ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第51話 ハゲの気配を感じる

 

 

 

 

 

 20階層を時間がかかりながらも潜り抜けて、ヘスティアファミリア+ヤマト・命のパーティーは19階層に上がっていた。

 開放感のあったそれまでの階層と比べると天井が低く閉塞感のある洞窟のような階層で、所々にある蜘蛛の巣が進行を阻害する。

 

「ああもう!? 蜘蛛の巣がうぜぇっ!?」

 

 『はがねのかぶと』にくっついた蜘蛛の糸を『はがねの盾』で振り解こうとして両方にくっついてしまい、『カルサドラアックス』で切り払う作業を果たして何度繰り返したことか。ヴェルフ・クロッゾがいい加減に我慢の限界が来て、苛立ち混じりに叫んだ声が洞窟内に反響する。

 

「分かっていますから声を抑えて下さい、ヴェルフ様。声が木霊して耳がおかしくなります」

 

 ヴェルフに顔を顰めて注意するのはリリルカ・アーデ。

 

「悪うござんしたな。リリ助はちっこくていいよな、引っかからないから」

「…………喧嘩を売っていますか? 言い値で買いますよ。代金は『爆発魔法(イオラ)』で払って上げます」

 

 多少なりとも自覚があるのかヴェルフはばつが悪そうにそっぽを向きながら悪態を吐くと、リリルカは『いかずちの杖』を掲げて威嚇する。

 彼女の魔法には詠唱が必要ないので、二人が悪態を吐き合うことでストレス発散を行っていることを知らないヤマト・命は二人の間でオロオロと戸惑っている。

 

「止めようね、二人とも! こんなところで喧嘩されたら僕らまで巻き込まれちゃうよ!」

「心配するところが違うよ、団長(ベル)

 

 二人の諍いを止めようとするベル・クラネルをダフネ・ラウロスが呆れたように突っ込んだ。

 

「冗談に決まってるじゃないか。茶目っ気が足りないぞ、お前ら」

「…………リリは割と本気ですが。というか、『混乱魔法(メダパニ)』をかけても許される気がします」

「リリルカの言うことは聞かなかったことにするけど、ヴェルフの言うように確かに蜘蛛の巣がうざったいね」

 

 え、とストレス発散に突き合わされて辟易しているリリルカの黒い発言に目を丸くしているヴェルフを放っておいて、先行してアルス・クラネルが『てつのつるぎ』で切り払ってくれていても完全な除去は出来ず、体にくっついてきそうな蜘蛛の糸を払い除けるダフネ。

 ベルはギルドの地図情報(マップデータ)から19階層に蔓延る蜘蛛の糸を撒いているモンスターのことを思い出す。

 

「この19階層には大蜘蛛のモンスターがいるんですよね。この蜘蛛の巣もその大蜘蛛が?」

「多分ね。アポロンファミリア(ウチら)は戦うのを避けていたから遭遇したことはないけど」

 

 心持ちリリルカから距離を取っていたヴェルフは、アポロンファミリアが大蜘蛛のモンスターを避けていたと聞いて首を傾げる。

 

「なんでまた戦わなかったんだ?」

「19階層の階層主『アラクラトロ』は、状態異常を引き起こす攻撃を得意とするモンスターだからですよ。しっかりと対策を取らないとパーティーが全滅する恐れがあります」

「と、いうわけさ。進んで戦いたい相手ではないから避けていたというわけ」

「引き起こされる状態異常は、そんなに酷いのか?」

 

 代わりに答えてくれたリリルカに肩を竦めたダフネにヴェルフは更に質問を重ねる。

 

「行動を封じる『呪縛』や、『猛毒』に『混乱』と厄介なやつが揃ってる。特に厄介なのは『混乱』だよ」

「敵味方の区別がつかなくなる、か」

「なんだい、知ってたのか」

「まあ、リリも似た系統の魔法が使えるので」

 

 前に魔法の実験台として『混乱魔法(メタパニ)』を受けたことのあるベルを見たヴェルフは当時のことを思い出す。

 まだダフネやアルスの後ろにくっついているカサンドラ・イリオンにはリリルカの魔法の全てを伝えていないので、苦笑しつつベルが説明した。

 

「つうか、リリ助。お前、『メダパニ(それ)』を俺に使おうとしなかったか?」

「気の所為です」

 

 つーん、と顔を逸らすリリルカに、これは下手にこの話題を深堀りするとマズいと判断したヴェルフは話題の転換を図ることに決めた。

 

「後が怖いから聞かなかったことにしてやるが、20階層の『ドラゴン』と『メタルスライム』の連ちゃんといい、19階層も大蜘蛛の巣(コレ)だ。楽な階層だと思えば油断を誘うし、ダンジョンってのは本当に厄介だ」

 

 割と適応できていない命はヴェルフの言葉に深く同意するかのように何度も頷く。

 

「ダンジョンが厄介ってのは認めるけど、にしたってモンスターに食われて7階層下に落ちるだけに飽き足らず、『ドラゴン』も寄って来過ぎ。アポロンファミリア(ウチら)の遠征ではあそこまでじゃなかった…………アンタら不運(バッドラック)過ぎじゃない?」

 

 そもそもの始まりはタケミカヅチファミリア(自分達)の所為では…………と、命が罪悪感で一人頭を抱えている。

 

「『ドラゴン』に囲まれたのに、リリ助とアルスが同時に精神力(MP)切れになった時は死ぬかと思ったな」

「偶々、見つけた涸れた井戸に逃げ込まなかったらどうなっていたことか。うう、恐ろしや」

 

 高い攻撃力と殲滅力に比例して精神力(MP)の消耗が大きい。モンスター達はこちらの都合など知ったことではないので、対処能力の限界が見えたところで退避場所を見つけられたことは幸運なことで、当時のことを思い出してリリルカはブルりと体を震わせる。

 実際のところ、アルスの手元には『どうぐぶくろ』があり回復手段は幾らでもあったが、モンスターの物量の恐ろしさを身を以て知らされた。

 

「はあ、アンタらといると一緒にいると命が幾つあっても足りないよ」

 

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 ダフネが溜息を漏らしていると『ガチャコッコ』と『メイジドラキー』が二体ずつ、『アンデッドマン』が三体という大所帯のモンスターの群れがこちらにやってくる。

 モンスターの集団相手には最早定番になりつつある『爆発魔法(イオラ)』を放たんと、リリルカが素早く『いかずちの杖』を振るう。

 

「イオラ!」

 

――――――――――リリルカは イオラを となえた!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――メイジドラキーたちを たおした!

 

 リリルカの『爆発魔法(イオラ)』はモンスター集団の中央に着弾してその威力を発揮。

 守備力が高くない『メイジドラキー』は即座に魔石と化し、『アンデッドマン』が吹っ飛ぶ。その中で守備力が高く、雷以外の属性に耐性のある『ガチャコッコ』が『爆発魔法(イオラ)』に大きなダメージを受けていないのを見たアルスが『てつのつるぎ』を捨てて二刀を抜き放ちながら駆ける。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは 剣を ぶんまわした!

――――――――――ガチャコッコたちに ダメージ!

――――――――――ガチャコッコたちを たおした!

 

 『ぶんまわし』によって壁に叩きつけられた『ガチャコッコ』達が魔石へと変わる。

 残る敵は『アンデッドマン』の三体。今回は後衛の守りとして命が残り、残ったベル・ヴェルフ・ダフネの三人が攻撃に回った。

 

「やっ!」

「おらぁっ!」

「やぁーっ!」

 

――――――――――ベル ヴェルフ ダフネの こうげき!

――――――――――アンデッドマンたちに ダメージ!

――――――――――アンデッドマンA、Bを たおした!

 

 ベルとヴェルフが攻撃を加えた『アンデッドマン』は魔石となったが、ダフネが攻撃をした『アンデッドマン』はまだ動いている。

 

「ちっ、ウチだけ倒し切れないとか……!?」

「それっ!」

 

――――――――――カサンドラの こうげき!

――――――――――アンデッドマンCに ダメージ!

 

 ダフネの援護をとカサンドラが『神聖のクリスタルロッド』で追撃を仕掛けるも、武器込みだとパーティー最弱の攻撃力では大して効いた様子もなく『アンデッドマン』は剣を振り上げる。

 攻撃力相応に機動力もないカサンドラに避けられる距離ではない。

 

「ひぃんっ!?」

 

――――――――――アンデッドマンCの こうげき!

――――――――――命は 攻撃を武器で はじいた!

 

 咄嗟に『アンデッドマン』とカサンドラの間に割り込んだ命が剣を『いなずまのやり』で弾く。

 そのまま弾いた反動を利用して攻撃に繋げる。

 

「えいやっ!」

 

――――――――――命の こうげき!

――――――――――アンデッドマンCに ダメージ!

――――――――――アンデッドマンCを たおした!

――――――――――アルスたちは 709ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――まもののむれは 魔石を 落としていった!

――――――――――メイジドラキーは レッドアイを 落としていった!

――――――――――ガチャコッコは ぎんのこうせきを 落としていった!

 

 命と入れ替わりで後衛の守りに回ったアルスがヴェルフと配置を交代して魔石とドロップアイテムを回収している間、助けてもらったカサンドラがまだ周辺を警戒している命に近づく。

 

「あ、ありがとうございます、命さん」

「いえ、お助けになれて良かったです」

 

 礼を伝えてくるカサンドラに、自分もパーティーの一員として力になれている実感を貰えてニコニコな命。

 

「このバカンドラ! 慣れないことをして――」

「ダフネさん、怒っている暇はありません! 新手が来ています!」

 

――――――――――どくろ大臣たちが あらわれた!

 

 例えそれがダフネを手助けする為だとしても治癒師が攻撃に回るなど言語道断。叱責しようとしたダフネを、背後からやってきた『どくろ大臣』の接近に気づいたベルが叫ぶ。

 

――――――――――どくろ大臣Aは なかまを よんだ!

――――――――――どくどくゾンビたちが あらわれた!

 

 こちらに気づいた『どくろ大臣』が持っている杖を振ると、地中から『どくどくゾンビ』が三体も這い出てきた。その間にモンスター集団への前衛とならんと後方にやってきたアルスが横に並んだの見て、ベルの頭の中で戦術が構築される。

 

「アルス!」

 

 ベルが名前を呼びながらモンスター達に向かって無手の右手を向けるとアルスはその意図を察した。

 

「ジバリア!」

「ギラ」

 

――――――――――ギラと ジバリアが まざりあい もえさかる 魔法陣を つくりだす!

――――――――――まもののむれの あしもとに 火炎陣を しかけた!

――――――――――まもののむれの 炎耐性と 土耐性が すこし さがった!

――――――――――ベルたちの 火炎陣が 発動!

――――――――――どくろ大臣Bに ダメージ!

――――――――――どくろ大臣Bは 杖の先から まふうじの光を はなった!

 

 火炎陣が発動してダメージを受けながら『どくろ大臣』が掲げた杖より怪しい霧が放たれ、他のメンバーには大して効果が無かったがアルスとリリルカに異変が起こった。

 

――――――――――アルスとリリルカは、呪文を ふうじられた!

 

 『どくろ大臣B』は最も的確に、このパーティーがされたら一番嫌なことをしてきた。

 感覚的に魔法が使えなくなったと察したリリルカは瞠目する。

 

「わっ!? リリが魔法を封じられたら足手纏いじゃないですか!?」

 

 魔導師だからと直接攻撃力は低いと思い込んでいるが、Lv.的に前衛職の命よりもリリルカの方が直接攻撃力は高い。戯れに行われた腕相撲で呆気なく負けた命にクリティカルヒットを与えながら慌てるリリルカ。

 ちなみに腕相撲の結果は、断トツNo.1のアルス、ベルに僅差でヴェルフが続き、ダフネ、リリルカ、カサンドラ、命という順位である。治癒師にも負けた命は一人泣いた。

 

「下がって、リリルカ! ヴェルフ、守りを!」

「おう!」

 

 自衛手段に乏しくなったリリルカを守るためにダフネの指示でヴェルフが下がるのと入れ替わるように命が前に出る。

 

「えいやっ!」

 

――――――――――命の こうげき!

――――――――――どくどくゾンビCに ダメージ!

 

 振り回した『いなずまのやり』はダメージを『どくどくゾンビ』を与えたが微々たるものに過ぎなかった。

 

「やっぱり私の攻撃力が低すぎる……!?」

 

 Lv.2成り立ての矜持は果たして何度叩き折られることか。

 命の後ろにいたアルスには魔法を封じられても放てる技が幾つもあった。

 

「覇王斬」

 

――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――ベルたちの 火炎陣が 発動!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――どくどくゾンビたちを たおした!

 

 モンスター達はアルスが放った『覇王斬』のダメージで足を動かしてしまい、『火炎陣』が発動して更なる追加ダメージを受けて『どくどくゾンビ』達が魔石と化した。

 辛うじて『どくろ大臣』達は持ち堪えたが、二連撃を受けたダメージは大きく直ぐには動けない。そこへ同じ『バタフライダガー』を抜いたダフネとベルが切り込んでいく。

 

「それっ!」

「やっ!」

 

――――――――――ダフネとベルの こうげき!

――――――――――どくろ大臣たちに ダメージ!

――――――――――どくろ大臣たちを たおした!

――――――――――アルスたちは 642ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――まもののむれは 魔石を 落としていった!

――――――――――どくろ大臣は まふうじの杖を 落としていった!

 

「ふぅ……戦闘終了、って感じかな」

 

 戦闘終了後、ドロップアイテムと魔石を回収し終えたベルが額の汗を拭いながら呟く。

 周囲の警戒を行っていたダフネはコクリと頷き、未だ感覚的に魔法が使えないと感じて心細そうなリリルカがアルスの傍に移動しているのを見る。

 

「ここは前後からモンスターが来る。場所を移動しよう」

 

 最大戦力のリリルカとアルスの魔法が使えないとなれば、全員に否はなくダフネの案内で正規ルートから外れた見晴らしの良い小道沿いに移動した。

 魔法が封じられても元気なアルスが定期的に迷宮の床や壁を傷つける。こうすることでダンジョンは地形の修復を優先させ、そのエリア内からモンスターが生まれなくなる。但し、既に活動しているモンスター相手には何の意味もないので、見張りを立てる必要はある。見張りはモンスターが来れば報告すればいいだけなので前衛後衛関係なく、今回はカサンドラが行っていた。

 

「さて、この機会だから装備の更新をしようぜ」

 

 『どくろ大臣』による魔法封じは時間経過で自然に解ける。その間、ただ休憩(レスト)するだけというのも味気ないと、ヴェルフが先の戦闘でドロップした『まふうじの杖』を取り出す。

 

「モンスターの癖に良い装備を使ってやがるぜ。これなら直ぐに使えるようになるだろう」

「まさか、リリが使うのですか?」

「両手杖を使うのはリリ助だけだろ」

「それは分かっているのですが……」

 

 今正に魔法を封じてくれた道具を自分に使わせようとしているということは、『いなずまの杖』よりも『まふうじの杖』の方が装備として質は高いのだろう。ヴェルフの鍛冶師としての目には信頼がおけるが、こういう情緒の無さには思うところがあるリリルカが複雑な目を向けている間に整備は終わってしまった。

 

「よし、これでいい。後、リリ助が魔法を封じられるとマズい事態になるから対魔法封じの効果がある『破封のネックレス』も作っておくか」

 

 心象の回復までセットで行うのだからヴェルフは性質が悪いと、『まふうじの杖』を受け取ってとても複雑そうなリリルカを見てダフネは思った。

 

「あ、宝箱発見」

「二個ありますね」

 

 ヴェルフがアルスから借りた『どうぐぶくろ』から『ふしぎな鍛冶台』を取り出して、トンカンやっている間にベルが通路の端に隠れるように置いてあった宝箱を二つ見つけた。

 命がコレは開けない一択だなと内心で思っていると、宝箱に近づいたベルが右手を向ける。

 

「インパス!」

 

――――――――――ベルは インパスを となえた!

――――――――――右の宝箱の中は 青く 光っている!

――――――――――左の宝箱の中は 赤く 光っている!

 

「よし! 右を開けよう!」

「ええっ!?」

 

 突如として宝箱内部から光が発せられたことに命が瞠目している間に、ベルは青い光を発した宝箱をあっさりと開けてしまった。

 

――――――――――なんと! ベルは アサシンダガーとブルーアイを 見つけた!

 

「ヴェルフ! この短剣は使って良いやつ?」

「ん? おお、『アサシンダガー』じゃないか。お前が使ってる『バタフライダガー』よりも良い武器だし、状態も良さそうだから装備を入れ替えても良いぞ」

 

 『破封のネックレス』だけに飽き足らず、他にも何やらトンカンやっているヴェルフに確認すると、色好い返事が返ってきたのでベルは『アサシンダガー』を持って思案する。

 

「………………ダフネさん、『アサシンダガー(コレ)』使います?」

「アンタが見つけたんだから、アンタが使えばいいよ」

「ん~、僕も迷ったんですけど、ダフネさんも攻撃力を気にしていたみたいだからどうかなと」

「いいの?」

「僕の今の主武器(メインウェポン)は『はやぶさの剣(コレ)』ですから」

「団長の指示なら従うよ」

「じゃあ、そういうことで」

 

 そっぽを向きながら『アサシンダガー』を受け取ったダフネが装備を入れ替えているのを、見張りをしていたカサンドラがニヨニヨしながら見ていた。

 

「バカンドラ! ちゃんと見張りをしなさい」

「はぁ~い」

 

 見咎められて怒られるも照れ隠しなのは明白だったのでカサンドラの返しは気楽な物だった。

 

「出来た!」

 

 皆の注目が外れたのを良いことに、一人黙々と鍛冶を行っていたヴェルフの周りには多種多様な武具が転がっていた。

 

「足りなかった『ブルーアイ』が手に入ったから命用の新たな武器、『プラチナのやり』だ! 後、『サンゴのかみかざり』からリリ助達と同じ『ぎんのかみかざり』に。次にアルス用に、『プラチナソード』『プラチナヘッド』『シルバーメイル』。俺も『カルサドラアックス』から『ムーンアックス』、盾も『ドラゴンシールド』、兜はアルスと同じく『プラチナヘッド』。鎧も同じ『シルバーメイル』に代えられるが、この階層では『ゾンビメイル』が有効だからこのままだな。ダフネも同じ『プラチナヘッド』に。カサンドラは悪いがこのままだな。最後にベルもいい加減『大盗賊のマント』がボロボロになったから『ぎんのむねあて』に。それと『バタフライマスク』から『大盗賊のターバン』に変更したし、はやぶさの剣も打ち直して攻撃力アップさせようぜ!」

 

 興奮から早口になったヴェルフに半ば奪われるように『はやぶさの剣』を取り上げられたベルは、代わりに押し付けられたように渡された武具に目を丸くする。

 

「えっと、ヴェルフ?」

「聞いてませんね、これは」

 

 リリルカが呆れた声を漏らす。

 ベルがリリルカの方を見ればアルスが寝袋に包まって寝ている。その横に座りながらリリルカが『どうぐぶくろ』から出したらしい『ブロンズナイフ』でアルスの代わりに壁や床に傷をつけている。

 

「ところで『プラチナブレード』も作ったんだが」

 

 そこへベルに打ち直した『はやぶさの剣+3』を押し付けたヴェルフが『プラチナソード』の両手剣版のような物を持って迫る。

 

「いきなり使い慣れていないのに、主武器を切り替えようとしないで下さい」

「それもそうだな」

 

 戦う鍛冶師として実戦で武器を切り替える難しさはヴェルフも分かっている。ちょっとテンションが上がり過ぎていたヴェルフも落ち着いてきた。

 

→魔法が使えるようになった気がする

  ハゲの気配を感じる

 

「あ、本当ですね」

 

 パチリと目を開けたアルスの言葉に実感としてリリルカも得たところで、ドシンドシンと大質量の足音が聞こえてきた。

 まだ音が遠かったので全員が順番に装備を更新する余裕があった。

 

――――――――――トロルが あらわれた!

 

 現れたのは、粗末な毛皮をまといトゲ付きの棍棒を持った恰幅の良い巨人のモンスター。但し、頭髪は無い。

 巨大なモンスターは大抵大きさに見合う耐久力を持つ。初手でリリルカは『敵守備力低下魔法(ルカニ)』を放たんと、『まふうじの杖』を振るう。

 

「ルカニ!」

 

――――――――――リリルカは ルカニを となえた!

――――――――――トロルの しゅびりょくを かなり さげた!

 

「やぁーっ!」

「えいやっ!」

 

――――――――――ダフネと命の こうげき!

――――――――――トロルに ダメージ!

 

「ちょっと効いたかな?」

「本当にちょっとなのが悲しいですが」

 

 守備力が下がっても体格相応に生命力(HP)が高いので、トロルはちょっと痛そうな顔をしただけで平気で行動している。

 

――――――――――トロルは わらいながら 武器を なめまわしている

 

「おらぁっ!」

 

――――――――――ヴェルフは かぶと割りを はなった!

――――――――――トロルに ダメージ!

 

 飛び上がっての脳天への一撃にグラリと体をフラつかせて効いた様子の『トロル』に向かってアルスが右手を向ける。

 

「ラリホー」

 

――――――――――アルスは ラリホーを となえた!

――――――――――トロルを ねむらせた!

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルは かえん斬りを はなった!

――――――――――トロルに ダメージ!

――――――――――トロルを たおした!

――――――――――アルスたちは 462ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――トロルは 魔石を 落としていった!

 

 最後はアルスが魔法で眠らせてからの、『ヒュプノスハント』のスキルがあるベルが最大のダメージを与えてトロルを沈めた。

 『はやぶさの剣+3』の『かえん斬り』によって6倍のダメージを与えられれば、如何な生命力(HP)自慢も耐えられない。

 

「良い調子だね。この感じで進めば直に18階層に上がれるだろう」

 

 『アサシンダガー』の使い心地を確かめたダフネが笑みを浮かべているのを見上げながら、ようやく心身共に安らげそうな階層が近づいている実感が湧いたリリルカが肩を回す。

 

「18階層に上がったら、お金がかかってもいいですから宿に泊まりたいです」

「その気持ち、良く分かりますリリ殿」

 

 実力的に不足していて緊張の連続だった命が同意していると、『トロル』がやってきた方向から新たなモンスターの集団が現れた。

 

――――――――――メタルスライムたちが あらわれた!

 

「さあ、油断せずに行こう!」

 

 ベルはまだ鞘に戻していなかった『はやぶさの剣+3』を握り直し、『メタルスライム』達に斬りかかって行った。

 

 

 

 

 

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