ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第32話 だって、専属鍛冶師だし

 

 

 

 

 

 12階層での冒険から翌々日。ベル・クラネルが団長を務めるヘスティアファミリアは、リリルカ・アーデを除いて箱馬車の中の人となっていた。

 

「凄いお屋敷ですね。リリも来れたら良かったのに」

 

 まだ遠いが少しずつ見えてきた目的地はベルが住んでいる廃教会とは全然違った。暗がりの中でも存在感を発揮する屋敷に感嘆の息を漏らす。

 

「ギルドから僕達のファミリアの等級(ランク)が【I】から【G】に上がると通知が来てしまったんだ。幾らベル君達3人がLv.2にランクアップしたからって、二段階も一気に上げるのは不条理が過ぎる」

 

 正装のドレスを纏ったヘスティアは大きな胸の下で腕を組み、ふんすと大きな鼻息を吐く。

 

「徴税額の減税、もしくは段階を踏んでの等級(ランク)上げに変えてもらう為にアドバイザー君と協力して資料を作ってくれているんだ。感謝しとこうぜ」 

「別にそこまで急がなくても……」

「何を言うんだい! 等級(ランク)が一つ違うだけでも徴税額が全然変わってくるんだ。流石にもう僕達も零細とは言えないかもしれないが、教会(ホーム)の修繕だってまだまだで貯蓄も少ないんだ。削れるところは削らないと」

 

 ヴェルフ・クロッゾがパーティーに入り、リリルカが入団して到達階層が増えたことで収入も増えてはいるがヘスティアファミリアに大きな余裕があるわけではない。金庫番として通知を受け取ってすぐにギルドに向かって行ったリリルカの苦労を偲んでいると、箱馬車が目的地について止まった。

 

「さあ、降りようか」

 

 位置的に降りやすい場所にいたベルが先に出ると、屋敷の前には続々と到着する箱馬車と正装している何人もの美男美女がいた。

 ベルが違う世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えていると、アルスがヘスティアが降りやすいように手を貸していた。

 

「今更何だけど、今といいアルス君が女性に対するマナーが良いのはなんでなんだい?」

 

 アルスの手を借りて着地したヘスティアは納得いかなげに問いかける。

 

「ああ、それはお爺ちゃんが教えてたんですよ」

「ベル君の祖父が?」

「『アルス、お前は普段がアレなんだから大事なところはしっかりとしておいた方がいい』って。僕がお爺ちゃんが書いた英雄譚の本を読んでる時に教えてました」

「へぇ、良いお爺ちゃんだったんだね」

「後、『女はそういう普段とのギャップに弱いからの! きっとキュンとなること間違いないぞい!』とも言ってましたね」

「…………台無しじゃないか。僕の感動を返してくれ」

 

 女性に対するマナーを教えたのは良いことだけど、その動機があまりにも即物過ぎて感心していたヘスティアは深く肩を落とす。

 

「ヘスティア」

 

 背後から聞き覚えのある声に肩を落としてていたヘスティアが振り返る。

 

「ミアハ、ナァーザ君も」

 

 ヘスティア達と同様に正装したミアハファミリアの主神ミアハとたった一人の眷属であるナァーザ・エリスイスが並んで立っていた。

 

「今回のこと、本当にすまんな。服も馬車も何もかも手配してもらって」

「なぁに、服はベル君達が知人から紹介してもらったレンタル品だから大したことはないし、馬車も纏めて借りた方が別々に借りるより安くついただけだよ」

 

 神用の衣類を仕立てる店はヘファイトスから教えられていたヘスティアはベル達用の衣装をどうしようかと困った。そんなヘスティアがベル達に相談する前に既に知り合いから衣装のレンタルが可能な店を紹介してもらっていて杞憂になったのは昨日の昼前の話。

 購入するよりかは安上がりで、数が増えるごとに一着ごとに割引がかかるので当初の予定金額よりも安くなった。箱馬車も同様である。となると、最近は潤ってきたヘスティアファミリアと違って借金のあるミアハファミリアのことが気になった。

 

「何よりナァーザ君の為さ。節制ばかりでは気持ちに張りが出ないし、偶には贅沢が必要だよ。助かると思うなら無節操にポーションを配るのは止めるように」

「肝に銘じているよ」

「ありがとうございます、ヘスティア様。ベル達も、この前のクエスト、お蔭で助かった」

「助けになれたなら良かったです」

 

 眷属が借金返済に苦慮していたことを最近知ったミアハも神妙な面持ちで頷く横でナァーザとベルが和やかに話をしていた。

 ヘスティアファミリアの眷属の中にリリルカの姿が無いことにミアハが気づいた。

 

「リリルカの姿が見えないが?」

「ギルドの方にちょっとね。だから、今日は参加できないんだ」

「それは残念だな」

 

 残念な気持ちもヘスティアも同じだった。

 

「ああ、折角【神の宴】も普段とは少し違って、眷属を三人まで同行させて良いなんて面白い趣向を凝らしているんだ、是非、体感して欲しかったんだけどね」

「用事があるなら仕方ないさ。タケミカヅチはまだ?」

 

 仲の良い神友にも声をかけていることを知っていたミアハは姿を探すように辺りを見渡すが姿は見えない。

 

「もう先に会場に入ってるかもしれない。僕達も行こうか」

「はい」

 

 ベルが返事をして、一行は目の前の屋敷に向かって足を進める。

 アルスは一人で勝手にどっかに行かないようにしっかりとヘスティアに手を繋がれたまま玄関ホールに入る。

 

「広い屋敷だねぇ。等級(ランク)Dの、中堅派閥ともなればこんなにホームが大きいのかい?」

 

 先だってのガネーシャが開催した神の宴が行われた屋敷よりかは小振りだが、まだ個人の部屋すら与えられない廃教会(ホーム)に住んでいるヘスティアは感心するしかない。

 

「いいや、この施設はギルドが管理している公的な物件の一つだろう。ホームで【宴】を開くのはガネーシャぐらいだな。普通は他派閥の者をホームに招く真似はしない」

「え?」

 

 普通にパーティーに入っているとはいえ、ヘファイトスファミリアのヴェルフ・クロッゾを廃教会(ホーム)に入れているヘスティアはマズかったかなと考える。

 しかし、別に秘密にするモノはベル達のステータスが書かれた羊皮紙しかないので別にいいかと気にしないことにした。

 

「アポロンのホームもここまでではないだろうが、団員数が多くなれば比例してどうしてもホームは大きくなるものだ」

「ミアハ達も昔はこれぐらい大きなホームだったのかい?」

「ここまでではなかった。こう華美なのもアポロンの趣味で装飾しているのだろう。ホームなどは主神の趣味が諸に出るからな」

 

 嘗ては中堅派閥だったというミアハの話はようやく零細を脱して弱小に到達したヘスティアには参考になる部分が多い。

 ホームには主神の意向が反映されるものだと心のメモに記していると、階段を登って2階に上がってパーティーが行われる大広間に辿り着く。既に多くの神・眷属で賑わっており、こういう経験が無さそうなベルの臆している雰囲気とは対照的にヘスティアと手を繋いでいるアルスは物珍しそうに周りを見渡している。

 やはり対照的な兄弟だなとヘスティアが思っていると、こちらの姿を見つけた既知の神と眷属が向かってくる。

 

「あら、来たわね」

「ヘファイトス、ヴェルフ君も」

 

 ヘファイトスに手を引っ張られたヴェルフも正装をしており、気兼ねなく話が出来る相手を見つけてベルが近づく。

 

「良く似合ってるよ、ヴェルフ」

「馬子にも衣装って言ってくれよ。似合ってないのは分かってる」

「そうかな、着慣れてる感じがするけど……」

 

 間に合わせの為か若干サイズ感がズレているがベル達の様に衣装に着られている感じはしない。もしも、ヴェルフが嫌そうにせずにピンシャンとした姿勢になればリリルカがいたならば『流石は鍛冶貴族』と揶揄いの言葉を漏らしただろう具合。

 

「俺は来たくなんてなかったのに、椿に無理矢理に連れてこられたんだ。折角時間が空いたんだから色々とやりたいことがあったってのに」

「そうなの?」

 

 クラネル兄弟の『くさりかたびら』に代わる素材が揃ったやすらぎのローブとか、リリルカ用の『ウィッチローブ』や『サンゴのかみかざり』の整備など、やることは幾らでもあったと続けようとしたヴェルフの肩後ろから椿・コルブランドが顔を出す。

 

「手前のことを呼んだか?」

「うぉっ!? 気配を消して背後に立つな!」

 

 ドレス姿が窮屈そうな椿は飛び退いたヴェルフの予想通りの反応にカンラカンラと笑う。

 

「別に消しておらんよ。現にそっちの二人は気付いておったぞ。ヴェル吉が鈍いだけだ」

「あははは……」

 

 単純にヴェルフの姿越しに近づいてくるのが見えただけなので、気配云々はあまり関係はない。ヴェルフが気配に敏感と言えないのは事実なので、ベルも少し笑って明言は避けて笑って誤魔化す。

 

「ヴェル吉のことはどうでもいい。用があるのはアルスだ。今日は『ウダイオスの黒剣』を持ってきておらんのか?」

 

 そわそわとした椿の問いに、何時もの習慣で背後に手を回したアルスは何時もの手ごたえが無く空振る。正装なので流石に武装は懐に入れている『どうぐぶくろ』に仕舞っていることを思い出した。

 

「今日は【神の宴】だぞ。持ってきてるわけないだろ」

「そうか、残念だ」

 

 ヴェルフがそう言ったものだから懐の『どうぐぶくろ』に手を入れようとしたアルスの手が止まる。その様子を見ていたベルは会場でいきなり武器を出されるのは問題になるので止めようとした手を下ろした。

 

「アルスもヴェル吉ではなく手前に任せてくれれば、第一等級武装に仕上げてみせた物を」

 

→それでもヴェルフに頼んだと思う

  やっぱり椿の方が良かった

 

「ほう、何故だ?」

 

→ヴェルフなら魂を預ける半身を作ってくると信じた

  だって、専属鍛冶師だし

 

「…………だそうだ、ヴェル吉」

 

 鍛冶師冥利に尽きる言葉を聞かされた椿が少し羨まし気にヴェルフを見る。

 

「ああ、分かってるさ。俺はアルスの期待に答えられる武器を作れなかった」

「そんなことはないよ。ヴェルフが作ってくれた武器は寧ろアルスに分不相応なほど良い物だよ」

 

 ベルが擁護してくれたが、ヴェルフは期待してくれたアルスに答えられる物に仕上げられたとはとても言えなかった。

 

「いいや、椿なら第一等級武装に仕上げられただろうさ。認めるよ。俺の()の力量が椿に劣ることを」

 

 偶々ベル達の近くで談笑していた神々が有名な鍛冶師とである椿と無名のヴェルフが向き合っているのを見ていた。

 

「けど、ヘファイトス様に鍛えられた(おれ)の熱は、こんなことで冷めやしない。アルスが望む武器を、椿以上に鍛え上げてみせるさ」

 

 近くにいた別の神の耳がダンボのようになってヴェルフの台詞を脳内で復唱する。

 

「何時までも負い目を抱えているなら引っ叩いてやろうかと思ったが、必要なかったか」

「発破をかけられたんだ。礼は言わないぜ?」

 

 う~ん青春、と神々が悶えている間に話は収束していく。

 

「必要ない……………それはそれとして、ウダイオスの黒剣を後で見せてくれんか? ヴェル吉は見させてもくれんのだ。鍛えたりはせんから、少しだけ少しだけ」

「お前って奴は……」

 

 見せた方がいいのか、見せない方がいい、とアルスとベルが静かな攻防を繰り広げている間に、胸の中で燃え盛る炎に耐え切れなくなったヴェルフがネクタイをスルリと外す。

 

「一分一秒も無駄に出来ねぇ。悪いが俺は先に帰る。ヘファイトス様によろしく言っておいてくれ」

「…………ふむ、手前も気が代わった。先に辞することにしよう。うちの主神様にヴェル吉の分も合わせて適当に言っておいてくれ」

 

 そう言って風のような速さで会場から出て行ったヘファイトスの眷属二人を見送ったベルとアルスは顔を見合わせる。

 

「鍛冶師って似てくるのかなあ? どうやってヘファイトス様に言おうか」

 

 ベルが悩みながらヘスティア達と話していたはずのヘファイトスの姿を探すがもうどこにもない。ヴェルフ達と話している間に離れてしまったようだ。

 伝言を伝える為にヘファイトスを探しに行く前に、ヘスティアが見覚えのない男神と恐らくその眷属と見られる三人を連れてやってくる。

 

「ベル君ベル君、君達に紹介したい神がいるんだ」

「タケミカヅチだ。ヘスティアとは仲良くさせてもらっている」

 

 手を差し出してきたタケミカヅチと握手する。

 

「こっちが俺の眷属、団長のカシマ・桜花とヤマト・命、ヒタチ・千草だ」

「「「よろしくお願いします」」」

「こちらこそよろしくお願いします。僕が団長のベル・クラネルで、こっちがアルス・クラネルです。本当ならもう一人いたんですけど」

「うちももう何人かいるんだが、人数制限があったり所用があって出れないのは皆同じだ。気にすることはない」

 

 ミアハとは方向性のさっぱりとした物言いにベルも好感を抱く。

 眷属達の名前の響きなどから噂にだけ聞いたことのある極東の出身かなと推測をしながら、タケミカヅチの後ろにいるヤマト・命と呼ばれた女性が正装の経験がないのか剥き出しになっている肩を恥ずかしそうに小さくして耳まで紅潮させているのを見て同類を見つけた気分になる。

 

「神様達はどういう繋がりで? 天界で仲が良かったとかですか?」

「天界での故郷は違うけど付き合いは下界に来る前からあったよ」

「気が合ったというのもあるが、揃って貧乏でね」

「まあ、付き合いやすい間柄だったのも大きいだろう」

 

 自分だって人によって合う合わないのはあるので、そこは神であっても同じだと初めて知った。

 ベルが新しい常識を獲得していると、神同士で話していたタケミカヅチがチラリとアルスを見る。

 

「ヘスティアの所の眷属()が最速記録でLv.2になったのだろう。うちの命もLv.2になったばかりでな。もしかしたらダンジョンで会う時があるかもしれない。その時はよろしく頼む」

「うちは無理だが、どうせなら同盟を組んで一緒に潜ってみるのもいいんじゃないか?」

「僕達は構わないけど」

 

 神同士で纏まりかけている話に、提案自体はベルも賛成だが直ぐとなると色々と困る面があるので口を開こうとしたところで、タケミカヅチファミリアのカシマ・桜花の方が早かった。

 

「俺たちはまだ知り合ったばかりで、連携が取れるとは思えません。こちらもようやく中層に進出したばかりなので、同盟はともかく共に探索するならある程度の連携が取れるようになってからの方が良いかと」

「彼の言う通りだと思います。なによりヘスティアファミリア(僕達)は冒険者としての経験(キャリア)が浅く、他のパーティーとの連携を取ったことがないので不安の方が多いです」

 

 両団長の意見を聞いて最もだと思ったミアハが爆弾を落とす。

 

「ふむ、そういうことなら信頼を深める機会が必要なようだ。今日の【神の宴】では眷属がいるからダンスもあるとのことだから、眷属()らの男女の人数比が丁度だから踊ってみるのはどうだろうか?」

「何を言っているんだ、ミアハ!? ベル君は僕と踊るんだ!」

 

→流石は神様、抜け目ない

  流石は神、女心が分かっていない

 

「うぅ、私にもあれだけの積極性があれば……」

 

 誰にも渡すものかとベルの腕をその大きな胸で挟んで掴んだヘスティアの積極性に命が苦笑しているタケミカヅチの手を触ろうとして苦悩していた。千草が命を応援している横で桜花は何も分かっていない顔をしていて、アルスは一人だけ訳知り顔で頷いている。

 

「やぁやぁ、ヘスティアにミアハにタケまで!」

 

 ある種、カオスな場に第四の神が首を突っ込んできた。

 

「げっ、ヘルメス。相変わらず騒々しいね。君も来てたのかい?」

「オラリオに帰って来てる時にアポロンから招待状を貰ったものでね。面白い趣向だから参加しない手はないだろう」

 

 嫌そうな顔をするヘスティアに答えつつ、ヘルメスと呼ばれた男神はその場にいる女性眷属達を順番に見ていく。

 

「タケミカヅチの所の子も素敵だが、ナァーザちゃんも決まってるじゃないか。だが、見てくれうちのアスフィを!」

 

 背後を指し示して自身の眷属に注目させる。

 

「このドレスにネックレスもこの【神の宴】の為に作った特注品なんだ。中々だろう?」

「止めて下さい、ヘルメス様。本気で殴りますよ」

「何を言ってるんだアスフィ! 【神の宴】に今まで無かった眷属を同行させる理由なんて、自分の所の眷属自慢をする為に決まってるじゃないか!」

 

 アスフィと呼ばれた眷属は注目を一身に浴びて恥ずかしそうに頬を染めて身を縮める。

 

「照れてるアスフィも可愛いぜ。うぐっ!?」

 

 肩に手を置いてトドメとも言える囁きに羞恥の限界に達したアスフィがヘルメスに肘鉄を放つ。

 軽く放たれたように見えた肘鉄を食らったヘルメスが大きく吹っ飛び、壁際にまで転がる。痛がってはいるが、あれだけ吹っ飛ばされながら肉体は一般人と変わらない神の肉体に大きなダメージを残さない確かなアスフィの技量にベルは戦慄する。

 

「ナァーザさん、あの人って……」

「アスフィ・アル・アンドロメダ、オラリオに五人といない『神秘』のアビリティ保有者で、【万能者(ペルセウス)】の二つ名を持つヘルメスファミリアの団長だよ」

 

 同じ団長でも格が違う人物にベルがゴクリと唾を飲み込む。その横でヘスティアの監視の目が緩んでいたのを見逃さなかったアルスが部屋の隅に置いてあった樽をコッソリと叩き壊す。

 

――――――――――アルスは レシピブック 『蝶イケてる装備のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――よるのパピヨンの レシピを 覚えた!

――――――――――パピヨンマスクの レシピを 覚えた!

 

 アルスはレシピを手に入れることが出来てホクホクな気分で懐の『どうぐぶくろ』に仕舞う。

 

「――――諸君、今日は良く足を運んでくれた!」

 

 壊した樽の破片をヘルメスの近くに蹴飛ばしていると、大広間に高らかな声が響き渡った。

 

「今回は私の一存で趣向を変えてみたが、気に入ってもらえただろうか? 日々可愛がっている子供達を着飾り、こうして我々の宴に連れ出すのもまた一興だろう!」

 

 アルスが声の聞こえた方に目を向けると、主催者であるアポロンらしき神が階段の上に立っている。

 その背後にはアポロンファミリアの眷属と見られる何人かの者達が付き従っている。ヘスティアファミリアに招待状を持ってきたダフネ・ラウロスとカサンドラ・イリオン、そしてヒュアキントス・クリオの姿もあった。

 

「多くの同族、そして愛する子供達の顔を見られて喜ばしい限りだ。今宵は新しい出会いに恵まれる、そんな予感さえする」

「ん?」

 

 一瞬誰かからねっとりとした粘度のある視線を向けられた気がしたベルは辺りを見渡しても該当する者が見当たらず、気の所為かと首を捻る。

 

「今日の夜は長い。上質な酒も、食も振舞おう。皆、存分に楽しんで行ってくれ!」

 

 

 

 

 

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