ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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………遅れた言い訳をさせて下さい。

コンシューマ版のダンまちバトル・クロニクルをやったり、エルデンリングで狭間の地を旅したり(現在進行形)と殆ど執筆の気持ちに向かず。

ダンまちアニメ5期が始まったこともあり、失踪したわけではないということで出来ている分だけでも投稿していきます。




第五章
第63話 ベルについていく


 

 

 

 

 

→カサンドラの荷物持ちをする

  ベルについていく

 

 

 

 

 

 はたして何度目かのギルドの談話室。今回は何故か同行を拒否してカサンドラ・イリオンの食料買い出しについていったアルス・クラネルに疑問を覚えながら、ベル・クラネルはただ一人でエイナ・チュールと相対していた。

 机を挟んで座るエイナの手元には昨夜にダンジョンから地上に戻ってきた直後、ギルドに連れて行かれて聴取された内容が事細かに記されている。

 

「ねえ、ベル君。君達は毎回何か騒動を起こさないと気が済まないの?」

「エイナさんは僕達をなんだと思っているんですか」

 

 呆れとも怒りともつかない感情が籠ったエイナの言葉に、ベルも好き好んで騒動を起こしているわけではないのでちょっとだけ不満を露わにした。

 

「言った方がいい? 言うよ。言っちゃうよ?」

 

 据わった目で問いかけるエイナに、旗色の悪さを感じ取ったベルに出来たのは白旗を上げることだけだった。

 

「…………降参するんで止めて下さい」

 

 両手を上げたベルを見て、エイナも追及の矛を一時収めて手元の資料に目を落とす。

 

「ふぅ、本当にどんな星回りが悪ければ、ここまでの事態になるのかな」

 

 エイナの前に置かれた資料には、たった一週間ほど前に行われた面談の後にヘスティアファミリアパーティーが経験したプチ遠征の詳細が記されていた。

 

「中層でのモンスター『クラーゴン』の階層移動、15階層でのモンスターの罠がある未開拓領域、公開は出来ないけど安全階層に異常出現した階層主(ゴライアス)まで討伐して…………普通の冒険者ならどれか一つでも経験するだけでも大事なのに、たった一回の冒険で全て起こるなんてトラブルに愛されているとしか思えないよ」

「ははは、まさか」

 

 トラブルに愛されているなんていうエイナの指摘も、もう騒動に慣れてしまった感があるのでベルは愛想笑いをするしかない。

 

「なんにしても無事に戻って来てくれて良かったよ。しかも、今回はランクアップしていないしね」

「ソウデスネ」

 

 安心した様子のエイナからソッと目を逸らす。

 たった一回の冒険でかなりレベルアップを重ね、割と次のランクアップが目に見えた事実を伝えられそうにない。

 

「安全階層で階層主が生まれるという特大の異常事態、ベル君は神ヘスティアから何か聞いてる?」

 

 ベルの様子に不審を覚えた様子もないエイナは手元の資料の中で特大の疑問を向ける。

 モンスターが生まれないはずの18階層で階層主が出現するなど、ギルドが蓄積してきた記録にもない初めてのこと。この件に関しては、ギルドは神為的な災害【神災】と判断。余計な混乱を防ぐ為、口外禁止を徹底した。

 ダンジョン内で起こった異常事態の原因は調査すらされず、緘口令だけで終わりそうな雰囲気だった。

 

「何かは知っている様子ですけど、聞いてほしくなさそうだったので話題にしていません。寧ろギルドの方が知っているのでは? 地上に戻ってきたら直ぐにギルドに連れて行かれて、事情を説明したら口外禁止と総資産半分の罰金が言い渡されたんですよ」

 

 ギルドは神でありながらダンジョンに侵入し、【神災】を引き起こしたとしてヘルメスとヘスティアの両ファミリアに総資産の半分を罰金として徴収を決定。今もリリルカ・アーデとダフネ・ラウロスが揃ってギルド長ロイマン・マルディールと面談して厳重な抗議をしているが、処分の拙速具合からして決定が覆ることはないだろう。

 此度の異常事態に関して神達は何かを知っているようだが、直接の原因については話題を避けているので下界の人間にはどうしようも出来ない。

 

「ギルド長を始めとした上層部は知っているようだけど、私みたいな立場の者には情報が下りて来てないの」

 

 そもそも緘口令が敷かれているので知っている者すら少ないが、ギルド上層部の拙速ともいえる処罰の速度からして何か知っているのは確実。受付嬢の一人に過ぎないエイナは当事者ファミリアの担当者なのに情報を求めても終わった話として何も知らない状態に置かれていた。

 

「なんなんですかね、一体。いきなりファミリアの総資産の半分を罰金で没収というぐらいだから、よほどの事態だとは思いますけど」

「うん、まあそうだよね。ヘスティアファミリアも戦争遊戯(ウォーゲーム)が終わったばかりだから、かなり没収されたんじゃないの?」

「タイミングが良かったのか、実はそれほどじゃなかったんですよ」

 

 戦争遊戯(ウォーゲーム)に勝利したことで、ヘスティアファミリアはアポロンファミリアの資産を丸ごと勝ち取っていた。中堅のアポロンファミリアの資産ともなれば相当の額になるはずで、今回の一件で没収額はかなり物になるとエイナは考えたが、ベルはちょっと遠い目をして内情を思い出す。

 

「ホームの改修とそれに付随する諸々でアポロンファミリアから得たお金は殆ど注ぎ込んでいて、元からあったお金も戦争遊戯(ウォーゲーム)の為に新装備に必要な素材を購入したりしてたので、決して安くはありませんけど数十万ヴァリスですみましたからヘルメスファミリアと比べたらまだ」

 

 殆どを既に使用していたので、手元に残っていたのは当座の生活資金と幾ばくかの貯蓄だけだったので、決して額は少なくないが同じ処分を受けたヘルメスファミリアに比べれば受けたダメージはそこまで大きくなかった。

 

「神ヘルメスが真っ白になってた話だものね」

 

 総資産半分没収に流石のヘルメスも真っ白になっており、団長のアスフィ・アル・アンドロメダが溜息を漏らして頭を抑えていた姿がエイナの脳裏に思い浮かぶ。

 

「半分は行き過ぎだって神様は憤慨してましたけど、今回の冒険で得た魔石やドロップアイテムで没収された以上の利益は出たので、そこまで引き摺りませんでした。それどころじゃない問題が出てしまって」

 

 ヘスティアファミリアには『どうぐぶくろ』があり、普通なら止む無く捨てるか、18階層でボッタくり価格で買い取りに出す必要が無いのでダンジョンで得た魔石やドロップアイテム等が丸々あった。魔石とドロップアイテムの一部を売却しただけでも没収された分以上の収益を得ていたので懐は温かいが、直ぐに別の問題が持ち上がってしまった。

 

「問題って?」

 

 思い当たる節のないエイナに、ベルは頭を掻いて昨夜のことを思い出す。

 ダンジョンからギルドへ連れて行かれ、新ホームに帰ると改修作業が終わっていた。そこで新ホームで工事を行ったゴブニュファミリアの主神ゴブニュから渡された物が問題だった。

 

「改修工事中に、元々僕達が暮らしていた廃教会地下の隠し部屋にあった隠しスペースの奥に別の隠しスペースがあって、そこから武具のレシピプックが見つかったんです」

 

 『ふしぎな鍛冶台』が見つかった隠しスペースに更なる隠しスペースがあったことにも驚いたが、問題は見つかったそのレシピブックにあった。

 

「良いことじゃないの? 問題には思えないけど」

 

 エイナが疑問に思うのも無理はなかった。

 レシピブックは鍛冶師が装備を作るのに必要な物で、自身らが所有している場所からレシピプックが見つかったのなら喜ぶのが普通。

 

「見つかったレシピブックに、あの(・・)ヘファイストス様が目の色を変えてもですか?」

 

 職人気質のゴブニュを除外すれば、ほぼ間違いなく世界最高にして最大の鍛冶系ファミリアの主神であるヘファイストスが目の色を変えるほどのレシピと聞けば、武具には詳しくないエイナもベルの危惧が理解出来た。

 

「もしかしてヤバいヤツ?」

「はい、ヘファイストス様の話だとゼウス・ヘラファミリアが所有していて、彼らがオラリオを追放された時に散逸したはずの物らしいです」

 

 千年以上もオラリオで君臨し続けた二つの世界最強ファミリア。三大クエストの最後であった隻眼の黒竜の討伐に失敗し、この失敗をロキやフレイヤらに咎められ、両主神がオラリオを追放されたことで、ゼウス・ヘラファミリアは消滅した。

 古代から続く人類史上の中でも最強と言っても過言ではない程の圧倒的な強さを誇り、他の追随を許さなかった神の眷族の到達点。現オラリオ最強であるフレイヤファミリア所属オッタルのLv.7を超えるLv.8やLv.9まで至った冒険者もいたという。

 彼らが所有して武具のレシピブックともなれば、特大の爆弾であることは間違いない。

 

「…………聞かなかったことにしていい?」

 

 正直、今すぐ耳を塞いで逃げ出したいエイナは恐る恐るベルに尋ねた。当然、この爆弾の処理を半ば仲間達に押し付けられたベルに容赦という言葉はない。

 持ち込んだ鞄に手を伸ばす。

 

「駄目です。僕と一緒に苦しんで下さい。これが見つかったレシピです」

 

 バサリと机に広げられる数多のレシピブック。

 

――――――――――アルスは レシピブック 『大樹の福音の書』を 手に入れた!

――――――――――大樹の王冠の レシピを 覚えた!

――――――――――大樹のマントの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『エトワール装備のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――エトワールクラウンの レシピを 覚えた!

――――――――――エトワールスーツの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『カリスマスタイル』を 手に入れた!

――――――――――カリスマスーツの レシピを 覚えた!

――――――――――カリスマスカーフの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『名剣改造のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――はやぶさの剣・改の レシピを 覚えた!

――――――――――きせきのつるぎ・改の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『高貴なる宝飾品目録』を 手に入れた!

――――――――――女王のてぶくろの レシピを 覚えた!

――――――――――エルフのおまもりの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『リングマスターズ』を 手に入れた!

――――――――――スーパーリングの レシピを 覚えた!

――――――――――女神のゆびわの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『歌劇の怪人』を 手に入れた!

――――――――――ファントムマスクの レシピを 覚えた!

――――――――――やみのころもの レシピを 覚えた!

――――――――――やみわだのミトンの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『四季のぼうしのレシピ』を 手に入れた!

――――――――――はるかぜのぼうしの レシピを 覚えた!

――――――――――なつぐものぼうしの レシピを 覚えた!

――――――――――あきさめのぼうしの レシピを 覚えた!

――――――――――ふゆぞらのぼうしの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『永遠へのてがかり』を 手に入れた!

――――――――――とこしえのぼうしの レシピを 覚えた!

――――――――――とこしえの法衣の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『神話の武具のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――しんぱんのかぶとの レシピを 覚えた!

――――――――――しんわのよろいの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『メタキン装備辞典』を 手に入れた!

――――――――――メタルキングの剣の レシピを 覚えた!

――――――――――メタルキングの大剣の レシピを 覚えた!

――――――――――メタキンブーメランの レシピを 覚えた!

――――――――――メタルキングのやりの レシピを 覚えた!

――――――――――メタルキングの盾の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『時間王の伝記』を 手に入れた!

――――――――――ときのおうしゃくの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『戦場の名品総覧』を 手に入れた!

――――――――――ライトシャムシールの レシピを 覚えた!

――――――――――トリックスターの レシピを 覚えた!

――――――――――クロノスエッジの レシピを 覚えた!

――――――――――はてんの月輪の レシピを 覚えた!

――――――――――とこしえの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――聖竜のえんげつとうの レシピを 覚えた!

――――――――――グレイプニルのムチの レシピを 覚えた!

――――――――――ゴッドキラーの レシピを 覚えた!

――――――――――カイロスアックスの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『ネルセン武具全集』を 手に入れた!

――――――――――天命のつるぎの レシピを 覚えた!

――――――――――アテナの聖槍の レシピを 覚えた!

――――――――――ウロボロスの盾の レシピを 覚えた!

――――――――――そうてんのトーガの レシピを 覚えた!

――――――――――セラフィムのローブの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『英雄戦記・上巻』を 手に入れた!

――――――――――りゅうせいのつるぎの レシピを 覚えた!

――――――――――コメットエッジの レシピを 覚えた!

――――――――――かがやきの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――らせつの魔槍の レシピを 覚えた!

――――――――――続グリンガムのムチの レシピを 覚えた!

――――――――――竜王のツメの レシピを 覚えた!

――――――――――ギガントアックスの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『英雄戦記・中巻』を 手に入れた!

――――――――――すいせいのつるぎの レシピを 覚えた!

――――――――――ビリオンダガーの レシピを 覚えた!

――――――――――スーパーノヴァの レシピを 覚えた!

――――――――――せんこうの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――えんまの魔槍の レシピを 覚えた!

――――――――――真グリンガムのムチの レシピを 覚えた!

――――――――――竜神王のツメの レシピを 覚えた!

――――――――――グラビティアックスの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『英雄戦記・下巻』を 手に入れた!

――――――――――ぎんがのつるぎの レシピを 覚えた!

――――――――――トリリオンダガーの レシピを 覚えた!

――――――――――ハイパーノヴァの レシピを 覚えた!

――――――――――オーロラの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――じごくの魔槍の レシピを 覚えた!

――――――――――超グリンガムのムチの レシピを 覚えた!

――――――――――神竜のツメの レシピを 覚えた!

――――――――――ゴッドアックスの レシピを 覚えた!

 

「うわぁ、うわぁっ、うわぁっ!?」

 

 チラリと見えてしまったレシピブックに思わず仰け反りながら距離を取るエイナに、ベルは然もありなんと深く頷く。

 

「そういう反応になりますよねえ」

「これ、ヘファイストスファミリアが戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けてでも欲しがるやつじゃないの!?」

 

 武具に詳しくないエイナにだって、机の上に広げられたレシピブックが鍛冶系ファミリアなら『殺してでも奪い取る』ぐらいの宝物であると分かる。

 嘗ての最強ファミリアが千年に渡って蓄積した技術の結果を前にして、呑気にも見える態度だが実は諦めて開き直っているだけのベルに、エイナは机の上のレシピブックとベルを交互に指差す。

 

「はっ!? まさかもう仕掛けられているとかじゃ――」

 

 慌てて思い違いをして今にも談話室を飛び出していきそうなエイナを両手を前に出して押し留める。

 

「落ち着いて下さい、エイナさん。ヘファイストス様がそういう神様ですか?」

「っ!? ううん、違う。違うけどベル君、妙に落ち着いてるね。何時もならさっきまでの私以上に慌てそうなのに」

 

 ヘファイストスは愉快神が多い中にあって善神であることは今までの実績が証明しており、ベルに言われて落ち着きを取り戻してきたエイナは告げた当人の性格上、不思議なほどの落ち着きに疑問を呈した。

 言われたベルは全く否定できないので、少し微妙な顔になりながらその理由を告げる。

 

「…………実は最初、このレシピブックを改修を行ったゴブニュファミリアのゴブニュ様から渡された時、教会の元々の所有者はヘファイストス様だからヘファイストス様の物だろうと思って渡しに行ったんですよ。そうしたらヘファイストス様はレシピブックに驚きながらも仰ったんです。『今、あの教会一帯の所有者はヘスティアであり、そこで見つかった物も明確な所有者が不明なら所有権はヘスティアが有する』と」

 

 ベルは当時のヘファイストスに言われたことを思い出して嘆息する。

 

「というわけで、神様がどれだけ押し付けようとしても頑として受け取ってくれず、ならギルドに遺失物として届けようとしたら必要な時にレシピを使いたいからヘスティアファミリアで所有して使用権だけ貸してほしいと頼まれちゃって」

「いいんじゃない? ギルドとしても、一枚だけでも人生何周分も出来そうなヴァリスが生まれそうなレシピを一杯渡されても困るだけだし」

「ヘファイストス様も同じことを仰ったので、一応ヘスティアファミリアで権利を持つことになりました。使用権貸与の代価として、ヘスティアファミリアがホームを開ける際の警備を行ってくれるということで断り難く」

「ヘスティアファミリアも狙われる立場になったものね。人数がいれば解決する問題だけど、現状では難しいからヘファイストス様の提案を断り難いか」

「はい、どうしようかとは仲間内で相談していたんで、渡りに船で断れなくて」

 

 ヘスティアファミリアは少人数ファミリアなので、全員揃ってダンジョンに潜らざるをえない。そうするとどうしても空いてしまうホームに主神であるヘスティアだけが取り残されることになり、警備上の問題をダフネから指摘されていた。

 ヘファイストスのレシピブックの使用権貸与の代価の提案は、この問題を解決出来ることもあり、何よりヘスティアファミリアに一切の損がないということで受け入れられた。

 

「ただ、このレシピブックでは必要な素材が最低でも深層以降でないと獲得出来ないものばかりらしくて、しかも運良く素材が揃っていたレシピを椿さんが作ってみても鍛冶が失敗してしまったんです。ヘファイストス様曰く『レベル不足』ということらしんですけど、椿さんでも駄目となると、ヘファイストスファミリアにばかり迷惑をかけることになるので、やっぱりレシピを渡そうとしてもLv.が上がるまで待っててくれって椿さんに頭を下げられたら断われます?」

「まあ、無理だよね」

 

 オラリオ最高の鍛冶師である最上級鍛冶師(マスター・スミス)の称号を冠する椿・コルブランドですらレベル不足で失敗するレシピブック。最高の鍛冶師が頭を下げてでも頼み込まれたら、断れるのはそれこそ傍若無人な誰かくらいだろう。

 

「結局、受け入れるしかなくて、ギルドでどうにか出来ませんか、エイナさん」

「無理」

 

 根が善性のベルが困ったように頼ってくるが一刀両断して断る。

 

「表に出れば、それこそロキファミリアやフレイヤファミリアもレシピを目的に戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けてきそうな物なんだよ? 新たな騒動の火種にしかならないから、もう諦めて自分達の間だけの秘密にした方が無難だよ」

「うぅ、今までが今までだけに否定できない……」

 

 エイナの言うことは尤もで、アポロンに自分達目当てに戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けられた経験のあるベルはガクリと首を折って項垂れる。

 そんなベルの頭の旋毛を見下ろしながらエイナは言いずらそうに口を開く。

 

「それにレシピというなら、私もベル君に伝えないといけないことがあるんだ」

「え”!?」

 

 既に胸一杯だったベルは猛烈に嫌な予感がした。

 

「今朝早くオラリオを発たれたヘルメス様がギルドにアルス君宛にってレシピを預かったんだ」

「なんで、アルス宛?」

「さあ、早々に受け取りに来たアルス君ならその理由を知ってそうだけど。後、ヘルメス様からサービスだって幾つかの武器も」

 

 受け取り時、アスフィが苦々しげな顔をしていたなとエイナは思い出し、その直ぐ後に一人で現れたアルスが何の疑問もなく受け取っていたことから類推する。

 ベルにはギルドを介してのやり取りだったので何が渡されたのかを記述してある羊皮紙を渡す。

 

――――――――――アルスは レシピブック 『ドラゴン装備図鑑』を 手に入れた!

――――――――――ドラゴンスティックの レシピを 覚えた!

――――――――――ドラゴンテイルの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『極ドラゴン装備図鑑』を 手に入れた!

――――――――――火竜のタクトの レシピを 覚えた!

――――――――――ドラゴンの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『なれる!魔法使い』を 手に入れた!

――――――――――まがんの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――まがんのぼうしの レシピを 覚えた!

――――――――――まじないしの服の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『凍える武具』を 手に入れた!

――――――――――こおりのブーメランの レシピを 覚えた!

――――――――――こおりの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『プラチナの盾目録』を 手に入れた!

――――――――――プラチナトレイの レシピを 覚えた!

――――――――――プラチナシールドの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『魔法武具のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――まほうの盾の レシピを 覚えた!

――――――――――まほうのよろいの レシピを 覚えた!

――――――――――まほうの法衣の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『ザ・ゾンビバスター』を 手に入れた!

――――――――――ゾンビバスターの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『神々が愛したクツ』を 手に入れた!

――――――――――英雄のブーツの レシピを 覚えた!

――――――――――りせいのサンダルの レシピを 覚えた!

――――――――――大天使のブーツの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『悪魔装備図鑑』を 手に入れた!

――――――――――デーモンバスターの レシピを 覚えた!

――――――――――デーモンスピアの レシピを 覚えた!

――――――――――あくまのムチの レシピを 覚えた!

――――――――――あくまのしっぽの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『王族衣装の写し絵』を 手に入れた!

――――――――――キングアックスの レシピを 覚えた!

――――――――――キングコートの レシピを 覚えた!

――――――――――クインローブの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『君を守る小さな指輪』を 手に入れた!

――――――――――はくあいのゆびわの レシピを 覚えた!

――――――――――破呪のリングの レシピを 覚えた!

――――――――――破幻のリングの レシピを 覚えた!

――――――――――破毒のリングの レシピを 覚えた!

――――――――――まんげつのリングの レシピを 覚えた!

――――――――――めざましリングの レシピを 覚えた!

――――――――――りせいのリングの レシピを 覚えた!

――――――――――ソーサリーリングの レシピを 覚えた!

――――――――――ひらめきのジュエルの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『皇帝愛用の斧のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――カイザーアックスの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『せいれいの盾のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――せいれいの盾の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『らいていの杖のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――らいていの杖の レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『太陽王の装束のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――太陽のかんむりの レシピを 覚えた!

――――――――――王者のマントの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『光の装備のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――ひかりのタキシードの レシピを 覚えた!

――――――――――ひかりのドレスの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『トレビアン衣装のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――トレビアンクラウンの レシピを 覚えた!

――――――――――トレビアンスーツの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『賢者の愛用品のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――賢者の杖の レシピを 覚えた!

――――――――――インテリハットの レシピを 覚えた!

――――――――――知力のかぶとの レシピを 覚えた!

――――――――――さとりのてぶくろの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは レシピブック 『げんまの盾のレシピ』を 手に入れた!

――――――――――げんまの盾の レシピを 覚えた!

 

――――――――――アルスは 『ひかりのつるぎ』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『あつでのよろい』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『こおりのやいば』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『てんばつの杖』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『ナイトアックス』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『王家のナイフ』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『アメイジングタクト』を 手に入れた!

――――――――――アルスは 『ガーダーベルト』を 手に入れた!

 

「?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!」

 

 震える手で羊皮紙を受け取ったベルは正しく混乱の極致といった様相で叫びを上げた。

 

「言語になってないよ、ベル君。大いに気持ちは分かるけど」

 

 ヘスティアファミリアの担当であるエイナが物品を受け取ったのだが、その時にヘルメスが言ったことも同時に思い出していた。

 

『それぞれの適正に合わせて武具を選んだけど、『ガーターベルト』はカサンドラちゃんによろしく!』

 

 死ね、ヘルメスとエイナが思ったかどうかは定かではない。

 

「すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………………………………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――話を続けましょう、エイナさん。今までの話は忘れて」

「全力で無かったことにするんだ……」

「じゃないと、心が持ちません」

 

 目にハイライトがないベルの気持ちが物凄く良く理解できたので思わずエイナはホロリときかけた。

 

「ああ、うん、気持ちはわかるから話を進めるね? はい、今回の一件でヘスティアファミリアはファミリアランクがCに昇格しました」

 

 ベルに追い打ちをかけるように、純白の封書を取り出して机の上に置く。

 

「え”!?」

 

 ギルドの印璽が施された封蝋は、つい一週間前にも同じ物を貰っていたのでエイナの言葉も合わせて中身に想像がついたベルの口から汚い声が出た。

 

「ま、待って下さい!? 前回昇格してから一週間ぐらいしか経ってないのにもう昇格だなんて早過ぎます!」

 

 手に取ってしまうと昇格を受け入れたと判断されてしまうので慌ててベルは抗議する。

 

「…………『クラーゴン』の階層移動の生態解明」

「ぐっ!?」

「22階層まで到達階層の更新」

「がはっ!?」

「階層主の討伐」

「げほっ!?」

「未開拓領域の発見」

 

 最早、ぐうの音も出ないベル。

 

「階層主の討伐は異常事態(イレギュラー)過ぎて公表できないけど、これだけの功績を上げたファミリアをDランクに留めるのは逆に問題だとギルドは結論付けました」

 

 ぐうの音も出なくても、ここで抗弁しなければ昇格を受け入れたことになってしまう。ベルはなけなしの精神力を振り絞る。

 

「こ、この短期間で、ここまでランクが次々に上がるのは問題にならないんですか?」

「今のヘスティアファミリアは歴史上類を見ないファミリアだと皆が知っているよ。成長促進スキル、それもファミリア全体に波及するなんて、恐らく今後も現れないだろう存在。例外扱いされて当然だよ。実際、それに相応しい実績も出している」

 

 ギルド上層部は満場一致で昇格に賛成した、とまで付け足されてベルは何も言えなくなった。

 

「昇格に合わせて、予定されていた遠征(ミッション)の階層も変更されます。通達時期は前回言った時と変わらないけど、状況に合わせて階層は変更されると考えていいと思う。どうせ今後もヘスティアファミリアは到達階層を更新していくだろうから」

「何も反論できない」

 

 行きの道程を短縮できる『瞬間移動魔法(ルーラ)』があり、遂に帰りの道程を短縮できる『迷宮脱出魔法(リレミト)』にベルが目覚めてしまったので、これから到達階層は加速度的に増えていくのは間違いない。

 到達階層が増えれば、ファミリアランクの昇格は例え今しないとしても時間の問題でしかない。

 反論の余地がなく、ファミリアランクの昇格を受け入れるしかないベルは項垂れるしかない。そんなベルを見ながらエイナはコホンと咳払いをする。

 

「そこで私の提案としてだけど、少しダンジョンを潜るのを止めない?」

「へ?」

「大変な遠征になったわけだから、どこかに行くなどしてリフレッシュしてはどうかな? というか、ちょっとダンジョンから離れてこちらを落ち着かせてほしい」

 

 最初は優し気に言っていたのが、途中からは切実な気持ちが込められた重いものになった。

 顔を上げたベルは右手の人差し指で頬を掻く。

 

「実は同じようなことを神様からも言われてました」

「言われてなかったら?」

「明日にでも冒険を再開しようかなと。特に疲れてませんし」

「うん、少し休もうベル君。立派なダンジョン中毒になってる」

「これまた同じことを神様にも言われました」

「ほら、休養日を設けないと体を壊すよ」

「僕達、神様にステータスを更新してもらってレベルアップしていたら全快するから疲れがないんですよ」

「じゃあ、精神的に休まないと。心は目に見えないから、少しずつ蓄積しているかもしれないじゃない」

 

 ヘスティアからは遠征の疲労を癒やすのに時間を取るように言われていたが、ステータスを更新してレベルアップしていれば全快するのでベルにとっては新たな冒険する上で特に不都合を感じていなかったが、エイナが言うように精神的疲労については考慮に入れていなかった。

 

「休めって言われても特にすることがないので、アルスと鍛錬するぐらいしか思いつかなくて。ああ、そういえば同じ話を豊穣の女主人でしたら都市外に海があるから海水浴はどうかって勧められたっけ」

 

 ヘスティアの依頼でリュー・リオンを派遣してくれた豊穣の女主人にお礼がてら昼食を取りに行った際、既に当のリューはヘルメスらと共にオラリオを発った後だったが同話題をヘスティアが口にした時にウエイトレスのクロエ・ロロが薦めてくれて、15階層でヘルメスから貰って使っていない水着もあったので前向きに検討されていた。

 困った顔をしていたベルが思い出したことをそのまま口にした内容に、エイナは我が意を得たりとばかりに大きく頷く。

 

「へえ、いいんじゃない? 海水浴ならオラリオの直ぐ近くのメレンでも出来るし、今のヘスティアファミリアの状況なら数日で申請が通るんじゃないかな」

 

 ギルドは第一級冒険者を始めとした都市戦力の流出を何よりも恐れる。一部の特例を除けば、都市を好きに出入り出来る者は皆無であり、ファミリアが外出許可を得ようとすれば煩雑な手続きが必要で長い時には数日かかる。

 ヘスティアファミリアの快進撃は内情を知らない者には死に急いでいるようにも見え、心身のリラックスの為などと理由は幾らでも作れる。ヘスティアファミリアが巻き起こす騒動で痛められる胃を思えば、エイナにとっては許可証を得る為の煩雑な手続きの方が簡単だった。

 

「一回、神様とみんなで相談してみます」

 

 まさかロキファミリアの主神ロキがギルドの主神ウラノスに直訴してメレン行きが決まっていることを彼らは知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 





廃教会地下の隠し部屋(旧住居)にあった隠しスペース(ふしぎな鍛冶セット)の奥に別の隠しスペースにドラクエ11終盤レシピ集がありましたという流れです。

但し、勇者のつるぎ関連はなしで。


ヘルメス関連でのレシピブックと武具譲渡は前の章での、モルド達をけしかけたことに対するアルスとの取引の結果です。

武具はヘルメスのサービスですが。

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