をぎぃぎぃ擦りつける不快な音で拍手を送り、断末魔みてぇな叫びを上げている。
彼等の頭上には不気味な三角コーンみたいな被り物が付着しており。骨と金属と断末魔の音が響き渡る中狂った歓待を続けていた。
そんなバケモノ共がひしめく空間を超えると。
豪奢な椅子に腰かけ、ワインをくゆらす――周囲の空間に溶け込むような漆黒のドレスを着込んだ女がいた。
女は――青筋を浮かべこの異常状況下を睨みつけるレロロの目を見て、うっすらとした微笑みを浮かべ。しめやかに両手を叩いた。
「――ようこそレロロ。歓待するわ」
「このクソ馬鹿!何してやがる!」
レロロの罵倒を受けて尚――女は笑っていた。
レミディアス・アルデバランであった。
▼
一応補足というかフォローをすると。
ちゃんとクラミアンはレロロ用の客室を指定し、そこに泊まるように手配していた。
手配した部屋に勝手に上がり込み、勝手に改造し、勝手にこんなクソ馬鹿空間に拵えたのは――レミディアスであった。
「さてレロロ。わたくしの歓待の対価を払わなきゃね。――お腹が減ったわ。夕食を作りなさい。わたくし、そろそろ王宮の食事も飽きて来た所だわ」
「おい。この場合俺の心理的な損害を賠償する責任はテメェの方にあると思うんだが?何で俺の方が対価を請求されているんだ?道理が狂ってる」
「一人で寂しいであろう貴方の心を慰撫する為にわざわざこのわたくし自らやってきたというのに。まだ口答えするつもり?貴方、何様のつもりなのかしら?」
「もうこの状況で口答えできない関係って奴隷か脳内洗浄された廃人のどれかしかねーだろ!テメェの方こそ何様のつもりだ!」
「うるさいわねぇ。何にせよ貴方だってお腹くらい空いているでしょう。作らなければ夕食も取れないわよ。働かざる者食うべからずという言葉があるでしょう?」
「余計な労働をブッ込んできたテメェの口から絶対に吐いてはならねぇ台詞が来たな.....!」
ぎえええ!と叫びながら。それでもレロロは厨房へ向かう。
――この野郎。素直に俺の飯が食いたいと言えばいいのに。
王宮の食事は素材はいいし料理人の腕もいいのだが。暗殺防止の為に幾度も毒見を重ね防毒魔法も拵える。中毒防止の為に十分すぎるほどの過熱を行ったものしか提供されない。
そういう手順を踏むので。基本的に冷めていたり、ちょいとパサついたものが提供される事が多い。
多分「飽きた」というのは本当の事なのだろう。なので旅していた時に炊事担当だったレロロに久々に違う飯を作らせようと。
素直に言ってくれれば喜んで飯くらい作るというのに。本当こいつは....!
溜息をつきながら、部屋の隅にある厨房へと向かう。
その棚の上に置かれていたのは緑系の野菜やきのこ。瑞々しいフルーツなどが並び立てられ――
「ガァ!ガァアアアアアアア!」
「......」
先程まではバケモノ共の喧しさに気付かなかったが。
部屋の隅で――首からリードで繋がれている食肉用の鶏が、羽をばたつかせてぎゃあぎゃあと喚いていた。
「....なにこれ?」
「....?」
レミディアスは不思議そうに首を傾げてこちらを見る。
え?なんでお前が不思議そうな顔しているの?
「見て解らないのかしら?食材よ」
「生きてんだけど」
があがあ。
喧しく喚き散らす鶏を指差し。レロロはレミディアスを見る。
それでも――この女のキョトン顔はまるで治らない。
その顔つきのまま、レミディアスはレロロに言葉を返す。
「それはそうでしょう。王宮の裏で飼育されているやつ持ってきたんだもの。一番肥えてて美味しそうなものを見繕ってきたわ」
「....ここで絞めて調理しろと?」
「新鮮な方が美味しいでしょう?」
「ああああああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!なんでいっつもこうなんだよおおおおおおおおお!」
レロロはこめかみの上の青を更に濃くし、鶏に安眠効果のある魔法を付与し眠らせ全身の筋肉を弛緩させた後。流しに頭を押し付け首を刃物で落とし。逆さに吊るして血抜きを行い。そして羽を毟っていく。
その様子をにこやかに眺めながら――レミディアスは更にワインをくゆらせ、口に運んでいた。
レミディアス・アルデバラン。
忘れていた。この女は人が右往左往する様を眺めながら酒の肴に出来るタイプのクソ性格わるわるな人間だってことを。
久々に手元に戻ってきたサンドバッグ君をそのまま放置する理由はない。
「.....」
そう思いながら、「畜生....畜生....」と呻き声のようにぶつぶつ呟き飯を作るレロロの背後。
レロロの視線に映らぬレミディアスは――繕った笑みを崩し。純粋に、ただ心底からの温かみを自覚するような、自然な笑みを浮かべていた。
久しぶりに会って。自分の為に料理しているその背中を見て。
――確かな幸福というものを、噛み締めていた。
旅の最中。
野営の中で炊事を行うレロロの姿を見て、食事を取る事がレミディアスにとって何よりの楽しみであった。
誰かと面と向かって会話をしながら食事をする事は、レミディアスの人生でその旅がはじめての事だったから。
どれだけ粗末な内容でも。クソマズい上に臭い魔獣の肉を喰らわされようとも。何とか食べられる内容にする為に悪戦苦闘する横顔を見られるだけで満足だった。それでも文句は言うけれども。
故に思う。
久々に。楽しい食事になりそうだ、と。