感想・評価・お気に入りが増えるごとにモチベーションが上がります。
というわけで第二章完結編です。
アルス達の後を追ったところで、戦闘能力がないリリルカでは出来ることがないのは本人が最も自覚していた。だからこそ、リリルカの目的はこの騒動の主犯でLv.2でありながら戦闘に参加せず、逃げ回っているザニス・ルストラにあった。
迫りくるじごくのハサミに完全に腰を抜かしているザニスを助ける為、リリルカは虎の子の魔剣を放つ。
「ひっ、ひぃいいいいいいいいぃぃぃぃぃっ!?」
「えいっ!」
――――――――――リリルカは 魔剣を はなった!
リリルカが振った短剣タイプの魔剣から炎の塊が飛んでいき、今にもザニスに襲い掛かろうとハサミを振り上げていたじごくのハサミを呑み込んだ。
――――――――――じごくのハサミに ダメージ!
――――――――――じごくのハサミを たおした!
ギョロついていた左目に炎塊が直撃し、会心の一撃によって悶え苦しんだじごくのハサミが魔石と化す。
「あ、アーデ……」
助けられたザニスがリリルカを信じられない思いで見上げるが、転がり込んだ場所はデスコピオンの攻撃範囲内。手近に来たザニスを仕留めんとデスコピオンがハサミを振り上げる。
「うおぅっ!?」
――――――――――デスコピオンの こうげき!
――――――――――ヴェルフは 攻撃を盾で はじいた!
――――――――――ヴェルフに ダメージ!
ヴェルフが割り込んでデスコピオンのハサミを『てつの盾』で受けるも、それだけで手が痺れてダメージを受けるほどの威力。
「こちらへ!」
低ステータスとはいえ一般人を遥かに超える冒険者であるリリルカの力は強い。未だ動かない
デスコピオンはザニスを標的と定めたのか、狙うように体を動かす。そこへアルスとベルが飛び込む。
――――――――――アルスとベルの こうげき!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
流石にダメージを負わされ、明確に敵と定められて狙われている状況でデスコピオンも戦意のないザニスに構ってはいられない。
ザニスを放って、アルス達を睨みつける。
「な、何故、私を助けるのだ、アーデ?」
「見捨てられるものなら見捨てたいですよ! ですが、今は一人でも戦力が欲しい時です!」
自分で動こうとしない
「無理だ。私は戦えない」
「はっ、何年も搾取するばかりでダンジョンに潜らず、享楽に耽っていたあなたにいらぬ期待などしていません」
「分かっているならば何故……!」
襟元を掴んで続く言葉を封じられるザニス。
「先程、何故助けたと聞きましたね。簡単です。あなたがソーマファミリア団長で求心力があるからです」
でなければ助けるものか、と吐き捨てたリリルカは襟元ではなく背中の後ろに持ち替える。そして未だ混乱を深める
「聞きなさい、ソーマファミリアの同胞達よ!」
リリルカの凛とした声が
事前の打ち合わせ通り、デスコピオンと戦っていたアルスが
「イオ」
――――――――――アルスは イオを となえた!
モンスターを狙ったわけではない
「下がって体勢を整えなさい! 落ち着いて周りの者と連携すれば倒せない相手ではないでしょう!」
酒に溺れていても彼らは冒険者。一歩間違えば簡単に生死の境目に追い込まれている状況だからこそ、リリルカの指示に正当性を認めて従った。その中にもリリルカを知る者は従わずに、一人でこの場を切り抜けようとした者がいる。
「団長ザニス・ルストラが保証してくれました! この危難から生き残った者には、秘蔵してあった全ての神酒を万遍なく振舞うと!」
ザニスの背中を押して前面に押し出す。見えない位置でザニスに短剣型の魔剣を突きつけて、何も言わないように脅しながらのリリルカの声を聞いたソーマファミリア冒険者達は武器を握り直す。
「神酒が呑みたいなら、自身が生き残る為に最善の行動をしなさい!!」
冒険者は
「はっ!」
――――――――――アルスは、剣を ぶんまわした!
――――――――――しかしデスコピオンに 攻撃を はじかれた!
「ヴァイパーファング!」
――――――――――ベルは ヴァイパーファングを はなった!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
――――――――――デスコピオンは もうどくに おかされた!
アルスが切り込んだ逆からベルが斬撃を浴びせかける。
片方が囮になって注意を引いている間の攻撃に、毒に侵されたデスコピオンは苛立つようにハサミを振り回してアルスを狙う。
下がるアルスを追って伸びた体の横側からヴェルフが『てつのオノ』を持って仕掛けた。
「おらぁっ!」
――――――――――ヴェルフの こうげき!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
隙だらけな横っ腹に強かに打ち付けたが、ヴェルフの力では大きなダメージを負わせることが出来ない。純粋なステータス不足にヴェルフが歯噛みして後退するよりも、行動を邪魔された怒りでデスコピオンがハサミを振り上げる方が早い。
「メラ」
――――――――――アルスは メラを となえた!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
振り返ったアルスが無防備な横っ面を晒すデスコピオンに向かって
「畳み掛けろ!」
ベルが叫んで自らも追撃を仕掛けんと迫ったところで、デスコピオンが傾いていた体を利用してそのまま背中を見せる。
――――――――――デスコピオンは 背中の紋様が 怪しく光った!
――――――――――アルスたちには きかなかった!
「やっ!」
――――――――――ベルの こうげき!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
振り返ろうとしているデスコピオンの背中に一撃を与え、耽溺せずに距離を取る。
ベルと入れ替わるようにアルスが前に出た。
「ギラ」
――――――――――アルスは ギラを となえた!
――――――――――デスコピオンは するどいツメを ふりまくった!
アルスが放ったギラがデスコピオンが振りまくったツメによって散らされる。
舞い散る火の粉が多少のダメージは与えられただろうが、真っ当にギラが当たった時と比べれば微々たるダメージに留まる。
「おらぁっ!」
――――――――――ヴェルフの こうげき!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
意識が前面に集中した瞬間を狙ってヴェルフが背後を強襲する。
背面からの攻撃にデスコピオンの意識が一瞬背後に向かう。その瞬間、アルスが両手の武器にオーラを纏う。合わせるようにベルも武器を手に集中を高めた。
「はっ!」
「スリープダガー!」
――――――――――アルスとベルは スリープアタックを はなった!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
――――――――――渾身斬りで ひるんだ敵を ねむりへと いざなう!
――――――――――デスコピオンを ねむらせた!
アルスが渾身斬りを放ち、間断を置かずに打ち込まれたベルのスリープダガーによってデスコピオンは大きなダメージを負い、崩れ落ちるように砂の地面へと大きな音を立てて倒れ込んだ。
体が消滅せず魔石化しないので倒し切れてはいない。呼吸の度に体が上下しているので、ただ単に眠っているだけのようだ。
スキルで眠りや混乱の敵に通常攻撃の6倍のダメージを叩き出せるベルが、攻撃でデスコピオンを起こしてしまう可能性を前に次の行動に迷う。
「眠ったのなら敢えて倒す必要はありません! アルス様達で脱出の血路を開――」
今必要なのはこの
手が空いたアルス達を活かす為に指示を出そうとしたリリルカの意識が、希望が見えたことで何割かザニスから集中が薄れた。ずっと魔剣を突きつけられていたザニスが直ぐに気づいて動く。
「寄こせ!」
「きゃっ!?」
隙さえあればステータス差で魔剣を奪うなど簡単なことだった。リリルカから魔剣を奪い取ったザニスがデスコピオンに向けて振るう。
――――――――――ザニスは 魔剣を はなった!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
――――――――――デスコピオンは めをさました!
「よくもこの私を脅し利用してくれたな、この糞
魔剣さえなければリリルカにザニスを抑えられる強さはない。砂の地面に倒れていたリリルカの腹部に振り上げた足を叩きこんだ。
「――ぁ!?」
ボールのように吹き飛び、何度も地面をバウンドして砂を撒き散らす。
勢いがようやく止まった頃、リリルカは襲い掛かってきた蹴られた腹部の痛みに悶え苦しむ。
「あぁっ、づぐぅ……」
リリルカが蹴り飛ばされた場所は目覚めたデスコピオンの前。
目の前に現れた哀れな弱者をデスコピオンが見逃す理由はない。目覚めたばかりのデスコピオンが鎌を振り上げる。
(あ、死んだ)
己を覆った影にリリルカが顔だけ振り仰いでも、腹部に走る痛みで動けないので避けることは出来ない。
アルスとベルの位置からでは決して間に合わない。だからこそ、近かったヴェルフが飛び込んだ。
「うぉおおおおっっ!」
――――――――――つうこんの いちげき!
――――――――――ヴェルフに ダメージ!
攻撃を受けた『てつの盾』が粉々に砕ける。それでも攻撃の威力は収まらず、ヴェルフの『てつの鎧』にのめり込んで背後にいたリリルカを巻き込んで弾き飛ばされる。
「リリ! ヴェルフ!」
明らかにヴェルフはアルスの治癒魔法が必要なダメージを負っているはずで、リリルカもヴェルフ越しに攻撃の衝撃を受けているので状態を確認する必要がある。
「貴様らはここで死んで行け!」
視界の端で、これだけの被害を産み出したザニスが自壊した魔剣を捨ててLv.2のステータスを活かして、ソーマファミリア冒険者が連携したことによって生まれたモンスター達の隙間を縫って逃げていく姿が見えたが直ぐに意識から消した。
「アルス!」
双子の弟はベルが何を言う必要もなく意図を読み取って動いてくれていた。
――――――――――デスコピオンは サンドブレスを はいた!
――――――――――アルスは すばやく すなをふりはらった!
アルスは進路上を覆ったサンドブレスを振り払うが、その全てを除けることは出来ない。小さなダメージを負いながらも進んで突破したところで、目の前にデスコピオンのハサミが割り込んだ。
――――――――――デスコピオンの こうげき!
――――――――――アルスに ダメージ!
咄嗟の反応でアルスはデスコピオンの攻撃をシルバートレイで受けたが、力任せに弾き飛ばされた。
アルスを弾き飛したデスコピオンが全速力で地に伏したままのヴェルフ達を目指す。先回りしたベルが『やいばのブーメラン』を取る。
――――――――――ベルの こうげき!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
『やいばのブーメラン』は確かにデスコピオンの傷をつけたが前進は止まらない。
背後にヴェルフとリリルカがいるからベルは自身に退避を許さなかった。
「ぐっ!?」
――――――――――ベルは みをまもっている!
――――――――――デスコピオンは するどいツメを ふりまくった!
――――――――――ベルに ダメージ!
グループに対して放たれる攻撃がたった一人に向けられる。
防護姿勢を取ったベルを、デスコピオンは鋭い爪を幾度も振って傷つけていく。そこへ一度は弾き飛ばされたアルスがデスコピオンの背後から飛び掛かり、振り上げた武器が光を纏う。
アルスから片時も意識を外していなかったデスコピオンは、振り返りながら鎌の一撃を放った。
「はっ!」
――――――――――アルスは、渾身切りを はなった!
――――――――――つうこんの いちげき!
何かが砕ける音が
武器を半ばから折られて空中に押し上げられたアルスと違って、地面にいるデスコピオンにはもう一つの鎌があった。
「あ、ルス……っ!」
ベルの位置からではデスコピオンが壁になって何が起こったのかは分からない。ただ、直感的に良くないことが起こったと悟ったベルだったが、防御で全身に力を入れていて直ぐには次の動きに移れない。ただ出来たのは名を呼ぶことだけだった。
――――――――――つうこんの いちげき!
デスコピオンの鎌の一撃がアルスに迫る。
防ぐ暇も避ける暇も迎撃する暇もないアルスの体が貫かれる刹那、「これを!」と叫び声と共に飛んできた何かがデスコピオンを弾き飛ばした。
「使って!」
デスコピオンを弾き飛ばしたのは、中ほどで折れた大剣だった。一瞬、アルスは中空に浮かんで大剣を投げた姿勢の金髪の少女――――アイズ・ヴァレンシュタインを見た。アイズを見て、デスコピオンに当たった反作用で目の前に浮かんだ大剣の柄を掴む。
アルスは大剣を持ち、大剣にオーラを纏って地に倒れ込んだデスコピオンに向かって振り下ろす。
「はっ!」
――――――――――アルスは、渾身切りを はなった!
――――――――――デスコピオンに ダメージ!
37階層にいる階層主ウダイオスを単身で撃破することで得られるレアドロップアイテム『ウダイオスの黒剣』。半ばで折れようともLv.6の
――――――――――デスコピオンを やっつけた!
斬るのではなく、体内に存在する魔石ごと叩き潰されたデスコピオンはその存在を消滅させた。
「ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼きつくせ、スルトの剣。我が名はアールヴ!」
もう一つの戦場で響き渡る玲瓏なる声。紡がれていた長大な詠唱が完成へと至り、弾ける音響と共に魔法円が冒険者を避けて全てのモンスターの足元に広がる。
アイズがウダイオスを撃破し、三日をかけてダンジョン上層へと共に上ってきたリヴェリア・リヨス・アールヴは、上級冒険者の務めとして騒動に駆けつけて魔法を発動させる。
「レア・ラーヴァテイン!!」
地面の魔法円から突き出す無数の炎柱。
Lv.6のリヴェリアが10階層のモンスターに本気を出す必要はなく、出力を絞っても劫火の奥に次々とモンスターの姿が消え、絶叫が折り重なる。
「すっ……すげぇ……」
ソーマファミリア冒険者が呆然と見ている中でモンスターは全て焼き尽くされた。
――――――――――まもののむれを やっつけた!
――――――――――アルスたちは 1440ポイントの経験値を かくとく!
熱気と火の粉がふわりと舞い、
「随分と騒がしいと、帰りがてらに様子を来てみれば」
白銀の杖を持ったリヴェリアは立っている者の方が少ない
(第一級冒険者様が来てくれた……)
落ちそうになる意識を辛うじて留めていたリリルカは、高潔で有名なリヴェリアの救援に安心する。途端に今まで張り詰めていた糸が切れて、リリルカの意識は闇の中へと落ちた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
自室で手に瓶を持っていた神ソーマはドアを叩く遠慮がちな小さなノック音に気づいた。
「どうぞ」
入室を促すと、「失礼します」とつい先日もソーマの自室に来た見知った
リリルカは部屋に入って、ソーマの自室にはもう殆ど物がないことに気づく。
「お邪魔して、申し訳ありません」
荷物を片付ける時に来てしまい、手を止めさせたことに再度頭を下げるリリルカにソーマは少し寂し気に笑う。
「ホームを移転されるという噂は本当だったのですね」
「移転ではなく追い出されるというのが正確だな」
ザニスに任せていたツケだ、と続けたソーマは持っていた瓶を机に置いていた木箱に入れる。
「ファミリアほぼ総出で他ファミリアの闇討ちを行ったのだ。取り潰しにならないだけ奇跡に近い」
ソーマファミリア冒険者に多数の死傷者が出たあの場で、リヴェリア・リヨス・アールヴにソーマファミリアの所業が明らかにならないはずもない。
ファミリアぐるみでの他ファミリアの闇討ちするなどという蛮行を、利害関係のないロキファミリアが黙っている理由もなく全てギルドに報告されて瞬く間に行政処分が下されることになった。
「多額の懲罰金で、ホームを抵当に入れても残る借金。運営にギルドの指導が入り、要因となった神酒の製造禁止となって、生き残った者も多くがファミリアを抜けた」
元々、団員達の殆どがソーマが作る神酒を目当てに入団・改宗した者だった。
尚残る莫大な借金もあって、襲撃に関与しなかった者の中にも脱退者が出て最終的に残ったのは、リリルカが考えているよりもずっと少ないのかもしれない。
「ザニスは見つかっていないと聞きました。新たな団長を選出したとしたらどなたに?」
「襲撃に関与しなかった中で、最もLv.の高かったチャンドラ・イヒトに頼んだ」
「ああ……」
孤独であったリリルカがファミリアの者達に苦しめられていた時、助けるでもなく、そして同時に害にもならなかったドワーフが脳裏に浮かぶ。
「貧乏籤を引かせてしまうが、なんとか無理を言って頼み込んだ」
「それは、あの方も困ったでしょうね」
「苦虫を百匹ぐらい噛んだような顔をしていたよ」
何を思ってチャンドラは残ることにしたのか、一瞬だけ思考を巡らせて今はもう他ファミリアの眷属になった自分には栓もないことだと、リリルカは頭を振って考えを追い出した。
「今の私達には何もない…………ギルドだけでなく、ヘファイトスやヘスティアにも賠償として渡せる物は全て渡した」
ギルドへ多額の懲罰金を支払い、ファミリアで管理していた武具やアイテム、レシピに至るまで差し出したソーマファミリアに金になる物は何もない。
「アーデよ、私を笑いにでも来たか?」
そこでリリルカは未だに目的を口にしていないことに気づいた。
いいえ、と首を横に振ってリリルカはサポーターグローブを纏っていない手をギュッと握る。
「脱退金のことです」
全くの予想外の話題に、長い前髪に隠れていたソーマの体が揺れて目が見えた。
「前回は有耶無耶にしましたが、今すぐは無理でも必ず貯めてお支払いすることを伝えに来ました」
「いや、いい。ザニスが勝手に決めたことだ。守る必要はない」
「これは、リリなりの意地なのです。お願いします」
闇討ちの主犯であるザニスは恩恵を刻んだソーマの証言で生きていることは分かっているが行方を暗ませている。ソーマも脱退者多数の中で、ギルドによって指名手配されたザニスが決めた脱退金を撤回していた。
意地を張るリリルカに、やがて根負けしたソーマが肩を落とす。
「好きにしなさい。その時は受け取ろう。話はそれだけか?」
立ち退きの期限があるので荷物の片づけを急がなければならない。莫大な借金があるので貰えるならば貰っておこうと適当に答えて、用件が終わったなら出ていくように暗に伝える。
面倒くさがりのソーマの心情を理解しているリリルカは再度首を横に振る。
「いいえ、リリは決着を付けに来ました」
「決着だと?」
既に別ファミリアに改宗したリリルカに何の決着があるのかとソーマは疑問に思った。
「…………ここで改宗の話しをした時、神酒を飲んでも同じことが言えればソーマ様はリリの望んだ通りにしてくれると仰いました。その言葉は今でも有効ですか?」
「既に改宗は終わっている。意味はない」
「意味はあります、ここに」
そう言ってリリルカは握った手を左胸に当てる。
「リリは過去を超克出来ていません。神酒に打ち勝って初めて、リリは本当の意味でヘスティアファミリアの一員になれる気がするのです。だから、どうかお願いします」
もう一度、試しをさせて下さいと頭を下げるリリルカに、ソーマは少しの間考えてから、分かったと小さく呟いて机の上の木箱の中から酒瓶を取り出す。
「…………これがファミリアに残った最後の神酒だ」
「頂きます」
ソーマに歩み寄ったリリルカは酒瓶を受け取り、躊躇いもせずに蓋を外す。
匂いだけで人を狂わせるに足る芳醇な香りが室内に漂う。しかし、リリルカは何の感慨も躊躇いも見せず、一気に中身を飲み干した。
「――――リリを狂わせた神酒、この程度のものだったのですね」
飲み切った後で、瓶を机に置いて口の端に垂れた一滴を拭ってからソーマを見上げる。
「ソーマ様、今まで育てて頂きありがとうございました。リリは行きます」
背を翻したリリルカに、ソーマはまるで初めて見るかのように嘗ては眷属だった少女の背中を目を細めて見つめた。
「…………リリルカ・アーデ」
はい、と振り返らずに返事をしたリリルカにソーマは言う。
「すまなかった。体には気をつけなさい」
「はい……」
リリルカは扉の前で立ち止まって、振り向かずに答えて出て行った。
少しして、リリルカが出て行ったドアからドワーフの男――――新団長チャンドラ・イヒトが入ってきた。
「引き止めなくてよかったんですかい?」
「私が勝手に失望して、見限って、放り出した子だ。自らの意志で巣立ち、仲間を見つけたのなら祝福こそすれ、引き止める権利などあるはずもない」
チャンドラの質問に、ソーマは静かに答える。
「ただ、あの子が幸せになってくれることを願っているよ」
「…………変わりましたな、ソーマ様。以前のあなたならそんなことは決して言わなかったでしょうに」
「子が変わったのだ。不変を言い訳にして
「違いない」
チャンドラは肩を揺らせて笑う。
「それで、どうするんで? これから」
「借金を返す為にも稼ぐ必要がある。すまないがお前達に負担をかける」
「ダンジョンに潜って、金の為にモンスターを倒す。なんとも冒険者らしい理由で」
ソーマの部屋でそんな会話が為されている頃、ソーマファミリアのホームから出てきたリリルカは待っていたベルとアルスの下へ駆け寄った。
「お待たせしました」
「もう、いいのかい?」
「はい」
ベルの確認に、決別は済ませたリリルカは静かに頷く。
「ベル様達こそ良かったのですか? 今のリリは、着ているこの服以外には何も持っていない嘘つきの小人族です」
サポーター・グローブもバックパックも僅かでも金になる物は売り払い、今までリリルカが盗みを働いてきた冒険者達に返金した。お金は1ヴァリスもなく、道具もなくてサポーターとしてもやっていけないリリルカを抱え込む理由は普通ならばないはず。
俯くリリルカに、アルスの脳裏に選択肢が浮かぶ。
→これからよろしく、リリルカ・アーデ
他所でも元気でやれよ、リリルカ・アーデ
アルスが手を差し出す。
「もう、アルスは良いところだけ取るんだから。よろしく、リリ」
アルスに遅れてベルも手を差し出す。
リリルカの返事はとっくの昔に決まっていた。
「はい、よろしくお願いします!」
満面の笑みを浮かべて、二人の手に飛びつく。
ここからがリリルカ・アーデという冒険者の、本当の始まりだった。
――――――――――リリルカは メラの呪文を覚えた!
――――――――――リリルカは、レベル2に あがった!
――――――――――リリルカは ギラの呪文を覚えた!
――――――――――リリルカは、レベル3に あがった!
――――――――――リリルカは ヒャドの呪文を覚えた!
【リリルカ・アーデ Lv.1(レベル3)
HP:19
MP;12
ちから:2
みのまもり:0
すばやさ:11
きようさ:9
こうげき魔力:18
かいふく魔力:0
みりょく:8
《魔法》
【シンダーエラ】 ・変身魔法
【メラ】 ・火炎系魔法(小)
【ギラ】 ・閃光系魔法(小)
【ヒャド】 ・冷気系魔法(小)
《技能》
《スキル》
【
【
《次のレベルまで:49 】
タイミング良く現れたアイズとリヴェリアですが、ベル達側は色々と日程が変わっていますが彼女達は深層の階層主ウダイオスを倒した後、地上に戻る途中で10階層の騒ぎに気付きやってきました。
アイズが投げた大剣『ウダイオスの黒剣』は、18階層迷宮の楽園で譲ってほしいと頼み込まれるも、前にアルスが他の武器と一緒に大剣を持って行ったことを思い出したので断っています。
リリルカ・アーデの声優と、ベロニカの声優は一緒です。
じゃあ、リリルカはどうなるかといえば……。
次話より投稿時間が変わります。
以下は、第二章終了時点でのステータスです。
――――――――――アルスは、レベル13に あがった!
――――――――――アルスは、レベル14に あがった!
――――――――――アルスは、レベル15に あがった!
――――――――――アルスは ラリホーの呪文を覚えた!
――――――――――ベルは、レベル13に あがった!
――――――――――ベルは、タナトスハントを覚えた!
――――――――――ベルは、パワフルスローを覚えた!
――――――――――ベルは、レベル14に あがった!
――――――――――ベルは、レベル15に あがった!
――――――――――ベルは インパスの呪文を覚えた!
――――――――――リリルカは メラの呪文を覚えた!
――――――――――リリルカは、レベル2に あがった!
――――――――――リリルカは ギラの呪文を覚えた!
――――――――――リリルカは、レベル3に あがった!
――――――――――リリルカは ヒャドの呪文を覚えた!
【アルス・クラネル Lv.2(レベル12→15)
HP:72(+5)→98(+5)
MP;38→50
ちから:31(+2)→40(+2)
みのまもり:15→18
すばやさ:38→48
きようさ:24→29
こうげき魔力:34→44
かいふく魔力:36→45
みりょく:28→35
《魔法》
【メラ】 ・火炎系魔法(小)
【ホイミ】 ・治癒系魔法(小)
【ギラ】 ・閃光系魔法(小)
【イオ】 ・爆発系魔法(小)
【ラリホー】 ・催眠系魔法
《技能》
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
【ぶんまわし】 ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能
【渾身斬り】 ・敵一体に大ダメージ
【フリーズブレード】 ・氷の力で敵1グループに攻撃
《スキル》
【二刀の心得】 ・左手にも武器を装備できる
【メタル斬り】 ・メタル系に確実ダメージ
【ドラゴン斬り】 ・ドラゴン種に対しての斬撃強化
【
《次のレベルまで:615》】
【そうび
みぎて 『てつの大剣』
ひだりて 『シルバートレイ』
あたま 『てつのかぶと』
からだ 『くさりかたびら』『てつのよろい』
アクセ1 『金のネックレス』
アクセ2 『ちからのゆびわ+3』 】
備考
〇片手剣装備時
ソードガード(3回に1回以上の割合で武器ガード率アップ)
装備時攻撃力+3
装備時攻撃力+6
装備時攻撃力+10
装備時会心率+2%
〇両手剣装備時
ブレードガード(3回に1回以上の割合で武器ガード率アップ)
装備時攻撃力+5
装備時攻撃力+10
装備時攻撃力+15
装備時会心率+2%
装備時会心率+3%
【ベル・クラネル Lv.2(レベル12→15)
HP:89→110
MP;36→43
ちから:30→38
みのまもり:13→16
すばやさ:50→61
きようさ:43→53
こうげき魔力:40→50
かいふく魔力:0
みりょく:44→55
《魔法》
【ジバリア】 ・地雷系魔法(小)
【ザメハ】 ・覚醒魔法
【インパス】 ・鑑定魔法
《技能》
【スリープダガー】 ・敵1体に攻撃、たまに眠らせる
【ヴァイパーファング】・敵1体に攻撃、たまに猛毒にする
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
《スキル》
【スライムブロウ】 ・スライム種に対して投擲武器効果強化
【メタルウィング】 ・メタル種に対して投擲武器効果強化
【ヒュプノスハント】 ・眠りや混乱の敵に通常攻撃の6倍のダメージ
【タナトスハント】 ・毒や麻痺の敵に通常攻撃の6倍のダメージ
【パワフルスロー】 ・投擲時、全体に等しくダメージ
【メタル斬り】 ・メタル系に確実ダメージ
【ドラゴン斬り】 ・ドラゴン種に対しての斬撃強化
【
《次のレベルまで:3178 】
【そうび
みぎて 『せいどうのつるぎ+3』
『せいなるナイフ』
ひだりて 『やいばのブーメラン』
あたま 『毛皮のフード+2』
からだ 『くさりかたびら』『てつのむねあて』『毛皮のポンチョ+1』
アクセ1 『金のネックレス』
アクセ2 『ぬすっとのグローブ』 】
備考
〇短剣装備時
装備時攻撃力+3
装備時会心率+2%
装備時会心率+4%
常時身かわし率+3%
〇ブーメラン装備時
装備時命中率+5%
装備時命中率+5%
装備時攻撃力+5
装備時攻撃力+10
〇片手剣装備時
ソードガード(3回に1回以上の割合で武器ガード率アップ)
装備時攻撃力+10
装備時攻撃力+20
装備時攻撃力+25
装備時会心率+2%
【リリルカ・アーデ Lv.1(レベル3)
HP:19
MP;12
ちから:2
みのまもり:0
すばやさ:11
きようさ:9
こうげき魔力:18
かいふく魔力:0
みりょく:8
《魔法》
【シンダーエラ】 ・変身魔法
【メラ】 ・火炎系魔法(小)
【ギラ】 ・閃光系魔法(小)
【ヒャド】 ・冷気系魔法(小)
《技能》
《スキル》
【
【
《次のレベルまで:49 】
備考
〇両手杖装備時
装備時MP吸収率+2%