ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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ダンまちアニメ第五期制作発表おめでとうございます。

直近の更新が10/8と大分空きましたが第四章が出来たので更新していきます。




第四章
第42話 これからよろしく、女王様、巨乳様


 

 

 

 

 

 ギルド内部にある窓のない一室。

 小さな机と椅子が一つだけ置いてある簡素に過ぎる部屋の存在理由はただ一つ。外から垣間見ることのできない密閉空間を作り出し、内部で行われている恩恵(ファルナ)改宗(コンバーション)を余人に知られないようにする為。

 机に置かれた燭台の淡い灯りが照らす室内にいるのは三人。

 改宗(コンバーション)をする他神の眷属である二人と、改宗(コンバーション)先の主神ヘスティア。

 

「――――これで、たった今から君達は僕の眷属(ファミリア)だ」

 

 先に終えていたカサンドラ・イリオンが見守る中、上着を脱いで背中を露出したダフネ・ラウロスの改宗(コンバーション)も滞りなく終わり、今この瞬間から二人はヘスティアファミリアの眷属となった。

 

「スキルに目覚め、ステータスが変わらなかったことに安堵したような複雑な気分だ」

 

 ダフネが上着を着ている間にヘスティアも改宗(コンバーション)に必要だった道具を片づける。

 片づけるといっても、精々が自身の血を垂らす為の針を直すぐらいなので直ぐに終わったヘスティアは眷属となった二人と向かい合う。

 

「景品のように身柄を扱ったこと、謝って許されることではないけれどすまないと思っている」

 

 深々と頭を下げるヘスティアに、まさかここまで下手に出られると思っていなかった二人は顔を見合わせた。

 

「頭を上げて下さい、ヘスティア様」

 

 こういう時に話すのは何時もダフネなので、カサンドラは彼女に任せる。

 申し訳なさそうな顔のまま頭を上げたヘスティアと目を合わせる。

 

「勝ったのはそちらなので後ろめたく思う必要はありませんよ。負けたのですから、どのような扱いにも甘んじます。戦争を先に吹っ掛けたのはアポロン様ですから」

 

 アポロンがヘスティアの眷属を求めて戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛け、負ければ逆に眷属を取られたからといって文句を言える資格はない。当事者である眷属として思うことはあれども、どこか肩の荷が降りたような心持ちで一度瞼を伏せる。 

 

「ウチらは元々強制的に入団させられたようなものだから、寧ろこうなって良かったって思ってます。もしも次があるなら、まともな主神(かみ)のファミリアに入りたいと願っていたので、私達(下界の者達)に頭を下げてくれるヘスティア様なら願ったり叶ったりです」

「ありがとう。そう言ってくれると助かる」

 

 アポロン様も悪い神ではないのですが、と今まで巻き込まれた騒動に思いを馳せているダフネに、もう一度だけヘスティアは深く感謝した。

 そのまま改宗(コンバーション)室を出て、カサンドラが窓口でファミリア移籍の手続きしている間にヘスティアとダフネはこれからのことについて話す。

 

「直ぐにホームに招いて歓迎会といきたいところだけど、この後すぐに神会(デナトゥス)があるんだ」

「はい、私達は外で待っていればいいですか?」

 

 慣れていない相手と残されて気まずい思いをするよりも、ギルド職員と事務手続きをする方が気が楽というカサンドラの願いを受け入れたダフネは慎重に言葉を選ぶ。

 初対面の印象が悪すぎるので印象回復をしなければ今後が辛いとダフネは考えたわけだが、善神であるヘスティアは全く気にしていないので取り越し苦労でしかない。

 

「ベル君達が改宗が終わるのを待っていてくれているから、先に君達の歓迎会を始めておいてくれ。多分、この神会(デナトゥス)は長引く」

「ご、ご愁傷さまです」

「はははは、これも主神としての務めさ」

 

 笑ってはいるが目が虚ろなヘスティアに、まだ付き合いが始まったばかりのダフネではどこに地雷があるのか分からないので上手く慰めることが出来ない。

 新たに増えた眷属を前にして、数多の問題を乗り越えてきてある意味で気持ちの切り替えだけは早くなったヘスティアの目に光が戻る。

 

「君達もランクアップしているんだ。今は僕の眷属(ファミリア)だ。既に二つ名を持っているが変えたいと望むかい?」

 

 事務手続きが終わったカサンドラが戻ってきたタイミングで二人に尋ねる。

 

「いえ、私は今のままで特に困っていないので」

「わ、私は、代えたい、です」

 

 二人の二つ名は『月桂の遁走者(ラウルス・フーガ)』と『悲観者(ミラビリス)』。

 ダフネはともかく、仕方ないにしてもカサンドラは自身のネガティブな二つ名を代えられるなら代えたいとずっと思っていた。

 

「カサンドラ君の二つ名は『悲観者(ミラビリス)』だったか。イタくはないが、あまり好ましいとは言えない二つ名だったね」

 

 二つ名は神々が付けるもので、概ね下界の者達にとっては理解不能(ハイセンス)なので好意的に受け入れられるが、カサンドラのように出来れば変えたいと思う者もいる。

 

「無理無理、アンタのは変わらないわよ」

「へぅ……ダフネちゃぁん」

「そんな声出しても無駄よ。決めるのは神様達なんだから」

「ああ、まあ、ダフネ君はそのままで、カサンドラ君は代えたいということだね。努力はしてみるが、正直期待はしないでくれ。初めて二つ名が付く四人に無難な称号を勝ち取ることに全力を傾けざるをえないから!」

「は、はぁ……」

 

 拳を強く握り締めて気炎を吐くヘスティアに、二つ名が変わるわけがないとダフネに言われて落ち込んでいたカサンドラの涙も引っ込んでしまった。

 

「泥水を啜ることになろうとも、必ずまともな称号を勝ち取ってみせる! じゃあ、逝ってくるよ……!」

 

 何か字が違うような気もしたが、これから戦場で散ってくる兵士のような悲壮な面持ちでギルドからバベルに向かっていくヘスティアの背中を見送る二人。

 ヘスティアの姿が完全に見えなくなった後、ダフネは溜息を吐く。

 

「ウチらも行こうか」

「う、うん……」

 

 応えたカサンドラが不安そうに俯いているのを見て、ダフネは自分がしっかりしなければと決意を新たにする。

 

「同じ眷属になってから初めての顔合わせなんだからしゃっきとしな!」

「ひゃん!?」

 

 気合を入れるつもりで、自分と違って無駄に肉付きの良い臀部にビンタすると、飛び上がったカサンドラの口から何とも艶やかな声が出た。

 あまりのカサンドラの尻の叩き心地の良さと柔らかさに、なにか癖になりそうな危険な衝動を湧き上がってきたが必死に抑え込む。

 

「背を丸めてないで、ウチらの今後の為にその無駄にデカい胸で団長達をメロメロにしてみなさいよ」

「デッ!? で、デカくないもんっ!?」

「十分にデカいわよ。そういえばヘスティア様もデカかったわね。じゃあ、効果はないか。アンタ、色気ないもんね。無理言ったわ、ゴメン」

「…………うう、なんか納得いかない」

「ほら、団長達を待たせてんだから早く行くよ」

「ま、待ってよ、ダフネちゃん……っ!」

 

 頬を大きく膨らませて睨んでくるカサンドラを無視して、ダフネはさっさとギルドから出て行くべく足を動かす。その背を恨めしい目で追いかけていたカサンドラも直ぐに後を追う。

 ギルドを出たダフネがヘスティアは眷属達が待っていると言っていたので辺りを見渡すと、バベルに向かう為に先に出たヘスティアが声をかけたのか、二人の少年が入り口に歩み寄ってきていた。

 

「待たせてごめんなさい、団長」

 

 悪い印象を払拭しようと、こういう挨拶はまずは新入りからとダフネは謝罪から話に入った。

 

「いえ、大丈夫ですよ。えっと……」

 

 団長と呼ばれて面映ゆそうなベル・クラネルが二人をどう呼べばいいかと逡巡する。

 

「ダフネでいいわ。こっちはカサンドラで」

 

→これからよろしく、ダフネ、カサンドラ

  これからよろしく、女王様、巨乳様

 

「二人とも年上だからさんをつけようね、アルス。すみません、うちの愚弟が」

 

 自分より少し高いところにある双子との弟の頭を下げさせ、遠慮のない態度を改めようとするベルにクスリとダフネは笑った。

 

「いいよ。団長もウチらのことは好きに呼んでくれて良いよ」

 

 話の分かる年上のお姉さん風なダフネに、ベルの中で悪魔が囁いた。

 

「じゃあ、女王様」

「ああん”!!」

「ひぃっ!? 場を和まそうと思った冗談だったんです! ごめんなさい!!」

 

 にこやかな表情から一転してメンチの効いた目つきとドスの効いたダフネの声にベルのベルがキュッと縮まった。

 深々と頭を下げて、しまいには土下座でもしそうなベルの勢いに、ダフネが頭が痛いとばかりに眉間を右手人差し指で揉み解しながらアルス・クラネルに視線を移す。

 

「アンタが教えたんでしょ」

 

 親指を立てて笑顔で答えるアルスに疲れたように深々とため息を吐く。

 

「最初ぐらいは猫被って違うキャラを定着させようと思ったのに……」

「ちなみにどんなキャラを?」

 

 切り替えが早いのはヘスティアファミリアの特徴なのか、ダフネが怒る雰囲気でないと分かったベルが尋ねてくる。

 

「こう大人しくて清楚で穏やかな」

「ぷっ」

 

 真反対なキャラ付けで似合っていない自覚はあるが、だからといってこうもあからさまに人に笑われると気分を害する。これがまだベルやアルスならば呑み込みもするが、自分のことを良く知るカサンドラが笑うのだけは我慢ならなかった。

 

「カ~サ~ン~ド~ラ~」

 

 怒りを滲ませて詰め寄ってくるダフネに、カサンドラは慌てて自分の前で手を何度も振りながら釈明する。

 

「だ、だって、ダフネちゃんから、い、一番遠いキャラ付けだったから」

「だからって笑う奴がいるか!」

 

 取っ組み合いを始めてしまって最初はどうしたものかと困ったベルだったが、ダフネも本気で怒っている様子はなく二人の気が済むまで待つことにした。

 

「ははは、面白い人達ですね」

 

 お前もな、と言ったベルに対してアルスは思ったが口には出さなかった。もしも口に出していたらダフネ・カサンドラと同じ行動に走っていたことだろう。

 

「僕のこともベルと呼んで下さい。まだまだ未熟ですから団長と言われても照れ臭くなっちゃいます。それに僕達の方が年下なので敬語もなしでお願いします」

 

 二人が落ち着いた頃に話を進める。

 

「ん、分かったわ、ベル。これから仲間になるんだからよろしくね」

「はい、よろしくお願いします、ダフネさん」

 

 サバサバとした姉御肌的な気性のまま手を伸ばすダフネに応えるベルの横で、アルスに強制的に握手させられたカサンドラがアワアワとしていた。

 手を離したダフネは、ヘスティアファミリアで出迎えが二人しかいないことを確認する。

 

「それで出迎えは貴方達二人だけ? 他の二人は?」

 

 特に初手でアポロンファミリアの混乱の坩堝に落としてくれた小人族(パルゥム)には言いたいことが、それほど山のようにあったのに姿が見えないので内心で舌打ちを漏らす。

 

「ヴェルフはレシピと素材が手に入ったので鍛冶に励んでます。リリは知り合いが病気になったのでその看病に行っています」

「前者はともかく、後者は単純にウチと顔を合わせにくかったんじゃないの? 戦争遊戯(ウォーゲーム)でウチらに散々やってくれたから」

「ああ、まあ、そういう面はもしかしたらあるかもしれませんし無いかもしれませんし」

「どっちなのよ」

 

 腕を組んで睨みを利かせるダフネに、ベルは苦笑しながらもハッキリとは答えない。

 

「あ、あの!」

 

 追及の手を強めようとしたダフネの言葉を遮るようにカサンドラが大きな声を上げる。

 既にベルと対面していて、初対面の時からは考えられないぐらいには立ち直っているのだが、それでも緊張は消えないのか少し声が上ずっていた。そのカサンドラの大きな声に二人が驚いた顔を向ける。

 

「どうしたの、カサンドラ? 意外にそっち(アルス)と話し込んでいたみたいだけど」

 

 最初は押されて戸惑っていたが、最後の方には二人で座り込んで話をしていたのは横目で捉えていた。

 何がしかの決意を滲ませたカサンドラは一度をアルスを振り返り、頷きを見てから意を決したように口を開く。

 

「ま、枕! 元ホームに枕を探しに行きたいの!」

「…………諦めなさいよ。新しい物を買えば?」

「あの枕じゃないと駄目なの。あれがないと昨日も全然寝付けなかったし……」

 

 必死の訴えを続けるカサンドラをうんざりとした雰囲気のダフネがあしらうが、尚も諦めずにお願いしてくる。

 

「どういうことですか?」

「カサンドラが今まで使っていた枕を無くしたらしいのよ。で、元ホームにあるはずだから探しに行こうと言って聞かなくて。諦めさせたのに、なんでまた……」

「アルスさんが一緒に行ってくれると言ってくれたもん」

「アンタが原因か」

 

→別にいいじゃん。探しに行くぐらい

  巨乳様の言うことは聞いておかないとな

 

「そうは言うけどね……」

 

 カサンドラは涙目になって懇願してきたりもしたが、そもそも探しに行かずに新しい枕を買えば良いだけの話なのでダフネとしても首を縦に振りにくい。

 明らかに気が進まない様子のダフネに、ベルは片眉を上げた。

 

「なにか問題があるんですか?」

「問題というか」

 

 その問題をベルに教えるのはあまり気が進まない様子のダフネ。

 

「元ホームは直ぐに売りに出されるからって、中の荷物は全て出されたはずなのよ。だから、元ホームにある可能性は限りなく低いのにカサンドラが」

 

 スルーと、そうさせてしまった張本人の内の一人であるベルは目を逸らした。

 ダフネも別にベル達を責める意図はないので、そこに対してツッコミを入れはしなかった。

 

「その、覚えていないんですけど…………『予知夢(ゆめ)』で元ホームにあるって、お告げを……」

「へ? ゆ、夢……?」

「だからぁ! そんな馬鹿げた話を言うの、止めなさいってば!!」

「アルスさんは信じてくれたもん!」

「コイツはなんかおかしいのよ!」

 

 おかしいとは失礼な、という顔をするアルス。

 確かにあやふやな夢の話を根拠にされたらダフネがカサンドラの望みを突っぱねる気持ちも分からないでもない。とはいえ、急ぎで荷物を出したのならば忘れ物があってもおかしくはないとベルは自然に考えた。

 

「まあまあ、別に探しに行ってもいいじゃないですか」

「しょ、正気? 夢よ、夢っ、この子の妄想なのよ?」

「夢云々はともかく、確認したつもりでも忘れている事ってありますから。誰かの物になっちゃうと見に行くことも出来ないので行ける時に行っておくべきですよ」

 

 カサンドラの擁護をするベルをダフネが訝しんだ目で見る。

 

「し、信じてくれるんですか?」

「信じるというか、困っているなら助けてあげたいというか」

 

 ベルの偽りのない本心からの言葉に、ダフネは呆気にとられたようにポカンとなった。

 

「ベルって、お人好しって言われない?」

「なんで分かるんですか?」

 

 作為もなく言い慣れている様子だったから聞いてみれば、既に指摘されたことがあるみたいだったのでダフネは、やっぱりそうなのねと苦笑を漏らした。

 

「分かったわよ。私の負け。元ホームに探しに行けばいいんでしょ」

「ダフネちゃん!」

 

 ダフネの根負けした様子に、カサンドラが満面の笑顔になって彼女の腕に抱き着く。

 カサンドラの為すがままにされながら、良かった良かったとばかりに笑顔を浮かべているとベルと生暖かい目を向けてくるアルスに、ダフネは遅まきながら元ホームに行った場合の問題を思い出した。

 

「あ、でも今、元ホームに行くと――」

 

 

 

 

 

 

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