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アルスは気が付いた変な場所に立っていた。
見上げた空は暗いオーロラに覆われていておどろおどろしく、今立っている通路も横になって寝たら一杯の広さしかなく、前にある変な建物以外には何も存在していない。
→建物に進んでみよう
通路から飛び降りてみる
通路から降りてみると、まるで空に落ちるような感じになりそうなのでまずは目の前の建物に進んでみることにした。
建物といっても開けた入り口から見えた中は空洞になっていて、真ん中に何を書いているのか全く読めない文字が刻み込まれている石碑がある。
読めないと分かれば興味がないのでさっさと石碑を避けて進んでみると、石畳の円形舞台のような場所に出た。その舞台の中心に片膝を立てて座る青年がいた。
「寄る辺なく彷徨う哀れな魂がまた一つ…………この世の果てに流れ着いたようだね」
男というのは分かる。声も確かに聞こえる。なのに、何故か男の顔だけは薄ぼんやりとしか見えない。
「顔を見ればまだ若い。こんな子が冥府に落ちるとは、本当に神も仏もあったものじゃない」
若いと言うからには、反対に男にはアルスの姿がはっきりと見えているようだ。
男が言った『仏』という初めて聞いた単語の意味を考えているアルスはそのことに気づいていない。
「随分と呆けた顔をしているけれど、君は自分がこれからどんな運命を辿るのか、分かっているのかい?」
→全然
ここは、地獄だ!
「哀れなものだよ。あの世に来ただけではなく、これから待ち受ける苦しみさえ何一つ知らないのだから」
あの世、って自分が死んだのかと思って直前の記憶を思い返してみる。
「仕方がない。ここは先輩として後輩にこの冥府について、少し教えてあげよう」
10階層を攻略してステータスを更新し、ヘスティアがリリルカ・アーデの過去最速のステータス上昇に卒倒した後に届いたアイズ・ヴァレンシュタインの便り。用事を終えたとのことで翌日から訓練を始めるということで早くに寝たのが昨日の話。
「どれだけ鈍い者でも分かるだろう。見ての通り、この世界には何もない…………そう、ここは無の世界なんだ」
翌朝、ヘスティアとリリルカにバレないようにホームの教会を抜け出して、訓練場所に指定されたオラリオを覆う市壁の上に向かったのが今日の話。
本来の歴史ならば、ロキ・ファミリア所属のエルフの少女と邂逅するのだが、彼女はアイズと共に潜り抜けた冒険による
「本来、死んだ魂は新しい命として再生する為に輪廻の輪へと向かうのだけれど、極稀に完全な無の世界である冥府に哀れな魂が行きついてしまうことがある」
まずはアルスとベルの力量が知りたいと、アイズと2対1を行うことになった。
武器はアルスとアイズは普段使わない『どうのつるぎ』、ベルは『どうの短剣』で行うことになったのだが、アイズは二人に本気でかかってきてと言ってしまった。力量を知るならば必要なことだったが、ここで互いに考え違いをしていることに気付いていなかった。
前提として、アイズはアルス達がLv.2に成り立てと思っていて、アルス達は先日の冒険でLv.2(レベル17)でも上位に至っている。
「冥府に行きついてしまった魂は生命の循環を絶たれ、全ての命が消え去る運命にある。これは神ですら変えることは出来ない絶対の不文律」
ベルは最速最大の『かえん斬り』で挑み、アルスは覚え立ての『全身全霊斬り』を放とうとした。
たった一日、会わなかっただけでも飛躍と呼べるほどに『すばやさ』を増したベルの速度はアイズの予測を超えた。
初撃は受け流すつもりだったアイズの『どうのつるぎ』は『かえん斬り』を受け切れずに砕け、時間差で飛び上がっていたアルスが『全身全霊斬り』を放とうと斬りかかり命の危機に本気を出してしまった。
エアリエルを放って『全身全霊斬り』を間一髪で受け流し、咄嗟の反応で動いた足がアルスの顎を横から蹴り抜いた。
「だから、君の魂はもうすぐこの虚無の中で消えてしまう。悔しいだろうけど、諦めるしかない。もう、どうしようもないんだよ」
アルスの最後の記憶は、顎を蹴り抜いたアイズの『しまった!?』という感情が見える顔とグルグルと回る世界でオラリオが遠く見えた風景だった。
「全知全能たる神ですら変えることの出来ない世界のシステムだ。ただの人間は消えていく定めなのさ」
→でも、あなたは消えていない
アイズに市壁から蹴り落されたのか
「僕は往生際が悪いらしい。こうやって未練たらしくしがみついている」
→アナタは諦めていない
死んだってことは、蹴り所か落ち所が悪かったんだろうな
「ふっ、若者に見抜かれるとは、僕も年を経ったかな…………どうやら君は
言われて背後を見ると、背中の肩甲骨の間辺りから白い透明の糸のようなものが空の上に伸びて行っている。
「徐々に太く濃くなっている。このままなら生き返れるだろう」
男の指摘通り、最初は今にも切れそうな糸だった物が今はアルスの指ほどの太さになり白の色が濃くなっている。
太く濃くなる度に、糸を通して誰かに呼ばれているような引っ張れるような不思議な感覚が強くなっているので、糸がもっと太く濃くなったら空の向こうの現世に帰れるのだろう。
「肉体から魂が離脱して冥府に入ってくるなんて珍しいこともあるものだ。冥府は生と死が揺らぐ世界だ。生者である君だからこそ、二度と帰ることができないかもしれない冥府から帰還できる………………生き返る可能性があるというなら、良いモノを伝授してあげよう。こっちに来るといい」
待っているだけなのは退屈なので、良いモノをくれるというなら喜んでの考えのアルスは警戒することなく男の下に歩み寄る。
「いいかい、良く見ているんだよ!」
モノを貰う為に手を差し出そうとしたところで、男が横を向いて左手を天に掲げた。すると、その手先から巨大な光の剣が生まれ、上空に向かって飛んで行った。
男が右手を地に向けて振り下ろすと、巨大な光の剣が石畳の舞台に突き刺さって抉り取った。
→凄い……
怖っ……
「今、僕が放った技こそ、生前の僕が完成させることが出来なかった奥義――――覇王斬!」
覇王斬、と口の中でアルスは繰り返す。
「この技を君に伝授するよ。僅かな時間で覚えようというんだ。当然、修行はとんでもなく厳しいものになる。君はどんなにつらく厳しい修行が待ち受けていても、それに耐える覚悟が君にあるかい?」
→はい!
いえ、結構です
「良い返事だね。それじゃあ、さっそく覇王斬の修行を始めるよ」
パッ、と軽く男が手を振ると、覇王斬で抉られた舞台の端が光ったと思ったら元に戻っていた。
「ここは僕の魔力で再現した修練場のようなものなんだ。だから、どれだけ壊しても大丈夫だし、こんなことも出来る」
再び男が手を振ると、先程まで抉れた場所の近くに石の石像が生えた。
無駄に精巧な竜のような形をした石像に、男は出来栄えを自己自賛するように軽く頷く。
「覇王斬は使用者が自身の魔力を刃の形にして放つ技なんだ。まずは、手を前に出して剣をイメージして、魔力を集中させてみて」
アルスは言われたように左手を前に出して、イメージを高める為に右手で左手の中ほどを掴む。
言われたように、手の先に剣があるようなイメージをしながら魔力を掌から放出すると、切っ先を下に向けた薄っすらとした剣が空中に浮かぶがすぐに霧散する。
「まあ、最初はこんなものさ。というわけで…………後は実戦で技を磨いていくとしよう」
放つことすら出来ずに消え去った剣にアルスが悔しそうな姿に笑った男がその場で飛んで、竜の石像の傍に着地する。
「アルス君、僕と戦う準備は出来ているかい?」
→はい
巨乳の女になってから出直して来て
「僕の攻撃に耐え、隙を見つけながら覇王斬を使うんだ。それを繰り返す内に覇王斬はどんどん威力が増していく。そうやって覇王斬を完成させるんだ」
男は覇王斬で出したかのような光る剣を生み出して手に持ち、軽くブンと音を立てて振るう。
「では、いくぞアルス君。ありったけの君を見せてくれ!」
――――――――――修練場の主が あらわれた!
――――――――――修練場の主は 次のこうげきに そなえ せいしんを とういつした!
「はっ!」
アルスが胸の前でクロスさせた両手を開くと、うっすらとした光る剣が生まれる。
精神集中をしたまま、生み出した光る剣を右手を振って修練場の主に向かって放つ。
――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!
――――――――――修練場の主に ダメージ!
――――――――――竜の石像に ダメージ!
――――――――――竜の石像を やっつけた!
「いいぞ! そうやって覇王斬を繰り返し使うんだ! わかったね!」
――――――――――修練場の主は 竜の石像を つくりだした!
「はっ!」
――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!
――――――――――修練場の主に ダメージ!
――――――――――竜の石像に ダメージ!
――――――――――竜の石像を やっつけた!
「大分、形になってきた! その調子でどんどん行こう!」
――――――――――修練場の主は 竜の石像を つくりだした!
二度造られた竜の石像。アルスは集中を高めながら、攻撃をすると言いながら一向に動こうとしない修練場の主を見る。
→なにか竜に恨みでもあるの?
攻撃してこないの?
「恨みはある。というか憎しみすら抱いている。自分で壊してもスッとしないけど、人に壊されると凄い気持ちいい。さあ、もっと壊してくれ!」
「はっ!」
――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!
――――――――――修練場の主に ダメージ!
――――――――――竜の石像に ダメージ!
――――――――――竜の石像を やっつけた!
「もう少しだ! もう少しで覇王斬は完成する! やってみせろよ、僕!」
――――――――――修練場の主は 竜の石像を つくりだした!
「はっ!」
――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!
――――――――――修練場の主に ダメージ!
――――――――――竜の石像に ダメージ!
――――――――――竜の石像を やっつけた!
「これで最後だ!」
――――――――――修練場の主は 竜の石像を つくりだした!
「はっ!」
先程、修練場の主が放ったのと同じように左手を天空に向かって掲げ、巨大な光の剣を生み出して撃ち放つ。上空に上がった光の剣は、右手を振り下ろしたアルスの動作に従って修練場に落ちてきた。
――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!
――――――――――修練場の主に ダメージ!
――――――――――竜の石像に ダメージ!
――――――――――竜の石像を やっつけた!
――――――――――アルスは 覇王斬を習得した!
――――――――――アルスは 2000ポイントの経験値を かくとく!
「いいねぇ、いいねぇ! アルス君、よくやった! 僅かな時間で僕が生前に完成させることが出来なかった覇王斬を習得できるか、内心で心配していたけどどうやら取り越し苦労だったようだね」
何度も覇王斬を食らったはずなのに傷一つもない修練場の主が近づいてくる。
「いいかい? あの光の剣の強さは君の心の強さ。あの剣を鍛え上げるんだ、決して折れない強き剣に。そうすれば君はどんな困難にも立ち向かっていけるよ――――――――――黒竜を前にしてもね」
ポンと軽くアルスの肩が押された。
途端に背中についていた糸どころか成長して巨大になった縄に引っ張り上げられる。
「辛い修行から逃げずによく頑張った。これで、もう君に教えることは何もない。
遠くなっていく修練場は徐々に端から崩れていき、同じように男もまた足から溶けるように消えていく。
技を一つだけ教えてくれただけで師とも呼べないような男の名を、直感的に脳裏に浮かぶままに叫んだ。
→アルバート!
アルゴノゥト!
『――――――――――輪廻の果ての僕よ。
引っ張り上げられたアルスの意識が浮上する。
「アイズさん! アルスが生き返りました!」
「まだだよ。身体が衰弱している。急いでアミッドの治療院に運ぼう!」
見上げた空は青く、白い雲が流れていく中でベルとアイズの慌てた声が耳に入るのを子守歌に、アルスは再び眠りについた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アルスがディアンケヒト・ファミリアが運営するアミッド・テアサナーレがいる治療院に運び込まれる直後に何事も無かったように目を覚ましていた頃、とあるファミリアのホームで眷属である団長が主神に報告を行っていた。
「それは、確かか?」
報告を受ける男神の日の光を放つブロンドの髪。まるで太陽の光が凝縮したかのような金髪は煌々とした艶がある。口元に浮かべている笑みも眩しく、その端麗な容貌は男であっても目を奪われ、魅了してしまうほど。
背丈も高く、頭の上には緑葉を備える月桂樹の冠が趣を感じさせる。
「はい」
太陽のような主神に報告する団長もまたエルフにも負けない美青年のヒューマンであった。
茶色の髪は品良く纏められていて、色白の肌は女性のようにきめ細かい。金属のイヤリングを始めとした様々な
左胸には金の弓矢に輝く太陽を刻んだ徽章が張り付けられている。瞳は深い海のような碧眼だが、今は伏せられていてどのような感情を抱いているのか伺い知ることは出来ない。
「目撃情報に乏しいモンスターの討伐によって、最短記録を一年から一ヶ月に大幅に更新するランクアップしたという双子の兄弟。名はなんといったか」
「ベル・クラネルとアルス・クラネル、所属はヘスティアファミリアとのことです」
「ふふふ、流石は私のヒュアキントス。良く調べてくれた。しかし、ヘスティアか。これは因縁と言えるのかな」
「は?」
「なに、天界の頃の話さ」
ヒュアキントスが怪訝な顔を向けるが、神々は基本的に天界の内情を明かすような話をしない。
クツクツと笑う主神の姿ですら下界に存在するあらゆる絵画や石像を超える美しさ。追及する気など早々に失せたヒュアキントスは何かを考えている主神の次の言葉を待つ。
「一度、二人を間近で見てみたいな」
「ならば、神の宴の打診を受けているので、随伴者として二人を呼べる環境を作るのは如何でしょうか」
打てば響くように望む環境を整えてくれるヒュアキントスに主神は全幅の信頼を寄せる。
「悪くない。手配は任せるぞ、ヒュアキントス」
「はっ、お任せ下さい」
向けられる信頼を心地よく享受するヒュアキントスが、この世の春のような心境に至っていることに気づきもしない主神は過去と未来を見つめる。
「ヘスティアよ、天界ではゼウスに邪魔されたが、今度はお前の眷属を頂くとしよう」
【アルス・クラネル Lv.2(レベル17→18)
HP:116(+15)→125(+15)
MP;58→63
ちから:46(+4)→49(+4)
みのまもり:20→21
すばやさ:54→57
きようさ:33→34
こうげき魔力:50→53
かいふく魔力:51→54
みりょく:39→41
《魔法》
【メラ】 ・火炎系魔法(小)
【ホイミ】 ・治癒系魔法(小)
【ベホイミ】 ・治癒系魔法(中)
【ギラ】 ・閃光系魔法(小)
【イオ】 ・爆発系魔法(小)
【ラリホー】 ・催眠系魔法(個)
《技能》
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
【ぶんまわし】 ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能
【渾身斬り】 ・敵一体に大ダメージ
【全身全霊斬り】 ・敵一体に特大ダメージ
【フリーズブレード】 ・氷の力で敵1グループに攻撃
【ミラクルソード】 ・敵1体にダメージ後、自身を回復
【覇王斬】 ・敵全体に魔力で形成した巨大剣による無属性攻撃
《スキル》
【二刀の心得】 ・左手にも武器を装備できる
【メタル斬り】 ・メタル系に確実ダメージ
【ドラゴン斬り】 ・ドラゴン種に対しての斬撃強化
【
《次のレベルまで:4284》】
冥界での修業はDQ11あるある。
転生タグを仕事をしてくれました。
ベルがアルゴノゥトの転生なら、アルスはアルバートの――(本作設定です)
準備運動を始めたアポロン様……。
アルバートの超簡単な為したこと
〇神聖譚最終章によると、精霊アリアと共に彼がなしえた偉業とは黒竜の撃退。己の命と引き換えに黒竜の片眼を奪い、オラリオの地から遠ざけた。
アイズの母親は何かに囚われている。
黒竜って聖竜となにか似ているな。
アルスがスキルに目覚めたのは、アイズと出会ってから。
おや、なにか関係性が――――。