ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第59話 さよなら、来世で期待しよう、斬!

 

 

 

 一本水晶の近くで行われる一方的な戦い。

 この一件を引き起こした、ある意味で黒幕であるヘルメスは高い木の枝の上で枝葉の影に隠れながら眼下の光景を見下ろす。

 

「悪趣味ですね、ヘルメス様。面白いですか、こんなものを見て」

 

 そしてそんなヘルメスに非難と嫌悪の視線を送るアスフィ・アル・アンドロメダは美麗な眉を顰めていた。

 

「きついな、アスフィ」

「わざわざ私の兜を三つ(・・)も貸し出して、あんな冒険者達をけしかけるなどベル・クラネルに何か恨みでも無ければするはずがありません」

「恨みなんてないさ。寧ろ期待している」

 

 思惑が読めず眉間の皺を深くしているアスフィにヘルメスは胡散臭い笑みを向ける。

 

「常識を覆すほどの成長速度は、停滞している者にとっては嫉妬の元にしかならない。ああいう悪意を向けられるのは時間の問題だ。早い内に知っておいて損はない。ま、娯楽が入っているのは否定しないよ」

「…………もし、ここで彼の心が折れてしまったら?」

「器じゃなかったってことかな。次はアルス君を試すかね」

 

→試される方がこのことを知っちゃったら?

 試される前に後ろからグサッとやっちゃおう

 

「そりゃあ事前に知られてたら何の意味も……」

 

 アスフィではない第三者の声が自然と会話に入ってきたので返答しかけたところで、ヘルメスは途中で口を閉じて後ろを振り返った。背後の木の同じくらいの高さの枝に、話題に上げたばかりの当人が何食わぬ顔でそこにいた。

 

「……………何時からいたの、アルス君?」

「ヘルメス様が、『期待している』と言った頃ぐらいからですね」

 

 聞いていないアスフィが答えたことで、彼女がアルスの接近に気づいていたのにわざとヘルメスに伝えなかったのは明白だった。

 眷属からの裏切りに、ヘルメスは困ったように帽子を取って髪を掻き上げる。

 

「不味いこと聞かれちゃったなぁ。救援行っちゃう?」

「仲間なのですから当然でしょう。双子ともなれば行かない理由はありません」

「そうなると俺達の関与がバレちゃうな。黙っててくれない?」

 

→俺達が持っていないレシピを一杯くれたら黙ろう

  さよなら、来世で期待しよう、斬!

 

「取引成立だ。しかし、本当に行かなくていいのかい?」

 

→必要ない。ベルなら一人で潜り抜けられる

  必要ない。そろそろ残した目印を辿って仲間が来る

 

「へぇ、信頼してるんだね」

 

 アルスも加えた三人が見下ろす中、眼下の戦闘の状況は変わりつつあった。

 

――――――――――モルドの こうげき!

――――――――――ベルは 攻撃を武器で はじいた!

 

 不可視であるはずのモルドの攻撃が、ベルが振るった『はやぶさの剣+3』によって軌道を変えられた。

 

(なんだ…………防がれた? どういうこった? 偶然か?)

 

 ベルが装備している『プリンスコート』は既にボロボロで、傷だらけの体になったのだから溜飲も下がり、そろそろ退却時だと考えていた中での攻防だった。

 偶々、動いた方向が回避に繋がったのとは違う。明確に武器を武器で弾くという行動。見えているのならばともかく、武器まで不可視になっているモルドの攻撃を意図的に弾くなど信じられず、ただの偶然を疑った。

 

「お前達、卑怯だぞ! 姿を隠して襲うなんて! ボクのことはいいから逃げるんだ、ベル君!」

「神様、大丈夫です」

 

 今の攻防で何がしかの確信を得たのか、ギャーギャーと襲撃者に喚いていたヘスティアに向けてベルは簡潔に告げる。

 

「大体分かりました。姿を隠しているけど、いるのは三人。武器は戦斧、大楯、短剣っていうところでしょう」

 

 モルド・ラトローは戦斧、ガイル・インディアは大楯、スコット・オールズの武器は短剣。

 

「ほ、法螺吹いてんじゃねぇ!」

 

 見えているはずがないのに、正確に言い当てたベルにモルドは平静を装うとするが動揺が口に出た。

 

「気配と靴音、視線と空気の流れを感じれば、姿が見えないぐらいで戸惑いはしません」

 

――――――――――ガイルの こうげき!

――――――――――ベルは ひらりと みをかわした!

 

「こんな風にね――――ジバリーナ」

 

――――――――――ベルは ジバリーナを となえた!

――――――――――モルドたちの足元に ジバリーナを しかけた!

 

 大きな質量が向かってきたのを躱しざま、気取られないように『地雷魔法(ジバリーナ)』を仕掛けておく。

 敢えて、もう一歩大きくステップしてベルの主観で最も敵意を向けてくるモルドのいる方向へと向かって続ける。

 

「引いて下さい。今なら見逃します」

 

 ブラフとするにはベルの目は不可視であるモルドの方をしっかりと見ていた。

 

「ぐ、偶然だ! 偶々、動いたら避けれただけだ!」

「…………仕方ありませんね。ここからは力で押し通します」

 

 右手に『はやぶさの剣+3』、左手に『ソードブレイカー』を持ったベルはLv.2のモルド達には目にも止まらぬ速さで動いた――――スコットに向けて。

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルは ミラクルソードを はなった!

――――――――――スコットに ダメージ!

――――――――――ベルの キズが かいふくした!

――――――――――スコットを たおした!

 

 今まで蓄積したダメージを回復しながら、敵にダメージを与えられる『技能』。

 Lv.4でも中位のステータスを持つベルの『はやぶさの剣+3』による二連撃と、『ソードブレイカー』の一撃と合わせた三撃を受け、防御力が高くない上にモルドに向かうはずと油断していたスコットに耐えられる攻撃ではなかった。

 倒れたスコットの頭から『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』が零れ落ちる。

 

「ダメージを受けたから透明化が解けた? 違う。あの兜か」

 

 『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』が外れたと同時に現れたスコットの姿に、ベルは不可視の理由に辿り着く。

 

「テメェ、スコットを――おっ!?」

 

――――――――――ベルの ジバリーナが 発動!

 

「ぐがぁっ!?」

 

――――――――――モルドたちに ダメージ!

 

 仲間を倒されたことに激昂して一歩を踏み出したことで『地雷魔法(ジバリーナ)』が発動し、足元の地面から突き出した尖った巨大な岩に弾き飛ばされ、ベルが先に行動する時間を作り出した。

 

「透明化の理由さえ分かれば!」

 

――――――――――ベルの ぬすむ!

――――――――――ベルは モルドから『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を ぬすみとった!

――――――――――ベルの ぬすむ!

――――――――――ベルは ガイルから『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を ぬすみとった!

 

 手加減されたとはいえ、『地雷魔法(ジバリーナ)』をまともに食らって動きを取れないモルドとガイルから『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を盗み出し、不可視を破った。

 

「く、クソガキがぁあああああああっ…………!!」

「モルド! 透明化が破られたらLv差のある俺らじゃ勝ち目は――」

 

 有利な立場で集団リンチを行える優位性(アドバンテージ)を失った。既にスコットも戦闘不能になっては、蹂躙を受けるのは自分達であると冷静なガイルが怒りを露わにするモルドに撤退を促そうとするが既に遅かった。

 

「ベル!」

 

 必死の形相のヴェルフを先頭に、ヘスティアファミリアパーティーが向かってきた。

 

「みんな……」

「無事か! すまねぇ、俺がいながら!」

 

 即座にモルド達の間に盾役として入ったヴェルフが背後のベルに向かって全力で謝る。

 

「うん、僕も神様も無事だよ」

「大丈夫ですか、ヘスティア様」

「あ、ああ、ボクは縛られてただけで傷一つない。ベル君が」

 

 ダフネが警戒しながらリリルカがヘスティアの縄を解いている間に、ベルの後ろに移動したカサンドラが刻み付けられた傷を見て『神聖のクリスタルロッド』を強く握る。

 

「ベルさんの傷を治します。一度は拒みし天の光。浅ましき我が身を救う慈悲の腕。届かぬ我が言の葉の代わりに、哀れな輩を救え。陽光よ、願わくば破滅を退けよ『ソールライト』」

 

――――――――――カサンドラは ソールライトを となえた!

――――――――――ベルの キズが かいふくした!

 

 治療を受けているベルに今すぐにでも駆け寄りたそうなヘスティアをリリルカが抑えている間に、透明化が解かれたことで人相が露わになったモルド達にダフネはそれはそれは怖い顔になった。

 

「アンタら、豊穣の女主人にいた冒険者だね。他所の神様を拉致して、うちの団長をリンチなんてイイ度胸してるじゃないか」

「本当です。これだけ虚仮にされたら、倍返しをしなければリリも腹の虫の収まりがつきません」

「何時もなら止め役だが、今回ばかりは俺も同感だ。ただで帰れると思うなよ、お前ら」

 

 ベルの治療が終わってホッと一息ついたリリルカが持つ『せいれいの杖』が無意識に発せられる魔力でボンヤリと光り、自身を欺いて主神を拉致して弟分をリンチされたヴェルフなど激怒の相でモルド達を睨みつける。

 仲間想いな眷属達に嬉しい思いはあれど、周りが激昂し過ぎて逆にヘスティアの方が冷静になってしまった。

 

「君達も煽るのは止めようね? ボクも無事なんだ。無駄な喧嘩は止めて、早く地上に戻ろう」

 

 自身の行動を無駄と言われたモルドの神経を無意識に苛立せたヘスティアの言葉にベルも追従する。

 

「神様の言う通りだ、みんな。この人達のことは放っておこう」

「ベル様!?」

 

 これだけのことをされて見逃すのかと、リリルカが信じられない思いでベルを見る。

 

「もうこの人達と関わり合いたくない。だから、さっさと行こう。いるんだろ、アルス! 帰るよ!」

 

 モルド達のことは眼中にないのだと言外に言い捨て、ベルは背後を振り返ってどこかに隠れているアルスを呼んだ。

 ベルの呼び掛けに応じ、木の枝から飛び降りたアルスがガチャリと『シルバーメイル』の音を立てながら着地する。

 

「アルス様…………目印だけ残して、どこにいるかと思ったら」

 

 ここまでリリルカ達が早く駆けつけられたのは、アルスが道中に目印をところどころに残しておいてくれたお蔭であるが、姿を隠していた意図が掴めない。

 

「大分前から隠れていたよ。一人だけあれだけデカい気配を発しておいて分からないわけがない。まあ、アルスがいると分かったから僕も冷静になれたけど、助けてくれても良かったんじゃない?」

 

→ベルなら切り抜けられると分かっていたから

  助けが必要だったか?

 

「また卑怯な言い方を」

 

 まさかやられているのを高みの見物していたのかという空気は、信頼していたという言葉に塗り潰される。

 アルスを非難をする気が無くなったベルが『シルバーメイル』の肩を軽く押したところで、大分遅れてタケミカヅチファミリアの三人が大きく息を乱してやってきた。

 

「…………俺達の出番はなかったか」

「遅かったな、デカ男」

 

 カシマ・桜花の呟きにヴェルフが皮肉気に返す。

 

「お前達の足が速すぎるんだ」

 

 乱れた息を整えている桜花は顔を上げるのも辛そうにしながらも、途中で疾走するベルを見つけて気になって後を追うも、後ろからあっという間に駆け抜けていったアルスやヴェルフ達とのLv.差を痛感する。

 団長として打ちのめされている桜花とは違って、少しの間でも一緒に冒険したヤマト・命は純粋にベル達が無事であることを純粋に安堵していた。

 

「ベル殿とヘスティア様が無事で良かったです」

「タケミカヅチファミリアのみんなも、心配をかけてすみません。助けに来てくれてありがとうございます」

 

 結果は伴わないにしても助けに来てくれた事実だけで十分だとベルが命達に笑顔を向けたところで、完全に蚊帳の外に置かれていたモルドが激発する。

 

「俺達を無視してんじゃねぇえええええええっ!!」

 

 両腕を地面に叩きつけたモルドの怒号が辺りに響き渡る。

 

「なんなんだお前らは! どれだけ俺達を虚仮にすりゃあ気が済むってんだ!」

 

 自分達を無視して話し出し、モルドは苛立ちも露わに怒鳴った。

 

「五月蠅いですね。ベル様が見逃すと言っているのです。この期に及んで喚くのは見苦しいですよ」

「リリ助の言う通りだ。消えねぇんなら俺がぶっ飛ばすぞ。俺を欺いてヘスティア様を攫ったことを許すつもりはないんだからな」

「と、止めなくていいの?」

「放っておけばいいのよ。向かってくるなら自業自得でしょ」

 

 ヘスティアを攫ったモルド達と、それを助けに来たヴェルフ達は完全に敵対関係となるのが自然。

 争いが避けられるなら避けた方が良いと思うカサンドラが、リリルカとヴェルフよりは冷静そうなダフネに尋ねるも、ベル一人でお釣りが来そうな相手が向かってきたところで大した障害にならない。

 取るに足らないと言われたに等しいモルドがプライドを傷つけられたと思っても仕方のない言動。

 

「ゆ、許さねぇ……! こうなったら死なば諸共だ!」

 

 モルドが近くの茂みに駆け寄り、 何か(・・)が入った大きな袋を取り出した。

 

「お、おい、モルド!? それは『ばくだんいし』が入った――」

「全員死んじまえぇええええええええええええええええええええ!!」

 

 9階層にいる『かさくれネズミ』のドロップアイテム『ばくだんいし』。

 複数纏めて爆発させれば、この一帯を吹き飛ばしてしかねない劇物に強い衝撃を与えんと、袋を地面に叩きつけようとしたモルドの動きに誰も止めるのが間に合わない。

 

「――――止めるんだ」

 

 荘厳な声が響いた。それは音として空気を震わせているにも拘らず、人々の心に直接沁み通った。

 声を放ったのはヘスティア。

 神威を発して圧倒的な威厳を備えたその姿は、常人に直視することすら許さない。人知を超越した水準にある凄まじい神威が、その場の殆どの者を打ちのめし跪かせた。こっそりと『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を回収して『どうぐぶくろ』に入れているアルスを除けば、ベル達ですらも頭を垂れることしか出来なくなる。

 

「袋を、置くんだ。人の命が呆気なく失われるとしても、そんなに容易く捨てていいものじゃない」

 

 神威に晒されては神という存在の偉大さを誰もが認めざるをえない。それほどヘスティアが齎す圧力は強く、気高く、超越的なのだ。その威光は落雷のようにその場にいた全ての者を打ち据え、歓喜とも畏怖ともつかぬ衝撃で貫いていく。

 

「ぐっ!? 神の指示だろうが俺の命を何に使おうが俺の勝手だ!」

 

 一時の激情から冷めたモルドは叫びつつも袋を下ろした。

 そして全てが幻であったかの如く、あれほどの神威が顕現したことが信じられないほど静寂の中にモルドの怒声が響き渡る。

 

「どうしてそこまで強情になる? 君は自分が大切じゃないのかい?」

「大切だとも! だからこそ、お前達を許せねぇ。認めるわけにはいかねぇんだ!」

 

 神威を消して悲し気に目を伏せたヘスティアの言葉を受けても、血走った目でベル達を睨みつけるモルドは叫ぶ。

 

「どうしてだ! なんでお前達だけそんなに強くなれる!? 俺達とお前達、一体何が違うってんだ!」

 

 自分達とベル達の何が違うのか、神様に愛されているからなのか。それとも生まれの違いか、培ってきた環境の違いなのか。

 

「俺達はン年も前から中層で燻ってきた! そんな中、ヘスティアファミリア(お前ら)俺達(Lv.2)をあっさりと超えていきやがった…………挙句、人質を取って魔道具(ハデス・ヘッド)まで使って襲ったってのに、責めるどころか見逃すたぁ!? これじゃあ俺達は道化でイイ笑い者だろうがようぉ!」

 

 何故なんだ、どうしてなんだとブツブツと呟き続けるモルドは目を血走らせる。

 納得できない、納得できるわけがない。自分達が圧倒的に劣っていることを証明されるようなことを受け入れられるはずがない。

 

「ふざけんじゃねぇっ! 俺らの苦労は何だったんだ!? どうせお前()も道化な俺達(Lv.2)を見下してやがったんだろう!?」

「ボクは見下したりしない」

「信じられるか! 違うってんなら、俺達にもアイツらと同じ強さを与えてみせろ!」

「それは出来ない。ボクが望んでベル君達が強くなったわけじゃないから」

 

 アルスに目覚めたスキルも、ベル達に連鎖したことも、全てヘスティアの掌の外の出来事なのだから、モルドの望みは叶えられないときっぱりと言った。

 

「仮にボクが強さを与えられるとしても、強くなった君達は何を為す?」

「何を、だと?」

 

 モルドにとっては予想外な静かな問いに意表を突かれたような顔をする。

 

「断言してもいい。強さだけを求めた君は、やがてその強さに驕り、破滅的な未来に至るだろう」

「はっ、神お得意の未来を見通す目ってか。じゃあ、お前達はその強さで何を為すってんだ! どうせ自分達だけ得をして、良い思いをしたいだけ――」

 

→黒竜を討つ

  ハーレムを作る為

 

「は?」

 

 黒竜を討つと宣言してみせたアルスにモルド達は唖然とした顔を浮かべる。

 

→だから、黒竜を討つと言った

  間違えた。ハーレムを作る為だった。

 

 聞き返したわけではないモルドに、繰り返し放ったアルスの言葉にその場にいた全員が言葉を失った。

 

「え?」

「黒竜を……討つ……だって!?」

 

 黒竜を討つこと。それはこのオラリオにいる冒険者なら誰でも知っていることだ。かつてオラリオに君臨していたゼウスファミリアとヘラファミリアが成し遂げられなかった偉業である。

 オラリオの秩序を守り続けてきた嘗ての最大派閥が出来なかったこと。新興のヘスティアファミリアが達成する。それは有り得ないと言い切れるはずなのに、彼らの進化とも呼ぶべき成長速度がもしやと思わせる。

 

「そう、だね。ファミリアとしての目標、ずっと決められずにいたけど、僕達にスキルが目覚めたのはもしかしたらその為なのかも知れないと考えればピッタリかも」

 

 ベルもアルスの意見に同意する。リリルカやヴェルフもどこか腑に落ちたような表情をしていた。

 

「う、嘘だろ。お前ら、冗談を言ってるんだよな?」

「冗談を言っているように聞こえるかい?」

 

 冗談であって欲しいというモルドの願望を、ヘスティアは逆に問い返した。

 モルドが発するのは敗北感に塗れた呻きだけだった。

 

「…………俺の負けだ。好きにしてくれ」

 

 敗北を認め、モルドは戦斧と『ばくだんいし』が入っていた袋を地面に置いた。

 

――――――――――モルドたちを たおした!

――――――――――アルスたちは 980ポイントの経験値を かくとく!

 

「これで、もう終わりです。僕らは帰り――」

 

 言葉の途中で突如として地面が揺れた。

 

「えっ?」

 

 足元がグラつく。いや、階層自体が揺れていた。

 

「じ、地震?」

「いえ、これは――」

「ダンジョンが、震えてるのか?」

 

 千草、命、桜花が足元と樹上の葉が揺れているのを見た。

 

「おい、あれは何だ?」

 

 そして空を見上げたヴェルフが呆然と呟いた。

 階層天井部を覆っているクリスタルが音を立てて呻き、バキリと大きな破裂音が走った。

 

「亀裂……!? まさかモンスター!?」

「ありえません、ここはダンジョンが生まれない安全階層(セーフティポイント)ですよ!?」

 

 その現象はダンジョンでモンスターが出現する様子と良く似ていた。

 ダフネの言葉をリリルカが否定する。

 

「おいおい、まさかボクの所為だって言うのかよ。冗談だろ? たったあれっぽちの神威でバレた……!?」

 

 亀裂が全体に広がり、砕けたクリスタルの中から黒色の巨大な人型モンスターが落ちてきた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ』

 

――――――――――漆黒のゴライアスが あらわれた!

 

 

 

 

 




ベル達がLv.4と原作よりかっ飛んでいるのでモルドの劣等感が爆発。それが一人だけなら諦めがつくかもしれないけど複数人だと倍満。

尚、モルドが爆発している間にアルスがこっそりと『漆黒兜(ハデス・ヘッド)』を回収しています。
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