ブラック・ブレット〜Perfect Answer〜   作:哉識

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お久しぶりです。手直しに時間がかかってしまいました。

まぁ、言い訳ですけどねw

改善点があれば、感想にお願いします。


第二話

聖天子からの仕事の依頼のあと、当日中に望たちが所属している民警会社から連絡があった。手を回すのが早いとも思ったが、それよりも驚くものがあった。

会議、明日なんですね。

 

 

「外に出るだけで覚悟が必要な俺にこの仕打ちはないわー」

 

望はいつものように黒いローブを深く着込み、人と目を合わせないように防衛省の中を歩いていた。

 

たびたび、怖いお兄さんがたに話しかけられたが、「聖天子様の依頼の件でちょっと」と言うと、どういう事か通してもらえた。大丈夫かしら、ここの警備。実は顔割れてたりして……やだ何それ帰りたい。

 

対人関係の頼みの綱である希が学校のためいないので、挙動不審にはなりながらも指定された会議室にやっとのことで到着する。ちなみに一番乗りだ。何でかって?最初に来て、部屋のスミスを確保しないと絡まれるからだよ!分かってんだよ、この格好が怪しいことぐらいは!分かり過ぎて外に出ないまである。他人に迷惑はかけたくないからな。

 

閑話休題。望が到着してから、間も無くしてから徐々にスーツを着た民警の社長や無闇に敵意をばら撒いているプロモーター、イニシエーターと思われる幼女たちが集まってくる。

 

プロモーターと思われる人間が入ってくるたびに望は睨まれたが、結局絡んでくる奴はいなかった。

何はともあれ時間もそこそこに過ぎ、席も満席になりつつあるので、望は聖天子の依頼通りざっと民警の顔触れを確認する。

 

(げっ)

 

あの顔は記憶に新しい。昨日、道でぶつかった少年だ。しかも、絡まれていらっしゃる。望にしてみたら全くの他人事、ご苦労様ですと合掌し、高みの見物を決め込んだ。

 

「おいおい、最近の民警の質はどうなってんだぁ?ガキまで民警ごっこかよ。わけわかんねぇほら吹きも出てくるしよ。社会見学なら回れ右して帰れや」

 

あわれ、少年。しかし、イケメンで美人を侍らせてる時点で有罪である。非リア三原則(リア充を妬み、恨み、僻む)をモットーに望はよりいっそう隅に縮まる。あれ?この三原則、ほとんど一つじゃん。

 

「あそこにも見るからに怪しい奴はいるし、どうなってんだぁ?」

 

ひぃっ、その怪しい奴ってもしかししなくても俺のことですよね……

 

髪をワックスで逆立て口元に髑髏の模様を描かれたスカーフを巻いた青年が睨んでいる。相手には見えないだろうが、いきなり矢面に立たされかけている望はガタガタと震えていた。

 

(ふぇぇ、希たすけて……)

 

ここにはいない最愛の妹に助けを求めるが、その声は無情にも(当然にも)届かない。

 

しかし、あの世紀末スタイル似合いすぎだろ。黒光りするバラニウム製のバスターソードはとても様になっている。あのような大きな得物をここらで持っているならば、恐らくIP序列1584位、伊熊将監しかいないだろう。なかなか、腕の立つプロモーターと聞く。だが、見る限りおつむの方は弱そうだ。

けれども、絡まれた側の少年と美少女の名前は分からない。望は大抵の高序列のプロモーターやその雇い主である会社はマークしている。したがって、望があの二人の所属している会社はわりと新しく、プロモーターの序列もあまり高くないと予測するのは難しくなかった。

 

しかし彼らからは序列や歳には見合わない底知れなさを感じた。所謂「こいつ、できる⁉」という雰囲気を持っている。どのような過去があるのかは知る由もないが少なくない数の修羅場をくぐって来たのだろう。

だがしかし、ほとんどのプロモーターがイニシエーターを連れてきているというのに、彼らの傍らにイニシエーターの姿はない。どちらがプロモーターかは知らないけれど。

 

「用があるなら、自分から名乗れよ」

「あぁ⁉」

 

将監は臆すことなく自分に立ち向かって来た少年が気に入らなかったようだ。少年にいきなり頭突きをかます。しかし、少年にダメージはなく、もうすでに臨戦体制に入っていた。

 

「おい、ガキ。プロモーターなら道具はどうした?」

「道具?」

「お前のイニシエーターのことだよ!!」

「道具……延珠を道具だと!!」

 

少年が叫ぶとそれが引き金になったように各々の得物を手をかける。

 

「やめたまえ、将監!!」

「三カ島さん!!」

 

二人の動きがピタリと止まる。少し荒げた声で将監を止めた男は三カ島ロイヤルガーターの社長だった。止められた将監は彼に不満をぶつける。

 

「だけど三カ島さん!!」

「私に従えないのなら、今すぐここから出て行け」

「……ちっ」

 

抜刀しそうになったバスターソードをしまいながら戻る将監。不満を隠すつもりはないらしい。

 

(惜しいな。もう少し続けばあの少年の腕が見れたのに)

 

恐らくこの場で誰一人として思っていないことが望の胸中だったりする。自分を巻き込まない争いなど望にとってはどうでもいいことだ。今の諍いも会議前の一興もしくは少年のお手並み拝見程度にしか思っていない。

 

「空席一か……先に忠告して置くが、この依頼を辞退する者は今すぐ退出願いたい。この依頼内容を聞くにあたって、途中辞退をできないことが条件だ」

 

荒事が一応の収集を見たあと、すぐに中年の男が現れ、随分と高圧的に忠告する。しかし、この脅し文句大丈夫ですかね?お国がブラック企業とか、勘弁して下さいよ、ほんと。

 

「……よろしい、辞退は無しということで話を始めるとしよう」

 

男はそう言い残し、この部屋を去った。そして、彼が立っていた奥にELパネルが大きく映し出される。

 

『ごきげんよう、皆さん』

 

会議室にいる全員(望以外)が起立、身体に緊張を走らせる。我が東京エリアの国家元首、聖天子だ。一瞬、聖天子は望に目配せしたが、気付いたのは望だけ。おおよそ、聖天子は怠け癖があると思っている望に釘を刺したかったのだろう。

 

『今回の依頼は至極簡単です。昨日、エリア内にガストレアが侵入し、一名の男性をガストレア化させ、現在逃亡中です。民警の方々にはこのガストレアの駆除、及びこのガストレアが所持していると思われるケースを無傷で回収してきて欲しいのです』

 

ELパネルにジェラルミンケースが表示され、聖天子が依頼の内容を説明する。望には話した最も重要な部分を除いて。案の定、民警側の反応は芳しくない。まずは第一段階は合格というところか、と望は値踏みする。任務だけでなく、何かを成すためには何よりも情報が不足してはいけない。情報不足は時に命に関わる。ここで二つ返事で受け答えるならそいつは正義のヒーローなんぞではない、ただの馬鹿だ。

 

よって、導きだされる結論はここにいる民警たちは任務内容のあまりにも多いブラックボックスに危機を、違和感を感じているということだ。伊達に命を張ってるわけではないらしい。しかし、そんな事が出来るだけでこの任務を任せるにはまだ足りない。

 

「質問よろしいでしょうか」

 

凛とした声が会議室に響く。先ほど、将監に絡まれていた少女である。

 

『あなたは?』

 

聖天子が少女の質問に質問で答える。この会議に呼んどいてそれはないだろうとは思うが、偉い人補正がかかっているようなので、望は気にしない。気にしないったら気にしない。

 

「天童民間警備会社社長、天童木更と申します」

 

この時、望は驚きを隠せなかった。ローブを着ていなかったら、奇異の目線を向けられること請け合いな程度には。

 

(まさか、こんなところで『天童』の名を聞くなんてな)

 

天童家。武術に優れた流派であり、政界にも莫大な財力を使って進出している所謂名家だ。何を隠そう聖天子の隣に立っている老人の名は天童菊之丞。名だたる天童家の一人である。

あの木更という少女が天童ならば、プロモーターのあの少年も天童の息がかかっていると見ていい。望は天童木更の後ろに立つ少年を興味深く見つめ、先刻の言葉を反芻する。

 

(延珠を道具だと、か)

 

延珠とはイニシエーターの名前だろう。イニシエーター、いや呪われた子どもたちのことを彼は少なくとも悪いイメージを持っていない。ならば、天童を知っているあの少年は呪われた子供たちをどう思っているのだろうか。あの少年とはいつか話して見たいと望は密かに思う。望の思考の間にも二人の美女の会話は進む。

 

『質問とは何でしょうか、天童社長』

「そのケースの中には何が入っているのでしょうか?」

『……クライアントのプライバシーがありますのでお答えできません』

 

室内が少しざわつく。無理もないことだ。中身の教えられない物を取り返して来い?しかも、国からの依頼?胡散臭いと感じるのはとても容易である。民警側としてはせめて、どれぐらい危険なのかは知りたいところだ。

 

それを物怖じしないで訊くことのできた木更を望は高く評価する。伊達に若くしてここに呼ばれていない、と。面白いことに木更は質問を続けた。

 

「感染源のモデルスパイダー。それならば、この場にいる民警トップクラスの御歴々に依頼する必要性はないと思います。しかも、このような破格の報酬。それに見合うような危険がケースの中身にある……もしくは、他に狙う組織があるのではありませんか?」

『……あなたが知る必要のないことです』

 

聖天子は暗にそれ以上の質問を許さないと言った。あまりにも横暴な物言い、会議室は静寂に包まれた。

 

「フハハハハハハハッ」

 

だから、とても愉快なことが起こっていると言わんばかりの笑い声はよく響いた。

 

『……何者ですか?』

「私だ」

「お前はっ⁉」

 

木更の後ろで立っていた少年が乗り出すように叫ぶ。その先には口が裂けた仮面、シルクハットを被り、趣味の悪い真っ赤な燕尾服を着た道化が空席のだったはずのイスに腰掛けていた。道化は身体を反らしながら、机の上に登り、シルクハットを取りながら演技じみた礼をする。

 

「私は蛭子、蛭子影胤と言う。お初にお目にかかるねぇ、無能な国家元首殿」

 

聖天子は静かに影胤を睨みつける。しかし、影胤は愉快に笑い、それだけで民警たちに警戒心を鋭く走らせる。その筆頭であった少年が銃を構える。

 

「元気だったかい、里見くん?」

「てめぇ、どこから入ってきた⁉」

「無論、正面から堂々とだよ。まぁ、来る途中で襲いかかってきたゴミくずみたいのは掃除させてもらったけどね」

 

いちいち芝居がかった手振り身振りをする影胤は非常に気に障るが、一切の隙もない。影胤と対峙する里見と呼ばれた少年のXD拳銃を持つ手に力が入る。一応、望も動けるように体制を整える。

 

「そうだ、我が娘を紹介しよう。おいで小比奈」

「はい、パパ」

 

小比奈と呼ばれたフリルがあしらわれた黒いワンピースにウェーブのかかった髪の少女がやや手こずりながらも机に登り、スカートをつまみながらうやうやしく頭をさげる。自分の後ろから気配なく現れた少女に里見は驚いていた。

 

「蛭子小比奈、10歳」

「私のイニシエーターにして、娘だ」

「パパ、あいつ鉄砲こっちに向けてるよ?斬っていい?」

「よしよし、まだダメだ。我が娘よ、我慢なさい」

 

とんでもない子が出てきたなと望は思わざるを得なかった。何せ、10歳と名乗ったあどけない少女の背中には真紅の液体がべっとりと付いた二振りの小太刀が背負われていたのだから。そんな少女を目にした里見たちは恐怖心を掻き立てられ、さらに警戒心を強めていた。

 

「何の用だ⁉」

「私もこのレースにエントリーしようと思ってね。それを伝えに来たんだ。そして、私たちがこのレースに勝ち、七星の遺産をいただくとも言っておこう」

「七星の遺産?」

「おやぁ、知らされてないようだね、里見くん」

 

おやおや、これはフェアでにならないなぁ、と顔を手で覆いながら影胤は嫌味たっぷりに笑う。

 

「君達が探すことになっていたアタッシュケースの中身だよ。さあ、諸君ルールの確認をしようじゃないか。どちらが七星の遺産を手に入れるかの勝負。もちろん、妨害、略奪もアリだ。賭け金は君達の命でいかが?」

 

楽しそうに巫山戯たことを提案する影胤。しかし、彼の前でそのような巫山戯た真似は許されなかった。

 

「グダグダうっせえんだよ‼」

 

将監がバスターソードを携え襲いかかる。大柄な身体に似合わず、スピードは序列に恥じぬスピードであった。しかし逆にいうと序列に見合ったスピードでしかなかった。

 

「ヒヒッ、残念」

 

将監のバスターソードは影胤に届くことなく見えない壁に阻まれ、簡単に弾かれる。

 

「なっ⁉」

「下がれ、将監!!」

 

将監が影胤と距離をとったことを確認するや否や、一切に撃ち出されるバラニウム弾。しかし、将監のバスターソードと同じく、見えない壁に阻まれ、影胤の周囲に浮いていた。その中心に存在する影胤は楽しそうに殺気を放っていた。

 

「バリアー⁉」

「斥力フィールド。私は『イマジナリーギミック』と呼んでいる」

「あんた、本当に人間なのか?」

「もちろん、私は列記とした人間だ。しかし、少しばかり身体を弄ってはいるがね。さて、この銃弾のお返しをしようか。無論、礼はいらないよ」

「伏せろっ!!!!」

 

影胤が何をするか察した里見が叫ぶ。しかしほとんどの者が間に合わず、影胤の周囲に浮いていた銃弾の猛威にさらされた。

 

「ねぇパパ。まだ生きてるのいる、斬っていい?」

 

小比奈のいうように里見や彼に守られた天童は無傷だった。他にも致命傷をまぬがれた者もいたが、今、この場は影胤の圧倒的優勢の状況である。しかし、影胤が彼らに止めを刺すことはなかった。

 

「ダメだよ、小比奈。私は眠れる虎の尾を踏みたくないからね。今は我慢しなさい」

「トラ?パパ、ここにトラいるの?」

「……そういう意味ではないよ、小比奈」

 

小比奈の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいたが、それに影胤は答える事なく部屋の隅を睨みつけていた。

つまり、望のいる部屋の隅を睨みつけていた。

 

影胤はひとしきり望と睨み合い、望が自分の邪魔をする気がないのを確認するとシルクハットをかぶり直す。

 

「今日はこの辺で失礼しよう。そうだ里見くん、これは私からのほんの気持ちだ。受け取ってくれたまえ」

 

影胤は自分の手に白いハンカチをかぶせ、そこから手品のようにリボンで飾られた箱を取り出した。

 

「では、失礼するよ」

 

箱を机の上に置き、聖天子と里見に白々しく頭をたれる。そして、ごく自然に窓の外へと小比奈とともに飛び立った。

嵐が過ぎ去ったかのような静寂。いち早く回復した聖天子が口を開いた。

 

『先ほどの依頼の内容に追加します。あの男より早くケースを奪還し、保護してください。ケースの中には『七星の遺産』、この東京エリアに未曾有の大災害を起こす封印指定物がはいっています』

 

プレゼントの中から静かに真っ赤な液体が滴る。

 

 

民警たちが病院に搬送されたり、任務のために勢いよく飛び出していったあと、望は会議室とは違う部屋に通された。そして向かいのパネルには聖天子が映っている。

 

『まさか、あの様な邪魔が入ることになるなんて』

 

聖天子が会議室では見せなかった焦りを見せる。

 

「当然だろ。無能な国家元首殿」

 

影胤と同じ呼び方をした望を聖天子は睨みつける。ちなみに望はこの呼び方を気に入っている。

 

「そもそも、七星の遺産の運送中にガストレアに襲われたっていう話の時点できな臭いだろ。影胤は運送について知っていた奴の差し金と考えていい」

 

その誰かは知らないけど、と望は興味がなさそうに付け加える。

顎に手を当て、難しい顔をした聖天子は少し考える。

 

『黒幕のほうは私に任せて下さい。望さん……遺産は取り返せそうですか?』

「蛭子さえいなければ、問題ないと言いたいところだったんだがなぁ」

『蛭子影胤、小比奈ペア。元IP民警序列134位。数多くの殺人を犯し、民警ライセンスを剥奪され、序列も凍結中……』

「んで、新人類創造計画の機械化兵士か……」

 

望は黒服のお兄さんから渡された資料をペラペラとめくる。

 

『今回、依頼した中に100番代の民警はいないのですが』

「多分、無理だな。里見少年がかろうじて互角といったところだ」

『……里見さんだけですか。では、約束通りに望さん、約束通り依頼受けていただけますね?』

 

聖天子がいつになく神妙な顔で頼む。しかし望の答えはNOだ。ただし、以前とは違う意味合いでNOと答える。

 

「悪い、今は答えられない。これは……もしも影胤がやらなくてもいつかは俺がやっていたことだ。やり方はもう少し違うかもしれないけれど」

『……それは一体どういう意味で仰ってるのですか?』

 

いきなりの反乱宣言に取り乱しそうになる聖天子。しかし、望は気にせず淡々と語る。

 

「俺はこの世界の在り方が気に食わない。希が認められない世界なんて糞食らえだ。だから、もし影胤が赤目の子どもたち……いや、呪われた子どもたちのためにこの東京エリアを滅ぼすのならば、俺はそれを止めることができない」

 

望の生きる意味。それは常に希のため。希のためならば国の一つや二つ壊しても構わない。そのために望は強くなった。“あの時”の約束を忘れた事はない。聖天子は俯いたりしないものの、瞳は悲しみをたたえていた。

 

『やはり、そうですか。薄々、気付いてはいましたが、あなたは『動く』人なんですね……』

「あぁ、誰かみたいに『いつか叶うかもしれない』理想を語るだけじゃ俺は終われないんでね」

 

望は真っ向から聖天子の何かを願う瞳に立ち向かう。

 

「だから、時間が欲しい。蛭子の真意を確かめる」

 

望は短く伝えると部屋のドアを開ける。その言葉を聞いた聖天子は半ば諦めていた顔に光を宿し、いつもの彼女らしからぬ嬉しそうな声で言う。

 

『はい、お待ちしています』

 

望は甘いなと自分に思いつつ、部屋を後にした。

 




望ェ……

何もしてないんですけど……

次回は戦います……多分(ただし、活躍するとは言ってない笑)
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