ちょっとモチベーションが停滞気味な感じ。
順調にお気に入り登録件数は増えているのですが、こう微々たる歩みというか。
増えるのは本当にありがたいのですが。
というわけでソーマファミリア襲撃編です。
「待てや、ゴラァ!」
柄の悪い冒険者が逃げるアルス達の背に向けて静止の声を上げるも、命がかかっているのに待てと言われて待つ馬鹿はいない。とはいえ、10人以上の冒険者に追われているアルス達にも余裕があるわけでもない。
「アルス様、どうぐぶくろを失礼します」
逃走する際、ステータス差もあって一人で走ってはカヌゥ達に追いつかれると思われて、今はアルス・クラネルに右小脇に抱えられているリリルカ・アーデが身を乗り出して左腰に吊られている『どうぐぶくろ』に手を伸ばす。
「…………あった」
ゴソゴソと探して目的の物を取り出したリリルカに、後ろを走っていたヴェルフ・クロッゾがギョッとする。
「リリ助、それは――」
「え、何?」
「ヴェルフ様、避けて下さい!」
リリルカが抱えられている方にいて状況が良く分からないベル・クラネルが覗き込むよりも早く、リリルカは先の戦いで得た『ばくだん石』を背後に向かってポイッとした。
――――――――――リリルカは ばくだん石を 放り投げた!
慌てて避けたヴェルフの後ろで、暫くして着弾した『ばくだん石』が盛大に爆発して悲鳴が連鎖する。
「…………今ので全滅にはならないでしょうが、足止めにはなったはずです」
「お、お前な!?」
「必要な犠牲です。この先の通路を右に曲がれば上層へ上がれます。地上にさえ上がってしまえばこちらのもの――」
言っている間に通路に差し掛かり、右に曲がろうとしたところで数名の冒険者が待ち構えていた。
「神酒の為に死ねヤァッ!!」
――――――――――ソーマファミリア冒険者の こうげき!
――――――――――ベルは 攻撃を武器で はじいた!
リリルカという荷物を抱えていたアルスよりも半歩前に進んでいたベルがソーマファミリア冒険者の攻撃を弾くことに成功するも、背後から更なる足音が聞こえてきたので誰もいない左へと曲がらざるをえなかった。
「ぬかりました。こちらは奥へのルートです。待ち構えていたのなら地上へのルートは抑えられている可能性が高いです。このままでは地上どころか下の階層に降りてしまいます!」
「そうは言っても……!」
別ルートから地上に向かおうにも、数人のソーマファミリア冒険者が待ち構えている。
倒して進もうにも、一人一人はそれこそヴェルフの方が強いが、集団で遅いかかられればアルスやベルでも倒すのに時間がかかる。そうしている間に後ろから追いつかれてしまったら、彼らの目的であるリリルカを奪われるかもしれない。
必然、誘導されていると分かっても誰もいないルートを選択せざるをえない。
「彼らの目的はリリを捕まえることです。リリさえ捕まえれば彼らも諦めて――」
「くれるわけないな。ファミリア総出の闇討ちがバレた日には闇派閥認定は間違いなしだ。確実に証言が出来ないように殺しに来てるぞ」
「既に訓告を受けているんだ。リリを渡しても、彼らは僕らを生きて返す気なんてないだろうから、自分が犠牲になんて考えないでね」
現実として、彼らはベル達を生きて返すなとはっきりと言っていた。リリルカの言葉はヴェルフとベルによって封殺された。
――――――――――アルスは イオを となえた!
話している間に距離を詰めてきていたソーマファミリア冒険者に向かってアルスが
「傷ついた仲間を助けるどころか、踏みつけて追ってくる……」
「恐らく今回の神酒はよほどの量が用意されているのでしょう。彼らは神酒を貰う為ならどんな手段も取ります」
先頭や先頭近くでダメージを多く受けて倒れた仲間を邪魔だと撥ね退け、地面に倒れていても気にせずに踏みつけて顧みることすらしない。
つい先日まで所属していたファミリアであるからこそ、自分があの踏みつけにされていた者の中にいてもおかしくないと知っているリリルカは忸怩たる思いで口にしていた。
「やっ!」
――――――――――ベルの こうげき!
――――――――――ソーマファミリア冒険者に ダメージ!
先頭を進んでいたベルが横道から突如として現れたソーマファミリア冒険者に一撃を放ち、前の別れ道の片方からもワラワラと現れる新手に違う通路に行かざるをえない。
「階段!? まさかこの先は――」
「10階層です。9階層よりも砂漠の範囲が多くなっていますから気をつけて!」
階段を下りきると、目の前に広がるのは一面の砂漠エリア。
「ギラ」
――――――――――アルスは ギラを となえた!
追っ手の足止めの為に扇状に広がる閃光熱を放つアルス。
「そんな場合じゃないのは分かってるが、アルスの魔法って三つ以上ないか?」
「気の所為です!」
熱で怯ませている間に距離を取ったところで、ヴェルフはアルスが魔法を四つ使っていること気づいたが時間がないのでリリルカは全力で誤魔化した。
ヴェルフもステータス差で気を抜けば置いていかれるのは自分なので、追及している暇もないと走ることに集中する。
――――――――――じごくのハサミが あらわれた!
――――――――――アルスたちは にげだした!
モンスターが現れても戦っている余裕は今のアルス達にない。
――――――――――ウィングスネークが あらわれた!
――――――――――アルスたちは にげだした!
無視して走り抜けた背後で、人とモンスターの悲鳴が木霊する。
――――――――――さまようよろいが あらわれた!
――――――――――アルスたちは にげだした!
アルス達が駆け抜けた後で迫ってくるソーマファミリア冒険者達に攻撃を仕掛けるモンスター達。
ソーマファミリア冒険者たちは最低限の防御で、攻撃を行うのも進行方向にいて邪魔だからという理由だから。彼らの目的はあくまでベル達を捕まえることであって、モンスター達は道を阻む障害物でしかない。
中には、さまようよろいやじごくのハサミの痛恨の一撃の食らって致命傷、または明らかに死んだと分かっても仲間の命を顧みることすらしない。邪魔扱いしたり、肉盾として乱暴に扱う者すらいる。
「狂ってやがるぞ、あいつら」
人間の狂気を表出させる彼らだが、ベル達をどこかに誘導することは確実に行っていた。
人数差を活かした人海戦術で、やがてベル達は10階層奥の袋小路の
「へへへっ、ようやく追い詰めたぞ。やりましたぜ、団長!」
カヌゥが大声を上げると、大なり小なり傷を負っているソーマファミリア冒険者の中でただ一人無傷の男が現れた。
眼鏡をかけた神経質そうな男――――ザニス・ルストラは長い外套を翻す。
「ああ、よくやったカヌゥ。今のところ、最も大きい功労者は此度の指揮を取ったお前だと認めよう」
「じゃ、じゃあ神酒は!」
「逸るな。まだ追い詰めただけに過ぎん。なあ」
「へっ、へへへっ、アーデを捕まえさえすればいいんすよね!」
「勿論だとも」
「…………黙っていればなんなんですか、あなたたちは」
いい加減に我慢の限界だったベルが二人の話に割って入る。
「リリはもうヘスティアファミリアの一員だ! あなたたちがやっているのは犯罪でしかない!」
「だから、何だというのだね」
ベルの言葉を一蹴したザニスが眼鏡の位置を調節する。
「
「何が家族だ! リリはずっと傷ついてた! 冒険者が嫌いだって苦しんでた! 寄り添わないで何が家族だ!」
「家族の有り様を簒奪者が語るほど滑稽なことはないぞ」
クツクツと喉の奥で嗤ったザニスが握った右手を前に出す。
「カヌゥを嵌めた罪」
人差し指を立てる。
「勝手にファミリアを抜けた罪」
続いて、中指。
「そしてその全てを私に報告しなかった罪」
最後に、薬指を立てる。
「この三つの罪は重い。報いと罰を受けねばなあ、アーデよ」
「はっ、リリは自分の身を守っただけだ! 闇討ちしようとした方が悪いに決まってる! それともあなたは主神が決めたことを覆すんですか?」
合計三本立った指を見たベルはザニスの言い分を彼らしくなく鼻で笑って言い返す。
「覆すとも。ソーマファミリアにとって神とは神酒を扱う、この私なのだから」
「おい、神を自称するなんて本気か……?」
この神時代において、神が決めたことは絶対であり、神を僭称するなど最大級の不敬そのもの。信じられないことを言い出したザニスの正気を疑い、ヘファイトスの眷属であるヴェルフが問い質す。
「本気だとも」
ザニスは三本立てていた指の手を上げて拳を握り、背後にいるソーマファミリア冒険者達の方へと振り返った。
「ソーマ様が神酒を造れるのは誰のお蔭だ?」
「団長が差配し、金を集めたからですぜ」
「お前達が神酒を飲めるのは誰のお蔭だ?」
「団長が集めた金を上手く使い、ソーマ様に造らせたからですぜ」
「そうだ! ソーマファミリアは俺があってこそ回る! これを神と言わんとしてなんと言う!」
カヌゥに合いの手を入れさせて自論を披露したザニスを否定する者はいない。
内心では別にして、ソーマファミリアで数少ないLv.2でありソーマから絶大な信頼を得ているザニスが派閥を私物化しても逆らえる者はいない。なにより神酒が貰えるなら、誰からでも彼らは構わないのだ。
現状でザニスに従っていれば神酒が貰える。だから、ザニスがなんと言おうと神酒が貰えるなら従う。その程度の理屈でしかない。
「俺はソーマ様の作る神酒が欲しい! 金も女も欲しい! もっと美味い物だって食べたい! 体を満たすこの世のありとあらゆる物を貪りたい!」
その強欲ぶりを語るザニスの顔は、この場にいる神酒に溺れている誰よりも醜怪な形相であった。
ベル達には醜悪さしか感じられなくとも、神酒に溺れている者にとっては同意出来る部分があるのか、寧ろ尊敬の眼差しを向ける者さえいる始末。
「…………話を戻そう」
理知の仮面を被り直したザニスは手で禍々しい口元を隠す。
「既に改宗してしまったものは仕方ない。だが、払わねばならない物は払ってもらわねばな。通常ならば脱退金は1000万ヴァリスだがお前の罪は重い。よって、脱退金は1億ヴァリスとする」
「なっ!? い、一億!?」
「仲間の命の代金としては安い物だろう?」
いや、と言い直すように顎に当てる。
「命は金では買えないというが、安くはない。代わりに、アーデが今まで貯めた金の在り処と、ヘスティアファミリアの金を全ては当然として。そうだな、ヘファイトスファミリアの弱みを言うなら少し割引してやっても良いぞ」
「誰がお前のような糞野郎の言うことなんざ聞くものか」
怒りからはっきりと否と答えたヴェルフを一度視線をやり、再びザニスはリリルカに目を戻す。
「と、お前の仲間は言っているがお前はどうだアーデ?」
リリルカの答えなど、この詰みの状況に追いやられてしまった時点で決まっている。
ベルの背後から進み出て、砂の地面に膝と両手をつく。
「ソーマファミリアに戻って、どれだけかかってもリリがお金を払います。だから、ベル様達は見逃して――」
「駄目だよ、リリ」
頭を下げようとしたリリルカの肩をベルが抑える。
「あんな外道に頭を下げる必要なんてない」
「そうさ。何を言ったってああいう手合いは、ここまでのことをして生かして帰す気はないんだ」
「ほう、アーデほど愚かではないようだ」
どれだけ手で隠しても下劣な本性を滲ませ続ける声で、リリルカの希望をザニスは踏みにじる。
「偽りであっても希望がないよりはいいだろう?」
「一度希望を与えておいて、奪おうとする方が性質が悪い」
アルス達の選択はたった二つしかない。
→戦おう
降参しよう
戦意を滲ませたアルスの言葉に、深く頷いたベルも前に進み出る。
「アルスの言う通りだ。戦って騒げば騒ぐだけ他の冒険者が気づく可能性が高くなる」
「こんな腐れ野郎に従うなんて死んでもごめんだ。一丁、派手にやってやろうぜ」
「みなさん……」
それぞれが武器を手に、一歩も引かない姿勢を見せた三人を膝をついたまま見上げるリリルカ。
「救いようのない馬鹿の集まりだったか。まあ、いい。死んでから有り金を頂くとしよう、カヌゥ」
「へい、お任せあれ」
下がったザニスと入れ替わるように前に出たカヌゥがソーマファミリア冒険者達へと振り返りながら武器を掲げる。その直ぐ足元で砂がサラサラと流れていく。
「よし、お前達、アーデを捕まえた奴が一番多く神酒を貰えるんだ。気張れよ!」
【おう!】
「お前達、やっちま――」
――――――――――つうこんの いちげき!
号令をかけていたカヌゥが砂から生えたナニカに背後から胴体を貫かれた。
口から血を垂らしながらカヌゥは信じられないような目で自身の胴体を貫いたツメのように見えるソレを見下ろす。
「な、がっ、ぁ……」
砂が盛り上がり、カヌゥの胴体を貫いている主が現れた。
4本のハサミと2本の鎌のような腕を持つ黄色いサソリの魔物――――デスコピオンは腕を振るって鎌の先にいるカヌゥを放り捨てた。
「砂漠の殺し屋デスコピオン…………オラリオが出来てから、たった数例しか発見例のない伝承の中だけのモンスターが何故」
砂漠に投げ捨てられたカヌゥは何度かバウンドして、砂に埋もれるようにしてうつ伏せになって動かない。幾ら一般人よりも強靭な冒険者といえど、胴体を貫かれては致命傷だろう。
カヌゥの生死に興味などないデスコピオンは周りにいる有象無象の冒険者を見渡し、臨戦態勢を示すようにハサミと鎌を広げて叫びを上げた。
「う、うわぁああああああああああああああっっ?!!」
明らかに10階層にいるモンスターとは格の違う大型モンスターの出現に、恐慌を来した一人が逃げ出そうとした。その前にさまようよろいが立ち塞がる。
――――――――――つうこんの いちげき!
「ぎゃぁああああああああああああああっっ!?」
強力な一撃を受けたソーマファミリア冒険者が血を撒き散らして倒れる。
血を浴びたさまようよろいの後ろには新たなさまようよろいや、ホイミスライム、じごくのハサミ、ウィングスネークの姿があった。
前後でモンスターの挟み撃ちにあったソーマファミリア冒険者の恐慌を来たした叫びが広い
「
10階層から下の階層では、同一地帯で瞬間的にモンスターが大量に発生する
モンスター達は
「これはチャンス、なのか?」
「寧ろ生存率が低くなったんじゃ…………特にあの
――――――――――デスコピオンは 背中の紋様が 怪しく光った!
――――――――――ソーマファミリア冒険者たちの 頭は こんらんした!
――――――――――ソーマファミリア冒険者の こうげき!
――――――――――ソーマファミリア冒険者に ダメージ!
――――――――――ソーマファミリア冒険者の こうげき!
――――――――――ソーマファミリア冒険者に ダメージ!
――――――――――デスコピオンは サンドブレスを はいた!
――――――――――ソーマファミリア冒険者たちの目に すなが はいった!
――――――――――デスコピオンは ルカナンを となえた!
――――――――――ソーマファミリア冒険者たちの、守備力が すこし さがった!
――――――――――デスコピオンは するどいツメを ふりまくった!
――――――――――ソーマファミリア冒険者たちは ダメージを 受けた!
ソーマファミリ冒険者も攻撃を加えてデスコピオンにダメージを与えているが、総合的に見た時にどちらのダメージが多いかは火を見るより明らか。しかも敵は前方のデスコピオンだけでなく、後方で発生している
――――――――――さまようよろいの こうげき!
――――――――――ソーマファミリア冒険者は ダメージを 受けた!
――――――――――ウイングスネークは 毒の息を 吐いた!
――――――――――ソーマファミリア冒険者たちは どくに おかされた!
――――――――――じごくのハサミは こうげき!
――――――――――ソーマファミリア冒険者は ダメージを 受けた!
――――――――――ホイミスライムの こうげき!
――――――――――ソーマファミリア冒険者たちは ダメージを 受けた!
倒しても倒しても無限に出現するように後からやってくるモンスターの群れに、ジリジリとソーマファミリア冒険者は人数を減らしていく。
「お前達、私を守れ! そうすれば持っている神酒を全てくれてやる!」
ザニスはその中を逃げ回り、神酒を餌にして自分を守らせるように動いていた。
全体を指揮する者もおらず、連携もなく個々人で対処するだけで場当たり的に動いて削れていく。やがてソーマファミリア冒険者たちが全滅するのは時間の問題だろう。
→戦おう
ソーマファミリアが消耗させてくれるまで待つ
「一点突破でこの状況を離脱する。さっきと同じだよ。ただ、戦う相手が変わっただけだ」
「人間相手にするよりかは気が楽でいい」
『どうぐぶくろ』から取り出した回復薬を取り出してHP・MPを全快させたアルス達が、その辺に空のポーション瓶を放り投げる。
武具の調子を確かめる三人を、立ち上がれないでいるリリルカが見上げる。
「正気ですか? あんな場に飛び込むなど自殺行為です」
準備運動をするように腕を回していたベルが顔を向ける。
「このまま待っていても同じことだよ。ソーマファミリアが全滅してから動いても、全てのモンスターの標的がこっちに変わって逆に突破することが困難になる」
「どうせ死ぬなら戦って死んだ方が男らしいしな」
快活に笑ったヴェルフに微笑み、ベルはリリルカの両脇を持って立たせる。
「リリは隙を見つけて逃げてほしい。突破口は必ず開く。そしてヘファイトス様にこの『どうぐぶくろ』を返しておいてほしい」
ベルはアルスから受け取った『どうぐぶくろ』をリリルカに渡す。
生きて帰れないことを覚悟しているベルから受け取らざるを得なかったリリルカは『どうぐぶくろ』の口をギュゥッと強く握る。
「男の自己満足です。リリはそんなこと望んでいません!」
リリルカは取り繕っていた本性を隠す必要性も失って叫ぶ。
「まだ騙されていることに気づかないのですか! リリはベル様達が思っているような善良な小人族ではありません!」
換金の際にお金をちょろまかしたこと。
お使いを頼まれた時も定価との差額をくすねたこと。
ヘスティアファミリアとの分け前を半分ではなく、3・7にしたこともあること。
他の冒険者の武具やアイテムを盗み、売り払ってきた。一度や二度ではなく何度もしてきたこと。
「これで分かりましたか!? リリは悪い奴です! 嘘ばかりついてきた最低の小人族です! それでもみなさんはリリを助けるんですかっ!」
「うん」
あっさりと頷いたベルは今更何を言うのだろうと首を傾げる。
「リリが何かを隠していたのは分かっていたよ。それでも僕はリリが困っているなら助けてあげたいと思っていた」
「分かっていたならなんで!」
「寂しそうだったから」
簡単に言い放ったベルに、リリルカは言葉を失った。
「
「いいってことさ。俺たちは臨時だとしても
「うん」
喋っている間にモンスターがやってこないように一人見張っているアルスの後ろで、ベルとヴェルフが武具を持ったままの手をガチャンと音と立ててぶつけ合う。
清々しく笑う彼らに俯いたリリルカが口を開く。
「リリは、リリは仲間ではないのですか……?」
「仲間だよ、だから生きてほしい」
バッと顔を上げたリリルカは涙が光る眼でベルを睨む。
「本当に仲間だと言うのなら、言って下さい! 一緒に来いと!一緒に死んでくれと! リリは皆様の仲間ではないのですか!」
「リリ……」
「今までずっと逃げてきました! ソーマ様から、神酒から、ファミリアから、冒険者から!」
だから、と追い詰められて開き直っただけかもしれないがリリルカは叫び続ける。
「最後ぐらい立ち向かってやりますよ! 今のリリにはみなさん以外に失う物なんてなにもないんですから! リリを仲間だと思ってくれるなら言って下さい! 一緒に死んでくれと!」
はぁはぁ、と息を荒げるリリルカに目を見張ったベルは僅かに口角を上げる。
「分かった。けど、死んでくれなんて言わないよ。一緒に生きて帰ろう、リリ!」
「はい!」
ベルの言葉に力強く返事をしたリリルカは、駆け出したアルス達の後を追う。
ソーマファミリア襲撃と見せかけた第二章ボスモンスターはデスコピオンの登場です。
リリルカの覚醒? 変革的なお話です。或いは吹っ切れか。