ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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 タイトルは選ばれなかった選択肢です。




第20話 ナイス、ツンデレ!

 

 

 

 

 

 ベル・クラネルが団長を務めるヘスティアファミリアのパーティーに別ファミリアでありながら参加しているヴェルフ・クロッゾは、昨日にこのダンジョン内で行われた襲撃、及びそれに付随して巻き起こった一連の騒動を聞いていた。

 

「――――――まさか、そんな大事になっていたなんてな」

 

 完全に蚊帳の外に置かれたヴェルフは少し寂し気に呟いた。

 

「簡単に言いますが、結構大変だったのですよ」

「そうだよ、ヴェルフ。リリは僕達の方が強いと言ってくれたけど、僕達も初めての対人戦で余裕なんてなかったんだから」

 

 リリルカ・アーデに同調したベルは昨日の戦いで、何かが違えば敗北したであろう予感に体をブルりと振るわせた。

 

「おっと」

 

 その拍子に足元の砂が滑って危うく転びそうになるが、そこは冒険者。すぐさま体勢を整えて堪える。

 

「気をつけて下さい、ベル様。この9階層と下の10階層は砂や岩石の多い砂漠地帯。慣れていない冒険者は転びやすいです、ヴェルフ様みたいに」

「おい、リリ助」

「一例として挙げたまでです」

 

 9階層に降りて直ぐに砂に足を取られて豪快に転倒したヴェルフは被っている『てつのかぶと』の中で唇の端をヒクヒクとさせる。

 

「ヴェルフも9階層は初めてで、僕と違って武具が重量級だから仕方ないよ」

「下手な慰めはよしてくれ。惨めになる……」

 

 油断していたのを慰められ、情けなくなったヴェルフは大きなため息を漏らす。

 

「別に仲間外れにされて悔しいとか、そんな子供染みたことを言いたいわけじゃないんだ」

 

 襲撃者のゲドとカヌゥ・ベルウェイ一味は、ヴェルフが所属しているヘファイトスファミリアに喧嘩を売るような愚を犯さなかった。彼らの小賢しさを示していたが、だからこそ襲撃のタイミングを読みやすくギルドやガネーシャファミリアと連携を取ることが出来た。

 

「力になりたかった。ただ、それだけなんだ。何もするなってのは、結構クる」

「ヴェルフ……」

 

 ベルにも分かる理屈だった。

 

「僕は、僕達は、ヴェルフとはまだまだ短い付き合いだけど、間違いなく仲間だと思っているよ」

 

 だから、と続けて。

 

「こんなことが二度とないように改宗しとこ?」

「だあっ!?」

 

 感動の場面を台無しにするタイミングでの勧誘に、豪快に足を滑らせたヴェルフが尻から転倒する。

 ヴェルフによって撒き散らされた砂を邪魔そうに払うアルスと、同じように足を滑らせながらもギリギリで堪えたリリルカ。

 

「イテテテ、今言うことかそれ?」

 

 尻を抑えながら立ち上がるヴェルフ。

 

「ヘスティアファミリアに入ったら全部解決する問題だもん。誘うなら今だと思ったんだ」

「思ったんだ、じゃあないですよ。機会を見つけたら勧誘するのは止めて下さい」

「はは、モンスターの気配は近くにないし、流石に僕も時と場所は選んでいるって」

「能力の無駄遣い……」

 

 このパーティーの中でベルの役割は、盗賊(シーフ)斥候(スカウト)の両方を兼ねている。

 斥候の主な役割は偵察。パーティーから先行して道の先にモンスターがいないか確認したり、或いは釣って特定のエリアに誘き出したりする。地形を利用する職業柄、迷宮資源の採取・採掘を担当するのもザラにある。

 しかし、そこは少数パーティーの問題として一人で複数の役割を兼ねることがある。

 迷宮資源の採取・採掘はサポーターであるリリルカの役割と被るところもあるし、気配察知の勘はアルスの方が上なのでモンスターの接近にベルの方が気づくのが遅いこともままあるので、厳密な役割分担が為されているわけではない。

 

「前にも言ったように、俺はヘファイストス様の下を離れる気はない。が、仲間だと思っているのは本当だ。頼ってほしいし、頼りたいとも思っている」

 

 後はそうだな、と続ける。

 

「パーティーに入る条件として言った、Lv.2までって言うのは忘れてくれ」

 

 『てつのかぶと』に覆われた顔を逸らして言ったヴェルフに、リリルカは鼻で笑ってやった。

 

「ずっと仲良くしてくれと、分かりやすく言えばいいのに。素直ではありませんね」

「うっせえ」

 

――――――――――かさくれネズミたちが あらわれた!

 

 現れたのは軽快なステップを踏む砂漠のかさくれネズミ(ファンキーダンサー)。大体が家族か兄弟でグループを組み、活動するペアのモンスターの出現に緩まっていた空気が緊張する。アルスが武器を抜き放つよりも速く、ベルは背中に固定していた『やいばのブーメラン』を取る。

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルの こうげき!

――――――――――かさくれネズミたちに ダメージ!

 

 先制のベルの攻撃に追従して、攻撃を受けて足を止めたかさくれネズミの懐にアルスが飛び込む。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスの こうげき!

――――――――――かさくれネズミAに ダメージ!

――――――――――かさくれネズミAを たおした!

 

 二刀流による連撃を受けたかさくれネズミAが魔石となって消滅する。そこへアルスからワンテンポ遅れたヴェルフが『てつのオノ』を振り被る。

 

「おらぁっ!」

 

――――――――――ヴェルフの こうげき!

――――――――――かさくれネズミBに ダメージ!

 

 『てつのオノ』によってかさくれネズミBにダメージは受け、瀕死に近く逃げることも出来そうにないが倒し切れていない。アルスが追撃を仕掛けるよりも、かさくれネズミの決死の行動の方が早い。

 

――――――――――かさくれネズミは ばくだん石を 放り投げた!

 

 かさくれネズミが投げた拳よりももう少し大きな石を振り払わんと、アルスが左手の『せいどうのつるぎ+2』を持つ手に力を込める。アルスが何をしようとしたのかを察したリリルカが顔色を真っ青にする。

 

「爆弾です! 斬らないで!」

 

リリルカの叫びに踏み留まったアルスが咄嗟に傾けた顔の横をばくだん石が通り過ぎる。

 

「ベル様!」

「任せて!」

 

 向かってきたばくだん石の前に無手で飛び込んだベルがふわりとキャッチし、そのまま回転して投げ返す。

 投げ返されたばくだん石が赤く染まっていく。

 かさくれネズミは戻ってきたばくだん石に慌てるが、蓄積したダメージが大きすぎて動けない。

 

「来い、アルス!」

 

 『てつの盾』を構えたヴェルフの背後にアルスが隠れた直後、かさくれネズミの足元でばくだん石が爆発する。

 アルスのイオを超える規模の爆発に、『てつの盾』を支えるヴェルフの腕がビリビリと震える。ヴェルフの後ろの方にいて、爆発の影響範囲外にいるベルとリリルカの下にも爆発による衝撃波が襲い掛かってきて、咄嗟の反応で腕を翳す。

 爆発による煙がモクモクと上がり、やがて視界が晴れた頃には爆心地にかさくれネズミの姿はなく残ったのは魔石だけ。

 

――――――――――かさくれネズミたちが やっつけた!

――――――――――アルスたちは 100ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――かさくれネズミたちは 魔石を 落としていった!

――――――――――かさくれネズミAは ばくだん石を 落としていった!

 

 サポーターの役割を果たす為、リリルカが魔石を回収している最中、かさくれネズミAがいた場所に砂に埋もれた魔石と一緒にばくだん石を発見してビクゥと体を震わせる。

 

「り、リリ? それってばくだん石じゃ」

「ええ、砂を被っていたお蔭で爆発はしなさそうです。ですが、衝撃を加えると爆発する恐れがあるので、アルス様の『どうぐぶくろ』に入れておくのが最善だと思います」

「おいおい、大丈夫なのかよ」

「『どうぐぶくろ』の中に関しては分からないことばかりなので完璧な保証は出来ませんが、いざという時に道具としても使えるので確保しておくのは良いことでは?」

「アルスの魔法よりも威力が強かったもんね。もう一個も連続で爆発してたらヴェルフも危なかったんじゃない?」

「むぅ、大丈夫と言える自信は確かにないが」

 

 今も僅かに痺れとして残る爆発の衝撃を思い起こし、不安げな眼差しでヴェルフは腰に吊るしている『どうぐぶくろ』に『ばくだん石』を入れているアルスを見る。

 

「『どうぐぶくろ』の中で爆発したりしないか?」

「中に入れた物はそれぞれ違う場所に保存されているみたいなんだ。例えるなら一つ一つ棚に入れてるみたいな感じかな」

「こんな小ささでリリのバックパック以上に入りますから、内部がどんな不思議空間になっていてもおかしくはありません。流石はヘファイトス様と言ったところでしょうか。下界の常識が通用しません」

「ふふ、だろ?」

「凄いのはヘファイストス様であって、ヴェルフ様ではありませんよ」

「主神が褒められたら眷属は嬉しくなるもんさ」

「…………良く分かりません」

「これから分かって行けばいいさ。爆弾を持ち歩くなんて正気の沙汰じゃないが、ヘファイストス様の作った『どうぐぶくろ』なら安全だろう」

 

 さらりと自身の主神への信頼を滲ませるヴェルフ。

 

「ところでヴェルフ様、ばくだん石は鍛冶の素材にはなるのですが?」

「使うレシピもあるが、殆どないに等しいぞ」

「では、やはり道具として使うのが最善でしょう」

 

 ヴェルフがばくだん石を素材とする武具が『インフェルノソード』『しゃくねつのツメ』の二つしかないことを思い起こしていると、浮かない顔をしたリリルカの姿が目に入る。

 

「ヘスティアファミリアに入った割にはあまり嬉しそうじゃないな、リリ助」

「そのリリ助というのは止めて下さい…………嬉しそうじゃないというのは承服できかねます」

 

 『どうぐぶくろ』に入れても爆発しないのを確認して、探索行に戻った中でリリルカは満面の笑みを浮かべる。ただ、ヴェルフにはやはりその笑顔には影があるように思えてならなかった。

 一瞬チラリとベルを見ると、彼も小さく頷いたが原因には心当たりがないようで少し沈んだ雰囲気が滲む。

 

「正式にヘスティアファミリアに入れて頂き、宿ではなくベル様達と同じホームに住居を移して、過大にも副団長に任を頂戴してファミリアの金勘定も任せて頂いているのです。一サポーターには過分過ぎるほどの責任と立場、これでやる気に満ち溢れないリリではないのです。正しくこの世の春を謳歌しているのですよ。アルス様、一人で先に行かないで下さい!」

 

 興奮して早口で捲し立てるリリルカは、確かに本人が言うように任せられたことに対する重責と嬉しさを感じているかもしれないが、ヴェルフにはどこかカラ元気に見える。早速、突出しかけたアルスの裾を掴んで押し留めている姿からはそうは見えないが。

 

「いきなり副団長を任されて気負ってるのか?」

「嫌って感じでは無さそうなんだよね。もしかして前のファミリアに思うところがあるのかな……」

 

 ベルも理由が分からず困惑している様子を見て取り、ヴェルフが考えていると足を止めたアルス達に追いつく。

 本人の話題を目の前でするのは良くないだろうと考えたヴェルフは話題の転換を図る。

 

「ベル、今回の装備はどうだ?」

「かなり良いよ。毛皮だから、ちょっと熱いけど」

 

 毛皮で作る装備のレシピの素材が揃ったので、ヴェルフが『ふしぎな鍛冶台』を使って『毛皮のフード+2』と『毛皮のポンチョ+1』を作っていた。

 ベルは『とんがりぼうし』は『毛皮のフード』に切り替え、『くさりかたびら』『てつのむねあて』の上から『毛皮のポンチョ』を羽織っている。

 

「砂漠の階層で毛皮の防具を選ぶヴェルフ様の感性が信じられません」

 

 9階層は砂漠の為かそれまでの階層と比べて平均気温が高いにも関わらず、見るだけで暑そうな毛皮に話題に乗ったリリルカはわざと嫌味を漏らす。

 

「冒険は常に万全の準備が必要だ。環境に合わせることも重要だが、前の装備よりもベルの守備力は確実に上がっているんだ。鍛冶師として文句を言われる筋合いはない」

 

 ヴェルフは嫌味には皮肉で返し、ニヤリと笑みを浮かべる。

 

「ちゃんとリリ助にも防具を作ってやったろ」

「この『きんのゆびわ』に、それほどの効果があるとは思えませんが」

「身に着ければ守備力を上げる効果があるぞ」

 

 リリルカが身に着けている指先から肘近くまでサポーター・グローブで見えないが、左手中指に嵌められた金で出来たなんの変哲もない指輪を見やる。

 

「であれば、サポーターのリリが付けるよりも戦闘を行うベル様達が装備すべきです」

「ベルは『ぬすっとのグローブ』、アルスは『ちからのゆびわ+3』をしているから、同時に装備してもどちらかの効果が打ち消されちまう。それじゃあ意味がないだろ」

「ならば、ヴェルフ様が」

「俺もこの『熱砂のイヤリング』とは別の武具を手に装備しているから一緒だ。ほら、消去法でリリ助しかいない」

「ぐぬぬ……っ」

 

 本当はヴェルフも暑さ対策で身に着けた『熱砂のイヤリング』以外は身に着けていないが、手袋をしているのでバレるはずがない。

 不服そうなリリルカをベルが追加の説得を試みていると、アルスがヴェルフの肩を軽く叩く。

 

→素直じゃないな

 ナイス、ツンデレ!

 

「うっせぇ」

 

 『きんのゆびわ』は最初からリリルカの為に作ったであることを見透かしたアルスのからかいを撥ね退ける。

 

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 

 

 

 

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