ドラクエの基本設定は主にドラクエ11を踏襲するも、階層主や一部のモンスターはダンまち準拠です。
〇主人公=アルス・クラネル(ベルの双子の弟)
〇カミュ=ベル・クラネル
第1話 アルスは レベル2に あがった!
遠い昔、神は人間達が暮らす下界に刺激を求めて降りてきた。そして神達は決めた。この下界で永遠に人間達と共に暮らそうと。神の力を封印して、不自由さと不便さに囲まれて、楽しく生きようと。
神達が人間達に与えられるのは、たった一つ。恩恵という名のモンスターと戦う力だけ。与えられた子供達はその神の眷属、ファミリアになる。
これは竈の女神のファミリアとなった
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
ダンジョンの5階層に響き渡る獣染みた雄叫び。
ベル・クラネルは双子の弟のアルス・クラネルを肩に抱えながら必死に逃げていた。
「アルス! アルス、しっかりして!」
「――」
頭部が血まみれなアルスに何度も呼びかけるも反応は薄い。
息をしているので命があるのは間違いないが意識があるかどうかは分からない。力の入っていない手をしっかりと肩に担ぎ、徐々に近づいてくるモンスターから必死に逃げる。
「なんでミノタウロスが5階層に……」
出会い頭に遭遇したのは、本来ならば中層である15階層以下に出現するのが一般見解とされているミノタウロス。
上級冒険者とされるLv.2と同等にカテゴライズされるモンスターに、冒険者となって半月程度の新人のステイタスではたった一撃で瀕死のダメージを負うこともある。実際、ミノタウロスの一撃でアルスは防御した片手剣を粉砕され、微かに頭部を掠めただけでこの有様となった。
「ブゥムゥンッ!!」
急に間近に聞こえたミノタウロスの声にベルが顔だけ背後を振り返る。自分達が直線状にいること、明らかにミノタウロスが突進態勢を取ったのに気づいた。
――――――――――ミノタウロスは ツノを構えた突撃を しかけてきた!
「いっ!?」
――――――――――ベルは すばやく みをかわした!
ベル達を標的と定め、凄い速さで数十メートルはあった距離を瞬く間に詰めてきたミノタウロスのタックルを横っ飛びして躱す。
奇跡的に回避に成功するも突進の風圧と、ミノタウロスが壁に激突した衝撃で抱えていたアルス諸共に吹き飛ばされた。ゴロゴロとダンジョンの床を何度も転がる。
「あ、アルス――」
固い地面に体を打ち付けた痛みに呻きながら同じように吹き飛ばされたアルスを探していると、目の前に仁王立ちするミノタウロスに気づいて言葉を失った。
「ブゥー、ブゥーッ……」
固い壁に突進したにも関わらず傷一つない体で、荒い鼻息が地面に尻もちをついているベルの髪を揺らす。
「ぅぁ」
少しでも距離を取ろうと臀部を床に落とした状態で後ずさりすると何かに当たった。ミノタウロスから視線を離せないので、横目で確認すると壁際で倒れているアルスだった。つまり、これ以上は下がれない。
「あ、アルスは僕が守るんだ」
意気込んで見せたところで、半月分のお金を注ぎ込んで買ったアルスの『どうのつるぎ』が『ひのきのぼう』のように簡単に粉砕されたのだ。二回りは大きく筋骨隆々なミノタウロスを前にしたら手に持つギルド支給の短剣のあまりの頼りなさに泣きたくなった。
赤銅色の体皮のミノタウロスが足を振り上げて、その蹄で自分達を踏み潰そうとしてもベルには身を守るように腕を掲げるだけで他には何もできなかった。
――――――――――アイズの こうげき!
――――――――――ミノタウロスに ダメージ!
「え?」
掲げた腕の合間から見えた、ミノタウロスの振り上げた足に突如として横一文字の線が走った。
「ヴォ?」
ミノタウロスが間抜けな声を上げた片足を失ってバランスを失い崩れ落ちる。
――――――――――アイズの こうげき!
――――――――――ミノタウロスに ダメージ!
なんとか振り返ったミノタウロスが背後に向かって振るった左手が、細い剣のようなもので真っ二つに切り裂かれて中の肉が剥き出しになった。
――――――――――アイズの こうげき!
――――――――――ミノタウロスに ダメージ!
更に銀閃が走り、左肩から右腰まで真っ二つに切り裂かれたミノタウロスから噴き出した血が背後にいたベルごと壁にビシャリと撒き散らす。
「グブゥ!? ヴゥ、ヴゥモオオオオオオ――――!?」
最後の断末魔が残響だけを残してやがて消えるように、体を幾重にも切り裂かれたミノタウロスはその体を霧散させた。
――――――――――ミノタウロスを たおした!
――――――――――アルスは 1321ポイントの経験値を かくとく!
ミノタウロスの血のシャワーを全身に浴び、あっという間の展開に呆然としているベルの前に立つ銀閃を放った少女が剣を鞘に収める。
「――――後ろの人は、大丈夫ですか?」
長い金髪に身軽さを重視した銀の装甲を纏った少女が問いかけてくる。
ベルは何も答えられない。
「あの、立てますか?」
少女が差し伸べた手を見て、ミノタウロスを瞬殺できるはずの熟練冒険者のはずなのに柔らかそうだと思い、再びその相貌へと視線を戻す。
「だっ」
「だ?」
「だぁあああああああああああああああああああああ!!」
がばっと跳ね起きたベルは内心で吹き荒れる感情に振り回されて、正しく脱兎の如く全力で逃げ出した。
ポカンと手を差し出した姿勢のまま、ベルが逃げ去った通路の奥から奇声が木霊する。
「――」
実は意識があったアルスが覚えていたのは、ここまでだった。
目を見開いて立ち尽くす少女と、その後ろで震えながら腹を抱えて必死に笑いを堪えている獣人の姿を見たのを最後に途切れた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
パッ、と意識が回復する。
目を開けて最初に見るのは、ヘスティア・ファミリアが拠点としている壊れかけの教会のボロボロな天井ではなく、明らかにランクが違うと分かるどこかの一室。
「――」
横になっているベッドにしても、古くて固い教会のマットレスと違い柔らかくアルスの体を優しく包み込んでくれていた。
もう一度眠りたい衝動に駆られながら、直ぐ近くの人の気配がある方へと顔を動かす。
「やあ、起きたようだね」
アルスが起きたのを確認して、ベッドの脇の椅子に座る金髪の少年が穏やかに微笑む。
「ここは、ロキ・ファミリアのホームだよ。僕は団長のフィン・ディムナ」
ゆっくりと体を起こしたアルスは頭に手をやり、痛みどころか傷一つない状態に気づいて恐らく治療をしてくれたのだろうと判断して、自分の名前とファミリア名の後に礼を述べる。
「ああ、意識を失う前のことは覚えているんだね。礼はいらないよ。むしろこっちが謝罪をしなければならない立場にある」
なんのことか分からないとばかりに首を傾げるアルスに、フィンは苦い表情で続ける。
「あのミノタウロスを中層で逃がして上層にまで行かせてしまったのは僕達だ。手当てと、安全の確保は当然の義務。此度のこと、本当にすまなかった。ロキ・ファミリアを代表して深く謝罪する」
説明を受けてアルスは上層にいるはずのないミノタウロスの遭遇と、やけに早かった上級冒険者の登場に納得した。
十分な対応に、オラリオトップの派閥の長に深く頭を下げられて、逆にこちらの方が申し訳なくなって頭を下げる。
「今回のことで武器を失ったみたいだね。賠償というわけではないが、武器のいくつかを受け取ってはくれないだろうか。見たところ、冒険者になってそう時間も経っていない。資金に余裕があるわけではないだろう?」
その提案にアルスの心は動いた。
冒険者になった頃は資金もなくギルド支給の装備を使っていたが、今回の直前に半月分のお金を使って『どうのつるぎ』を購入してそちらに切り替えていたがミノタウロスに粉砕されてしまった。
フィンが言うように手元に資金はなく、新しい武器を買うお金がない。
アドバイザーに止められていたにも関わらず5階層にまで潜ったのも、使った分の資金を補充する為の側面が大きかったのだ。
「決まりだね。これから取ってくるから少し待っていてくれ」
即物的な心の動きを正確に読み取ったフィンが部屋を出て行った。
人の気配の無くなった部屋に一人残されたアルスはそろりとベッドから抜け出し、好奇心に駆られて部屋の中を見回す。
アルスがいる部屋は来客用か、単なる空き部屋かは分からないが、テーブルとベッドの他には簡単な荷物を入れられるチェスト、服を収納するクローゼット的なものがある。
まずはクローゼットを開いて中を確認する。
「――」
何も無かった。
次はチェストを順番に開けていくと、一番下の棚に何かを見つけた。
――――――――――アルスは レシピブック 『プラチナの武器目録』を 手に入れた!
――――――――――プラチナソードの レシピを 覚えた!
――――――――――プラチナブレードの レシピを 覚えた!
――――――――――プラチナのやりの レシピを 覚えた!
――――――――――プラチナクローの レシピを 覚えた!
レシピを懐に隠したアルスはベッドへと戻る。
すると、ドアがバンと大きな音を立てて開かれた。
「やあやあ、起きとるな」
「ロキ、入り口で止まらないでくれ」
「へいへい」
ドアを開けたのは糸目の女神で、背後にいる両手の塞がったフィンに急かされて室内に入ってくる。
「待たせてしまったね。君達がどの武器を使うか分からないから幾つか持ってきてみたんだが」
「無難に短剣、片手剣、両手剣と大穴のブーメランや。うちの見習いが駆け出しを卒業した時に使う代物やからそんなに恐縮せんでもええで」
テーブルに置かれた四種類の武器を見る。
片手剣『せいどうのつるぎ』、大剣『どうの大剣』、短剣『ブロンズナイフ』、ブーメラン『クロスブーメラン』は今までロキ・ファミリアで使われてきた年季が感じられるが、武器としては十分な性能がある。
整備もしっかりとされているので、今回の賠償として受け取るには十分な代物だろう。
なによりもアルス達が半月分のお金を注ぎ込んで買った『どうのつるぎ』よりも『せいどうのつるぎ』の方が武器性能でワンランク上。
「――」
「満足してくれたやったら良かったわ」
ここで断ってもいいが、先立つものがないので有難く受け取ることにして四つの武器を全て手にする。
――――――――――アルスは せいどうのつるぎ、どうの大剣、ブロンズナイフ、クロスブーメランを 手に入れた!
「て、全部取るんかい」
「ロキ」
「いや、普通全部とは思わんやろ」
全部鞘付き、固定具付きなのでとても助かる。
『ブロンズナイフ』を腰の後ろに差し、『せいどうのつるぎ』を左腰に固定する。『どうの大剣』は背負って抱え、『クロスブーメラン』を手に持つ。
「――」
「良き冒険を。君達のファミリアが壮健であることを祈っているよ」
貰える物を貰ったアルスは、懐に『プラチナの武器目録のレシピ』を抱えてルンルン気分でロキ・ファミリアのホームを去ったのだった。
ロキ・ファミリアのホーム「黄昏の館」からスキップでもしそうな雰囲気で、ヘスティア・ファミリアのホームである教会へと帰ってきたアルスは入り口のドアを開けようとしたところで手を止めた。
何やら中が騒がしい。しかも声がどんどん近づいていた。直感が働いてドアから二歩ほど下がる。
バンとただでさえボロボロなドアは力任せに開かれて勢いで蝶番が外れて飛んでいき、中から少女が走る勢いで飛び出してきた。
「アルス君を迷宮に置いてきたって君は何を考えているんだ――!」
背後にいる誰かに叫びながら走る少女は立ち止まっていたアルスに気づかずにぶつかった。
「アイタッ!?」
体格で劣り、大剣や片手剣にブーメランまで備えているアルスとぶつかった少女が弾き飛ばされた。
そのまま倒れるかと思われた少女を、後を追って教会から出てきた白髪の少年が受け止める。
「あ、アルス!?」
よっ、とばかりにブーメランを持っていない方の手を上げて軽い双子の弟の元気な姿にベルは泣いた。
「ミノタウロスに遭遇して死にかけただけじゃなくて、ダンジョンにアルス君を置いて帰ってきたと聞いた時の僕の気持ちをベル君は知るべきだと思うんだ」
「はい、すみません」
ボロボロな教会の外見に負けず劣らずの室内の床に正座したベルが、極東で最上級の謝罪のポーズだという土下座を繰り返して先ほどとは違う理由で泣いていた。
「せっかく、露店の売り上げに貢献して貰った大量のジャガ丸くんでパーティーにしようと思ったのに、たった二人しかいないファミリアがいきなり一人になってたら僕は泣いちゃうぜ」
「はい、すみません」
「大いに反省してくれたまえよ、ベル君。君には団長として、これから大きくなっていくヘスティア・ファミリアを纏めていかなくちゃいけないんだからね」
一人ソファに座って訥々語っていたヘスティア・ファミリアの主神であるヘスティアを土下座の姿勢から顔を上げたベルが見上げる。
「…………本当に僕が団長でいいんでしょうか? アルスの方が」
「アルス君は止めておけ」
つら、とヘスティアが顔を横に向ければ話題の中心でありながら、一人でパクパクとジャガ丸くんを腹に収めていくアルスがいた。
「唯我独尊というか、自分本位というか、現時点ではマイペースなアルス君よりベル君の方が団長に向いていると僕が判断したんだ。頑張ってくれよ」
「はい……」
「アルス君も食べるのはいいけど、僕とベル君の分も残しておいてくれよ」
了解、とばかりに口を大きく膨らませたアルスが親指を立てる。
「この有様だからね。アルス君も気にしてないようだからこれ以上は言わないけれど、君一人のファミリアでないことは理解しておくれ」
自分がアルスの分もしっかりしなければ、と物心ついた時から何度も決心した内容を反芻しているベルにヘスティアは一つ頷く。
「まあ、あのロキから賠償として武器をせしめてきたのは良くやった! 褒めて遣わす!!」
「神様ぁ……」
「当然の要求だろ? ベル君はともかくアルス君の武器は彼らの不手際の所為で失ってしまったんだ。これぐらいは補填して貰わないと割に合わないよ」
「でも、こんな上等な武器を貰って本当に良かったんでしょうか」
壁に立てかけられた四つの武器に視線をやり、ベルは返した方がいいんじゃないかと思わずにはいられなかった。
「いいんだよ。寧ろ足りないぐらいのをこっちが妥協してやってるんだ。感謝してほしいくらいだね」
「そうでしょうか……」
「そんなことより死にかけるほどの冒険だったんだろ。先にベル君の方からステイタスを更新しておこうか」
「はい!」
それはそれとして、待ってましたとばかりにベルは上半身の服を脱いでベッドにうつ伏せになり、ヘスティアがその上に乗る。
ヘスティアが取り出した針を指先に差し、滲み出た血を露出したベルの背中に描かれている黒の文字群へと滴り落とす。ベルの背中に落ちた血が光の波紋を生み出し、ヘスティアが指でなぞると中空に神聖文字が浮かび上がる。
「ベル君、君はダンジョンに夢を見過ぎだよ。君がオラリオに出会いを求めてきたのは知ってるけど、あんな物騒な場所に君の求めるような出会いがあるもんか」
「は、はぁ」
「そのアイズ・ヴァレン何某だって、それだけ強くて美しいなら他の男が放っておかないよ。お気に入りの男の一人や二人囲っているに決まっている!」
「神様、なんだか怒ってません?」
「怒ってない! はい、終わり! いいかい、ベル君。もっと周りを見るんだ。出会いは直ぐ傍に転がっているだろ。いや、君はもう既に優しく包み込んでくれる素晴らしい相手と出会っている。そうに違いないよ!」
喋っている間にステイタスの更新を終わらせたヘスティアがベルの上から降り、用意した用紙に更新したステイタイスを書き写す。
ステイタスは神聖文字で書かれているので、下界で用いられている共通語に書き換えてもらわれなればベルとアルスには読むことができないからだ。
「ほら、これが君の新しいステイタスだよ。アルス君、次は君だよ」
入れ替わるように服を脱いでアルスがステイタスの更新を行っている間に、ベルは渡された共通語に直された自分のステイタスを見る。
【ベル・クラネル Lv.1/力:I77→I82/耐久:I13/器用:I93→I96/敏捷:H148→H172/魔力:I0/《魔法》『 』/《スキル》『 』】
敏捷は目を見張る上がり方をしているが、耐久は動かず、力と器用は微増に留まっている。魔法は発現せず、スキルも空のまま。
「敏捷は上がったけど魔法は使えずで、先は長いなぁ……」
ギルドで聞いたアイズ・ヴァレンシュタインはLv.は5。半月をかけても今だ殆どのステイタスが最低ランクのIから抜け出せていない中で、Lv.5までの道のりの長さを実感する。
「あれ、神様。このスキルのスロット欄に消したような跡が――」
「はわっ!?」
振り返って問いかけようとしたところで、ヘスティアがアルスの背から転げ落ちてきたので慌てて受け止める。
――――――――――アルスは レベル2に あがった!
――――――――――アルスは メラの呪文 を覚えた!
――――――――――アルスは レベル3に あがった!
――――――――――アルスは かえん斬り を覚えた!
――――――――――アルスは レベル4に あがった!
――――――――――アルスは レベル5に あがった!
――――――――――アルスは ホイミの呪文を 覚えた!
――――――――――アルスは レベル6に あがった!
――――――――――アルスは レベル7に あがった!
――――――――――アルスは ぶんまわしを覚えた!
――――――――――アルスは レベル8に あがった!
――――――――――アルスは ギラの呪文を 覚えた!
――――――――――アルスは レベル9に あがった!
――――――――――アルスは イオの呪文を 覚えた!
「大丈夫ですか、神様」
「い、いや、でも、え? は?」
ベルの腕の中にいることにも気づいていない様子のヘスティアは、信じられないものを目にしたように混乱していてこちらの声が届いていない。
彼女を揺り動かして気を戻させる。
「どうかしたんですか、神様?」
「…………ベル君、すまない。ちょっと支えてくれるかい。腰が抜けてしまったみたいだ」
「あ、はい」
ダラダラと汗を掻き目が泳ぎまくっているヘスティアの頼みに、怪訝ながらもベルは彼女を支えて立たせる。
ヘスティアは起き上がろうとしたアルスを制止し、その背中を凝視する。
「んぅ、やっぱり変わらない。いや、待て。あれ、なにか違う? え? どういうこと?」
遠くを見るように目を窄めてみたり擦ったりをして、やがてベルの支えなしに立ったヘスティアが首を捻りながら用紙にアルスのステイタスを共通語に書き直していく。
神聖文字が読めないベルではアルスのステイタスを見ても何が書いてあるのかは分からないが、ヘスティアの様子を見るに余程信じられないような何かが起きているのだと察した。
「もしかして、魔法が……」
ベルが熱望していた魔法がアルスに発現して、ヘスティアの様子からよほど珍しいタイプではないかとワクワクとした気持ちで待つ。
「――――これがアルス君のステイタス、だ」
妙に歯切れの悪いヘスティアが差し出した用紙を受け取ったアルスの後ろからベルも覗き込む。
普通は同じファミリア内でもステイタスの詳細は伝えられないが、ヘスティア・ファミリアはクラネル兄弟二人の零細ファミリアなのでその辺の規律がかなり緩い。
「は? なんですかこれ?」
「おかしいだろ。僕もそう思う」
ベルはアルスのステイタスの自分との違いに目を丸くしていると、頭が痛いとばかりに手で額を抑えるヘスティアも横から覗き込んでくる。
【アルス・クラネル Lv.1(レベル9)
HP:50
MP:27
ちから:25
みのまもり:12
すばやさ:29
きようさ:19
こうげき魔力:25
かいふく魔力:27
みりょく:22
《魔法》
【メラ】 ・火炎魔法(小)
【ホイミ】 ・治癒魔法(小)
【ギラ】 ・閃光魔法(小)
【イオ】 ・爆発魔法(小)
《技能》
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
【ぶんまわし】 ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能
《スキル》
【
《次のレベルまで:665》 】
おかしいところしかなかった。
アルスのステイタス用紙をひったくったヘスティアは自分で書いた物をマジマジと見つめる。
「レベル表記がおかしいし、ステイタスの基本要素がなんか増えてるし、魔法がスロットを超えた四つもあるし、技能なんてのもあるし、なんで次のレベルまでの必要経験値があるんだよていうか
がなり立てるヘスティアがステイタス用紙を放り投げてベッドを何度も叩く。
ボロボロな教会の壁の隙間から外に漏れそうな大声でシャウトするヘスティアに耳を抑えつつ、気持ちも分かる気がするベルはヒラヒラと舞い降りてきた用紙を掴んで、もう一度マジマジと書き写されたステイタスを見る。
「なんなんですかね、これ」
「ベル君、これは夢なんだよ。夢なら醒めないと…………僕の頬を力一杯引っ張ってくれるかい?」
「神様――――これは現実です」
「うぐっ」
当のアルスは技能だけでも試そうと、『ブロンズナイフ』を抜いて振り首を傾げ、次は『せいどうのつるぎ』を抜いて軽く構えて何かに気づいた様子を見せた。
「――」
「え、武器ガード率が上がった気がするって? そんなバカな」
『ブロンズナイフ』では上がっている感じがしないというアルスの言葉にそれ以上の否定の言葉を飲み込んだ。
嬉々としているアルスに、情動が消滅した様子のヘスティアが伏せていたベッドから立ち上がった。
「僕は、寝る」
「神様?」
爽やかな顔をしたヘスティアの宣言に、女神を見上げたベルは後悔した。
これは爽やかなのではなく、虚ろなだけだった。
「明日のことは明日の僕に任せるよ。今日の僕は何も見なかった。いいね?」
「いや、でも」
「い! い! ね!!」
「…………はい、おやすみなさい」
それはただの問題の先送りではないかとツッコミは今のヘスティアには正論過ぎて、とても言う気にはなれなかった。言ってはならない気がした。
外で試し斬りしてくると『せいどうのつるぎ』を持って出て行ったアルスと、ヘスティアが現実逃避のふて寝に突入したのを確認し、ベルは自分のステイタスを見比べて肩を落とした。
「いいなぁ、魔法」
眠れるはずもなかったヘスティアはベルの呟きを聞いて、やはりアルスと兄弟なのだなと実感するのだった。
家探しはドラクエあるある。
スキルパネルの必要SP数値のレベルで習得となります。
片手剣・両手剣は必要SP数値のまま、けんしん・ゆうしゃの必要SPは数倍となります。これは他のキャラクターにも適用されるようになっていきます。
『ソードガード』と『ブレードガード』はシステム的に合わないので備考欄に(第一巻後ステータスに記載)
『ぶんまわし』などの『とくぎ』は明らかな武器特性が違わない限り、両手剣とくぎでも片手剣で使えるとします。
呪文は可能な限りレベル通りに取得となります。ただ、本来ならばレベル9でリレミトを覚えるのですが、ダンジョン物でダンジョン内部から一瞬にして脱出する呪文はリレミトされました。
従って取得呪文が一個繰り上がりって、本来ならばレベル15で習得するイオがレベル9で習得になりました。
ただ、リレミトは習得順番が一番最後に回るかも。
いきなりレベルが9に上がっているのは、アイズがミノタウロス撃破した時に彼女がアルスだけパーティ扱いになっていた為、経験値が入ったからです。
序盤のどうやっても倒せない敵として、ドラクエ11でのブラックドラゴンを撃破した時の経験値をミノタウロス撃破の経験値としています。
ブラックドラゴンを倒した経験値は「1321」。一気にレベル9まで上がります。という流れです。