ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

60 / 88
第60話 ヴェルフ、ゴライアスを任せる

 

 

 

 

 

 天井のクリスタルを砕きながら現れ、18階層の地に落ちた『漆黒のゴライアス』を見遣ったヘルメスの目がスッと細まる。

 

「やっぱり階層主か。しかも黒い…………これはヘスティアだけの所為じゃない」

「ヘルメス様、今度は何をやらかしたんですか!?」

 

 眷属でありながらアスフィ・アル・アンドロメダは、ヘルメスが何かをやった結果として『漆黒のゴライアス』が現れたのだと決めつけ、さっさと吐くようにと詰め寄った。

 

「流石に俺が小細工を弄しても、あんなことは出来ないって」

 

 ヘスティアに神威を発しさせてしまった遠因ではあるが、直接的に階層主を出現させるような小細工を弄してはいないとアスフィに伝える。 

 尚も疑いの眼差しを向けてくるアスフィに、ヘルメスは心外だとポーズする。

 

「では、状況を説明して下さい! 今、何が起きているのですか!?」

「ダンジョンの暴走かな。今までにないほど神経質になって俺達に感付いた。ヘスティアの神威に反応して、神達を抹殺する為に送られた刺客だろう。ダンジョンは憎んでいるのさ。こんな地下に閉じ込めている神々(俺達)をね」

 

 簡潔に事情を説明したヘルメスは、動き出した『漆黒のゴライアス』を見て思考を走らせる。

 

「それよりアスフィ、急いでリヴィラの街に応援を呼んで来い」

「応援? まさかアレと戦うんですか!? この階層から避難するのではなく?」

「あれを見ろ」

 

 次いで指差したのは、ロキファミリアが野営地を張っていた17階層へと出入口。今、そこはまるで計ったように『漆黒のゴライアス』が落ちた衝撃で起きた崩落によって完全に塞がっている。

 

「崩落で階層移動の通路は塞がれた。恐らくこの様子では19階層への道も同じだろう。このタイミングの良さ、ダンジョンは誰一人として逃がすつもりはなさそうだ」

 

 淡々と事実を述べるヘルメスに、アスフィは喉の奥で悲鳴のような声をあげる。

 

「既に退路は断たれた。事実上、この階層に閉じ込められたに等しい。あの『漆黒のゴライアス』を倒さない限り、ここから抜け出すことは出来ないだろう」

 

――――――――――リューの こうげき!

――――――――――漆黒のゴライアスに ダメージ!

 

「流石はリューちゃん。行動が早い。アスフィも急げ、今は時間が惜しい」

 

 恐らく運悪く『漆黒のゴライアス』の近くにいたであろう冒険者に向かって足を振り上げて攻撃しようとしたのを、逸早く駆けつけたリュー・リオンが助けたのだろう。振り上げた足を押された倒れ込んだ『漆黒のゴライアス』に追撃を仕掛けているリューを見届けたヘルメスが急かす。

 

「――――もうっ!? 生きて帰れなかったら恨みますからね!」

 

 早急な判断を迫られたアスフィは己の主神をキッと睨みつけると踵を返し、空を駆けて(・・・・・)リヴィラの街へと走って行った。

 アスフィの背中を見届けることなく、『漆黒のゴライアス』を見続ける。

 

「ウラノス、祈祷はどうした? こんな話は聞いていないぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――漆黒のゴライアスの こうげき!

――――――――――リューは ひらりと みをかわした!

 

 巨大な物体はどれほど軽かろうが、振り子運動の周期は質量ではなく長さが決定し、ヒト型はその集合体であるから素早く動くことは元来あり得ない。

 遠くからは遅く見えても、間近で見れば余裕を持って躱したつもりでも風圧でリューのローブが大きくはためく。

 

「リューさん!」

 

――――――――――ベルは デュアルカッターを はなった!

――――――――――漆黒のゴライアスに ダメージ!

 

 リューに追撃を仕掛けようと、腕を振り上げた『漆黒のゴライアス』にベル・クラネルが投げた『はがねのブーメラン』が胸に薄い横一線の傷を作った。

 全力の一撃が大したダメージを与えられなかったことにベルが瞠目している横に追いついたリリルカ・アーデが『せいれいの杖』を振り上げる。その両脇を二刀を抜き放ったアルス・クラネルと、『たつじんのオノ』を持ったヴェルフ・クロッゾが駆け抜けていく。

 

「メラミ!」

「はっ!」

「おらぁっ!」

 

――――――――――リリルカは メラミを となえた!

――――――――――アルスは つるぎのまいを おどった!

――――――――――ヴェルフは 蒼天魔斬を はなった!

――――――――――漆黒のゴライアスに ダメージ!

 

 リリルカの放ったの『火炎魔法(メラミ)』が『漆黒のゴライアス』の顔面に命中し、左足にアルスが二刀による四連撃を刻み込み、右足にヴェルフが強力な振り下ろしを叩き込む。

 

「硬てぇっ!? ゴライアスはあんなに硬てぇのか!?」

 

 左膝から崩れ落ちる『漆黒のゴライアス』の横を駆け抜け、攻撃を叩き込んだこちらの手が痺れるほどの、今までに感じたことのない硬さにヴェルフが思わず叫ぶ。

 

「いえ、標準のゴライアスはLv.4相当。しかし、この個体は異様に硬い上に動作が速い。恐らく潜在能力(ポテンシャル)はLv.5と見ていいでしょう」

 

 偶々、ヴェルフの近くに一度着地したリューがその叫びを耳にして、戦っているのが通常の階層主ではないと説明しているところで『漆黒のゴライアス』が息を吸い込むような動作をする。

 

『―――アアアッ!!』

 

――――――――――漆黒のゴライアスは 破滅の咆哮を はなった!

――――――――――アルスたちは すばやく みをかわした!

 

「ひあっ!?」

 

 『火炎魔法(メラミ)』を放つ都合上、『漆黒のゴライアス』の正面にいたリリルカは横っ飛びをすると、先程までいた場所を見えない何か(・・)が通り抜けていった。

 

「地面が抉れてやがる……」

「この威力、まともに受けたら大楯持ちのヴェルフ以外だと即潰されるよ」

通常の個体(ゴライアス)にはない飛び道具まで使えるとは…………他の攻撃方法もあるかもしれません、注意を!」

「注意って言っても……」

 

 ミノタウロスの恐怖を喚起して束縛する『咆哮(ハウル)』とは違い、魔力を込め純粋な衝撃として放出される巨人の遠距離攻撃。通常のゴライアスとの戦闘経験もないリリルカには、リューの注意喚起に急いで盾役のヴェルフの後ろに移動する。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

――――――――――漆黒のゴライアスは なかまを よんだ!

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 『漆黒のゴライアス』の雄叫びに呼応して、森の中から多くのモンスターが走ってきた。

 確認できるだけでも、『メイジドラキー』『オコボルト』『ビーライダー』『ダンスニードル』『ふくめんバニー』『デンデン竜』『デスフラッター』『よろいのきし』『マージマタンゴ』『ダークドリアード』――――――16、17階層に現れるモンスター達が勢揃いしていた。

 

「他のモンスターを呼んだ!?」

「ふざけろよ、おい!?」

「はっ!」

 

――――――――――アルスは 覇王斬を はなった!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――まもののむれを やっつけた!

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 ベルとヴェルフが目を剥いている間にアルスが『覇王斬』で多くのモンスターを倒したが、倒した数に倍する数のモンスターが次々に現れる。

 

「ベギラマ!」

 

――――――――――リリルカは ベギラマを となえた!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――まもののむれを やっつけた!

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 リリルカが放った『閃光魔法(ベギラマ)』は扇状に広がり、モンスター達の多くを一掃したが別方向からも間断なく現れ続ける。

 

「これじゃあキリがない!?」

 

 意識が外のモンスターに向いている間に、『漆黒のゴライアス』が再び大きく息を吸っているのにベルが気づいた。

 

「また『咆哮』が来るよ!」

「ちっ、燃え尽きろ、外法の技――――ウィル・オ・ウィスプ!」

 

――――――――――ヴェルフは ウィル・オ・ウィスプを となえた!

――――――――――漆黒のゴライアスは 破滅の咆哮を はなった!

――――――――――漆黒のゴライアスの 破滅の咆哮が失敗 爆発した!

 

 口の中で魔力暴発(イグニス・ファトゥス)が起こり、大爆発が『漆黒のゴライアス』の頭部を完全に覆い隠した。

 

「よっしゃ! 『咆哮』に魔力を感じたから上手くいくと思ったがって!? その状態でまた放つ気か!?」

 

 爆煙の中から口元が抉り取られた『漆黒のゴライアス』はダメージを負っているのに、再度『破滅の咆哮』を放たんと息を吸う。

 魔法発動に足を止めていたヴェルフの『すばやさ』は治癒士のカサンドラ・イリオンよりも低い。ヴェルフでは避けれないタイミングで攻撃態勢に入った『漆黒のゴライアス』の膝を蹴って飛び上がったリューが『アルヴス・ルミナ』を振り被る。

 

「ふっ!」

 

――――――――――リューの こうげき!

――――――――――漆黒のゴライアスに ダメージ!

――――――――――漆黒のゴライアスは 破滅の咆哮を はなった!

 

 『漆黒のゴライアス』の顎を横薙ぎに振るった『アルヴス・ルミナ』で打ち払い、無理矢理に『破滅の咆哮』の軌道を変えさせる。

 

「すまん、助かった!」

「油断しないで下さい。ですが、あなたの魔法は奴の『咆哮』には有効だ。『咆哮』を打ちそうになったら魔法を仕掛けて下さい」

「分かった」

 

 リューとヴェルフが『漆黒のゴライアス』と攻防をしている間も、アルス達は現れ続けるモンスターの対処に忙殺されていた。

 このままでは押し潰されるという考えがベルの脳裏を過ったところで、矢が飛んできて深手を負っていた『オコボルト』が魔石と化す。

 振り返ったベルが見たのは、リヴィラの街の冒険者を引き連れたアスフィの姿だった。

 

「ありったけの武器と冒険者を集めました! 周りのモンスターは彼らに任せて、貴方達は漆黒のゴライアスの注意を引いて下さい。今から街の魔導師達が詠唱に入ります」

「分かりました。アンドロメダもいるなら彼らも心強いでしょう。敵の注意を分散させましょう」

「え、いや、ちょっと待って。私は――」

「よおおし、テメェら! ヘスティアファミリアだけじゃなくアンドロメダ()囮になるから心置きなく詠唱を始めろぉ!」

「ボールスゥゥ! 後で覚えてらっしゃい!!」

 

 ちゃっかりと危険な役目は部外者に押し付けたボールス・エルダーは、アスフィの叫びを聞かなかったことにして詠唱を始めた魔導師達の盾役として大楯を構える。

 

『オオオオオッ!!』

 

――――――――――漆黒のゴライアスは 巨大なウデで はげしく なぎはらった!

――――――――――アルスたちは ひらりと みをかわした!

――――――――――ベルたちは すばやく みをかわした!

 

 右手、左手と屈んで大きく腕を薙ぎ払ってきた攻撃を避けた囮役の面々が次々に攻撃を放つ。

 

「はっ!」「やっ!」「ヒャダルコ!」「おらぁっ!」「ふっ!」「しっ!」

 

――――――――――アルスは、全身全霊切りを はなった!

――――――――――ベルは ヴァイパーファングを はなった!

――――――――――リリルカは ヒャダルコを となえた!

――――――――――ヴェルフは かぶと割りを はなった!

――――――――――リューの こうげき!

――――――――――アスフィの こうげき!

――――――――――漆黒のゴライアスに ダメージ!

 

 顔、胴体、手、足とそれぞれ攻撃部位は違うが、『漆黒のゴライアス』に確かな傷を刻み込み、Lv.4による多重攻撃は流石に効いたのか、フラついて片膝をついた。

 

「効いてるぞ、今だ! 前衛引けぇっ! デカいのをぶち込むぞ!」

 

 ボールスの合図に、全員が『漆黒のゴライアス』から距離を取りながら、リリルカはアルスが近くにいることに気づいた。

 

「アルス様、私達も!」

「「イオラ!」」

 

――――――――――アルスとリリルカは 同時に イオラを となえた!

――――――――――魔導師たちは 魔法を となえた!

――――――――――漆黒のゴライアスに ダメージ!

 

 まるでアルスとリリルカが放った『爆発魔法(イオラ)』が合図であったかのように、魔導師達の一斉射撃が放たれた。

 『漆黒のゴライアス』の姿が覆い隠されるほど、連続で見舞われる多属性の魔法。

 やがて一斉射撃が止み、覆っていた爆煙が晴れて露わになった『漆黒のゴライアス』の姿は無残な物だった。黒い体皮は傷ついていない場所はないほどに抉れ、赤い内部を晒している。

 

「よおおしッ! ケリをつけるぞ! 畳みかけろぉっ!」

 

 ボールスが確かな勝機が見えたと確信するほどの有様で、掛け声に乗って今の一斉射撃の余波で消滅したモンスターから手の空いた前衛の一部が『漆黒のゴライアス』に向かう。

 

「リューさん、僕達も!」

「待って下さい…………何かおかしい」

 

 偶々近くにいたリューが動かないので急かしたベルだったが、彼女の懸念が当たっていると直ぐに証明された。

 

『――――フゥゥ』

 

――――――――――漆黒のゴライアスは 魔力を ねんしょうさせた!

――――――――――なんと 漆黒のゴライアスの キズが みるみる ふさがって いく!

 

 損傷した部位から赤い粒子が立ち上がり、赤い内部を晒していた傷が次々に塞がっていく。

 

「自己再生……っ!? 階層主が治癒能力を有するなど――」

 

 アスフィの言葉は傷を癒えた右足を上げた『漆黒のゴライアス』の次の行動によって遮られた。

 

――――――――――漆黒のゴライアスは あしをじめんに たたきつけた!

――――――――――大地が はげしく ゆさぶられる!

――――――――――アルスたちは すっころんだ!

 

 振り上げた右足を力の限り地に叩きつけたことによって、足元がひっくり返るほどの衝撃がアルス達を襲って立っていられなくなった。

 地に倒れ込んだアルスは『漆黒のゴライアス』が真下に誰もいないのに両腕を振り上げるのを見た。

 

『アアアアアアッッ!!』

 

――――――――――漆黒のゴライアスは じめんを なぐりつけた!

――――――――――全方位に おおきな しょうげきはが おしよせる!

――――――――――アルスたちに ダメージ!

 

 まともに『狂乱の怒号』による全方位衝撃波のダメージを受けたアスフィは、一連の『漆黒のゴライアス』が通常の『ゴライアス』とは全然違う存在なのだと実感していた。

 

「治癒能力に範囲攻撃、なんて馬鹿げた力業……!?」

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

――――――――――漆黒のゴライアスは なかまを よんだ!

――――――――――まもののむれが あらわれた!

 

 『狂乱の怒号』によって目に見える範囲にいたモンスターも消滅したのを理解しているのか、『漆黒のゴライアス』は再び雄叫びを上げるとモンスター達がまた現れる。

 

「アイツ、またモンスターを呼び寄せやがった。階層主戦ってのは、ここまで容赦ねぇのか!?」

「もう一度射撃を行うにしても、これでは前線が崩壊します!」

「…………カサンドラさんを連れてくる。みんなを治してもらって、前線を立て直そう」

 

 アルスやヴェルフ、リリルカでも魔法や技能で回復は出来るが、一人一人では時間がかかり過ぎる。今の状況で範囲治療魔法を使えるカサンドラの存在が戦況を立て直せるキーパーソンだった。

 同時に劣勢の中でLv.4で戦場を支える一角であるベルが離脱すれば最悪、前線が完全に崩壊する理由になってしまいかねない。

 

→行ってこい、ベル

  行くな、ベル

 

 だが、アルスはあっさりと言ってのけたことに、提案したベルの方が不安になってしまう。

 

「僕がいなくても大丈夫?」

 

→俺がゴライアスを引き付ける。ヴェルフはリリの護衛を

  ヴェルフ、ゴライアスを任せる

 

 ベルが抜ける負担を背負って見せると言い切ったアルスの隣にリューが並ぶ。

 

「私とアンドロメダもいます。ベルさんが抜けた穴を埋めてみせましょう。リリルカ・アーデ、ヴェルフ・クロッゾ、あなた達二人には周りのモンスターを――」

「ベルが抜ける必要はないよ」

「ダフネさん」

 

 声に振り返ると、そこにはヘスティアの護衛として残したダフネ・ラウロスとカサンドラが立っていた。

 

「ヘスティア様がウチらに自分の傍にいるよりも、アンタ達の力になってやれってね。良いタイミングみたいだ、カサンドラ」

 

 聞かれる前に現れた理由を話したダフネに促され、一歩前に出たカサンドラは『神聖のクリスタルロッド』に魔力を込める。

 

「一度は拒みし天の光。浅ましき我が身を救う慈悲の腕。届かぬ我が言の葉の代わりに、哀れな輩を救え。陽光よ、願わくば破滅を退けよ ソールライト」

 

――――――――――カサンドラは ソールライトを となえた!

――――――――――冒険者たちの キズが かいふくした!

 

 『ソールライト』は魔力に比例し、効果領域を拡大することもできる。カサンドラは自身の魔力を見極めながら最低限の魔力で最大パフォーマンスを発揮できるように移動しながら治療を続けていく。

 カサンドラの護衛はヴェルフが行い、アルス達が迫ってくるモンスターの対処をしている間、戦場に現れたダフネ達の経緯を知るべくリリルカが近づく。

 

「お二人が来たということはヘスティア様はお一人に?」

「ヘスティア様の命令でタケミカヅチの千草って子に任せてきた。後の二人は――」

 

――――――――――命と桜花の こうげき!

――――――――――ミス! 黒のゴライアスは ダメージを 受けない!

 

 ダフネ達に遅れて到着したヤマト・命とカシマ・桜花が全力の一撃を叩き込むも、持っている武器の刃の方が欠けた。

 桜花は貰った『プラチナブレード』は自分には分不相応だと使わず、リヴィラの街の住人が用意した『シャドウエッジ』を使用。命は元々の自分の武器である『てつのやり』を使っているが、二人と武器の攻撃力よりも『漆黒のゴライアス』の防御力の方が上だった。

 

「駄目だ。俺達の力では歯が立たない!」

 

 そんな二人に、『漆黒のゴライアス』はギロリと見下ろし、拳を振り上げた。ヴェルフ以下の『すばやさ』の命と、命より少し下の桜花では避けられない。

 

――――――――――黒のゴライアスの こうげき!

――――――――――ベルは 二人を抱えて ひらりと みをかわした!

 

 この階層にいる中ではリューに次いで『すばやさ』が高いベルが風のような速さで二人を抱えて離脱する。

 

「た、助かりました……」

 

 命が九死に一生を得ている頃、カサンドラの奮闘もあって戦闘を続行する程度には傷が癒えたボールス達。

 

「くそっ、怪物め……! オラァ、魔導師連中! 傷が治ったんなら、さっさと詠唱を始めろ!」

「でも、ボールス! さっきのが最大火力だ! また回復されるだけだぞ!」

「なら相手の魔力が枯渇するまで削り切るしかねぇだろうが! 前衛が保っている間にやるんだよ!」

「んな無茶な!?」

 

 問答を続けるボールスと魔導師達の方へ、息を吸った『漆黒のゴライアス』が急に顔を向けた。

 

――――――――――漆黒のゴライアスは 破滅の咆哮を はなった!

――――――――――魔導師たちに ダメージ!

 

「なっ!? 前衛を無視して魔導師達を狙ってやがる」

 

 目の前を『破滅の咆哮』が通過して盾役ごと魔導師達がやられたボールスが臍を噛む。

 『漆黒のゴライアス』はヴェルフを警戒しているのか、動きを予測されないように背中を向けている所為で『破滅の咆哮』を放つ予備動作が見えない。

 

「来といてなんだけど、これはマズいよ。魔導士の砲撃は階層主攻略の要、これ以上を失うわけにはいか――」

 

――――――――――漆黒のゴライアスは 巨大なウデで はげしく なぎはらった!

――――――――――冒険者たちに ダメージ!

 

「駄目だ。このままじゃ、先にこっちに限界が来る」

 

 ヴェルフに代わり、リリルカの護衛役として残っていたダフネは周辺のモンスターの相手をしながら戦況の圧倒的不利を悟っていた。そしてそれは後方にいて戦況を俯瞰できるリリルカも同じだった。

 

「…………この状況を打開するには、あのゴライアスを倒すには大威力による攻撃で倒し切るしかありません」

 

 一斉射撃でかなりのダメージは与えられた。今も魔導師を集中的に狙っているのは、先程のような一斉射撃を警戒しているに他ならない。しかし、同じ程度の一斉射撃では倒し切れないことは既に証明されている。

 

「さっきの砲撃が最大威力なんだろ。これ以上は威力が上げられない」

「いえ、あります。というか作ります」

 

 今まで使ったことのないリリルカの『技能』が不利を覆す鍵だった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。