ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第74話 臍出しの衣装とは、年齢の割に攻めてんね

 

 

 

 

 

 両手に引き千切ったかのような鎖が付いた手錠を力尽くで破壊し、高級そうな絨毯に落とすのは青いバニースーツを着て瑞々しい肢体を晒すヤマト・命。

 自由になった右手で用心棒の一人が落とした『はがねのやり』を拾い上げたところで、命は自分を驚愕の眼差しで見つめる桜花に気づいた。

 

「あら? 桜花じゃない。アンタみたいな頭でっかちでもこういう所に出入りするのね。それにアルス達も…………ウフフ、アンタ達も刺激が欲しいのね。だったら、たーっぷりサービスしてあげるからアタシと一緒に遊びましょ?」

 

 後ろで纏めた長い黒髪を掻き上げて微笑んで蠱惑的に誘う様子は、それこそ歓楽街にいる娼婦のようで彼女の仲間であるカシマ・桜花は顔を真っ赤にさせて目を背けた。桜花の反応を面白がった命はわざとらしく身悶えし、バニースーツに包まれた豊満な胸を両腕で持ち上げて強調する。

 

「みっ、みっ……命! な、なんとはしたないっ……!」

「桜花……アンタってほんとウンザリするほどマジメな男ね。忠実なだけならイヌでも出来るわよ。ねえ…………アタシのイヌにしてあげましょうか? 世界で一番幸せなペットにしてあげる」

 

 一瞬強く胸に目を向けた後、シドロモドロに目を逸らした桜花にため息を漏らした命に以前胸ポロした時に顔を真っ赤にして逃げた面影はない。

 

「命、一体どうしたの!?今は冗談を言っている場合じゃないのよ!」

 

 女であることを強く主張する命にダフネ・ラウロスが叫ぶ。

 煩わし気にダフネを見た命はお道化た振る舞いで大仰に肩を竦める。

 

「ダフネったら相変わらず口だけは五月蠅い女ね。楽しい雰囲気がシラケちゃうじゃない! いい? 今のアタシにとって以前のことには全く興味ないわ。今のアタシが興味あるのは経営者(オーナー)だけ。アタシの身も心も経営者(オーナー)のモノなのよ」

経営者(オーナー)! お前、命に何をした!」

 

 まるで人格が変わったかのような振る舞いを見せる命に、流石に我慢が出来なかったヴェルフ・クロッゾがこうなった大本であろう経営者(オーナー)を問い質す。

 どうやら命とアルス達が知り合いであると悟った経営者(オーナー)はジリジリと立ち位置を移動しながら、その目は逃げ出すタイミングを見計らっていた。

 

「はっはっはっ! 俺がしたのは洗脳効果がある呪いの装備(カースウェポン)を着させたに過ぎん。誤算だったのは、Lv.2以上の相手には直ぐに洗脳しきれなかったことだが、馬鹿なことに仲間と一緒に来ていたから捕まえて拘束しておくのは楽だったぞ」

 

 仲間というのがヒタチ・千草であることは想像がつき、桜花はそちらを気にしたがヴェルフは命が着ているバニースーツが呪いの装備(カースウェポン)であること聞いて思い当たることがあった。

 

「洗脳効果のあるバニースーツ(呪いの装備)だって? まさか『妖魔のバニースーツ』か!? 持ってるだけで罪となる御禁制の装備だぞ!」

「その通り! これは俺がとある筋から偶然手に入れた呪いの装備(カースウェポン)で、着用した者の人格を狂わせ、時間はかかったが今や『絶†影』は俺に従順だ」

 

 洗脳効果によって人格を狂わされ、完全に正気を失っている命は顔を青くしている桜花とダフネを見据えて舌なめずりしている。

 

「耐異常のスキルを目覚めることが多いLv.2以上に効果があるかは未知数だったが、ランクアップした年齢から見て将来性と極東という希少性、弱小ファミリア所属であり、弱みから賭けに出た甲斐はあった」

「そういうわけだから、アンタたちの下には戻らないわ。アタシはこれから経営者(オーナー)とこのカジノを盛り上げていくんだから!」

「いい加減にしなさい、命! 今はそんなバカげたことを言っている時じゃないのよ!」

「こんないかがわしい場所、命には相応しくない! さあ、千草を助けてタケミカヅチ様の元に帰ろう!」

 

 ようやく我を取り戻した桜花が大股で命に歩み寄り、剥き出しの肩を掴もうと自身の手を伸ばす。

 

「えいやっ!」

「ぐあっ!?」

 

――――――――――命の こうげき!

――――――――――桜花に ダメージ!

 

 手を避けた命は淀みなく動き、一回転して放たれた『はがねのやり』を使っての横薙ぎの一撃が桜花を弾き飛ばした。

 大柄の桜花が一直線に吹っ飛んできたのをアルス・クラネルが受け止める。

 

「気安く触ろうとしないでくれる?女の誘い方も知らないの……? アンタ、相変わらず何も分かってないのね」

 

 振り切った姿勢から『はがねのやり』をクルクルと回して、穂先を床に向けた命はアルスに支えてもらわないとダメージで一人で立てない桜花を冷たく見下す。

 しかし、桜花は諦めるつもりなどないとばかりにフラつく足でアルスから離れて一人で立つ。

 

「どうやらキツ~いお仕置きが必要みたいね。アンタたちみたいなしつこいヤツらはアタシの蹴りで黙らせてあげるわ!」

「くっ、今の命は危険だ! アルス、やるしかないぞ!」

 

ヴェルフが持っていた『ドラゴンシールド』を構えた直後、踏み込んだ命が『はがねのやり』を振り被る。

 

「跪きなさい!」

 

――――――――――呪われし命は なぎはらった!

 

「ぐっ!?」「ぬぅっ!?」「なっ!?」「ぐあっ!?」

 

――――――――――アルスたちに ダメージ!

 

 まるで『はがねのやり』が伸びたかのように錯覚するほど一撃が一同を纏めて薙ぎ払った。

 Lv.5のアルスや防御力の高いヴェルフには大したものではなかったが、Lv.2の桜花には先のも合わせてそこそこのダメージだったようで片膝をつく。

 

「おかしいぞ!? 命の一撃が強すぎる!」

「まさか中層での経験でそんなにステイタスが上がったの?」

「確かに上がりはしたが、ここまで劇的じゃないはずだ」

 

 中層での一件の後、タケミカヅチより拠点でステイタスの更新を行い、以前より数値が上がった後に仲間内で模擬戦をした際に体感したものよりも今の一撃はずっと重い。

 ヴェルフが『妖魔のバニースーツ』の効果に一つにステイタスアップが含まれているのかと、鍛冶師の思考に引っ張られたところで命が微笑みながらウィンクする。

 

「楽しませてちょうだい! さあ!」

「ぐっ!?」「ぬぅっ!?」「なっ!?」「ぐあっ!?」

 

――――――――――呪われし命は サキュバスウィンクを はなった!

――――――――――アルスたちに ダメージ!

――――――――――桜花を ねむらせた!

 

 飛んできたピンク色のハートが接触した瞬間に弾け、体の芯に響くような衝撃に堪らずアルス達が一歩下がった中で桜花が崩れ落ち、大きな寝息を立て始めた。

 技の副次効果でか突如として眠り出した桜花を一瞬だけ見たダフネは何をやらかすか分からない命に注視しながら口を開く。

 

「理由はなんでもいいから攻撃しないと!」

「やりにくいが……おらぁっ!」

 

――――――――――ヴェルフの こうげき!

 

「アタシに触らないで!」

 

――――――――――呪われし命は ひらりと みをかわした!

 

 今は後衛で守らなければならない者がいないのでヴェルフが前衛に立って攻撃を仕掛けるが、命は飛び上がって軽やかな動きで『キングアックス』を躱す。武器を手放し、空中で体を捻って攻撃を放ったばかりのヴェルフに向けて両手を組み合わせて人差し指を向ける。

 

「奪ってあげる、アンタの全てを!」

「ぬぅっ!?」

 

――――――――――呪われし命は セクシービームを はなった!

――――――――――ヴェルフに ダメージ!

――――――――――ヴェルフは 呪われし命に みりょうされた!

 

 命の手から放たれた巨大なピンク色のハートを咄嗟に翳した『ドラゴンシールド』で受けたヴェルフは蹈鞴を踏んだ後に片膝をつく。その直後、着地しようとした命の背後に回り込んだアルスが『大獄剣』を振り被っていた。

 躱すにしても受けるにしても、命の行動には着地というワンクッションが必要で、アルスの一撃は確実に当たると見ていたダフネが確信するほどだった。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスの こうげき!

――――――――――呪われし命は ひらりと みをかわした!

 

 命は振り返ることも着地することもなかった。背後からの攻撃に対して足を大きく広げてアルスの目測を誤らせた。

 開脚をして着地のタイミングをズラした命は両手を絨毯につき、衝撃を吸収する為に曲げた腕を大きく伸ばしてアルスに向かって自分の体を飛ばした。

 

「ほうら!」

 

――――――――――カウンター!

――――――――――呪われし命の ヒップアタック!

――――――――――アルスに ダメージ!

 

 命の突き出した臀部から発生した衝撃波がアルスを吹っ飛ばす。

 まさかそのような攻撃方法があるなど予想だにしていなかったアルスに、一足早く着地した命が追いすがり懐に入り込む。

 

「イッツショータイム! 可愛がってあげるわ!」

 

――――――――――呪われし命は アルスに ぱふぱふを してあげた!

――――――――――呪われし命 「ぱふぱふ ぱふぱふ…………

――――――――――アルスは きもちが よさそうだ!

 

 振り払おうとしたアルスの頭をその豊満な胸で抱え込み、手で押し込んでいく。アルスは『サタンヘルム』を被っているので胸の感触は露出している顔の前面の一部しか感じられないが、あまりの気持ちよさに恍惚の表情を浮かべる。

 

「なにやってんの!」

 

――――――――――ダフネは ヴェルフに ツッコミをいれた!

――――――――――ヴェルフは われにかえった!

――――――――――アルスは うっとりしている……。

 

「うぉっ!? や、やっべぇ…………頭ん中が命一色になっちまったってたぜ」

 

 ダフネに『ツッコミ』を入れられたヴェルフは『魅了状態』から回復し、先程まで頭の中を支配していた命の姿を追い出すように首を何度も横に降る。

 そうしている間にガシャンと背中から落下したアルスに跨ったまま、上に投げて落ちてきた『はがねのやり』を掴んだ命が振り下ろそうとするのを見たダフネは口をプクリと膨らませる。

 

「やぁーっ!」

「ちっ!?」

 

――――――――――ダフネは 炎を ふきだした!

――――――――――呪われし命は ひらりと みをかわした!

 

 口から放たれた『火ふき芸』を飛び退いて躱した命は邪魔をされた苛立ち混じりに向かってくるダフネに組んだ人差し指を掲げる。

 

「アンタも全てを奪ってあげるわ!」

「そんなのがウチに効くわけないでしょうが!」

 

――――――――――呪われし命は セクシービームを はなった!

――――――――――ダフネに ダメージ!

――――――――――しかし ダフネは 余裕しゃくしゃくだ!

 

 ダフネは巨大なハートを受けてもダメージだけで魅了されることなく、更に大きくもう一歩下がって距離を開けた命を追撃することなく横になったまま動かないアルスの下に辿り着いた。

 

「アンタも目を覚ましなさい!」

 

――――――――――ダフネは アルスに ツッコミをいれた!

――――――――――アルスは われにかえった!

 

 頭を叩く動作で『ツッコミ』を入れたことで『魅了状態』が解除されたアルスが自身の背後で立ち上がるのを感じながら舌打ちを零す。

 

「男連中は邪魔! 経営者(オーナー)がアンナを連れて逃げたからそっちを追いかけて!」

「で、でも、今の命の相手を一人でするのは――」

 

 気が付けば、先程までいたはずの経営者(オーナー)の姿が見えない。魅了されている間にアンナを強引に連れてどこかに行ったのだと分かっても、何故か向上しているステイタスと命が元から持っている身軽さと巧みさはダフネ一人に任せるには不安が残る。

 物凄く機嫌の悪いダフネに恐る恐る言いかけたヴェルフの背後に、天井から何かが降りてきて着地する。

 

――――――――――クロエとルノアが あらわれた!

 

「困ってるニャ?」

「これが正しく良いタイミングってやつね」

「クロエ、ルノア」

 

 変装している姿のままだが、天井から降りてきたのはクロエ・ロロとルノア・ファアストの二人。

 経営者(オーナー)は自身の手の者で捕まえたような物言いをしていたが、二人のことを知っている者ならば簡単に捕まるような性質ではないことは分かっていた。どういう経緯でこの場に現れたのかは分からないが援軍として見るならば極上。

 

「偽物の噂を確かめる為に潜入してみれば、随分と事になってるじゃない。この手助けは高いわよ?」

「まあ、偽物を先に倒しっちゃった借りでパーってことにしてやるニャ」

「そういうこと。私達がタダで助けるなんて滅多にないんだから」

 

 今の命を相手にするには対魅了の装備を持っていないアルスやヴェルフよりも同性の二人の方が適任。

 

「二人がいるなら任せても大丈夫か…………って、アルスいねぇ!?」

 

 ヴェルフがアルスに経営者(オーナー)を追おうと声をかけようとしたところで、先程までそこにいたはずのアルスの姿はそこになかった。

 

「アルスならミャー達が来た瞬間には、その経営者(オーナー)の後を追って行ったニャ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 命とアルス達が戦闘になり、自身への注意が薄れたと見るや経営者(オーナー)は隙を見てアンナ・クレーズを強引に捕まえて奥の通路へと逃げ出した。唯一、ダフネだけは気付いたが男二人が命に魅了され、『火吹き芸』を放った直後ということもあって助けに行けなかった。しかし、廊下を走る経営者(オーナー)は安心など出来なかった。

 通りかかった従業員や給仕、進行役(ディーラー)達に自分の後に来る者がいるのなら足止めをしろと命令していた後から悲鳴や破壊音が聞こえてきたからだ。

 徐々に迫ってくる巨大な気配に追い立てられるように、裏口から逃げようとしていた経営者(オーナー)は地下へと追い込まれていく。

 

「きゃっ!?」

 

 下へ続く長い階段を駆け下り、大声を張り上げて慌てる見張りの者達に障壁を開けさせること数度、道の終点にあった巨大で重厚な円形の金属扉を開けて経営者(オーナー)によってアンナは『最大賭博場(グラン・カジノ)』の地下金庫に放り投げられた。

 

「ここまで来れば、もう安心だ……」

 

 ドワーフの強い力で固い床に叩きつけられたアンナを見もせず、金庫の扉を内側から閉じた経営者(オーナー)は流れ出た汗を燕尾服の袖で乱暴に拭う。

 痛みに呻きながら上半身を起こしたアンナは棚に積み上げられた大量の金貨(ヴァリス)に気づく。

 

「お前はまだ来たばかりだから、ここが初めてだったな」

 

 アンナの視線が大量の金貨(ヴァリス)に向けられたのを見た経営者(オーナー)は安全な場所に来られたからか、余裕を取り戻していた。

 

「ここにあるのは億は優に下らない。『最大賭博場(グラン・カジノ)』の全財貨、エルドラド・リゾートの宝物庫…………まさに黄金郷だよ」

 

 棚には積み上げられた金貨(ヴァリス)と、庶民であるアンナの目には価値すらも分からない美術品や工芸品、果ては武具からアイテムが所狭しと棚に並べられている。

 

「この金庫を自由に開けられるのは俺だけだ。この金庫はダンジョンの『白銀金属(ミスリル)』で作られている。侵入することも出来なければ、破壊することも出来はしない。ここに籠りさえすれば、こちらから出て行かない限りは外部から手出しは不可能だ」

 

 自慢げに金庫の壁をノックした経営者(オーナー)は、ダンジョンの深層でしか手に入らない稀少金属で出来ているという金庫が破られることはないと信じて疑わない。

 

「約束を反故にして、フレイヤファミリアと半ば敵対したんだ。もしかしたら『娯楽都市(サントリオ・ベガ)』も俺を『エルドラド・リゾート(ここ)』の経営者の地位から引きずり下ろすかもしれねぇ。そうなれば折角集めた女共もパーだ。このままじゃあ腹の虫が収まらねぇ」

「ひっ!?」

 

 座り込んで尻餅をついた状態でいたアンナは経営者(オーナー)から血走った眼を向けられて悲鳴を上げる。

 

「出るまでの間、アンナよ。お前には憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ。暫く楽しめねぇならお前を徹底的に可愛がってやる。そうすりゃ俺の溜飲も少しは下がる。奴らにお前の泣き叫ぶ声を聞かせてやれないのが残念だがな」

「や、やだ……」

 

 何か良からぬことを思いついたように口元を歪めた経営者(オーナー)は後ずさるアンナに向かって手を伸ばす。 

 

「泣いたって無駄だ。誰も助けになんて――」

 

――――――――――アルスの こうげき!

 

 金庫の中を突如として振動が襲う。

 振動は余韻を残して直ぐに収まったが、経営者(オーナー)はアンナに伸ばしていた手を止めて背後を振り返り、入り口にある重厚な扉がビクともしていないことを視認して、向こう側に自分を地下金庫に追い詰めた巨大な気配がそこにいることを感じ取る。

 

「この衝撃、もう来たか。フハハハハハハハ! 無駄だ無駄だ!」

 

――――――――――アルスの はやぶさのごとき 高速の 2回こうげき!

 

 次に起こった振動は二度で、先のものより大きく連続していたが、やはり扉は変わらず入り口を閉ざしている。

 

「ははははははっ! 何度やろうとも同じこと! 例えオラリオ最強のオッタルといえども、この金庫を破れるものか!」

 

――――――――――アルスは、全身全霊切りを はなった!

 

 今度の衝撃は先の二回とは比べ物にならないほどに大きく、地下金庫全体が撓んだかのように中にいる人間や物が一瞬浮き上がり、棚に並べられていたコインの何枚かが床に落ちる。更に深層の素材を金にあかせて買い占めて作らせたはずの扉にほんの微かにだが亀裂が生じてしまっていた。

 

「はは、は、は? お、おい? この扉は『白銀金属(ミスリル)』で――」

 

 狙い通り威力を調整して扉に僅かに切っ先が食い込んだ『大獄剣』を見ながらアルスが大きく息を吸い込むと、金庫内にいる経営者(オーナー)達にも感じられるほどのゾッとするほどの力が扉の向こうに集まる。

 刀身の根元に触れたアルスが切っ先方向へと左手を動かすと、炎が生まれて刀身を覆い尽くす。

 

――――――――――アルスは、ビッグバンを ひきおこした!

 

 アルスが再び『大獄剣』を両手に持ち、集まった力を解放すると閃光と灼熱が膨れ上がり大爆発が起こった。

 始原の爆発の名を冠された全てを溶かし消してしまう爆発は『大獄剣』の切っ先で解放され、重密度の閃光と極高温の衝撃波が撒き散らされ、『エルドラド・リゾート』全体が激しく鳴動する。

 

「なあああああああああああああああ!?」

「きゃああああっ!?」

 

 重厚な扉が爆砕し、立っていた経営者(オーナー)を奥の棚へと叩きつけ、咄嗟に身を屈めたアンナを吹っ飛ばすほどの衝撃波を金庫内に巻き起こす。固定化されていた棚に乗っていたコインや品物も次々に床に落ち、甲高い音を連続させても『ビッグバン』のあまりの爆発音に耳が一時的に麻痺しているアンナには届かなかった。

 

「……ぁ……」

 

 『ビッグバン』の熱量で融解し、最早跡形も無くなり扉ごと周囲の壁を抉り取ったアルスは必要の無くなった『大獄剣』を背の鞘に直し、金庫内に足を踏み入れる。

 

「…………この、俺が……こんな、ところで……終わるもの、か…………」

 

 ようやく五感が回復してきて顔を上げたアンナと違い、壁に叩きつけられた痛みに呻き声を上げながら経営者(オーナー)はある種の不屈の思いで体を起こす。

 

(そうだ、俺は『エルドラド・リゾート』の経営者(オーナー)テリー・セルバンティス。奴らは身分を偽ってカジノに潜入し、あまつさえ金庫を破壊して盗みを働こうとした賊だとガネーシャファミリアに捕まえさせ、時間を稼いでいる間に逃げればいい)

 

 先程の地震にも匹敵する振動と貴賓室(ビップルーム)の騒動があったのだから、護衛を兼ねるガネーシャファミリアの介入は不可避。

 アルス達の周りはどういう方法を使ったかは分からないが身分を偽って『大賭博場区域(カジノ・エリア)』に侵入している時点で聴取の対象となる。ここは嘘でも敗北を認め、経緯を知りたいガネーシャファミリアに聴取を受ける際にアルス達を告発して混乱が生まれた隙に逃亡を計画する。

 何故か入り口に足を踏み入れたまま動かないアルスを見ながら、生き汚い経営者(オーナー)が自らの生存戦略を練っていると、シンと静まり返った地下金庫に繋がる通路向こうからカツカツと特徴的な靴音が近づいて来る。

 

「――――全員動くな」

 

 現れた人物から放たれた怜悧な声が金庫内に響き渡る。

 進行役(ディーラー)のものとも似た店の警護服(スーツ)を着た藍色の髪をうなじの位置で切り揃えた麗人は、金庫内にいる者達をその整った怜悧な面差しで見渡す。

 

象神の杖(アンクーシャ)

  臍出しの衣装とは、年齢の割に攻めてんね

 

象神の杖(アンクーシャ)……?」

 

 アルスが発した二つ名は、ガネーシャファミリア団長シャクティ・ヴィルマのもの。

 Lv.5の中でも最上位に位置する、化け物揃いのオラリオの中にあって上澄み中の上澄みの冒険者に経営者(オーナー)はタイミングの良さに、介入が早過ぎることにも思い至らないまま痛む体を押して駆け寄った。

 

象神の杖(アンクーシャ)、助けてくれ! 奴は宝物庫を破壊した賊だ! 今すぐ捕まえてくれ!」

 

 しかし、シャクティは経営者(オーナー)の予想とは違って動こうとしない。

 感情を窺えない目を細め、薄汚れてしまったので自分に確信を持てないのかと苛立ち紛れにシャクティに掴みかかりたくなるのを抑え、理性的になろうと努める。

 

「…………『エルドラド・リゾート』の経営者(オーナー)、テリー・セルバンティス」

「ああ、そうだ! 私がこの金庫の確認を彼女(アンナ)としていたところ、この賊が急に現れたのだ! 賊を捕まえるのはガネーシャファミリアの役割だろ! さっさと働け!」

 

 違うとアンナが叫ぶ前にシャクティは経営者(オーナー)に非友好的な目を向けながら口を開く。

 

「その命令は聞けんな、テッド(・・・)

「は?」

 

 命令に従わない怒りを覚える前に、シャクティの口から飛び出した自身の本名に経営者(オーナー)は絶句する。

 

「告発があった。貴様の本当の名と、これまでの蛮行のな」

 

 本名を知られてしまっている時点で既に詰みであるということを理解している経営者(オーナー)、テッドは膝から床に崩れ落ちる。

 

「色々と聞きたいことがある。貴様をギルドに連行する。神妙にしろ」

 

 アルスの前に出たシャクティの宣言に、膝をついていたテッドはガクリと項垂れた。

 そうして事件は幕引きとなった。

 

――――――――――ダフネの こうげき!

――――――――――呪われし命に ダメージ!

――――――――――呪われし命を たおした!

――――――――――アルスたちは 10000ポイントの経験値を かくとく!

 

 シャクティがテッドを拘束している間にアルスは目星をつけていものをパッと拾い上げる。

 

――――――――――アルスは レシピブック 『しゃくねつの武具』を 手に入れた!

――――――――――インフェルノソードの レシピを 覚えた!

――――――――――サラマンダーの レシピを 覚えた!

――――――――――フレイムカッターの レシピを 覚えた!

――――――――――しゃくねつのツメの レシピを 覚えた!

――――――――――紅蓮のローブの レシピを 覚えた!

――――――――――アルスは 『ミスリルこうせき』を 手に入れた!

 

 

 

 

 








 呪われし命の強化の理由は『妖魔のバニースーツ』によるもので、戦い方に関しては自前のものです。武神タケミカヅチに鍛えられているので、これぐらいはということで。

 常時『デビルモード』状態みたいものです。

 魅了が効く男にはLv.差を覆せるけど、同性にはあまり効果がない。ドラクエ11で呪われしマルティナにシルビアが有効に戦えたのと同じ理由です。本作ではダフネ=シルビアの配役なので。






――――――――――ベルは グランドクルスを覚えた!




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