ブラック・ブレット〜Perfect Answer〜   作:哉識

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お久しぶりです。前回とだいぶ間が空いてしまって申し訳ない。

最初に一言。

私は決して小比奈ちゃんが嫌いなわけではありません。




第五話

 

望の乗ったヘリはターゲットのガストレアが発見された森に向かって上空を飛んでいた。春香の話では今回のターゲットは独自に進化したガストレアらしく、クモのくせに飛ぶらしい。

 

おそらく、先に向かっている里見・藍原ペアはもう交戦しているはずであり、あの二人ならば特に苦戦することなくガストレアは倒してしまうだろうとも望は話から予測していた。

 

だがしかし、問題はここからである。

 

蛭子影胤。こいつが介入してくることはほぼ間違いない。しかし、今の蓮太郎では荷が重い相手だ。

 

望としては蓮太郎が影胤にやられてしまう前になんとしても合流したいところだ。そうじゃないとお荷物を背負って戦うことになる。

 

望が最悪の場合になった時のプランを頭の中で組み立てていると、

 

大きな爆発音がした。

 

「爆発っ⁉みんなっ、準備して!!」

 

春香さんが操縦士に高度を下げるように指示を出す。望以外のコンビが降下用パラシュートを用意し始める。そんな中望は一人、ヘリの扉を開ける。

 

「さささ、先に行きましゅ……」

「え⁉ここから⁉流石のあなたでも死ぬわよ⁉」

 

春香の声が聴こえた時にはもう望は降下、否、落下していた。ちなみに返事を聞かずに飛びしたのは噛んでしまった照れ隠しだったりする。

 

上空何百メートルで悶絶する望。しかし、事態は切迫している。巫山戯ている暇はないのだ。まさかこうも簡単に影胤に見つかるとは里見の普段の行いはあまり良くないようだ。

 

イケメンざまあメシウマメシウマ(ゲス顔)

 

「思ったより蛭子影胤の動きが早い」

 

コートから取り出したナイフを一本の大樹に向かって投げる。投げられたナイフは大樹に深く突き刺さり、望はナイフに接続されたワイヤーを空中ブランコのように操り、もう一度自身を空中に放り出す。空中で衝撃を出来る限り小さくできる体勢をとり、砂煙を巻き上げながら着地した。

 

「久しぶりだな、このとんでもアクロバティック着地」

 

独り言を呟いたのも束の間、爆発音がした位置を確認する。適当に落ちてきたわりにはもう目と鼻の先だった。しかし、望が進もうとする道にピョンピョンとウサギのように跳ねる影を見つける。

 

「結構、速いな……影胤、いや小比奈か?」

 

敵、もしくは新手のガストレアだと望は判断し、木から引き抜いたナイフを逆手持ちで構え警戒する。しかし、影は減速することなく望に突撃した。

 

ガストレアですらしないであろう予想を越えた攻撃に望は完璧に不意をつかれた。すぐさまこいつを引き剥がし距離とらなければと、すぐに立ち上がるが、真紅の瞳から涙を零す少女に抱きつかれていたことに気付く。

 

「頼むっ!助けてくれっ、このままでは蓮太郎っ、蓮太郎がっ!」

 

影の正体は藍原延珠。里見蓮太郎のイニシエーターだった。この取り乱しようはおそらく蓮太郎が影胤に手酷くやられたに違いない。予想された最悪の事態。

 

ならば、急ぐべきか。迷ってる暇は無い。

 

「分かった。道案内してくれ」

「あっちだ!」

「しっかり捕まってろよ」

 

望は延珠をお姫様抱っこしながら指差された方向へと超高速で走り出した。

 

「は、速っ!!」

 

あまりのスピードに延珠は望に振り落とされないようにしがみつく。モデルラビットの自分ですら出せない速度で走る人間に延珠は驚きを隠せなかった。延珠が数分かけた道をものの数十秒で望は走り抜ける。

 

そして、影胤の姿を見つけるや否や延珠を片手で抱えながら、拳を叩きつけた。

 

「パパっ!!」

「チッ、マキシマムペイン!!」

 

助走で威力が増した望の拳は斥力の壁を破るには至らず、弾かれた。それを弾かれる前に察した望は斥力の壁を足場に大きく跳躍。蓮太郎を庇う位置に降り立ち、延珠を静かに降ろした。

 

「蓮太郎っ!!」

「……え……延珠……な、んで戻って……」

「待ってろ蓮太郎。すぐに手当てしてやるからな」

 

血だらけの蓮太郎が延珠の名を苦しそうに呟く。降ろしてもらった延珠はすぐさま蓮太郎に駆け寄り手を握る。

 

「パパ、あいつ攻撃してきた。斬って良い?」

「いいよ、小比奈。殺してしまいなさい」

 

影胤から許しを得ると小比奈は嬉々として望に襲いかかる。小比奈は小太刀を力任せに振るう。

 

だが、望の売りはイニシエーターよりも段違いに速いスピード。小比奈のように考えなしに大振りをする相手は格好の相手だ。

 

望は小比奈が小太刀を振るう前に懐に潜り込み、掌底を打ち込む。

 

「うっ」

 

望は小比奈を休ませる暇なく頭を強引に掴み、影胤に向かって投げつける。そして、流れるように脚部のホルスターからMAC11を取り出し、蛭子親子に向かって発射する。

 

「イマジナリーギミック!」

 

影胤は小比奈を庇うように斥力フィールドを展開して銃弾から小比奈を守った。

意外にも影胤に小比奈を捨て駒にする気はないらしいと望は判断し、攻略の際に有効なカードになると頭の片隅にとどめておく。

 

そして、血だらけの蓮太郎を一瞥する。大きなキズは二カ所。どちらも身体を深々と貫かれていた。他にも銃弾に穿たれた傷が何カ所かあった。このままでは失血死の恐れがある。一刻も早く手当てをする必要がある大怪我だ。望はどうにも旗色が悪いことに顔をしかめる。

 

「ここに来て真打ちかい?……厄介なこと極まりない」

「斬りたい斬りたい斬りたい斬りたい斬りたい斬りたい斬りたい斬りたい斬りたい斬りたいっ!!」

「誰かは知らないけれど、容赦はしない、ヒヒッ!」

 

小比奈が前衛、影胤が後衛で先程とは違い連携して望に攻撃を仕掛ける。まずは小比奈の猛スピードによる数々の斬撃を望は難なく躱す。大振りをした小比奈の隙をつこうと望がすると、影胤が趣味の悪いカスタムをされたベレッタを片手に望のクロスレンジに踏み込んでくる。

 

「エンドレス・スクリーム!!」

 

掌底から斥力の槍を望に向けて打ち出す。望はその場で軽く跳び、斥力の槍は望がいた地面を深々と抉る。お返しに望はそのまま回転蹴りを放った。影胤は身体を後ろに逸らし望の蹴りをやり過ごしつつ、そのままの体勢で持っていたベレッタ・カスタムを撃つ。銃弾を望は容赦無くナイフでたたき落とし、一度着地。

 

その瞬間、すぐに影胤に向けてスタートを切る。しかし、望の首筋を嫌悪感が這い登った。数え切れない程の修羅場をくぐり抜けて来た「完璧の答」としての第六感が危険を感じたのだ。望は疑うことなく、自分の感覚に従い、その場で大きく跳躍。

 

「マキシマム・ペイン!!」

 

影胤が言葉を発した瞬間、望がいた直線上は根こそぎになっていた。人間としては規格外な威力を目の当たりにした望は厄介な能力だと、悪態をつく。

 

「バラバラになっちゃえ」

 

滞空中の望に小比奈が追い打ちをかける。流石のの望でも滞空中では回避行動をとることは難しい。

 

「チッ」

 

悪足掻きをするように望はナイフ投げつけるが、小比奈は首を傾けるだけで躱した。

 

どんな強者であろうと人の子であるかぎり、空中ではただの的。

 

つまり、この追い打ちは影胤の歴戦の経験則も小比奈のイニシエーターとして生まれた生来の戦闘センスも勝利を確信して疑わなかった。実際、2人はこのコンビネーションで幾人もの強敵を屠ってきたのだ。今回も繰り返し同じ事をしただけ。なんら変わりのないルーチンワーク。

しかし、今回は相手が悪かった。

 

望の身体は先程投げつけたナイフが刺さった大きな木に引っ張られ、小比奈の攻撃を躱す。そして、望が木の枝に着地した直後、木を揺るがすほどの踏み込みで再び空へ舞う。勿論、狙いは小比奈である。

 

さっきと打って変わって、防戦一方になった小比奈は小太刀を自分の前で交差させた。望はナイフを下から振り上げ、ガードを崩し、小比奈の小さな身体目掛けて蹴りをいれる。続けて、両手のナイフを地面に突き刺し、ナイフに繋がっているワイヤーを巻く。落下スピードにワイヤーの戻るスピードをプラスしながら望は落下する。そして、そのまま望は小比奈を思いっきり踏み付ける。

 

望流ワイヤー式急降下(ダイブ)キック。この一撃で小比奈の意識は刈り取られていた。

 

小さな女の子を容赦無く叩きのめした罪悪感など微塵も感じさせずに望は影胤に相対する。

 

「随分とアクロバティックな戦い方をするね、君は。まさか小比奈がただの人間にやられるとは思わなかったよ」

「まぁ、ただのの人間じゃないからな。それにこういう時は“アレ”だよな」

 

望は小比奈を倒されたことに憤る影胤のことは御構い無しに独り言を呟く。そして、ビシッと効果音が付きそうなぐらい影胤を指差す。

 

「お前たちは一体いつから、俺が空中で動けないと錯覚していた?」

「冗談にしても本当にたちが悪い。私には少しばかし荷が重過ぎる相手だよ、君は!!」

 

狂乱したのか影胤はベレッタを全く狙いを付けずに乱射する。すると、延珠と倒れてる蓮太郎の近くの木々が倒れていく。

 

(狙いはこっちか、まぁそうくるだろうな。俺だったらそうするし)

 

望は即座に移動し、延珠たちに向かって倒れていく木々を力任せに蹴りつけ、粉々に砕く。

 

「では、さらばだ。白い悪魔、滅びの時は近い!!」

 

影胤が小比奈を抱え、アタッシュケースを持って去っていくのが、数々の倒木の奥に見えた。蓮太郎のことを置いて行きたいが、延珠に頼まれた手前それはできない。

 

「誰がガン○ムだ、誰が」

 

負け惜しみの様に呟く望。今回の任務は失敗。久々の敗北である。望はもう過ぎたことだと頭の中から振り切り、蓮太郎の様子を確認する。

 

「このままだと間違いなく失血死だな。これであってるのかも知らんし、麻酔もないから我慢しろよ」

 

望は右腕に集中すると人工皮膚が弾け、真っ黒の腕が現れる。今、望の右腕には5000Vもの高周波の電圧が通っていて、その腕を蓮太郎の傷口に押し付ける。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「な、蓮太郎に何をする!!」

「止血だ。電気メスみたいに傷口を焼いて止血でもしないと病院までもたないぞ、こいつ」

 

苦しみ暴れる蓮太郎を押さえつけ、淡々と望は荒療治を施す。延珠にはだいぶショッキングな光景だったが、蓮太郎を助けるためだ。それを察したのか延珠はそっと蓮太郎の手を握っていた。

 

「とりあえず、血は止まったな。でも、まだ危ないな」

 

出血が止まったことを確認した望は蓮太郎のポケットを弄り、携帯を取り出し、延珠に投げる。

 

「お前らの会社の社長に連絡しろ」

「わかった!」

 

その間に蓮太郎を肩に担ぎ、延珠を抱える。そして、森から出る最短ルートを全速力で走り始める。

 

「き、木更!!れ、蓮太郎が!」

『その声は延珠ちゃん⁉里見くんがどうしたの⁉』

 

どうやら天童木更と繋がったようだ。望は半ばパニック状態に陥っている延珠にいつか希にもやったように優しく話し掛ける。

 

「繋がったのならその相手と話させてくれ」

「う、うむ。木更、助けてくれた仮面のヒーローに変わるぞ」

『か、仮面⁉』

「天童木更か?」

『……そうですけど、あなたは?』

「すまないが、一秒でも時間が惜しい。今からスタート地点βに救急車を手配してくれ。状況は腹部二カ所貫かれてる。……他にも結構撃たれてるな。今は傷口を焼いて止血してる状態だ。相当出血してるから、失血の恐れもある。一刻も早く治療が必要だ」

 

延珠に携帯を耳に当ててもらいながら木更に状況を伝える。

 

『分かりました。すぐに手配します!』

 

木更はそう言うと通話を切る。話が早くて何よりだ。

どもったり、噛んだりせずに知らない人と話せたことは望的に本日一番の頑張りだな、帰ったら希に目一杯褒めてもらおうと心に決める。ここ、重要。

 

蓮太郎について打てるだけの手は打った。あとは蓮太郎の運次第だ。

 

「えっと……名前、延珠だったか?」

「うむ。妾は藍原延珠、蓮太郎のイニシエーターなのだ。蓮太郎を助けてくれて本当にありがとう」

「藍原延珠、助けた代わりに頼みを聞いて欲しいんだが」

「おぬしは蓮太郎の命の恩人だ。妾に出来ることなら何でも構わないぞ」

 

な、何でもって……あんなことやそんなことでも良いんですかね(ゲス顔)

 

冗談はさて置き、望は本題に乗り出す。

 

「俺の事を誰にも言わないで欲しい。特に……この腕の事は」

 

黒光りする右腕。これは影胤と同じ、新人類創造計画で産み出された機械化兵士だと言う事を意味する。

 

「うむ、わかった。だが、蓮太郎もおぬしと同じきかいかへーしとやらだぞ。何で隠す必要があるのだ?」

「……俺は機械化兵士ではない、としか言えない。

 

……口が滑ったなぁ。はぁ、人助けなんて慣れないことするもんじない。

 

いらない事まで教えてやったんだ。約束守ってくれるよな」

 

にやりと獰猛な笑みを見せる望。

それに延珠は無い胸を目一杯張って答えた。

 

「任せとけ。だが、蓮太郎にどう説明したら良いのだ?」

 

里見と天童に嗅ぎ回られるのも面倒だな……望は何か良い手がないか思案する。

 

「里見にはそのうちまた会えるとだけ言っといてくれ。

あと、守りたいものがあるなら手を抜くな、とも伝えておいてくれ」

「うむ、わかった。蓮太郎が起きたら必ず伝える」

 

これでざっくりとだが、事後処理は良いだろう。

望は合流地点に指定したβ地点に到着。まだ木更は到着していないようだ。ゆっくりと蓮太郎を地面に寝かせ、延珠も降ろした。

 

「さて、俺はこれでお暇させて貰うぞ」

 

望は片膝をつき、延珠と同じ目線になって告げる。

 

「また会えるか?」

「……何でそんな事を訊く?」

「おぬしは呪われた子供たちである妾の頼みを嫌な顔しないで聞いてくれた。だから、おぬしは凄く良いやつなのだ」

「良いやつ……ねぇ」

 

望はしみじみとその言葉を呟く。仮面の奥で望が何を考えているのか延珠には分からない。

 

望としては蓮太郎がどうなろうとどうでも良かった。しかし、延珠に、呪われた子供たちに頼まれたから助けた、それだけだ。

 

つまり、呪われた子供たちで良かったな、望は延珠にそう思っているのだ。

 

これは呪われた子供たちが可哀想だから、差別されているからでは無く、純粋に希と同じ目をした女の子に望が弱いだけである。どちらかというと、望は呪われた子供たちより普通の人間の方を劣等民族だと思っているまである。理由は言うまでもないだろう。

 

故に全て自分の我儘でやったこと。望としては良いやつと言われる理由がないので、あまりピンとこない。だから、この様な曖昧な返事になってしまった。

 

「お前たちが呪われた子供たちを救いたいと思っていたら、また会える……かもな」

「そうか、じゃあきっとまた会えるな!!」

 

延珠はニコッと笑う。よく分からないが随分と気に入られたものだ。別に特別なことをしている訳でもないのに。

 

それに、まだ蓮太郎が助かったと決まった訳ではない。けれど、こんな小さな女神がいるのだ。きっと助かるだろう。

 

「延珠ちゃん!!」

 

声のする方を見ると木更の乗ったヘリコプターが上空から降下していた。

 

「さてと、じゃあな藍原延珠。まぁ、そのなんだ……里見のことしっかり見守ってやれよ」

「当然だ!また今度なのだ真っ白仮面」

 

そう言うと延珠は小さな身体で蓮太郎を背負い、木更に向けて手を振った。

 

「白い悪魔の次は真っ白仮面かよ……」

 

望は全身に()()()()を送り、雷のように消えた。

 

 

 

 

 

「とんだ道草を食っちまった。これは希に癒してもらうに限る」

 

この時、望の頬が緩んでいた事は誰も知らない。

 

 





望の強さ、わかって貰えたでしょうか?
うーむ、今ひとつ物足りない感が……

延珠の口調考えるの難しい。

何か改善点、誤字脱字などありましたら、気軽にお願いします。
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