本日、原作19巻が発売です。
仕事で買いに行けぬ……。こういう時に限って連勤だとは。
話の展開次第では、学区編を前倒しで入れないといけなくなるかもしれないのに。
私、ニイナ・チュールが気になります。
豊穣の女主人で夕食を取り会計を済ませた後、帰宅するリリルカ・アーデを見送ったベル・クラネルは双子の弟のアルスがトイレに行ったので店先の脇で戻るのを待っていた。
「アルス、まだかな……」
リリルカを見送った後に帰ろうとした時にトイレに向かってから割と長い。
結構な時間を店先で待たされているベルはボンヤリとした目で夜になっても人が絶えないストリートを見ながら、背後の豊穣の女主人でとある人物がいなかったことを思い出した。
「そういえば、あのエルフの人いなかったな。確かリューさんだったけ」
英雄譚に登場する見目麗しいエルフによって性癖を歪まされて、金髪長髪エルフ好きのベルはエルフであるだけで気になる。
ベルがリューのことを考えていると、眼前で誰かが立ち止まった。
店先の脇にいるが豊穣の女主人に入るのに問題のない位置に立っている。
眼前に立つのは種族はヒューマンで男。体格はかなり良く、年齢は確実にベルよりも上だろう。その目は店の入り口近くに立つベルに向けられていて、明らかに何がしかの用があることを窺がわせていたが見覚えが無いので面識はないはず。
「ようやく見つけたぞ、ガキ」
別人と間違われているのかと辺りを見渡すも、それらしい人物は近くにいない。
恍けられている思ったのか、男は苛立ったように舌打ちをした。
「お前だよ、白髪のお前」
「どちら様ですか?」
ガキにお前と、初対面なのに相手を下に見ている態度の冒険者風の男にベルは胡乱気な目を向ける。
「お前が飼ってる
「…………
「サポーターなんて大して役にも立ちもしねぇ能無しだ。何を怒っていやがる?」
「あなたは!」
ベルは目の前の男――――ゲド・ライッシュに対して不快感を覚えて声を上げる。だが、ゲドの方は何故怒っているのかと本気で理解していない態度だった。
そもそもゲドの目的はリリルカであって、ベルではないのだ。ゲドはベルの反応を無視して話を続ける。
「なんだっていい。こっちに来い。場所を変えるぞ」
ベルが怒っていることはストリートを歩く者たちにも分かり、冒険者の街だけあって喧嘩を見世物とする風潮もあるオラリオでは見物しようとする者もいる。
注目を集めているのを察したゲドが顎で近くの路地へと誘い、内容が内容だけに無視できなかったベルも後についていく。
路地に入って少し歩いてストリートの喧騒が遠くなった場所で歩みを止めて振り返ったゲドは、ついてきたベルを確認して口を開く。
「話は簡単だ。あの糞
「落とし前?」
「金だよ、金。絞り取れるだけ搾り取らなきゃ割に合わねぇ」
ゲドの言い分を聞いて、ベルはますます不快さを募らせていく。
要するに金銭を巻き上げようと画策しているということであり、冒険者としても人間としてもあるまじき行為だ。
ベルの心情などお構いなしのゲドは話を進めていく。
「どうせなら糞
「…………リリがあなたに何かしましたか?」
「あん? サポーターなんざ、
この発言を聞いて、ベルの中で怒りが爆発しそうになる。同時にエイナ・チュールから聞いたサポーターの扱いの悪さを思い出した。
他派閥のサポーターのことで親身になるベルが異端であり、蔑視の対象になりやすいと言っていたその意味を目の前で見せられる。
明らかにベルの表情に怒りが浮かんだことを見て取ったゲドが鼻で笑う。
「はっ、
ベルがオラリオに来たのは女の人との出会いを求めてという面があり、年頃なので女の人に興味はあるのは事実。
「まあ、あの糞小人族も小さい割には出るところは出ているからな。楽しむ分には悪くねぇんじゃねえか」
「今ならリリが冒険者を嫌いだと言った理由が分かる」
ベルは静かに呟くと、ゲドに対する敵意を隠すことなく表出させる。
しかし、ゲドはそれを見ても余裕綽々な態度を崩さない。むしろ、馬鹿にするように口角を上げて笑みを浮かべている。
「あなたのような下衆と一緒にしないで下さい。僕から言えるのは一つだけ――――――今すぐ僕の前から消えろ」
「なんだと……?」
格下と見下している相手から舐めた態度を取られてゲドの顔色が変わる。
「消えろと言ってるんだ。リリは僕達の仲間で素敵な女性だ。仲間を物扱いするような人にリリは絶対に渡さない」
ゲドの目つきが鋭くなる。だが、それも一瞬のこと。すぐに余裕を取り戻してゲラゲラと笑い出した。
「はっ、テメェらのことは調べたぜ。冒険者になって一カ月も経ってない駆け出し風情がキャンキャンと良く吠える」
ゲドの指摘にベルは内心で苦笑する。
確かにゲドの言う通り、ベル達はダンジョン探索を始めてからまだ日が浅い。Lv.2への最速ランクアップ記録が一年である以上、普通ならばステータス評価値は良くても下から数えた方が早いはずで、まさか既にベルがLv.1でも上位にいるなど考えられるはずがない。
「馬鹿は死ななきゃ直らねぇらしいからな。死なねぇ程度に教育してやる!」
言いながらゲドは背中に差していた片手剣『さんぞくのサーベル』を抜き放った。ベルも腰の剣帯からブロンズナイフを抜く。
(男だったら女の子の窮地には立ち向かうに決まってる)
ベルの心持ちとは裏腹に、アルスとの模擬戦以外で初めての対人戦にブロンズナイフの剣先が僅かに揺れる。
「ガキがっ!」
剣先の揺れを怯えと見て取ったゲドはニタリと笑い、意気盛んにベルに攻撃を仕掛けようと踏み込んだ。
「止まりなさい」
静かな声がベル達が対峙する路地に響き、第三者の出現にゲドは舌打ちしてベルの前でバックステップして距離を取る。
ベルが声が聞こえた背後を振り返ると、大きな紙袋を両腕で抱えた給仕服を着たエルフの少女が立っていた。
エルフの少女はベルの横を通って数歩前で足を止め、未だ『さんぞくのサーベル』を持ったままのゲドを見据える。
「あなたが剣を向けているその人は、私の同僚の伴侶となる方です。手を出すのは許しません」
「どいつもこいつもワケの分かんねぇことを」
邪魔をされた上に意味の分からない理屈を告げられて、ビキビキと青筋を浮かべるゲド。
「りゅ、リューさん?」
ベルも自分を指して伴侶と言われて困惑していたが、遅まきながらエルフ特有の長い耳を見て豊穣の女主人のリュー・リオンだと気づいた。
「テメェも纏めてぶっ殺されてえのかあっ! ああっ!?」
「吠えるな」
ゲドの怒号に怯むどころか、冷たく言い放ったリューから放たれた威圧感は一瞬ながらもベルの心胆を寒からしめた。同じものを感じ取ったゲドも『さんぞくのサーベル』をビクリと大きく揺らす。
「手荒なことはしたくありません。友人曰く、私はいつもやりすぎてしまう」
小太刀を取り出してゲドに向けるリュー。
(み、見えなかった……)
斜め前で常にリューの姿を視界の中に収めていたはずなのに、何時どのようにして小太刀を取り出したのか全く見えなかったことに衝撃を覚えていた。
「あっ、アルス」
そのタイミングでゲドの背後にベルを探していた様子のアルスが現れた。
アルスはその場にいる三人が全員武器を抜き放っているのを見て考える。
→武器を抜く
傍観する
アルスが背中の鞘から『てつのつるぎ+3』を抜いた。
武器としてのランクはゲドが持つ『さんぞくのサーベル』の方がこの場で最も高い。アルスが持つ『てつのつるぎ+3』と比べても攻撃力は高い。だが、3対1という人数の差は決して無視できる要因にはならない。
ベルが持つブロンズナイフも、駆け出しが持っていいはずではない武器が妙に様になっている。
「くっ、くそがぁ……!」
何よりもあの一瞬で給仕服のエルフが放った威圧感は確実に自分よりも強いとゲドに思わせた。そういった強さを感じれなければダンジョンでは生き残れない。
「このままじゃあ、絶対に済まさねぇ。覚えておけ!」
趨勢不利を悟って捨て台詞を残してゲドは一目散にアルスの横を通って逃げ出した。
ゲドの退散を見送ったリューが小太刀を下ろし、アルスも剣を鞘に直す。
飄々としている二人と違って安堵のため息を漏らしたベルは顎の下に溜まっていた汗を拭う。アルスは別にして、リューには礼を言わなければならないと振り返った彼女に頭を下げる。
「ありがとうございます。えっと、リューさん?」
「名前を憶えていてくれたのですね、クラネルさん。ですが、礼は必要ありません」
「え?」
礼が必要ないのは、アルスがリューから僅かな遅れで現れたことだろうかと考えた。
「私がいなくても、クラネルさんの方があの者よりも強いので手助けなどいらなかったでしょう」
「そうでしょうか?」
「ええ、足りないのは自信ぐらいです」
リューはベルを真っ直ぐに見つめて断言する。
先ほどまでのゲドとのやり取りも見ていただろうに、どうしてそこまではっきりと言えるのかベルには不思議だった。
「リューさんはどうしてここに?」
「買い出しです。その帰りに偶々、クラネルさんを見かけまして、つい口を出してしまいました」
店にいなかったのは買い出しの為だったのかと納得していると、リューはまたどうやったのか小太刀を給仕服のどこかに直すとその目はベルが豊穣の女主人からずっと持っている物に向けられた。
「ところでその本は一体?」
「ああ、お店でシルさんから預かってほしいと頼まれまして」
会計を終えたところでシル・フローヴァから本が客の冒険者の忘れ物で、女将さんが店に置いておきたくない様子だったから忘れ主が現れるまでの間だけ預かってほしいと頼まれたことを説明する。
一通り説明を聞いたリューはジッとベルが持つ本を見て眉根を寄せた。
「これは
本から魔力を感じ、手にすることなくリューはそれが
「ぐ、ぐりもあ?」
聞き覚えの無い単語にベルの頭上にクエスチョンが浮かび上がる。
「簡単に言うと魔法の強制発現書です。魔道・神秘といった希少スキルを極めた者だけにしか作成できない著述書……」
「もしかして読んでいたら魔法が発現したとか?」
「ええ、そして一回読んだら効果は消滅します」
「ち、ちなみにお値段は?」
「第一級冒険者の装備品と同等の価値があるでしょう。発現する魔法によってはそれ以上の可能性もあります」
「いっ!?」
目標にするのと突然同価値の物を手にしているのを教えられれるのとは全然違う。高価なものを自分の手にあることなど全く信じられなかったベルの悲鳴じみた声が路地裏に響く。
「ミア母さんが店に置いておきたくないというのも納得です。手放した時点で所有者も喪失は覚悟するでしょうが、どんな諍いの種になるか考えたくもありません」
高値で売れることが確定している魔導書があると周りに知られたら、目当てに奪いに来る輩も現れるかもしれない。正しく面倒事にしかない物を手元に置くべきではないという
とはいえ、この場において一番困るのは魔導書を預けられたベル本人だ。
「あわわわ、どうしたら」
「落とし物としてギルドに届けるのが一番無難でしょう」
慌てるベルにリューは冷静な提案をする。
「ギルドは信じてくれるでしょうか…………盗んだとか言われません?」
不安を口にするベルにリューは首を横に振った。
「従業員の私も同行しますから信憑性は生まれると思います。それでも信じてくれなければミア母さんに任せればいい」
「女将さんに振って大丈夫なんですか?」
「この本は豊穣の女主人にあったのです。店主であるミア母さんが対処するのが真っ当な筋ですよ」
筋の通った理屈に納得するベルだが、疑われるという意味では相手が変わるだけではないかという懸念があった。
「今度はギルドが女将さんを疑いません?」
この一件に関してベルも巻き込まれた口だとしても、知り合いが疑われる状況を作り出すのは本意ではない。
「ミア母さんなら大丈夫です」
はっきりと自信を持って断言するリュー。ベルにも他に妙案はないので選択肢は無いに等しかった。
「リューさんがそこまで言うなら…………ギルドに行くよ、アルス」
渋々と納得したベルは路地の端で何やら屈んでいるアルスに声をかけてリューと共にギルドに向かうのだった。
遅れて歩き出したアルスの手には、豊穣の女主人のトイレと今しがた路地の樽を壊したことで出てきた二枚の紙が握られていた。
――――――――――アルスは レシピブック 『銀の使い方』を 手に入れた!
――――――――――ぎんのかみかざりの レシピを 覚えた!
――――――――――ぎんのむねあての レシピを 覚えた!
――――――――――シルバーメイルの レシピを 覚えた!
――――――――――アルスは レシピブック 『大魔道のススメ』を 手に入れた!
――――――――――ウィッチハットの レシピを 覚えた!
――――――――――ウィッチローブの レシピを 覚えた!
――――――――――だいまどうローブの レシピを 覚えた!
ベル達がギルドに向かっている頃、真反対の入り組んだ路地で足を止めたゲドは、何かの店の裏手に置かれている樽を見て足を振り上げる。
「ちくしょうがぁっ!」
Lv.1の上位に位置するステータスで放たれた蹴りは樽を粉砕し、バラバラと木片が地面に落ちる。それでも尚、ゲドの怒りは収まることを知らず、木片を粉々になるまで踏みにじる。
「この俺を虚仮にしやがって。許さねぇぞ、あのガキ共」
最適解の行動であったとしても気分が良いとは限らない。年下と女相手に格好悪く逃げ出す羽目になったことにゲドのプライドは痛く傷つけられていた。
思い出すだけでもはらわたが煮え返りながら、もはや木屑以下になった樽の残骸に怒りをぶつけるゲドの背後に忍び寄る影。
「旦那旦那」
怒りに飲まれていようともそこは冒険者。背後から接近していた人物に気づいていたゲドは驚くことなく振り返る。
そこにいたのは中年の
「誰だ、テメェ」
「アーデの…………旦那の言うところの糞
慌てた様子で付け足す中年の男に言われるまでもなく、その顔に滲み出ているモノを感じ取ればベル達の仲間であるはずがないと直ぐに看破していた。
「はっ、その腑抜けた面を見りゃ分かる。お前、俺の同類だろ?」
「ひひひ、よくお分かりで」
胡麻をするように卑屈な物言いをしつつ、中年の
「旦那にいい話がありやす。乗るか降りるかは旦那次第。どうしやす?」
「決まってるだろうが」
その提案を断る理由がゲドゥにはなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――――――――――ベルは、レベル9に あがった!
――――――――――ベルは、ヒュプノスハントを覚えた!
【アルス・クラネル Lv.2(レベル11)
HP:64
MP;34
ちから:29
みのまもり:14
すばやさ:35
きようさ:22
こうげき魔力:31
かいふく魔力:33
みりょく:26
《魔法》
【メラ】 ・火炎系魔法(小)
【ホイム】 ・治癒系魔法(小)
【ギラ】 ・閃光系魔法(小)
【イオ】 ・爆発系魔法(小)
《技能》
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
【ぶんまわし】 ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能
【渾身斬り】 ・敵一体に大ダメージ
《スキル》
【ドラゴン斬り】 ・ドラゴン種に対しての斬撃強化
【
《次のレベルまで:345》】
【そうび
みぎて 『てつのつるぎ+3』
ひだりて 『せいどうの盾』
あたま 『とんがりぼうし』
からだ 『布の服』『くさりかたびら』
アクセ1 『金のネックレス』
アクセ2 『ちからのゆびわ+3』 】
【ベル・クラネル Lv.1(レベル8→9)
HP:61→68
MP;26→28
ちから:24→25
みのまもり:12→12
すばやさ:35→39
きようさ:30→33
こうげき魔力:27→30
かいふく魔力:0
みりょく:29→33
《魔法》
《技能》
【スリープダガー】 ・敵1体に攻撃、たまに眠らせる
【ヴァイパーファング】・敵1体に攻撃、たまに猛毒にする
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
《スキル》
【スライムブロウ】 ・スライム種に対して投擲武器効果強化
【メタルウィング】 ・メタル種に対して投擲武器効果強化
【ヒュプノスハント】 ・眠りや混乱の敵に通常攻撃の6倍のダメージ
【
《次のレベルまで:565 】
【そうび
みぎて 『ブロンズナイフ』
『せいどうのつるぎ+3』
ひだりて 『クロスブーメラン』
あたま 『とんがりぼうし』
からだ 『布の服』『くさりかたびら』
アクセ1 『金のネックレス』
アクセ2 『ぬすっとのグローブ』 】
ファイアボルトはリレミトされました。
代わりに、活動報告で意見を頂いた、主人公は『マホステ』が採用されそうな予感。『モシャス』はストーリー的に使い勝手がいいのですが、あまり万能キャラにするのはという思いもあり。
リリルカのシンダーエラと微妙に被るのがまたなんとも。
意見お待ちしています。