ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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 主人公の二つ名が思いつかぬ……。

 ベルの二つ目の二つ名『白兎の脚(ラビット・フット)』に寄せて、『白兎の剣士(ラビット・ソード)』にすべきか。

 勇者と剣神はまだ早いし。

 あ、うちのリリルカは『小さな爆弾娘(リトル・ボマー)』に決めています。





第3話 アルスは 黄金の指輪入門を 手に入れた!

 

 

 

 

 

 時刻はあっという間に流れて早くも夕方。

 夕闇に染まっていくオラリオの中心たるダンジョンから続々と帰還した冒険者達が街中へと消えていく中、ベル達はギルド本部を訪れていた。

 

「これが預った魔石とドロップアイテムの換金額の8000ヴァリスだ。確認してくれ」

「は、はい…………確かに。ありがとうございました」

「おう」

 

 目の前のカウンターに積まれた金貨の山を、震える手で一つ一つ亜麻色の袋に入れていき、最後に紐をしっかりと結んで手に持つ。

 せっかちなのか、貧乏ゆすりをしている次の人が待っているのでカウンターから離れて辺りを見渡すと、アルスがギルドの受付嬢エイナ・チュールと何かを話しているところを見つけた。

 

「ベル君、こっちこっち」

「あ、エイナさん。すみません、お待たせして」

「いいのいいの。受付の仕事はもう終わってたし。またアルス君に色んな所を物色されても困るしね」

「…………今回は?」

「もうやっちゃってたね。本人は何も無かったとは言ってるけどね」

 

 本当だか、と疑わし気にエイナが睨むも、アルス・クラネルはヒューヒューと下手糞な口笛を吹いてそっぽ向いてる。

 

(怪しい……)

 

 とは思うもののベル・クラネルもアルスが何かを取ったとしても、その現物を一度も見たことがないのでなんとも言えなかった。

 

「すみません。どうもうちの弟は荒らし癖というか、なにかを探さずにはいられないみたいで」

「本当だよ。君のことだよ、アルス君!」

 

 誰のことだ、とばかりにとぼけるアルスに叫ぶエイナだった。

 

――――――――――アルスは レシピブック 『黄金の指輪入門』を 手に入れた!

――――――――――きんのゆびわの レシピを 覚えた!

 

 半ば諦めているエイナは嘆息して、目をベルが手に持つ袋に向けた。

 

「アルス君から2階層までしか行ってないって聞いたけど、随分と多そうだね?」

「う、嘘なんてついてませんよ。今日は結構、ドロップアイテムが多くて、ダンジョンに潜るのも結構早かったですから」

 

 本当かなぁ、とアルスの所業に続いてちょっと疑わし気な目で見られるのは、昨日無断で5階層に潜っただけに自分でも少し仕方ないかと思いながら弁明するベル。

 

「ふふ、疑ってなんかないよ。でも、決して無理はしないようにね。冒険者は――」

「冒険しないように、ですよね」

「分かればよろしい」

 

 年上のお姉さんの訓示をベルが有難く受け止めていると、先ほどまでベルがいたカウンターの方から乱暴な怒声が聞こえてきた。

 

「たったの12000ヴァリス!? ふざけるなっ! アンタの目は節穴か!」

「馬鹿野郎、何年この仕事で食ってきたと思ってるんだ! 俺の目が狂ってるわけねえだろ!!」

 

 換金所のコーナーであることと、話を少しでも聞けば換金の内容をめぐる揉め事であることは明白だった。

 

「あちゃぁ、またか」

また(・・)?」

 

 良くあることのような言い方に鸚鵡返しに聞く。

 

「ベル君もそうだけど、冒険者も命懸けでダンジョンに潜って魔石やドロップアイテムを持ち帰っているから、換金所に来て想定していた金額より少なかったら、割に合ってないって文句を言うのは良くあることなんだよ」

 

 だからギルド職員の方も対応に慣れているとエイナが言うように、今も冒険者相手に臆せず負けないほど声を張り上げている職員を見ればベルも納得する。

 それに換金額交渉自体はベルも何度も見たことがある。あそこまで怒声をぶつけ合っているのは初めて見たが、どういう姿勢であれ冒険者があの手この手で換金額を吊り上げようととするのは、毎日のありふれた光景だった。

 

「ドロップアイテムもちゃんと勘定に入れたのか!? なぁ、もう一度確かめてみろ! ほらっ、これだけの筈が、筈がないだろっ!」

 

 価格交渉はありふれた光景だとしても、今にも足に縋り付いてきそうなほどの懇願具合に、異質な気持ち悪さを感じて肩を摩る。

 

「僕もあの人の気持ちが少しは分かりますけど、あそこまでしなくても……」

 

 ヘスティア・ファミリアの金庫番を預かる者としてお金の必要性は重々承知しているが、裂けそうなほどに目を見開いて懇願する姿は尋常ではない狂気すら覚える。

 

「またソーマ・ファミリアだよ」

「毎日のことだぜ。いい加減にしてくれっての」

「ギルドも出禁にすりゃいいのな」

「もしくは別枠にしてほしいぜ。こっちは疲れてるってのに」

 

 冒険者とギルド側の交渉は平行線を辿り、一向に終わる気配を見せない。換金待ちの列の中で、ダンジョン帰りで疲れ切っていて苛立ちを募らせてていく冒険者達の会話がベルの耳に入る。

 

「エイナさん、ソーマ・ファミリアって?」

 

 二大派閥のロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアに始まり、有名どころのファミリアならおおよそ知っているつもりのベルも知悉していないファミリア名だった。

 

「ソーマ・ファミリアは、ベル君達のファミリアと同じ探索系のファミリアだね。規模としてはまあ中堅どころで、突出した人はいないけど構成員の数はかなり多い。他と違うのはちょっことだけ商業系にも片足を突っ込んでことかな」

「商業系? 市場とかに商品を卸しているってことですか?」

「うん、お酒を販売してるの」

「お酒……」

 

 子供のうちは体に悪いから酒を飲むのは止めておきなさいと、まだ存命だった頃の祖父が言っていたこともあって縁遠かった物なので、意表を突かれたような気分になった。

 

「物自体が少ないらしいから流通は殆どしてないみたいだけど、味は絶品だって噂だよ。オラリオの中でも需要は高いみたい」

 

 ファミリアとしての特徴はそれぐらいだが、問題は殆どの構成員に共通するある悪癖にあるとエイナは語る。

 

「悪癖?」

「異様にお金に執着しているの。あんな感じにね」

 

 人前だというのに頭を抱えて蹲り出した冒険者を遠目に見る。

 

「冒険者間で大きなトラブルを起こしたという報告は聞かないけど、小さなトラブルは幾つか上がっているからベル君達も気を付けてね」

 

 忠告を聞いて気を付けようとベルが思っている横で、難しい話に興味を失ったアルスは器用にも立ったまま寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ベル・クラネル Lv.1/力:I82→H120/耐久:I42/器用:I96→H139/敏捷:H172→G225/魔力:I0/《魔法》『 』/《スキル》『 』】 

【アルス・クラネル Lv.1(レベル9)

 HP:50 

 MP;27

 ちから:25

 みのまもり:12

 すばやさ:29

 きようさ:19

 こうげき魔力:25

 かいふく魔力:27

 みりょく:22

《魔法》

 【メラ】     ・火炎系魔法(小)

 【ホイム】   ・治癒系魔法(小)

 【ギラ】     ・閃光系魔法(小)

 【イオ】    ・爆発系魔法(小)

《技能》

 【かえん斬り】     ・武器に炎を纏わせることが出来る

 【ぶんまわし】     ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能

《スキル》

 【聖竜の祝福(ドラゴンクエスト)】   ・■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

《次のレベルまで:327》 】

 

 クラネル兄弟のステイタスを更新をしたファミリアの主神ヘスティアは、昨日同様に自分の目を疑った。

 

「なぜ?」

 

 ベルの方については、まあいい。

 『憧憬一途』という成長促進スキルがあるので、芽生えた経緯が経緯だけにかなり内心ギリギリものだが辛うじて納得できる。だが、アルスの方はおかしすぎる。

 

「ステイタスが全然上がっていませんね」

「上がるどころか微動だにしていないよ。なに、なんかバグったのこれ?」

 

 自分で恩恵を刻み更新して、書き写す際に何か間違えたかと起きようとしたアルスをベッドに押し付けて、穴が空きそうなほど何度も確認する。

 

「でも、まったく変わってないわけではないみたいですよ。昨日のと見比べて見ると、ほら『次のレベルまで』の数値が減ってます」

 

 先に服を着たベルが横から昨日のステイタスを更新した用紙をヘスティアの前に差し出し、該当する場所を指で示す。

 ヘスティアは今日更新した用紙とベルが持つ用紙、そして起こさしてもらえないアルスの背中の恩恵を見比べる。

 

「…………普通は獲得した経験値(エクセリア)は基本アビリティに反映されるのだけど、アルス君のはレベルが上がるごとにステイタスに反映されるのか?」 

 

 同じ冒険をして熟練度上昇160オーバーのベルと、まったく変化はないが次のレベルまでの必要経験値が減っているアルスのを見比べるとそのような推測が成り立つ。

 

「今回の冒険で必要経験値が半減してますから、近いうちにレベルアップ…………ランクアップではないんですよね? すると思うのでその時には分かると思いますけど」

「はは、まさかレベル9から切りよく10(二桁)になったらLv.2にランクアップするなんて、そんなことあるわけが」

「アルスみたいな前例が他にないから絶対に断言できませんよね」

「うぐっ」

 

 少なくともベルはアルスのようなレベルステイタスは初めて知ったし、エイナにも聞けないので独力でギルドで調べた限りでは、他のファミリアでも似たような事例は確認できていない。

 何が起こってもおかしくはなく、ベルのツッコミに喉で唸る。

 

「確かLv.2の最速の記録って」

「アイズ・ヴァレンシュタインさんの1年だそうです」

「速いな、早いな……」

 

 今日のペースで冒険を行った場合、このままでは早くて数日でランクアップするかもしれない。そうなると恩恵を刻んで、たった2週間というアイズの1年を大幅に超短縮しての最短記録を更新することになる。

 

「絶対に問題になるよぉ……不正を疑われるよぉ……なんでベル君はヴァレン何某の記録を知っているんだよぉ……」

 

 一年から二週間という短縮するにしても限度を超えており、絶対に神の力(アルカナム)による不正が疑われるのは確実で、ベルがきっと慕っている相手の記録を調べたのだろうと察してしまい、二重の意味でヘスティアの心をブレイクしてくる。

 

「ま、まあ僕もこんなにステイタスが伸びているんですから、きっと僕もアルスも成長期なんですよ」

「…………うん、そうだね」

 

 双子だから変なところで似ちゃうですよね、なんてベルの成長促進スキルのことも言えない誤魔化しがカウンターとなってヘスティアを襲う。

 もしも立っていたら肝臓にボディブローを浴びたようにフラついただろうヘスティアは、受け止められる許容量を超えたので全て忘れることにした。

 アルスに服を着るように促し、ヘスティアは部屋の奥にあるクローゼットへと向かう。

 

「二人が頑張ってくれたんだ。うじうじ悩んでも仕方ない。前向きに捉えよう!」

 

 扉を開けてプルプル震えながら背伸びをして、自身用に採寸された特注のコートを取り出した。小さな体に不釣り合いな胸を覆い隠す外套を羽織り、秘儀『問題は明日の自分が解決してくれるさ』を発動した。

 

「せっかく、店にお呼ばれしたんだ。今日は祝杯を上げようじゃないか!」

 

 人は、それを現実逃避と呼ぶ。

 

 

 

 

 

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