ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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経営者が取るべき最適解は毎回カードを新しい物に変えることだが、フレイヤの存在が思考を鈍らせたことで最適解に気づかないという……。

今更ですが、本作でのポーカーはドラクエ11方式の為、絵柄なども通常とは違います。




第73話 テメェがすってんてんになるまで止める気はない

 

 

 

 

 

 ゲームは続いていたが、フレイヤとオッタルの参加前と比べて様相は一変していた。

 

(――――――下りずに勝負すると必ず勝つなど、どう考えてもおかしい。しかも、毎回全額賭け(オールイン)でとなると、不正(イカサマ)を疑うところだが)

 

 アルスは一度たりとも手札を確認せず、勝負したり下りたりする。だが、勝負する時は必ず全額賭け(オールイン)を行い、必ず勝つという一種異様な光景だった。

 一度半分にまで減ったコインが隆盛を取り戻し、確実にアルスの下にコインが積み重なっていく。

 経営者(オーナー)にはアルスの手管が分からず、フレイヤの後ろにいる元進行役(ディーラー)も周囲で見張っている護衛達も不正(イカサマ)を確認できず首を横に振って否定する。

 

(不正(イカサマ)は確認できない。フレイヤ様やオッタルにも不審な点はない)

 

 当初はフレイヤがアルスと協力し、勝たせているかとも考えたがテーブルの中でオッタルは一人負けの様相を呈していることで、その可能性は低いと判断せざるをえなかった。

 

(あのオッタルがフレイヤ様を売るとは思えない)

 

 フレイヤファミリアの主神に対する絶対の忠誠から裏切りは選択肢に上がらない。

 

(このままではジリ貧だ。どうすればこの状況を打開できる?)

 

 考える考える考える。しかし、考えなければならないのに進行役(ディーラー)を行うフレイヤが楽しそうに微笑んでいるのが視界に入ってしまい、思考が引っ張られる。

 そんな中、フレイヤから配られた手札を確認した経営者(オーナー)の目が見開かれた。

 

(ロイヤルストレートフラッシュ!! 最後に勝利の女神が微笑んだのは、この俺だ!)

 

 ジョーカーを加えた王冠の絵柄の数字が並んだ、今までカジノで数えられないほどポーカーをやってきた経営者(オーナー)であっても記憶にないほどの強力な手札。

 

全額賭け(オールイン)だ!」

 

 絵柄が王冠という、『最大賭博場(グラン・カジノ)』の王を自負していた自分に巡ってきたとしか思えない運命を感じていた経営者(オーナー)の視線の先で、頑なに手札を確認しなかったアルスがいきなりテーブルの上でカードを表返しした。

 

「「「「っ!?」」」」

 

 皆に見える形で自分の手札を見せるという、初心者であっても絶対にしないであろう蛮行に全員が目を見開く。フレイヤやオッタルですら反応した。

 

(ここで自分から手札を見せるだと!?)

 

 しかも盾8、スライムK、剣3、スライム10、王冠6という手札(ハンド)が成立していない不成立(ハイカード)

 皆が手札公開という行動を理解できない中、アルスはスライムの絵柄2枚以外の3枚を交換(ドロー)する。

 

全額賭け(オールイン)

  上乗せ(レイズ)

 

 フレイヤに配られたカード3枚は流石に裏返したまま、またもやの全額賭け(オールイン)の宣言。

 

「…………俺は下りる(フォールド)する」

 

 固まっていた場を動かしたのはオッタル。

 

「わ、私も下りる(フォールド)

「私もだ!」

下りる(フォールド)!」

 

 符丁で経営者(オーナー)の手を知った招待客(ゲスト)達は内心でせせら笑いながら次々に勝負を下り、残ったのはアルスと経営者(オーナー)のみ。

 双方のコインが全額賭け(オールイン)され、この勝負で決着がつく。

 これで自分の進退が決まるアンナも、最早聴衆と同じく黙ってみている事しか出来ないヴェルフ達も、多くの招待客(ゲスト)達や給仕、美姫達が見守る中で進行役(ディーラー)のフレイヤが交互に二人を見る。

 

「――――では、手札開示を」

 

 厳かな声で発されたフレイヤの求めに先に行動したのはアルスだった。

 伏せられたままだった3枚のカードを表返し、既に表になっているカードと順番を入れ替える。一拍遅れてロイヤルストレートフラッシュを見せて勝利宣言しようとした経営者(オーナー)が椅子を飛ばしながら立ち上がる。

 間違いであってほしいと思いも虚しく、現実はただ非情だった。

 経営者(オーナー)の手札は、ジョーカーを含んだ王冠の絵柄のロイヤルストレートフラッシュ。

 対するアルスの手札は、スライムの絵柄のロイヤルストレートフラッシュ。

 

「ろ、ロイヤルストレートスライム……」

 

 基本的に同じ手札(ハンド)だった時は引き分けとなるが、スライムの絵柄でロイヤルストレートフラッシュを行った場合のみに限ってはより上位の手札(ハンド)として扱われる。それがロイヤルストレートスライムである。

 文字通り、ポーカーにおいて最強の手札(ハンド)であるロイヤルストレートスライムに経営者(オーナー)は信じられぬと机を力一杯叩く。

 

「い、イカサマだ! 手札を確認することなくロイヤルストレートスライムで上がれるなど、不正(イカサマ)に決まってる!」

 

 アルスを指差して糾弾しながら経営者(オーナー)は監視していた護衛達に血走った眼を向けるが、彼らは揃って信じられないとばかりに目を見開きながら不正(イカサマ)を確認できていないと首を小さく横に振る。

 

「証拠はあるのかしら?」

「は?」

「決めつけるというのら、証拠があるのでしょう? 無ければただの言いがかりに過ぎないわ」

 

 更なる糾弾をしようと経営者(オーナー)にフレイヤは冷ややかな言葉を投げつける。

 不正(イカサマ)の証拠があれば既に口にしている。或いは『最大賭博場(グラン・カジノ)』の王たる経営者(オーナー)ならば証拠なしに汚名を着せることも出来ただろうが、この場には公平たる女神フレイヤがいた。

 経営者(オーナー)の力が及ばない文字通りのオラリオの絶対者を前にして、証拠なき追及の手は伸ばせない。

 アルスが勝利する手管が分からず、王たる経営者(オーナー)が敗北して従僕たる招待客(ゲスト)達の戦意は失われてしまった。

 

「他の者達もゲームを続ける気を失ったようだし、残ったのはオッタルだけね。オッタル、勝負を続ける?」

「最早、勝負の意味はありません。この勝負はアルス・クラネルの勝利です」

「と、いうことなのだけれど経営者(オーナー)?」

 

 勝った者の願いを叶えるというのがゲームを始める時に交わした口約。フレイヤがいる手前、ごねて敗北を認めないことは、ただの恥を晒すことにしかならない。

 

「よ、よろしい。彼女(アンナ)には暇を出すとしましょう。思えば異国から来たばかりで疲れているでしょうからな」

 

 衆目の手前もあって態度だけは取り繕いながら、敗北の恥辱にアルスを脳裏で百回殺すほどの殺意を噛み殺す。

 

「これで、よろしいですかな、フレイヤ様?」

「聞く相手が違うわ」

「え?」

 

 フレイヤが聞く相手と指し示したのはアルス。

 

→勝負を続けよう、経営者(オーナー)。金、女、権力…………お互いに賭ける物が無くなるまで、な

 テメェがすってんてんになるまで止める気はない

 

「ははっ、そうだよなアルス! 俺達は冒険者だ! 欲しい物は全部貰っていかないとな!!」

 

 カジノであろうとも冒険者の流儀を発揮するアルスにヴェルフはいっそ清々しい気分になって高笑いし、バンバンとその肩を叩く。ダフネも桜花も、本当に薄っすらとでフレイヤしか気づかないレベルだがオッタルすらも笑っていた。

 

「調子に乗るなよ、ガキが……っ!」

 

 自分から全てを奪おうとしているアルスに取り繕うことも出来なくなった経営者(オーナー)の顔が凶相に染まる。

 

「たかが一度ゲームに勝ったぐらいで何様のつもりだっ!! 娯楽都市(サントリオ・ベガ)から出向しているこの俺を敵に回して生きていけるとでも思っているのか!」

 

 都市・国家の後ろ盾をバックにした恫喝を前に、アルスは静かにフレイヤに勝者として一つだけ願いを聞いてもらいたいと問いかけた。

 

「なにかしら?」

 

娯楽都市(サントリオ・ベガ)と戦争になったら手を貸してほしい

  俺の恋人になってくれ!

 

「ええ、いいわよ。フレイヤの名に賭けて誓うわ。娯楽都市(サントリオ・ベガ)との間に問題が起こったら、フレイヤファミリアはヘスティアファミリアに協力すると」

「な!?」

 

 フレイヤは自身が負けた場合、一つだけどんなことでも勝者の言うことを聞くと口約した。勝者であるアルスはその口約を盾にして経営者(オーナー)が有する娯楽都市(サントリオ・ベガ)の後ろ盾の意味を無くさせた。

 オラリオの最強派閥の片方がヘスティアファミリアについた。この時点でギルドが外交問題を理由にヘスティアファミリアを切り捨てる理由は無くなり、何よりも娯楽都市(サントリオ・ベガ)がオラリオとフレイヤファミリアを敵に回してまで経営者(オーナー)を守るはずがない。

 

「…………フレイヤ様、猛者殿の負け分は相当の額です。帳消しにする代わりに、これからここで起こることに関わらず、目を瞑って頂きたい」

 

 この時点でドロップポーカーでアルスに勝てるビジョンが浮かばない経営者(オーナー)には勝負をひっくり返すしか手は残されていなかった。

 

「何をする気かは知らないけど、いいでしょう。私もオッタルも、これ以上は何もしないし、何も聞かない。ただの観客とならせてもらうわ」

「有難い」

 

 フレイヤの言質を取った経営者(オーナー)は血走った眼で、アルス(Lv.4)ヴェルフ・ダフネ・桜花(Lv.2のモルド・スコット・ガイル)を見据える。

 

「幾らLv.4であろうとも、仲間がLv.2が3人なら数で押し潰せばいいだけだ。ファウストとロロはあの『黒拳』と『黒猫』だ。装備が無ければ実力も発揮できまい! やれ、お前達!」

 

 オッタルと共に下がったフレイヤと入れ替わるように燕尾服に隠せるサイズの武器を取り出した用心棒達が前に出てきて、一斉にアルス達に襲い掛かる。

 アルスの背後から飛びかかってくる偽・ファウストと偽ロロにヴェルフとダフネの二人が間に入り、アルスは何もない背中に手を回して何も無い場所から突如として赤色と黄金色の両手剣を抜き放つ。

 

――――――――――偽・ファウストと偽ロロの こうげき!

 

「おらぁっ!」「やぁーっ!」

 

――――――――――カウンター!

――――――――――ヴェルフとダフネ こうげき!

――――――――――偽・ファウストと偽ロロに ダメージ!

 

 アルスの手に突如として現れた『大獄剣』に気を取られた偽・ファウストと偽ロロは、こちらも突如として現れたヴェルフの『キングアックス』とダフネの『あくまのむち』の反撃に合って弾き飛ばされた。

 ほぼ間を置かずにアルスが『大獄剣』を振り被る。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは 剣を ぶんまわした!

――――――――――用心棒たちに ダメージ!

――――――――――用心棒たちを やっつけた!

 

 四方から襲い掛かった用心棒達はアルスが振り回した『大獄剣』に強かに打ち据えられ、物凄い勢いで壁まで飛んで行く。ただ一人の例外もなく激突した壁を破壊して、その向こうへと行ってしまって戻って来ない。

 どこからか武器を取り出したのと同時にモルド・スコット・ガイルとアルスの燕尾服の変身魔法(モシャス)が煙と共に解け、四人の完全武装している姿が明らかになった。

 

「な、何故、ど、どこから武器を…………いや、それよりもお前達は――――『不冷(イグニス)』に 『月桂の遁走者(ラウルス・フーガ)』!? 」

「おいおい、大男を無視してやるなよ」

「…………別に構わん」

「ようやく喋れるよ。黙っているっていうのも疲れるもんだね」

 

 一人だけ名前を出されなかったことを揶揄うヴェルフ、ちょっと内心で傷ついた桜花が武器を構え、口を出したくて堪らなかったダフネは肩を回す。

 ギルドが公開してるヴェルフとダフネのLv.は3。想定を遥かに超えるヘスティアファミリア側の戦力に経営者(オーナー)が次の手を模索する暇もなく、アルスは『大獄剣』を右手だけで持ち、左手を開いた状態で天井に向ける。

 

「ラリホーマ」

 

――――――――――アルスは ラリホーマを となえた!

――――――――――用心棒たちを ねむらせた!

 

 Lv.3の耐久力のお蔭で苦痛に呻きながらも意識があった偽・ファウストと偽ロロの二人と、実力の底辺に合わせて威力を抑えた『ぶんまわし』を受けてまだ意識があった者達が残らずアルスが放った『催眠魔法(ラリホーマ)』によって眠りに落ちる。

 

「ご期待の用心棒達はこれで暫く起きないぜ」

 

 アルスの魔法の効果を知るヴェルフの言葉を信じたくはないが、今だ誰一人解いて戻って来ないことに歯噛みする経営者(オーナー)

 

「くっ、こうなったらガネーシャファミリアを中に――」

「そうなったら私は聞かれたことに正直に答えるしかないわね。ゲームに負けた経営者(オーナー)が突然、ヘスティアファミリアに襲い掛かったと」

「ぐぅっ……!?」

 

 ここに来てフレイヤを招き入れたことが足を引っ張ってきた。

 フレイヤに経営者(オーナー)を庇う理由はなく、警備を行っているガネーシャファミリアに嘘を吐く必要がないのだから不利になるのはどちらか明白。

 勝利を確信したかのように、アルスは『大獄剣』を床に突き刺して柄の上に両手を重ねる。

 

「この手だけは使いたくなかったが――」

 

 ゲームを続けるのは論外。盤外戦も同様で、既に経営者(オーナー)は劣勢どころか詰みの一歩手前の状況にある。だからこそ、経営者(オーナー)は嘗て女神(アストレア)の厚情を引き出す為に情けなく泣きながら平伏して許しを請うた時のように手段を選ばなかった。

 丁度良く、アルスによって弾き飛ばされた護衛によって開けられた壁の向こうには、とある人物を拘束監禁している部屋があった。

 

「起きろ、絶†影! お前の仕事だ!!」

 

 経営者(オーナー)が呼びかけた二つ名に桜花とダフネが驚愕し、バキンと何かが壊される音が連続した後に開いた穴を潜って現れた人物にヴェルフとアルスすらも瞠目する。

 

「ウフフ………経営者(オーナー)、ずっと拘束放置プレイしておいて勝手なんだから」

 

 青いバニースーツとうさみみバンドにあみタイツまで同系色に纏めた黒髪の女が、普段の彼女ならば絶対にしないであろう妖艶とした笑みを浮かべてアルス達に歩み寄り、用心棒の一人が落とした槍を拾い上げる。

 

「そ、そんな、まさかっ……!?」

「ふざけろよ、おいっ!?」

「み、命っ!?」

 

――――――――――呪われしヤマト・命が あらわれた!

 

 

 

 

 

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