ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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 第三章からは、例えば9階層から話が始まったとしても、9階層にまで至る8階層までのモンスターと戦った経験値が加算されていきます。

 加算される経験値モンスターは一種類につき一体のみで計算されます。

 つまり、何が言いたいかというと…………メタルスライムなどのメタル系には必ず出会えて一体分の経験値が得られるということなのだ!





第26話 そういう時はヒッヒッフーだ

 

 

 

 

 

 ギルドでの話し合いの翌日、何時もより少し遅めにダンジョンに入ったヘスティアファミリアパーティー+ヴェルフ・クロッゾは9階層を攻略して因縁の10階層に足を踏み入れた。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、ベル様」

「緊張しているつもりはないんだけどね……」

 

 斥候の役割として先頭を歩くベル・クラネルはリリルカ・アーデの言葉に顔だけ振り返る。

 

「9階層から微妙に気を張ってるぞ。あんなこと(ソーマファミリアの闇討ち)があったとはいえ、そんな調子じゃあ帰るまで持たん」

「ヴェルフ様の言う通りです」

「うん、わかってるんだけど」

 

 殿を務めるヴェルフの意見もあって正さなければならないとベル自身分かっているのだが、やはり一度悪い目に合うと簡単に払拭できていなかった。

 ベルとヴェルフの間、リリルカと並んで歩くアルスの脳裏に選択肢が浮かび上がる。

 

→俺たちは強くなってる。自信を持て

  そういう時はヒッヒッフーだ

 

「そうです。お三方のランクアップも直に公表されるのですから、祝いの席を設けなければなりませんね」

「仰々しいのは御免だぜ」

 

 気を張っていたベルは今更ながらのことに気づいた。

 

「あ、遅くなったけどおめでとう、ヴェルフ。Lv.2になったんだね」

「お前達もランクアップしたんだろ。お互い様ってやつさ」

「新しい武器まで作ってもらったんだからお礼を言わせてよ」

 

 ベルの腰横の剣帯に吊るされている『せいどうのつるぎ+3』がヴェルフが新しく作ってくれた『てつのつるぎ+2』に変わっている。手に嵌めている『ぬすっとのグローブ』の中には、これまたヴェルフが作ってくれた『すばやさのゆびわ+1』が嵌っていた。

 昨日、ギルドからの帰り道にヴェルフの工房に寄って、ソーマファミリアから得たレシピを渡したら一晩で作ってくれたのでベルの喜びようも大きい。

 

「お前達が得たレシピから作ったんだ。専属鍛冶師の責務を果たしたまでよ」

 

 礼を言われて面映ゆそうなヴェルフの一新した装備をチラッと見たリリルカの顔が荒む。

 

「一人だけはがね装備に一新しといてよく言います」

「リリ」

「失礼しました。口が過ぎたです」

 

 仲間に対して向ける皮肉ではないとベルの口調から自覚して謝る。

 

「いや、いい。力不足を嘆いても急に強くなれないから、せめて装備だけでも強くしようっていう浅ましい考えだ」

「ヴェルフもLv.2になれたんだから強くなってるよ」

「どうだかな。アルスとベルの成長には全然追いつけてない。寧ろ離されてる気すらするよ」

 

 ヴェルフは『てつ』から『はがね』を用いた装備になった自身を見下ろす。

 この階層に来るまでのモンスターの相手をベルとアルスの二人だけで済ませてしまえるほど、二人はあの戦いからも成長を続けている。ヴェルフ自身Lv.2にランクアップしたのに、追いつけた気が全然しない。

 とはいえ、このパーティーの年長者として何時までも腐っている姿を見せるわけにはいかない。

 

「出来るならアルス達の装備もはがね装備に変えたいんだが、中層の素材(ぎんのこうせき)を使うから高いんだよなぁ」

 

 ベル達と冒険しているとドロップアイテムを得られる率が高いので、『はがね』装備に必要な素材の中で『ぎんのこうせき』以外は上層で得られていた。

 

「え? 中層の素材ともなれば上層の10倍の値がつくのに、まさかその装備の素材は自腹ですか!?」

「ああ、数年分の貯蓄が全部吹っ飛んだわ」

 

 『ぎんのこうせき』一つで20000ヴァリス。

 『はがねのオノ』と『はがねの盾』で二つずつ、『はがねのかぶと』と『はがねのよろい』で三つずつで合計10個。必要な金額は200000ヴァリス。他にも足りない素材分と、鍛冶に必要になる道具の費用なども合わせたらヴェルフの貯蓄が吹っ飛んだ。

 

「また一緒に冒険をして稼がせてもらうぜ。中層まで潜ればお前達の装備も、はがねどころかもっと上の装備だって作ってやるよ」

「ありがとう、ヴェルフ」

 

 感謝しかないベルの純粋な気持ちに貯蓄が吹っ飛んだヴェルフが癒されている前を、最低でも20万ヴァリスかかった装備にリリルカがぶつぶつと計算しながら歩く。

 

「リリ助はやっぱりネコのきぐるみにしとくか?」

「結構です! リリはこのまどうしの装備を使いますから」

 

 ふんす、とリリルカは鼻息も荒く、流石に冗談でも看過できぬと持っている『まどうしの杖』を振り回す。

 その手には『まじょのてぶくろ+3』が嵌っており、頭には『まじょのターバン』、体を覆っているのは『まじょの服』。レシピブック『魔女っ子バイブル』よりヴェルフが作り上げたリリルカの為の装備である。

 

「あのネコのきぐるみも可愛いよ」

 

 リリルカ相手にヴェルフが素直に頼まれた装備を渡すはずもなく、最初に渡したのが『ネコのきぐるみ』と『ネコのかぶりもの』のセット装備。

 渡されて一応着てみたものの、笑うヴェルフに騙されたと気づいたが後の祭り。

 

「可愛いさで装備を決めないで下さい! 笑い者にされるのはリリなんですよ!」

 

 思い出し笑いをするヴェルフを睨みつけるリリルカ。

 流石にあまり笑い過ぎるのも悪いと思って抑えたヴェルフだったが、ヴェルフにはヴェルフなりに笑い者にする為にネコ装備を渡したわけではない。

 

「そうは言うがな、あれでも装備としては上等な部類に入るんだぞ」

 

 ネコ装備の方がまじょ装備と比べてこうげき魔力は下がるが、総合的なステータスにおいてはネコ装備の方が上というのは事実。

 

「各種ステータスが上がるのは良いとしても、こうげき魔力が落ちるのがいただけません。リリは魔導士として生きるのですからこうげき魔力は生命線になります。断じてあんなネコ装備でダンジョンに行って笑いのネタにされたくはありません!」

 

 絶対に最後の理由が重要だろうが、自分の身になって考えれば断固拒否するのはヴェルフ達も同じ。

 

「残念だ。折角のソーマファミリアからの貰い物だったのに」

「今更ながら、あのファミリアにあんなネタ装備があったのかが大いに疑問です」

 

 無駄にサイズがピッタリだっただけに、まさか自分用に用意されたなどと考えてしまい、改宗した後にも困らせられることになろうとはリリルカも思いもしなかった。

 疲れた様子のリリルカに前方の警戒を続けながらベルが顔だけ振り返る。

 

「まあまあ、でもリリは魔導士でやっていくんだ」

 

 引き摺っても仕方ないとベルの言葉を契機に気持ちを切り替える。

 

「はい、今のリリのステータスを見るに適職かと思います。ヴェルフ様もリリの装備まで整えて頂き、とても感謝しています」

「いいってことよ。今まで魔導士の装備を作ったことはなかったから良い経験になった」

 

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 現れたのは緑色の蟹のじごくのハサミが二体、首の両端に羽のようなものが生えた大蛇のウィングスネークの合計三体。

 先頭を進むベルはモンスターが視界に入った瞬間に背中の『やいばのブーメラン』を抜いていた。

 

「やっ!」

 

――――――――――まもののむれに ダメージ!

 

 スキル【パワフルスロー】の効果で、モンスター全体に等しくダメージが行き渡り、その足を止める。

 

→合わせろ!

  行け、リリ!

 

「了解です!」

 

 アルスの号令と、武器を抜かずに手をモンスターに向けた動作で察したリリルカが集中を高める。

 

「ギラ」

「ギラ!」

 

――――――――――アルスとリリルカは ギラを となえた!

――――――――――じごくのハサミたちに ダメージ!

――――――――――じごくのハサミたちを たおした!

 

「おらぁっ!」

 

――――――――――ウィングスネークに ダメージ!

 

「ちっ、やっぱり俺じゃ一撃で倒せねぇか……!」

 

 『はがねのオノ』による一撃は確かなダメージをウィングスネークに刻み込みはしたが、まだ生きている。武器のランクが上がったのに倒し切れないのは単純なヴェルフのステータス不足。

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルは かえん斬りを はなった!

――――――――――カウンター!

――――――――――ウィングスネークは どくのいきを はいた!

――――――――――ベルは もうどくに おかされた!

 

「ベル様!?」

「メラ!」

 

――――――――――アルスは メラを となえた!

――――――――――ウィングスネークに ダメージ!

――――――――――ウィングスネークを たおした!

――――――――――まもののむれを やっつけた!

――――――――――アルスたちは240ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――まもののむれは 魔石を 落としていった!

――――――――――じごくのハサミは 小さなこうらを 落としていった!

 

 アルスが魔石を残して消滅したモンスターの新手がいないかを確認している間に、リリルカが毒状態になったベルに常備していた『どくけしそう』を渡していた。

 

――――――――――どくけしそうを つかった!

――――――――――ベルの からだにまわっている どくがきえた!

 

「ふぅ、助かったよリリ。毒って食らったら、あんな気持ち悪くなるんだ」

「状態異常になったのは初めてか?」

「うん、自分がしたことはあったのにね」

 

 ヴェルフの手を借りて立ち上がったベルは毒と睡眠状態にさせる攻撃をしてきたが、初めて自分がその立場になって脅威さが良く分かった。

 

「得るものはあったんだ。良い機会だと思っとけよ。しかし、リリ助の魔法の威力はアルスと変わらんな。流石は本職魔導士」

 

 あまり穿り返して気に病まれても困るので、ヴェルフは魔導士として初戦闘を行ったリリルカが放った魔法に注目する。

 

「煽てても何も出ませんよ…………今の段階(低いMP)ではあまり魔法を連発できません」

 

 リリルカの今の最大MPはたったの12。一晩眠れば回復するとはいえ、リリルカが試した限りでは『メラ』を6発も撃てば使い切ってしまう程度。既に『ギラ』を一度使ってしまったので、残りMPを気にしなければならなかった。

 

「遠慮せずにマジックポーションを使えばいいよ」

「マジックポーションは高いのです。本当に必要になるまでは消費を控えるべきです」

 

 今のリリルカにはそれほど戦力価値があるとは思えないので、MPが伸びるまでは待つべきと判断。必要とあればともかく、まだ切羽詰まっていない段階で魔法を連発してマジックポーションを消費するのはファミリアの金庫番として認められない。

 

消耗の少ない魔法(メラ)を使ったとして、残りMPでは放てるのは四度程度。精々が牽制程度とお考え下さい」

「もっと上層ならリリも活躍できるし、一度上層に戻る?」

 

 定石ならば上の階層で魔導士としての経験を積んでからの方が良いとはリリルカも分かっている。しかし、それでは躍進を続けるベル達に置いて行かれてしまうことになる。かといって、経験値稼ぎ(レベリング)に付き合わせるのは躍進を阻む障害になってしまう。

 

「リリの所為で皆様方の足を引っ張りたくはありません。MPが上がるまで、並行してサポーターを続けさせてもらっても構いませんか?」

 

 折衷案でステータスが上がるまで今までのようにサポーター業を兼ねるのがパーティーとして最善だと思って提案する。

 

「丁度いい機会じゃないかな。リリも魔導士になったのだから、サポーターの役割も分担して行えるように教えてもらうのはどうだろう」

「アルスの『どうぐぶくろ』さえあれば荷物になることはないしな。いいと思うぞ」

 

 ベルとヴェルフが受け入れ、アルスも拒否する理由はないので頷いておく。

 リリルカの装備とパーティーの問題が解決したところで、同じ装備のことでベルは治療の間は代わりに周囲の警戒をしているアルスの代わった鎧に注目する。

 

「装備の話だけど、アルスが今着ている『聖騎士のよろい』もソーマファミリアにあったんだよね」

「ああ、接収した物の中でヘファイトス様から一つ好きに持ってていいと言われたんで、目に留まった聖騎士のよろいを貰ったんだ。ネコ装備は誰もいらないって押し付けられたんだがな」

 

 『聖騎士のよろい』は黄色地に緑色の模様が入ったサーコートが付属した鎧で、『てつのよろい』と『はがねのよろい』の中間の守備力にある。

 

「後は『シルバートレイ』から『ゴールドトレイ』に変えて、『きんのブレスレット』を付けて守備力は確実に上がってるけど、なんといっても『ウダイオスの黒剣』だよね」

 

 防具が代わって守備力が上がっただけに留まらず、最大の装備変更はデスコピオンによって破壊された『てつのつるぎ+3』『せいどうのつるぎ+2』に代わって、アイズ・ヴァレンシュタインの許可も貰って正式にアルスの物となった『ウダイオスの黒剣』にある。

 

「下層の階層主のドロップアイテム。凄い攻撃力なのでしょうね」

「ああ、確かに攻撃力は高い」

 

 軽く振るうだけでもここまでの階層のモンスターを瞬殺してきた『ウダイオスの黒剣』に、整備した当人であるヴェルフの表情は冴えない。

 

「なにか不満そうですね」

 

 あれだけの武器を整備したのだから、リリルカにはヴェルフが不満そうにしていることが理解できない。

 一度大きく息を吸って吐き出したヴェルフはアルスの背で鞘に収まっている『ウダイオスの黒剣』を見る。

 

「扱うには俺のレベルが足りなかった。本来ならLv.6やLv.7の武器に出来たはずなのに、俺の技量じゃあ精々がLv.4程度の武器にしちまった……」

「今のアルスが扱うなら十分じゃない?」

 

 アルスのLv.は2。Lv.4の武器を扱うには寧ろ分不相応なぐらいで、ベルとしては羨ましいぐらい。

 

「ダメだダメだ! 椿ならあのオッタルが使ってもおかしくない武器に仕上げてるはずだ」

「Lv.5と比べても仕方ないのでは?」

 

 ヘファイトスファミリアの団長である椿・コルプランドが『ウダイオスの黒剣』を整備していれば、オラリオ最強のLv.7オッタルが使ってもおかしくない領域に仕上げることが出来たはずとヴェルフは確信している。

 普通ならばリリルカが言うようにLv.2のヴェルフがLv.5の椿と比べること自体が間違い。しかし、自らが足りないことを自覚しているベルにはヴェルフの気持ちが良く理解できた。

 

「分かる、分かるよ! 今に満足してたんじゃダメなんだ。常に上を見て行かないと!」

「分かるか、ベルよ」

「分からいでか、ヴェルフ」

「「おお、心の友よ!」」

 

 スキルに現れるほど焦がれているベルも同じ。謎の同調意識が生まれて盛り上がる二人の間でリリルカが困惑する。

 

「ベル様もおかしいですが、何があったのでしょうか?」

 

 見上げる対象が極々間近過ぎて二人の気持ちがまだ理解できないリリルカがアルスを見上げる。

 

→昔からベルは偶におかしくなる時がある

  好きな女の子と会う約束が無くなったから

 

「そ、そうなのですか……」

 

 ベル達に対する気持ちにちょっと信仰が入っているリリルカは、アルスが放った適当な嘘を普通に信じて引いていた。まさか信じられるとは思わなかったアルスもマジでとばかりの顔をして引いていた。

 

――――――――――さまようよろいが あらわれた!

――――――――――さまようよろいは なかまを よんだ!

――――――――――ホイミスライムが あらわれた!

 

 ダンジョンで死んだ冒険者の怨念が鎧に宿ったと噂されているモンスター『さまようよろい』が通路の向こうからやってきて、現れて直ぐに仲間を呼んだ。呼ばれてやってきたのは青いクラゲのような体にスライムが乗っかったようなモンスター『ホイミスライム』。

 辺りを警戒していたアルスが真っ先に気づき、背中の『ウダイオスの黒剣』を抜きながら飛び込む。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは、剣を ぶんまわした!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――まもののむれを やっつけた!

――――――――――アルスたちは109ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――まもののむれは 魔石を 落としていった!

――――――――――さまようよろいは てつのつるぎを 落としていった!

 

 一撃で粉砕されたモンスター達の魔石やドロップアイテムが落ちる音で、あまりの攻撃力に呆然としていたベル達を再起動させる。

 

「流石は階層主のドロップアイテム。威力の桁が違い過ぎる」

「ウダイオスの黒剣が強すぎます。自分達の実力を過信しそうです」

 

→直ぐに見合うほど強くなってみせる

  いやぁ、取り上げないでぇ!

 

「本当にそうなりそうなので怖いです」

「今はリリも同じ立場だよ」

「リリも強くなれるでしょうか……」

「なれるよ、きっと」

 

 そんな話をしている間に見覚えのある通路に入った。

 アルスを除いた三人の体に力が入る。流れでアルスが先頭を歩いている所為でズンズンと進み、ベル達は後をついていくだけで緊張が高まっていく。

 躊躇いなく進んでいたアルスが遂に足を止める。

 

「あの時と同じ場所に来ましたね」

 

 ソーマファミリアに誘導された追い込まれた行き止まり広間(ルーム)、その手前。

 ベルが恐る恐る行き止まり広間(ルーム)をコッソリと覗き込む。

 

「いないね、あのモンスター(デスコピオン)

「安心したような、残念なような、不思議な気持ちだな」

「ギルドの調査でもまだ再出現(リポップ)は確認できていません。何らかの条件があるのか、階層主と同じように一定期間が必要なのか」

 

 再戦するには及び腰なので、全員行き止まり広間(ルーム)の手前で議論を積み重ねているとアルスの脳裏に選択肢が浮かび上がる。

 

→ さっさとこの階層を攻略しよう

 とりあえず入っとくか

 

 アルスの意見に、最もだと頷いたベルが正規ルートに戻る為に振り返る。

 

「別にまた戦う必要はないし、次に――」

 

――――――――――メタルスライムたちが あらわれた!

 

 直ぐ背後で四人を謎な表情で見ている銀色のスライムが二体いた。

 

「敵!?」

 

 ベルの注意喚起に即座に反応したアルスが抜いた『ウダイオスの黒剣』にオーラを纏って斬りかかった。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは、渾身切りを はなった!

――――――――――メタルスライムたちに ダメージ!

 

 『ウダイオスの黒剣』は直撃はしなかったが地面に叩きつけられた衝撃は大きかった。衝撃波で凄い勢いで砂が巻き上がり、メタルスライムたちを傷つける。

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルの こうげき!

――――――――――メタルスライムたちに ダメージ!

 

 破片と一緒にボタボタと落ちたメタルスライムに向かって『やいばのブーメラン』が放たれ、スキルの効果で均等にダメージを与えることが出来た。

 メタルスライムの負ったダメージは大きく、後少しで倒せるとみたリリルカは丁度近くに落ちたメタルスラムAに向かって『まどうしの杖』を振り上げる。

 

「えいっ!」

 

――――――――――リリルカの こうげき!

――――――――――メタルスライムAに ダメージ!

――――――――――メタルスライムAを たおした!

 

「や、やった! リリが10階層のモンスターをやっつけました!」

「やっつけましたじゃねぇよ! 『まどうしの杖』で直接攻撃なんてするなよ! おらっ!」

 

――――――――――ヴェルフの こうげき!

――――――――――ミス! メタルスライムBは ダメージを 受けない!

 

「外しちまったじゃねぇか!」

「リリではなく自分の所為でしょ!」

 

 二人が言い争いをしている間にベルは戻ってきた『やいばのブーメラン』を直して『せいなるナイフ』を抜く。

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルの こうげき!

――――――――――メタルスライムBに ダメージ!

――――――――――メタルスライムBを たおした!

――――――――――メタルスライムたちを やっつけた!

――――――――――アルスたちは4020ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――メタルスライムたちは 魔石を 落としていった!

――――――――――メタルスライムBは 命のきのみを 落としていった!

 

 ふぅ、とベルが『せいなるナイフ』を腰後ろの剣帯に戻していると、リリルカが「ベル様ベル様!」と駆け寄ってきた。

 

「メタルスライムに攻撃したらMPが回復した気がするのですが、ベル様達はどうなのですか!」

「え? そんな感じを覚えたことはないかなぁ」

「だろ。まどうしの杖は丈夫じゃないんだから鈍器として使うのは止めてくれ、頼むから」

 

 三人がリリルカの『まどうしの杖』の直接攻撃したらMP回復するのか問題を話し合っている間に、アルスはメタルスライムが落とした『命のきのみ』を拾い上げてパクっと食べる。

 ボリボリと噛んでゴクンとしても、やはりHPが上がった実感はない。

 

「…………自分だけ食べるんだ」

 

 攻略に戻ろうと歩き始めたところで、アルスが『命のきのみ』を食べているのを目撃したベルが白い目を向ける。

 

「どうしたんだ、ベルは?」

 

 『まどうしの杖』による直接攻撃でMP回復するか問題は要実験と結論が出たところでのベルの妙な反応にヴェルフが首を傾げる。

 

「あのきのみを食べた後、ヘスティア様がステータスを更新したらHPとかが伸びていたので羨ましいのですよ」

「微々たるものじゃないか」

「まあ、普通はそう思いますよね」

 

 ヴェルフにはベル達ヘスティアファミリアのステータス表記が違うことまでは知らないので、普通ならば微々たるものでも+2するだけでも上がる有難みは分からないだろう。

 『命のきのみ』だけでなく、上の9階層のブラウニーのドロップアイテム『ちからのたね』のことも含んでいるが、敢えてリリルカは口にしなかった。

 

「げっ、ワイバーンドッグ」

 

 少し進んだところで、通路を遮るように眠っている超大型モンスターの姿を見たリリルカが顔を顰める。

 起きる様子の無いモンスターに、ベルはリリルカが口にしたモンスターの名前に首を捻る。

 

「ワイバーンってことはドラゴン種? でもドッグって犬って意味だよね。ドラゴンなの? 犬なの?」

「一応、ドラゴン種だろ。翼生えてるし」

「どちらでも構いません! ワイバーンドッグは上層最強のモンスターと呼ばれています。夜以外は眠っているので刺激せずに通り抜け――」

 

――――――――――アルスは メラを となえた!

――――――――――ワイバーンドッグに ダメージ!

――――――――――ワイバーンドッグは 目を さました!

 

「なにをなにをなにをやっているのですか!?」

「来るよ、リリ!」

 

――――――――――ワイバーンドッグが あらわれた!

 

 眠りを妨げられたワイバーンドッグは機嫌悪げに頭を擡げ、明らかに自分を起こしたアルス達を見つけて唸りを上げる。

 

――――――――――ワイバーンドッグは おたけびをあげた!

――――――――――アルスたちは ショックを うけた!

 

「うぉっ!?」

「きゃっ!?」

 

――――――――――ヴェルフとリリルカは こしを ぬかしている

――――――――――ワイバーンドッグは もえさかる火球を はきだした!

 

「やっ!」

 

――――――――――カウンター

――――――――――ベルの こうげき!

――――――――――ワイバーンドッグに ダメージ!

 

 口から何かを放とうとしたワイバーンドッグの横顔にベルが放った『やいばのブーメラン』が当たり、横っ面を平手打ちされたように顔が動いて放たれた燃え盛る火球が壁に撃ち込まれた。

 

――――――――――ワイバーンドッグの こうげき!

――――――――――アルスに ダメージ!

 

 踏み込んだアルスに向けて怒りに燃えたワイバーンドッグのツメ攻撃が当たるが、『ゴールドトレイ』で受け流してダメージを最小限に抑える。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは、渾身切りを はなった!

――――――――――ワイバーンドッグに ダメージ!

 

 二連続行動の後にアルス最大の攻撃を受けたワイバーンドッグは、『ウダイオスの黒剣』に高い攻撃力もあって大きなダメージを負っていた。

 

「よっしゃっ、復活! おらっ!」

 

――――――――――ヴェルフの こうげき!

――――――――――ワイバーンドッグに ダメージ!

 

 腰が回復したヴェルフが起き上がろうとしたワイバーンドッグのベルが攻撃したのとは反対側の横っ面を攻撃をして再度地面に伏せさせる。

 このままならば簡単に倒せるがアルスは良いことを思いついた

 

→リリ、ヒャドを俺に!

 リリ、メラを俺に!

 

「分かりました! ヒャド!」

「はっ!」

 

――――――――――リリルカは ヒャドを となえた!

――――――――――アルスは フリーズブレードを はなった!

――――――――――氷のチカラを やどした大剣が あたりを いてつかせる!

――――――――――アルスとリリルカのれんけい ブリザードソードがはなたれた!

――――――――――ワイバーンドッグを たおした!

――――――――――ワイバーンドッグを やっつけた!

――――――――――アルスたちは243ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――ワイバーンドッグは 魔石を 落としていった!

――――――――――ワイバーンドッグは ドラゴンのツノを 落としていった!

 

 リリルカのヒャドの力を活かして放たれたフリーズブレードの氷の刃はワイバーンドッグを貫き、巨体が霞の如く魔石とドロップアイテムを残して消えてしまった。

 

「…………これで上層最強のモンスターか」

 

 終わってみたら割と圧勝出来てしまったことに、ベルは少し複雑気にワイバーンドッグの魔石を拾い上げる。

 

「なあ、デスコピオンよりかは苦戦しなかったし」

「皆様が強くなったから、相対的に感じるだけですよ」

「ランクアップさまさまか」

 

 というより『ウダイオスの黒剣』さまさまだな、と内心で思いつつもヴェルフは懸命にも口にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――アルスは、レベル16に あがった!

――――――――――アルスは ベホイミの呪文を覚えた!

――――――――――アルスは ミラクルソードを覚えた!

――――――――――アルスは 全身全霊斬りを覚えた!

――――――――――アルスは、レベル17に あがった!

――――――――――ベルは、レベル16に あがった!

――――――――――ベルは、ミラクルソードを覚えた!

――――――――――ベルは、デュアルカッターを覚えた!

――――――――――ベルは、レベル17に あがった!

――――――――――リリルカは、レベル4に あがった!

――――――――――リリルカは 悪魔ばらいを覚えた!

――――――――――リリルカは ルカニの呪文を覚えた!

――――――――――リリルカは、レベル5に あがった!

――――――――――リリルカは、レベル6に あがった!

――――――――――リリルカは ボミエの呪文を覚えた!

――――――――――リリルカは、レベル7に あがった!

――――――――――リリルカは、レベル8に あがった!

――――――――――リリルカは 魔封じの杖を覚えた!

――――――――――リリルカは、レベル9に あがった!

――――――――――リリルカは、レベル10に あがった!

――――――――――リリルカは マジックバリアの呪文を覚えた!

――――――――――リリルカは、レベル11に あがった!

――――――――――リリルカは、レベル12に あがった!

――――――――――リリルカは イオの呪文を覚えた!

――――――――――リリルカは マホトーンの呪文を覚えた!

――――――――――リリルカは 魔結界の呪文を覚えた!

――――――――――リリルカは、レベル13に あがった!

――――――――――リリルカは しゅくふくの杖を覚えた!

――――――――――リリルカは 暴走魔法陣を覚えた!

 

 

 

 

 

【アルス・クラネル Lv.2(レベル15→17)

 HP:98(+5)→116(+15)

 MP:50→58

 ちから:40(+2)→46(+4)

 みのまもり:18→20

 すばやさ:48→54

 きようさ:29→33

 こうげき魔力:44→50

 かいふく魔力:45→51

 みりょく:35→39

《魔法》

 【メラ】     ・火炎系魔法(小)

 【ホイミ】    ・治癒系魔法(小)

 【ベホイミ】  ・治癒系魔法(中)

 【ギラ】     ・閃光系魔法(小)

 【イオ】    ・爆発系魔法(小)

 【ラリホー】 ・催眠系魔法(個)

《技能》

 【かえん斬り】     ・武器に炎を纏わせることが出来る

 【ぶんまわし】     ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能

 【渾身斬り】       ・敵一体に大ダメージ

 【全身全霊斬り】    ・敵一体に特大ダメージ

 【フリーズブレード】  ・氷の力で敵1グループに攻撃

 【ミラクルソード】    ・敵1体にダメージ後、自身を回復

《スキル》

 【二刀の心得】     ・左手にも武器を装備できる

 【メタル斬り】      ・メタル系に確実ダメージ

 【ドラゴン斬り】     ・ドラゴン種に対しての斬撃強化

 【聖竜の祝福(ドラゴンクエスト)】   ・■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

《次のレベルまで:615》】

 

【そうび

 みぎて  『ウダイオスの黒剣』

ひだりて  『ゴールドトレイ+2』

 あたま   『てつのかぶと』

 からだ   『くさりかたびら』『聖騎士のよろい』

アクセ1   『きんのブレスレット』

アクセ2   『ちからのゆびわ+3』         】

 

 

 

【ベル・クラネル Lv.2(レベル15→17)

 HP:110→125

 MP:43→48

 ちから:38→44

 みのまもり:16→18

 すばやさ:61→69

 きようさ:53→59

 こうげき魔力:50→56

 かいふく魔力:0

 みりょく:55→62

《魔法》

 【ジバリア】     ・地雷系魔法(小)

 【ザメハ】      ・覚醒魔法

 【インパス】     ・鑑定魔法

《技能》

 【スリープダガー】  ・敵1体に攻撃、たまに眠らせる

 【ヴァイパーファング】・敵1体に攻撃、たまに猛毒にする

 【かえん斬り】     ・武器に炎を纏わせることが出来る

 【ミラクルソード】    ・敵1体にダメージ後、自身を回復

 【デュアルカッター】 ・敵全体に攻撃時1.2倍のダメージを二回与える

《スキル》

 

 【スライムブロウ】  ・スライム種に対して投擲武器効果強化

 【メタルウィング】  ・メタル種に対して投擲武器効果強化

 【ヒュプノスハント】 ・眠りや混乱の敵に通常攻撃の6倍のダメージ

 【タナトスハント】  ・毒や麻痺の敵に通常攻撃の6倍のダメージ

 【パワフルスロー】 ・投擲武器を投擲時、全体に等しくダメージ

 【メタル斬り】      ・メタル系に確実ダメージ

 【ドラゴン斬り】     ・ドラゴン種に対しての斬撃強化

  【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)】  ・■■■■■■■■■■■■■■■

《次のレベルまで:3178 】

 

【そうび

 みぎて  『てつのつるぎ+2』

        『せいなるナイフ』

ひだりて  『やいばのブーメラン』

 あたま   『毛皮のフード+2』

 からだ   『くさりかたびら』『てつのむねあて』『毛皮のポンチョ+1』

アクセ1   『すばやさのゆびわ+1』

アクセ2   『ぬすっとのグローブ』            】

 

 

 

【リリルカ・アーデ Lv.1→2(レベル3→13)

 HP:19→59

 MP:12→62

 ちから:2→22

 みのまもり:0→10

 すばやさ:11→41

 きようさ:9→39

 こうげき魔力:18→68

 かいふく魔力:0

 みりょく:8→38

《魔法》

 【シンダーエラ】     ・変身魔法

 【メラ】           ・火炎系魔法(小)

 【ギラ】           ・閃光系魔法(小)

 【ヒャド】         ・冷気系魔法(小)

 【ルカニ】         ・敵守備力低下魔法(個)

 【ボミエ】          ・敵速度低下魔法(個)

 【マジックバリア】     ・呪文防御魔法

 【イオ】           ・爆発系魔法(小)

 【マホトーン】       ・敵魔法封印魔法(集団)

《技能》

 【魔封じの杖】   ・敵1体の呪文を高い確率で封じる杖の秘術

 【しゅくふくの杖】  ・仲間1人のHPを小回復する

 【暴走魔法陣】   ・仲間の呪文が暴走しやすくなる

 【魔結界】      ・魔法の結界を張り敵の攻撃呪文を防御する

《スキル》

 【縁下力持(アーテル・アシスト)】   ・一定以上の装備過重時における補正

 【悪魔ばらい】   ・悪魔系に対しての打撃力強化

 【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)】  ・■■■■■■■■■■■■■■■

《次のレベルまで:596 】

 

【そうび

 みぎて  『まどうしの杖』

ひだりて  『』

 あたま   『まじょのターバン』

 からだ   『まじょの服』

アクセ1   『まじょのてぶくろ+3』

アクセ2   『いのりのゆびわ+2』         】

 

 

 

 

 

 リリルカがステータス表記変化から三日目でのランクアップ。今までの最短の記録に、更新を行ったヘスティアは卒倒して三日ほど寝込むことになった。

 

 

 

 

 






 声優繋がりでリリルカは魔導師となりました。

 『ウダイオスの黒剣』はヴェルフが鍛え直したけど、技量が足りなくておおよそLv.4相当が使う武器に収まっています。

 筆者はDQ11でグレイグが初期に持っていた『グレイグの大剣』と同等の攻撃力をイメージしています。

 もしもヴェルフに扱える技量があったら、原作でLv.7のオッタルが使う覇黒の剣に出来たかことでしょう(ウダイオスの黒剣を金属属性を利用してインゴットに加工させた後、大剣に再加工させて【ゴブニュ・ファミリア】に作らせた特注品)

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