ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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――――――――――ベルは レベル12にあがった!
――――――――――ベルは ザメハを覚えた!
――――――――――ベルは メタル斬りを覚えた!



【アルス・クラネル Lv.2(レベル12)
 HP:72
 MP:38
 ちから:31
 みのまもり:15
 すばやさ:38
 きようさ:24
 こうげき魔力:34
 かいふく魔力:36
 みりょく:28
《魔法》
 【メラ】     ・火炎系魔法(小)
 【ホイム】   ・治癒系魔法(小)
 【ギラ】     ・閃光系魔法(小)
 【イオ】    ・爆発系魔法(小)
《技能》
 【かえん斬り】     ・武器に炎を纏わせることが出来る
 【ぶんまわし】     ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能
 【渾身斬り】       ・敵一体に大ダメージ
 【フリーズブレード】  ・氷の力で敵1グループに攻撃
《スキル》
 【二刀の心得】     ・左手にも武器を装備できる
 【メタル斬り】      ・メタル系に確実ダメージ
 【ドラゴン斬り】     ・ドラゴン種に対しての斬撃強化
 【聖竜の祝福(ドラゴンクエスト)】   ・■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
《次のレベルまで:257》】

【そうび
 みぎて  『てつのつるぎ+3』
ひだりて  『せいどうのつるぎ+2』
        『シルバートレイ』
 あたま   『てつのかぶと』
 からだ   『くさりかたびら』『てつのよろい』
アクセ1   『金のネックレス』
アクセ2   『ちからのゆびわ+3』         】





【ベル・クラネル Lv.2(レベル11→12)
 HP:82→89
 MP:33→36
 ちから:28→30
 みのまもり:13
 すばやさ:46→50
 きようさ:40→43
 こうげき魔力:37→40
 かいふく魔力:0
 みりょく:40→44
《魔法》
 【ジバリア】     ・地雷系魔法(小)
 【ザメハ】      ・覚醒系魔法
《技能》
 【スリープダガー】  ・敵1体に攻撃、たまに眠らせる
 【ヴァイパーファング】・敵1体に攻撃、たまに猛毒にする
 【かえん斬り】     ・武器に炎を纏わせることが出来る
《スキル》

 【スライムブロウ】  ・スライム種に対して投擲武器効果強化
 【メタルウィング】  ・メタル種に対して投擲武器効果強化
 【ヒュプノスハント】  ・眠りや混乱の敵に通常攻撃の6倍のダメージ
 【ドラゴン斬り】     ・ドラゴン種に対しての斬撃強化
 【メタル斬り】      ・メタル系に確実ダメージ
 【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)】  ・■■■■■■■■■■■■■■■
《次のレベルまで:826 】

   
【そうび
 みぎて  『せいどうのつるぎ+3』
        『せいなるナイフ』
ひだりて  『やいばのブーメラン』
 あたま   『とんがりぼうし』
 からだ   『くさりかたびら』『てつのむねあて』
アクセ1   『金のネックレス』
アクセ2   『ぬすっとのグローブ』         】





第19話 早く帰ろう

 

 

 

 

 

 ゲド・ライッシュ、カヌゥ・ベルウェイとその仲間の襲撃に合った翌日昼過ぎ、ギルドでエイナ・チュールとリリルカ・アーデと合流したクラネル兄弟とヘスティアはソーマファミリアに向かっていた。

 先導するのはホームの場所を良く知っているリリルカ。その後をエイナとヘスティアが続き、最後にクラネル兄弟が歩く。

 

「――――あれだけのことをしておいて、厳重注意だけとはどういうことだい?」

 

 ソーマファミリアに向かう道すがら、彼らに与えられたという処分を聞いたヘスティアは軽すぎるように思える内容に目を吊り上げる。

 

「ベル君達の嘘じゃないことは、ガネーシャの子が見ていてくれたんだろ? ええっと、確かナントカって名前の子が」

「そんな名前の人、ガネーシャファミリアにいましたか?」

「え、ベルーカだったけ」

「ロロピアーナじゃなかったですか?」

「クータナでは?」

 

 拘束されたゲド達は地上に上がったら待っていたエイナやガネーシャファミリア副団長イルタ・ファーナによって連行されていった。

 名前を聞いたはずなのに何故か全員名前をはっきりと思い出せず、取り敢えずガネーシャファミリアの眷属が見ていたのは証拠になっているとエイナは纏めた。

 

「一人は嵌められたと主張していますが、襲撃に参加している時点で同じことです。証人もいるので言い逃れは出来ません」

「だけど、厳重注意だけなんだろう」

 

 納得できるはずがないとヘスティアは顔面全部で主張している。

 

「ギルド職員の私が言うのはどうかと思いますが、ダンジョン内での闇討ちは珍しいことではありません」

「そうなのかい、サポーター君!?」

 

 ヘスティアは真実かと確かめるために、この中で一番冒険者歴が長いリリルカに聞く。

 

「はい、表沙汰になっていないだけで良くあることです。理由は様々ですが、有力ファミリアや名を馳せた冒険者を妬んだり、個人間の諍いなど、ある種の有名税のようなものです」

「基本的にダンジョン内のことにギルドは干渉しませんが、今回のように事前に情報が流されてギルドやガネーシャファミリアがこうまで完璧に取り締まれるケースは稀有かもしれません」

 

 振り返って肯定するリリルカと、補足するエイナの言葉にヘスティアは言葉を失う。表沙汰にならないということは、闇討ちが成功して被害者が死んだり、逆に加害者が返り討ちにあって死人に口なし状態になったからだと察したからだ。

 ベル達が殺されていたら帰らぬ彼らを待つ運命にあったヘスティアのショックの受け様に、エイナは加害者達(ゲド・カヌゥ一味)の処分に対して補足の説明が必要だと感じた。

 

「神ヘスティア、彼らに与えた厳重注意とは、ギルドの要注意人物一覧(ブラックリスト)に乗るということです。再犯するなどしてギルドが悪質と判断すれば、罰則として冒険者登録を抹消することもありえるので、一度でも要注意人物一覧(ブラックリスト)に乗ってしまった冒険者は、この都市で非常に生きづらくなります」

 

 冒険者登録を抹消されれば、それだけで魔石やドロップアイテムは買い取ってもらえず、見返りなしで引き取られることになる。そこから連鎖して、最悪の場合は神から見捨てられてファミリアの脱退も可能性としてはある。

 そこまでいかなくても、罪に見合った罰金、一定期間のダンジョンへ潜ることの禁止、労苦として強制労働や一定期間の収監と段階を踏むことになる。更に行けば、恩恵に関わる部分もあるので所属ファミリアの主神の協力が必要になるが、協力が無ければ即、都市外追放。都市外追放とまでもいかなくても恩恵封印ともなれば冒険者として再起を図ることはできない。

 主神が所属団員を守ろうとギルドの決定に逆らえば、ファミリアに対して様々な罰則が科せられるので基本的に闇派閥を例外として神は従う。

 

「一般人なら強盗未遂と殺人未遂なら牢屋への収監が適当ですが、血の気の多い冒険者に一般人の理屈を当て嵌めることは出来ないことはご了承下さい」

 

 何よりも襲撃を人的物的被害なく返り討ちにしていることが大きい要因になっているとエイナは続ける。

 冒険者がストリートで喧嘩をすることは、露店でバイトをしているヘスティアも良く知っているのでエイナの理屈は理解できてしまう。

 

「彼らには前歴がありません。ですので、厳重注意(ブラックリスト載せ)が適当なのです。後は彼らが所属ファミリアに対して訓告を出しました」

「くんこく?」

「責任の確認と将来を戒める行為で、主に口頭や文書で注意となります。厳重注意(ブラックリスト載せ)がこれに当たります」

 

 ゲド達に犯歴はなく初犯であることを考慮して、厳重注意と所属ファミリアに対して訓告を行っていた。あまり厳しい処分にし過ぎると逆恨みするパターンもあるので、ギルドも丁度良い塩梅を考えなければならないのだ。

 

「訓告も累積すればファミリアに処分が下されるので、行動に気をつけます。特に同じ相手への行為が原因で次も訓告を受ければ即戒告と決まっています。戒告ともなれば、罰金以上の処罰が下されます。ファミリアの評価にも影響しますし、主な影響としてランクや徴税額にも響いてきます。普通ならば訓告を受けた時点でファミリア内での罰則を受けることになると思いますが」

 

 そこまで言って、エイナはふぅっと息を吐く。

 

「もしもファミリア内で罰則を受けなかったらどうするんだい?」

「そこまではギルドは口を出しません。ですが、ソーマファミリアが過大な処分を負うのは神ヘスティアも望まないのではありませんか?」

「…………そうだね。サポーター君のことを考えれば、後を引くのは控えたい」

 

 ヘスティアが言ったところで、先導していたリリルカが足を止めた。

 

「着きました。ここがソーマファミリアのホームです」

「大きいねぇ……」

 

 教会の隠し部屋がホームであるヘスティアファミリアと比べるまでもなく、ソーマファミリアのホームは大きい。

 謎の敗北感に打ちひしがれながら、玄関から中へと呼び掛けているエイナを暗い目で見やる。

 

「神様?」

「なんでもないよ、ベル君。ちょっとした僻みだから」

「はぁ」

 

 ヘスティアの様子にベルが気づいていても、持たざる者が持つ者に向ける妬みは理解できなかったらしい。

 ぐぎぎぎ、とヘスティアが内心で地団太を踏んでいると、呼びかけに答える者がいなかったのでエイナが困ったようにベル達の方へと振り向く。

 

「おかしいですね、誰も出てきません。事前にこの時間に訪れると連絡しておいたはずなんですが」

「昨日の今日だ。連絡の行き違いでもあったんじゃないのかい」

「困りましたね」

 

 誰もいなくて当然だ、とリリルカは内心で思った。

 普段から殆どの団員が金策の為にダンジョンに潜っていて誰もいない日が多いが、特に団長ザニス・ルストラが確実にいない日の前日を襲撃日として選ばさせたのだから。

 

(この時間ならソーマ様は畑にいるはず)

 

 ソーマファミリア所属のリリルカならば主神の行動を知っていてもおかしくはない。後はそれとなく知らせればいい。

 

→あっちに誰かいる

  早く帰ろう

 

「あ、向こうの方に誰かいますね」

 

 アルスが塀を攀じ登ったのを止めようと背中に飛びついたベルがソーマを発見したらしい。

 

「そちらは畑があります。となると、恐らくソーマ様かと。ソーマ様は眷属であろうと畑に入られるのを拒まれますので」

「じゃあ、上がらせてもらおうか」

「ちょ、神ヘスティア!?」

 

 自分の手間が省けたのでソーマがいる説明をすると、頷いたヘスティアがエイナが止める間もなく中に入ってしまった。

 ベルと引きずり降ろされたアルスが後を追い、最後にリリルカがソーマファミリアの敷地に入る。

 開いた距離を埋めるために小走りで畑の方へと向かうと、普段ならば眷属が話しかけても無視し続けるソーマも流石に同じ神のことは放置できないと考えたのか、手を止めてこちらを見た。

 

「いらっしゃい」

「やあ、初めましてだね、ソーマ」

「ヘス……ティア、だったか?」

「ああ、合ってるよ」

 

 そこまで話をしたソーマが再び鍬を振るい始める。

 

「今日は君の眷属のことで話がある」

「ああ」

「聞いていると思うが昨日、君の眷属が僕の眷属を襲ったんだ」

「ああ」

「…………話、聞いてるかい?」

「ああ」

「こいつ、話聞いてない」

 

 取り敢えず「ああ」とだけは返事をしているので、ヘスティアが何かを言っていることは分かっているようだが、明らかに内容を理解しているようには見えない。

 

「もういい、ベル君アルス君。ソーマを連行しろ」

「神ヘスティア!?」

 

 こういう神には実力行使が一番であると知っているヘスティアの、正しく神をも恐れぬ行為にエイナが驚愕している間にアルスが動く。

 

「いいんですか、神様?」

 

 マズいんじゃないかぁ、と思っているベルにヘスティアは顎でしゃくって鍬を振るい続けるソーマを見る。

 

「構わない。いいね、ソーマ?」

「ああ」

「ほら、本神もこう言っているんだ。やってくれ。サポーター君、ソーマの部屋に案内してくれ」

 

 まさかの展開にリリルカも開いた口が塞がらないまま案内にすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 ソーマの部屋は、神酒を貯蔵する倉庫である酒造が左右五戸前ずつ並ぶ管理棟内の最上階にある。

 最上階は通路を除き、丸々主神たるソーマの部屋となっている。広いバルコニーが備わった部屋の奥にある作業机の上には乳鉢を用いて何種類もの植物を混和させている。

 

「ヘスティア、ここまでして何か大事な用でもあるのか?」

 

 薄汚れたローブ姿で、袖や裾が土で薄汚れているソーマは作業を邪魔された怒りで、全くまとめられていないぼさぼさの髪の間からヘスティアを睨んでいた。

 

「本当に話を聞いていなかったんだね。まあ、初対面の僕の名前を憶えていただけマシか」

 

 エイナ経由でロキが感じ取ったソーマの神物評から、酒造り以外の他に興味を持たない趣味神だと聞いていたので評価する基準自体が低かった。

 

「昨日、君の眷属が他のファミリアの眷属と共謀して僕の眷属を襲ったんだ。こちらに被害はなかったが、だからといって何も無かったというわけにはならない」

「ガネーシャファミリアの聴取によって、貴ファミリア所属の眷属が強行に及んだ動機は神ソーマの神酒を得る為の資金が必要だったと供述しています。ギルドとしては、最近のソーマファミリアの眷属が起こす問題は目に余ると見ています。目的の為に手段を択ばなくなるのは意味がありません」

 

 エイナの補足に、少しだけ淀んだ目をエイナに向けたソーマは直ぐに関心を失ったようにヘスティアに戻した。

 

「雑事は全て団長のザニスに任せている」

「任せていて、全然統制が効いていないからギルドは問題視しているんじゃないか」

「今回の処分として、対象眷属だけでなく、ファミリアにも訓告が出ています。書面にして届いていると思いますが、見ていないのですか?」

「知らん」

 

 誤魔化すでもなく、はっきりと答えたソーマにエイナは想像以上の自派閥への無関心具合に内心で呆れる。

 

「では、口頭で簡潔に説明させていただきます。主な内容としては、派閥内部でのソーマを報酬とした資金調達制度の是正です。為されないのであれば、酒造りの禁止を通告するとあります」

「なに? 流石にそれだけは困る。ギルドにファミリアの運営方針にまで口を出す権利はないはずだ」

「ファミリア内部の問題ならばギルドは口を出しません。ですが、今回は他ファミリアや一般からも苦情が出ていますので」

 

 ようやく困った表情になったソーマに、助け舟を出すわけではないがヘスティアも口を挟む。

 

「嫌ならば団長に任せるのではなく、主神として眷属の手綱はしっかりと握るべきだよ、ソーマ」

「…………」

 

 苦虫を噛み潰したように、明らかに嫌そうな顔をするソーマにエイナはまだ終わっていない話を続ける。

 

「そしてもう一つ、今回の一件で情報提供を行ったリリルカ・アーデ氏の安全についてです」

「アーデ?」

 

 そこでようやくリリルカの存在に気づいたようで視線を向ける。

 リリルカはソーマと目を合わせることにすら恐怖を覚え、恐れ戦くように身を小さくしてベルの影に隠れようとしていた。自分を惑わせた神酒の魔力に、それを作り出したソーマにリリルカはここまで来ても怯えを拭えずにいた。

 

「このまま、アーデ氏がソーマファミリアに留まるのは危険とギルドは判断しました。仕方なかったとはいえ、今回の一件でアーデ氏の安全が脅かせることがあっては今後、同じような事例があった場合、情報提供が為されなくなる恐れがあります。安全対策は急務ですが、アーデ氏はサポーターという専門職の状況で、身の安全を自身で行うのは限界があります」

 

 一方のソーマはリリルカに少しの間だけ視線を向けただけで、他には何の反応も示さずエイナに目を戻す。

 

「そこでアーデ氏とパーティーを組んでいるヘスティアファミリアが氏を迎え入れたいと申し出がありました」

「改宗ということか?」

「はい、ヘスティアファミリアからの提案で、ギルドとしてもアーデ氏の安全を考えれば改宗することが最善であると考えました。神ソーマがファミリア内の統制を即座に取って頂けるなら別ですが」

「面倒……」

「少しの苦労で大きな面倒を負わなくてもいいのなら、私なら前者を選びます」

「改宗でいい……」

 

 長い髪に埋もれる顔は雄弁に今のソーマの改宗を行うことに対する心情を伝えてくる。

 

「では、後日に予定を調節して改宗を――」

 

 言いかけたエイナに手を向けてソーマが止める。

 

「必要ない。時間を浪費するだけだ…………今、この場で行う」

「…………ステイタスは冒険者にとって最上級の秘匿情報です。通常は第三者に知られぬように厳正な場所で行われるべきです」

「俺の子供達は近くにいない。多少の危険があっても早い方がいいのだろう」

 

 エイナがソーマと話している間、ヘスティアやベルの意識が二人の会話に集中している間にアルスは部屋の隅へと移動して衣装ケースをそっと開けた。

 

――――――――――アルスは レシピブック 『毛皮で作る装備のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――毛皮のフードの レシピを 覚えた!

――――――――――毛皮のポンチョの レシピを 覚えた!

 

 レシピを懐に隠したアルスはみんなが気づかない間に何食わない顔で戻る。

 

「そ、それはそうですが、上級冒険者なら遠方から窓を通して見ることも可能な場所で改宗を行うのは――」

「上級冒険者がそこまでする価値がアーデにあるのか?」

「…………」

「構わないな、アーデ?」

「は、はい、それでいいです」

 

 理屈としてはソーマの言い分も正しいが、改宗してしまえば他所のファミリアの眷属になるリリルカに対する配慮すらないことが今までの対応が透けて見えてくる。

 しかし、変にゴネて臍を曲げられても困るので、当人のリリルカが認めてしまっては所詮は立会人でしかないエイナに口を出す権利はない。

 

「改宗の前に一つだけ聞かせてくれ、アーデ」

 

 作業がしやすいようにリリルカが座る椅子だけを移動してきて、後はベル達が出ていくだけというところで唐突にソーマが問いかける。

 

「は、はい、ソーマ様。なんでしょうか」

 

 当初の予定通りに進んでいる状況に喜びを感じていたリリルカは内心を隠して答える。

 

「俺はお前の気持ちを何も聞いていない。改宗は本当にお前が望んだことか?」

「……っ!?」

 

 ソーマの問いに、リリルカは目の前が真っ赤になるほどの怒りが湧き出す。

 

「い、今まで私の、私達の言葉を何一つ聞こうともしなかったあなたが何を今更……っ!」

「聞く必要などなかった。簡単に酒に溺れる子供達の話を聞くことに、何の意味がある?」

 

 起伏の少ないソーマの返しに、絶句するのはリリルカの方だった。

 凍り付いたリリルカを放って、ゆっくりと動いたソーマが壁に作り付けられた棚から白い液体が入った瓶と空の杯を取り出す。

 

「だが、この場ではそうはいかないだろう。なのに、お前は何一つ口にせず、ギルドの者やヘスティアに喋らせるだけで自身は何も言おうとしない。自覚があるからじゃないのか、自分は神酒から離れられないと」

 

 下界の全てを見抜く神の視点で、リリルカの隠していた深奥を暴き出す。

 

「リ、リリは……」

 

 リリルカが抗弁しようとしたその時、瓶の中身を杯に注ぐと部屋中に眩暈を起こすほどの涼しい芳香が香ってきて口が止まる。

 

「…………こうやって問答するこの時間が無駄だ。どうせ神酒の魅力に負けて戻ってくる。これを飲んで、まだ同じことが言えたのなら、お前の好きにするといい」

「あ、ぁ……!?」

 

 差し出された杯に、リリルカの喉が鳴る。

 神酒の魅力に翻弄され、おかしくなった当時の記憶が蘇って全身が震えた、もう一度あの感覚を味わえると歓喜で。

 差し出した杯を取ろうとしないリリルカを、ソーマは何の感情もなく見下ろしている。

 

(飲みさえすれば、ソーマファミリアから解放される)

 

 望んでいたことだ。望んでいたことのはずなのに、足が手が動かない。

 

「――――神酒を飲むのは別にリリじゃなくてもいいですか?」

 

 そんなリリルカの窮状を助けんと、ベルが名乗り出た。

 

「ヘスティアの子か。ああ、神に二言はない。誰であっても結末は同じだ」

「言いましたね。約束は守ってください」

「待って下さい、ベル様はそれは――」

 

 リリルカが我を取り戻して止める暇もなかった。

 あっさりと杯を受け取ったベルが、数多の人生を狂わせてきた神酒を躊躇いもなく呷った。

 

「ぷはっ――――苦っ!?」

「は?」

「あ、でも、後味はおいしいのかも……」

 

 第一声は予想外で、頭を捻っているベルに魅了された様子はない。

 

「べ、ベル君?」

 

 市場に出回っている、ソーマ曰く失敗作ですら魅了されかけたことのあるエイナの恐る恐るの声掛けに、ベルは本題を思い出した。

 

「はっ、そうだ。僕は何度でも同じことを言いますよ。後はリリの好きなように――」

「なんとも、ないのか?」

 

 憐れむほど愚かな下界の住人に見切りをつけたソーマは一番の驚愕に苛まれながらベルを見る。

 

「へ? なんか苦くて、でも後味はおいしいぐらいでしたけど、これってお酒ですよね。あ、僕、未成年なのにお酒飲んじゃった……」

「あ」

 

 ヘスティアは気付いた、ベルが魅了されていないカラクリに。

 

(ソーマが造る酒は神々すらも容易に魅了(・・)する神酒(ソーマ)。ベル君には憧憬一途(リアリス・フレーゼ)で魅了が効かないんだ。しかも、あの様子からしてお酒を飲んだことがないから慣れてない分、酒の良さが分からない。つまり、純粋に味だけの評価をしたということ)

 

 ベルはスキルの効果によって魅了に対して絶対的な耐性を持っている。酒を飲んだことのないベルにとっては、神酒ですら酒なので苦かったらしい。つまり子供舌。

 マズい、とヘスティアは危機感に支配された。

 

「ソーマ、僕にも試させてくれ」

「あ、ああ、いいぞ」

 

 ベルから杯を受け取り、ソーマに注いでもらった神酒を一気に呷る。

 

「――――」

 

 次の瞬間、ヘスティアの世界がぐにゃりと曲がった。

 果てしない陶酔感に支配され、意識を捻じ曲げるほどの感動の絶頂が襲い掛かってくる。全てが神酒によって洗い流され、しかして最後にヘスティアを支えたモノは、眷属への愛と主神としての意地だった。

 

「…………ど、どうってことないね。これぐらいならミアハと飲んだ安酒の方が美味かったくらいだ」

「足がガクガクと震えているが?」

「気の所為だ! 酒ってのはね、どういう気持ちで、誰と飲むかが大事なんだ!」

 

 ヘスティアは生まれたての小鹿のように震える足のまま続ける。

 

「ソーマ、君は子供達を利用して造った酒を一人で飲んで、心の底から美味いと思えるのかい? 僕は君の酒を飲んでも美味いとは、とても思えないよ!」

 

 明らかに勢いで言い募ったヘスティアに、ソーマはやはり無感動に聞き届けた。

 

「酒のことで論じられる気はない…………だが、まあいい。約束は約束だ。ヘスティアよ、アーデの改宗を受け入れよう。但し、一つだけ頼みがある」

「なんだい?」

 

 未だこの世のものとは思えない美酒の味わいに心身が溶けていきそうなのを、ヘスティアはエイナが感動を覚えるほど意地だけで応える。

 

「お前の子を俺にくれないか?」

「絶対に嫌だ!」

 

 震えていた足がシャンと伸び、白濁していた意識が一気に鮮明さを取り戻した。

 

「そう、言わず。神酒を飲んで苦いと言った子は初めてなのだ。なんなら、アーデと一緒にザニスも付けるから」

 

 ソーマは先程までの無感動振りはどうしたのだと言わんばかりにヘスティアに詰め寄る。

 

「嫌だって言ってるだろ! ベル君は僕のだ! というか、君の所の団長なんかいらないから。大体、君が条件を出せる立場なのかい?」

「俺が協力しないと何時までも改宗は出来ないぞ」

「ひ、卑怯な……!」

 

 結果として、一年間の期限付き。一ヶ月一回ベルがギルドでエイナの立会いの下、ソーマの神酒を飲んで味を判定するということで決着した。

 代わりとして巨額の脱退金は免除。ヘスティアファミリア側の都合で破棄するなら、破棄した残りの期間分の脱退金を支払う。ソーマファミリア側の都合で破棄するなら、脱退金免除。一年を経っても継続するかどうかは、期限が来てから再度の話し合いをすることで合意した。

 

(リリは……)

 

 何も決断できないリリルカを置いたまま事態は進み、改宗は事前にかかった時間とは裏腹に呆気なく終わった。尚、リリルカが改宗中の間、ソーマが置いていた神酒に興味を引かれたアルスが盗み飲みして一発で魅了されていたのは余談である。

 

【リリルカ・アーデ Lv.1/力:I42/耐久:I42/器用:H143/敏捷:G285/魔力:F317/《魔法》『シンダーエラ』/《スキル》『縁下力持』】

 

 勇気を示さない者に、答えるモノは何もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜半過ぎ、娼館より上機嫌でホームに戻ってきたソーマファミリア団長のザニス・ルストラは、ガネーシャファミリアから先にホームに戻ってきて待っていたカヌゥ・ベルウェイとその取り巻きから報告を受けた。

 

「勝手にアーデがファミリアを抜けただと?」

 

 リリルカ・アーデがファミリアを脱退した経緯について、彼らに取って都合の良いあらましを聞いて真実を察しながらも激怒した。

 

「ソーマ様が認めようが、俺を通さず勝手にファミリアを抜けるなどあり得てはならない。お前達、集められるだけの人を集めろ」

「「へい、団長!」」

 

 自身の取り巻きに勝手に指示を出したザニスに怒るでもなく、強き者には巻かれるのは当然のことと受け入れているカヌゥには懸念があった。

 

「アーデに思い知らせるにしても、奴らは結構な手練れですぜ。なによりソーマ様はアーデの改宗を既に行っているから下手にギルドとかに知られればマズい事になります」

「知られなければいい。ギルドにも、我らに興味のないソーマ様にもな」

 

 ザニスは理知人を気取っていても、実際は非常に陰険で自らの欲望に忠実な人物であり、その内心では主神たるソーマすら見下していることを隠しもしない。

 カヌゥも信仰しているのは神酒であって神ソーマではない。ソーマに対して忠誠を誓っている団員などいないと団長たるザニスは知っていた。

 

「カヌゥ、お前の失敗は楽をしようとアーデに頼ったことだ。俺ならばそんなヘマはしない。絶対に裏切らない方法がある」

 

 どこか芝居じみた動きで、ゆっくりと次の言葉を続ける。

 

「集まった奴らに伝えろ。俺に従うのなら、神酒を分けてやるとな」

「へへっ、流石は我らが団長だ。俺たちのことを分かってらっしゃる」

「なら、お前も行け。無関心なソーマ様もギルドの影響で俺達の動きに勘づくかもしれん。勝負は事を起こす速さで決まる」

「へい!」

 

 カヌゥを見送ったザニス自身も準備の為に自室へと向かう。

 

「ふふっ、アーデよ。お前は身を以て知ることになる。このソーマファミリア(ザニス)に逆らうことの恐ろしさを」

 

 隠しきれない嫌らしさを口元の笑みから滲み出させながら、歪み(神酒)が産み出した悪意が蠢動する。

 

 

 

 

 






 ドラクエ11連携『聖者の詩』でフィルヴィス・シャリアを助けるってアリナシ?

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