ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第58話 ところで、リリを口説いたって本当?

 

 

 

 

 

 空けて翌日。『ヴィリーの宿』で休んだベル・クラネルは、数日振りのベッドで爆睡しているヘスティアを残して護衛にヴェルフ・クロッゾを置いて仲間を連れ、再び18階層の東端を訪れた。

 

「おはようございます、フィンさん」

 

 前夜と同じく青水晶が林立する中にある大穴の前にいたフィン・ディムナに挨拶をする。

 ベルの挨拶にフィンが振り返ると、大穴の向こう側の青水晶の隙間隙間に昨日覗きに参加したロキファミリアの男性冒険者の何人かの姿が垣間見えた。

 

「やあ、ベル・クラネル。昨日はよく眠れたかい?」

「はい、お陰様で…………フィンさん達は、もしかして眠らずに?」

「流石にそれはないよ。僕もガレスと交代しているし、彼らも同じだよ」

 

 そう言ってフィンが視線を周囲に向ければ、左程交流が深いわけではないロキファミリアの男性冒険者達に向かってベルは軽く頭を下げる。

 

「今日には18階層を出立する。影響が出ない程度には収められたと思う」

 

 肩を竦めながら苦笑を浮かべるフィンに、問題を引き当ててしまったベルは夜中に活動せざるをえなくさせたことに申し訳なさを感じた。

 

「すみません。僕達が問題を起こしてしまって」

「本来ならヘスティファミリア(君達)には関係の無いことだったんだ。寧ろ僕達の事情に巻き込んでしまって申し訳ない。迷惑料として、このレシピを受け取ってくれ」

 

――――――――――アルスは レシピブック 『不思議な腕輪大集合』を 手に入れた!

――――――――――命のブレスレットの レシピを 覚えた!

――――――――――ごうけつのうでわの レシピを 覚えた!

――――――――――インテリのうでわの レシピを 覚えた!

――――――――――ようせいのうでわの レシピを 覚えた!

――――――――――いやしのうでわの レシピを 覚えた!

 

「そんな、助けてもらってこんな良い物を貰うなんて出来ません! ほら、アルスも返して!」

 

 止める間もなく『不思議な腕輪大集合』のレシピを横から受け取ってしまったアルスに注意し、高く上げたレシピを取り上げようとするが5㎝の身長差で僅かに届かない。

 

→貰える物は貰っとこうぜ

  No!  

 

 悪びれもせずに言い切ったアルスに、これは『ぬすむ』を使って取り上げるべきかとベルが決心しかけたところでフィンが口を開く。

 

「アルスの言う通り、貰っておいてくれ。闇派閥(イヴィルス)の手がかりを得られただけで十分にお釣りが出るくらいさ」

「フィンさんがそう言うなら……」

 

当のフィンからそう言われては受け取るしかない。ベルが諦めたのを見たアルスがレシピを素早く懐に入れる。

 

→ところで、手掛かりって?

 ところで、リリを口説いたって本当?

 

 そしてアルスはフィンの気が変わってレシピを取り上げられる前に話題の転換を図った。

 

「近くの壁で『門』を見つけたんだ」

「『門』? ダンジョンの中でですか?」

「ああ」

 

 壁に門となると、人為的に作られたのならばその向こうがあるとベルは考えた。

 

「でも、なんで『門』なんか。もしかして『門』の向こうに未開拓領域があるとか?」

 

 ベルの疑問にフィンは疲れたように首を振る。

 

「残念ながら『鍵』がかかっていて、『門』を開けることが出来ない」

 

 開けることが出来ないのならば破壊すればいいのではないかと蛮族的思考に陥っているベル。

 破壊手段として、アイズ・ヴァレンシュタインの魔法『エアリエル』や、剛力で有名なガレス・ランドロックならば力尽くで突破出来るはず。

 

「『門』はオリハルコンで出来ていて破壊不可能だ。『鍵』が無ければ『門』を使うことは出来ないのだろう。上手い仕掛けだよ」

 

 『オリハルコン』―――――不壊属性(デュランダル)特殊兵装(スペリオルズ)を作成する上で欠かせない素材となる最硬精製金属(マスター・インゴッド)。その強度はダンジョンで採掘される超硬金属(アダマンタイト)やメタルキングの上を行くものであり、紛れもなく世界最高位の金属だ。

 最硬金属(オリハルコン)が用いられている『扉』を破壊することは、Lv.6のアイズやガレスであっても不可能。これほどの『扉』がある時点で、先に何かがあると言っているようなものであるが『鍵』が無ければ開けられないのであればどうしようもない。

 

「他に何らかの手がかりもあるかもしれない。一度地上に戻ってから、装備を整えて改めて調査するよ。直に先鋒隊が出発するけど、君達はどうするんだい?」

 

 フィンの問い掛けに、ベルはティオネ・ヒリュテと話すダフネ・ラウロスや、リーネ・アルシェと並んで立つカサンドラ・イリオンと、レフィーヤ・ウィリディスと楽し気に話し込んでいるリリルカを見てから答える。尚、ティオナ・ヒリュテに逆正座をねだられているアルスは見ないものとした。

 

「上の大広間に階層主(ゴライアス)が出現していると聞いているので、僕達は少し遅れて出発します」

 

 18階層の上、17階層には『迷宮の孤王(モンスターレックス)』と呼称される、特定の階層にのみ出現する強力な固有モンスター『ゴライアス』がいる。その巨大さと強さは階層の中で最も強い階層主と目されるモンスターとも一線を隔したポテンシャルを持ち、ダンジョンで到達階層を増やしていく上での最難関とも言われていた。

 

「なにか押し付けるようで、すみません」

「構わないさ。これも大手の宿命だよ」

 

 頭を下げるベルに、大手のファミリアはこういったダンジョンでの問題を解決する役回りを担うのだと、フィンは肩を竦めながらおどける。

 

「リヴィラの街の者達にも急かされている。僕達はそろそろ出るけど、君達の冒険に幸有らんことを祈っているよ」

「ありがとうございました。皆さんもお気をつけて」

 

 ベルとフィンが握手を交わして別れる。撤収したロキファミリアの面々は野営地のメンバーと合流して、そのまま18階層を後にするのだそうだ。野営地には先によって別れを告げていたので見送るだけだった。

 

「話は終わった?」

 

 ロキファミリアの面々の背中を見えなくなるまで見送っているベルにダフネが話しかけた。

 

「はい。少し申し訳ないですね。ゴライアス討伐を押し付けるみたいで」

 

 『ゴライアス』は倒されてから次に出現するまでの期間は二週間程度で、つい先日に再出現したことをリヴィラの街の住人達が噂していたことから、一般人と変わらない肉体強度しかないヘスティアとヘルメスを抱えての戦闘は危険と判断して、ロキファミリアが倒すと目して意図的に出発時刻をずらした。

 

「遠征で消耗していても、それでもウチらよりかは全然余裕を持っているから心配するだけ無駄だって」

「分かっていますけど、気持ちの問題で」

 

 言ったベルの近くで、リリルカが見えなくなってもロキファミリアが去った方向を見ているのを見たダフネが片眉を上げる。

 

「リリルカはロキファミリアに魔法の師匠がいるんだって? ホント、アンタらには驚かされてばっかりだ」

 

 一応、秘密にしていることなので話題に上げられたリリルカも顔を上げて困った顔をする。

 リリルカと似た立場のベルは苦笑して話題の転換を図る。

 

「流石に神様もそろそろ起きましたかね」

「ベッドが恋しい気持ちは分からないでもないけどね。ダンジョンに慣れていないなら、ちゃんとベッドで寝たらそりゃあ熟睡するに決まってる」

「起きてなかったら僕が抱えて行きますよ」

「駄目ですよ、ベル様。タケミカヅチファミリアやヘルメスファミリアの方々も一緒なのです。主神の情けない姿を晒すのはファミリアの面子に関わります」

 

 外聞を気にする副団長と、ヘスティアのことを第一とする団長の両方を聞いた実質的なNo.3になっているダフネは顎に手を当てて考える。

 

「後続隊が出た後でも起きてなかったらベルの『覚醒魔法(ザメハ)』で起こせば?」

 

 ベルが使える魔法に、『一つに味方全員の【眠り】状態を回復する』という効果があったのを思い出して提案した。

 

「あれって普通の睡眠でも使えるのかな?」

 

 毒などと違って、眠りは一日のサイクルで必ず行う行動の一つだが、果たしてその状態が【眠り】状態と看做されるのかベルには疑問だった。

 

「どうでしょうか……。今後、ダンジョン内で使う機会があるかもしれないので、ヘスティア様に実験台になってもらいましょう」

「うわぁ……」

 

 あっさりと主神を実験台にしてしまおうと提案するリリルカにドン引きするカサンドラ。

 

「なんですか、カサンドラ様?」

「な、なんでもないです!」

「?」

 

 ドン引きされている理由が分からない様子のリリルカに、カサンドラが全力で誤魔化していると後ろの方から近づく気配にベルが振り返る。

 

「お~い、ベル・クラネル!」

「ヴィリーさん?」

 

 向かって来ていたのは中肉中背でぼさぼさの髪、左右の頬には赤の線で塗料化粧をした獣人ヴィリー。昨夜一晩泊まった宿の主人ではあるが18階層で暮らしているのだから、彼もまたLv.2以上である。

 武装した姿にベルが僅かに警戒を滲ませていると、ヴィリーは敵意はないと両手を上げながら近づき、ゆっくりと懐に手を入れて手紙を取り出した。

 

「お前当てに手紙だ」

「僕に? ヴェルフが宿にいるから預けておいてくれたらよかったのに」

 

 差し出された手紙を受け取ったベルに、ヴィリーはあまり手入れがされていないぼさぼさの髪を掻く。

 

「何時の間にか長台(カウンター)に、お前に至急渡せっていうメモと金が一緒に置いてあってよ。普段ならこんなことしないんだが金払いが良かったからな」

 

 だから糸で括られた巻いた羊皮紙の出し主は分からないと告げつつ、金が入っているであろう袋を手で弄ぶヴィリーがニヤリと笑う。

 

「確かに渡したぜ。俺はこの金で一杯引っかけてくるわ」

「ありがとうございます。でも、誰だろう? 僕に手紙なんて」

「そうですね。そんな急ぎなら直接話に来ればいいのに」

 

 スキップしながら去って行くヴィリーの背中を見送りつつ、受け取った手紙にベルが首を傾げる。

 18階層には知り合いは身近にしかおらず、別段手紙を送ってくるような相手はいないはずだったからだ。

 

「案外、ベルのファンかもね。奥手で、手紙で気持ちを伝えたいとか。ほらほら、さっさと開けちゃいな。ウチらは見ないから」

「とか言いつつ、ベル様の背後に回ろうとしないで下さい。カサンドラ様、引き離すのを手伝って下さい」

「は、はい」

 

 ベルの背後に回ろうしているダフネを、自分だけでは体格差で負けてしまうのでカサンドラの手を借りてリリルカが阻止する。

 

「ははは、えっと、なんだろう――――」

 

 押し問答をしている二人と板挟みになっているカサンドラを見つつ、ベルが糸を解いて開くと挟まっていた小物が現れ、羊皮紙に書かれていた内容に目を見開く。

 

『   白兎の脚(ラビット・フット)

 女神は預かった。無事に返してほしければ、直ぐに一人で中央樹の真東、一本水晶まで来い』

 

 羊皮紙に挟まれていた小物は青い花弁を彷彿させる飾り付けのリボンで、まだリリルカと出会う前にベルとアルスが買ってヘスティアに贈った髪飾りの片割れだった。

 

「っ!?」

 

 手紙を読んでいくにつれベルの顔色が悪くなっていき、最後まで読み切って沈黙する。

 

「ベルさん、どうしたんですか?」

「…………なんでもないですよ。フィンさんに伝え忘れたことあるので、みんなは先に宿で戻って待っててほしい。僕も直ぐに行くから」

 

 何事かと心配したカサンドラが二人から離れてきたので、羊皮紙を握り潰しリボンを隠したベルは誤魔化した。

 

「? 分かりました」

「じゃあ、後で!」

 

 一番与し易いカサンドラの了承を得たベルが一目散に走り去る。

 パーティー内で図抜けた『すばやさ』を持つベルの足の速さは圧倒的で、森の中に入った姿があっという間に覆い隠されたのを見届けてからリリルカと押し問答をしていたダフネが口を開く。

 

「なんか様子がおかしかったわね」

「ええ、後を追いますか?」

 

 一発でベルの誤魔化しを見破り、リリルカから尋ねられたダフネは一瞬考えて首を横に振る。

 

「止めとく。ベル相手だと確実に気づかれるし、あの足に追いつくのはウチらじゃ無理」

「追いつけるのは、それこそアルス様ぐらいですからね。リリ達は宿に戻りますが、アルス様はどうしますか?」

 

 困った顔のリリルカの問い掛けに、逆正座で鼻提灯を作っていたアルスは目をパチリと開けた。

 後を追いたい気持ちをぐっと堪えているリリルカを見て選択する。

 

→ベルを追いかける

  宿に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 18階層の東端から中央の一本水晶までには森が広がっており、大きすぎる根による段差やデコボコとした地面もあってベルの足を持ってしても短時間で走破というわけにはいかなかった。

 それでもヘスティアを誘拐した犯人が瞠目するほどの速さで一本水晶まで辿り着いたベル。

 殆ど息を乱していないベルが見たのは、小さめの水晶の一つに縄で拘束されたヘスティアの姿だった。

 

「ベル君!」

「神様!」

 

 拘束されているヘスティアに目立った傷は見られない。

 一刻も早くヘスティアに走り寄って縄を解く為に疾走の足を止めなかったベルは周辺に人の影が見られないことに油断した。

 

「来ちゃ駄目だ、ベル君!」

 

 ヘスティアが制止の声を上げ、ベルが直上に現れた気配に気づいたのはほぼ同時だった。

 

――――――――――モルドの こうげき!

――――――――――ベルに ダメージ!

 

 咄嗟のことで反応が遅れたベルは回避行動を取ったが完全には避け切れず、何か大きな物をぶつけられたような衝撃が襲った。

 

「うっ!? なんだ!?」

 

 ヴェルフに『アラクラトロ・巨靫蔓(ヴェネンテス)』の溶解液で損傷した『プリンスコート』を作り直してもらったお蔭でダメージは大きくはない。それよりも振り返っても攻撃を仕掛けてきた者の姿が見えないことに混乱していた。

 

「今の攻撃で倒れねぇか。流石はLv.4、イカれた世界最速兎(レコードホルダー)様だ」

 

 どこからともなく聞こえてくる濁声にベルが周囲を見回すも姿は見えない。

 

「誰だ!」

「答えるわけねぇだろうが!」

 

――――――――――モルドの こうげき!

――――――――――ベルに ダメージ!

 

「うっ!?」

 

 またしても何者かの攻撃を受けたベルはヘスティアから離れた方向へと飛ばされる。

 

(地面を擦る足音があった。気配もあるし、確かに存在しているけど何も見えない。姿を隠す魔法か魔道具を使ってる?)

 

 吹き飛ばされたベルは片膝をついて立ち上がり、周囲に視線を走らせるもやはり襲撃者の姿は見えない。

 

「神様まで攫って、何の目的でこんなことを」

世界最速兎(レコードホルダー)様は随分と呑気でいらっしゃる。恨まれる自分の立場ってやつを分かっちゃいねぇ」

 

 ベルのことを知っている言葉と声。

 

(この声……何処かで聞いたことがある……?)

 

 胸の裡で湧き起こる既視感に記憶を探る為に沈黙するベル。

 

「安心しろよ。女神様には何もしちゃいねぇよ。神を傷つけるなんて禁忌。しでかした後が怖ぇ」

「言っていることとやっていることが矛盾していますよ」

「テメェを誘き寄せる餌として、攫って向こうの水晶に縛り付けてるだけだ。なにも矛盾なんてしてねぇよ」

 

 今の言葉でヘスティアの身の安全は確認できたので、ベルは別の質問を口にする。

 

「僕に用があるなら、最初から僕だけを呼び出せば良かったでしょう。神様を巻き込む必要なんてなかったはずだ!」

「これからやることにテメェのお仲間まで参加されたら台無しだからな」

 

 ベルが敵意を剥き出しにして襲撃者を威圧する。それを受けても襲撃者は臆することなく、寧ろ余裕の声色で受け答えをしていた。

 

「女神様にも見せてやろうぜ! テメェを嬲り殺しにする見世物をよ!」

 

――――――――――ガイルの こうげき!

――――――――――ベルに ダメージ!

 

「うっ!? 声とは違う方向からの攻撃!?」

 

 声が聞こえている方向と相対しているのに、今の攻撃は背後からだった。

 

「考え込んでいる暇はないぜ!」

 

――――――――――スコットの こうげき!

――――――――――ベルに ダメージ!

 

「うっ!?」

 

 今度は真横からの攻撃で、しかも鋭利な刃物だった。

 

「オラオラ! 足を止めてると、体に風穴が増えるぞ!」

 

――――――――――モルドの こうげき!

――――――――――ベルに ダメージ!

 

「うっ!?」

 

 死角からの攻撃で体勢を崩した所に強力な一撃が入る。

 

「クハハハハハハハ! 無様だな、世界最速兎(レコードホルダー)!」

 

 男の下卑た笑いが神経を逆なでする。今すぐ殴りつけてやりたい衝動に駆られるが、何とか抑え込み、冷静になるべく走りながら深呼吸を繰り返す。

 冷えた頭で思考するベルは反撃に転じるべく、痛みを堪えながら敵の居場所を探して走り出した。

 

 

 

 

 






原作ではタイマンの上に相手をする時は拳だけだったモルド・ラトロー。
多人数の上に武器まで使ってるのは相手のベルがLv.4だから仕方ないね。

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