ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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今話でアルテミス編終了です。


第77話 さようなら、アルテミス様

 

 

 

「氷鷹!」

 

――――――――――ヴェルフは、魔剣を はなった!

 

 アルス・クラネルの言葉に決意を固めたヴェルフ・クロッゾは魔剣を放って少なくなった足場の再構築とモンスター達の足止めを同時に行い、このパーティーの指揮官であるダフネ・ラウロスを見る。

 

「…………ダフネ、俺抜きで持ち堪えられるか?」

「何か思いついたわけ?」

 

 真剣な顔で言ったヴェルフの言葉に覚悟を見て取ったダフネは溜息を漏らしながら問う。

 

「この場で、魔剣を打つ」

 

 ヴェルフの返答に、ダフネは彼らしいと口の端を吊り上げた。

 

「ここで!? 無茶だ!」

 

 カシマ・桜花が目を剥いて反対する。

 魔剣を打つには相応の準備が必要だ。それは材料や設備だけでなく、時間も含まれている。様々な物が必要があることを考えると、ダンジョン内で鍛冶を行うなど出来るはずがないと誰もが思う。

 

「材料と道具、そして燃え滾る情熱さえあれば、武器はどこでも打てる」

 

 アルスが持つ『どうぐぶくろ』には『ふしぎな鍛冶台』と素材があり、例えダンジョン内であろうとも鍛冶は出来る。皮算用では決してない。

 

「鍛冶を始めれば、俺は戦いに参加できなくなる。前から考えていた魔剣さえあれば、必ず『アンフィス・バエナ』を倒せる! アルス、俺を信じてくれ!」

 

→やってくれ、ヴェルフ。俺の命、お前に預ける

 それよか俺達だけなら逃げれるはずだ

 

「ああもう、分かった! そこまで言ったんだ。奴を倒せなければ末代まで恨むぞ」

「任せろ!」

「その代わり俺も残る。鍛冶師が鍛冶に集中できるように守りは必要だろう」

「…………分かった。ヴェルフ、その魔剣(氷鷹)を渡して。周りのモンスターはウチと命と千草で押さえる。アルス、アンタ一人で『アンフィス・バエナ』を任せるよ」

 

――――――――――アルスは ハイマジックポーションを つかった!

――――――――――アルスの MPが かいふくした!

 

 ダフネの指示に頷いたアルスが『どうぐぶくろ』から『ハイマジックポーション』を取り出して飲み、底が見え始めていた『精神力(MP)』を回復させる。

 

「ダフネ殿、それではアルス殿一人に負担が大きすぎます」

 

 ヴェルフに『どうぐぶくろ』を預けているアルスに一人で『アンフィス・バエナ(階層主)』の相手をさせるなど自殺行為だとヤマト・命は反対する。だがダフネはそれに首を横に振った。

 

「これが丁度良い戦力分けになる、悔しいけどね。文句があるなら、さっさと倒してみせな」

 

 ダフネはアルスを信じている。だから、彼の負担を減らす為にも自分達が早くモンスター達を倒さなければならないと分かっているのだ。

 

「やってみせます!」

 

――――――――――命の デビルモード!

――――――――――命は こうげき力など さまざまな能力が すこし あがった!

――――――――――命は わるい効果に かかりにくくなった!

 

 ここからは時間との勝負。命も『デビルモード(とっておき)』を使い、出し惜しみなしで戦う覚悟を決める。

 

「えいやっ!」

 

――――――――――命は サキュバスウィンクを はなった!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

――――――――――しびれくらげを ねむらせた!

 

 『アンフィス・バエナ』が身悶えして氷を破壊したことで自由になったモンスター達に放たれる命の『サキュバスウィンク』。多くのモンスターがダメージを受け、『しびれくらげ』が眠るのを見ることなく、ヴェルフは預かった『どうぐぶくろ』から『ふしぎな鍛冶台』を取り出す。

 

――――――――――ふしぎな鍛冶セットがある。ここで 武器や防具などの 装備を作ったり うちなおして 強化できるようだ

 

「『ようがんのカケラ』『ばくだん石』『ヘビーメタル』を二つずつと『赤い宝石』を一つ――」

 

 『ふしぎな鍛冶台』に素材を入れていく。

 

――――――――――火力上げを おこなった!

 

「始めるぞ」

 

 炉に煌々と炎が灯り、誰に言うでもなく呟きながらハンマーを手にする。

 

「ライデイン」

 

――――――――――アルスは ライデインを となえた!

 

『ォオオオ!』

 

――――――――――アンフィス・バエナは 紅霧を はなった!

――――――――――赤いキリの チカラで 魔法は かきけされた!

 

 『電撃魔法(ライデイン)』は上空から降り注ぐので、『アンフィス・バエナ』が魔法を打ち消そうと『紅い霧』を放とうとすればどちらか片方の首を上に向けなければならない。実際、『アンフィス・バエナ』はアルスの読み通りの行動を取った。

 片方の首が『電撃魔法(ライデイン)』の対処を行っている間にアルスが接近すると、もう片方の首の口の奥に蒼炎が生まれる。

 

『オオオッ!』

 

――――――――――アンフィス・バエナは 焼夷蒼炎を はきだした!

 

「イオラ」

 

――――――――――アルスは イオラを となえた!

――――――――――焼夷蒼炎と イオラは 相殺された!

――――――――――アルスに ダメージ!

 

 放たれた『焼夷蒼炎(ブルー・ナパーム)』の中心に向かって投げつけた『爆発魔法(イオラ)』が爆発し、目論見通りに散らした。未だ爆発の余波が残る中心部をダメージを負いながらも突破する。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは、全身全霊切りを はなった!

――――――――――アンフィス・バエナに ダメージ!

 

 陣中突破を果たして振るわれた二撃の『全身全霊斬り』が片方の首の竜鱗を叩き割り、確かな深手を与えて『アンフィス・バエナ』に苦痛の悲鳴を上げさせた。

 

「えいやっ!」「やぁーっ!」「っ!」

 

――――――――――命は なぎはらった!

――――――――――ダフネは 炎を ふきだした!

――――――――――千草の こうげき!

――――――――――まもののむれに ダメージ!

 

 『デビルモード』になった命が最前衛になり、その後ろをダフネがフォローしながら自身も敵を撃破していく。二人を無視して桜花とヴェルフの下に向かおうとしたモンスターをヒタチ・千草が射貫いていく。

 

――――――――――上下打ちを おこなった!

 

 カンカン、とチカラ強く上下を叩くヴェルフの頭に戦闘のことは無かった。

 鍛冶をしている時に雑念が混じれば良い武器は造れない。ただ只管に集中し、自らの裡に没頭していく。打つ。叩く。そして、ひたすらにハンマーを振るう。それだけだ。それしか出来ないのだから、それだけに専念するしかない。

 

――――――――――2倍打ちを おこなった!

 

 カン、と一際強く槌が振り下され、滴る汗を拭うこともせずにヴェルフは出来栄えを確認する為に目を凝らす。

 

――――――――――ヴェルフは いま作っている インフェルノソードを じっくりと眺めた。

――――――――――いま 仕上げても、 ちょっと できの悪い インフェルノソードに なりそうだ……

 

「俺の腕じゃあ、足りないってのか!?」

 

 やはり無謀な賭けだったのかという思いが脳裏を過る。

 このまま打っても出来栄えの悪い武器になってしまう。あれだけ啖呵を切っておきながら情けない有り様に、何故か昔に言われた言葉を思い出した。

 

『おい、出来損ないのクロッゾ!』

 

 嘗て王国(ラキア)の王都バルアで開かれた夜会で、ニヤニヤと唇を釣り上げた有力貴族の子息達の顔が思い浮かぶ。

 

『鉄の声を聞け、鉄の響きに耳を貸せ、槌に想いを乗せろ。でなければ。真の剣は打てん』

 

 父であるヴィル・クロッゾが鬼気迫った表情で、槌を振り下ろしながらヴェルフに告げた言葉が耳の奥で木霊する。

 貴族としての復権を本懐としつつも、この時の父親の意志と情熱は本物だった――――――――――ヴェルフが『神の恩恵(ファルナ)』を刻まれ、『魔剣血統(クロッゾ・ブラッド)』のスキルに目覚めて魔剣を打ったあの日までは。

 

『ヴェルフッ、魔剣を打て!!』

 

 魔剣の試射を終え、クロッゾの一族郎党がヴェルフに魔剣を求めた。

 顔も知らない縁者が、母親が、そしてあれほど魔剣に代わる武器を武具を作り上げるのだと人生を賭けていた父さえも。

 

『ヴェルフ、お前が魔剣を打てば王国(ラキア)は盛り返す! そして我々「クロッゾ」も再び栄華を極めることが出来る! 富も地位も名誉もな! 輝かしい一族の栄光が蘇るのだ!』

 

 魔剣に代わる武器の作成に心血を注いでいた鍛冶師の姿はもう無かった。そこにいたのは過去の栄華を取り戻すことに固執し、突如として降って湧いた幸運に目が眩んで息子の気持ちを顧みることすら忘れた父親の姿だった。

 

『魔剣を打て、ヴェルフ』

 

 魔剣の生産を強要する一族の中で、唯一人押し黙っていた寡黙な祖父ですらそう(・・)なってしまったのだ。失望したヴェルフが一族と決別するのに時間はかからなかった。

 

「何が鍛冶貴族だ! 何が栄誉だ! ふざけろ……っ!!」

 

 魔剣を求める一族達との絆を自ら捨て、ラキア王国の主神アレスの従属神フォボスの手助けで剣製都市ゾーリンガムに渡っても鍛冶を続けた。

 

『――――ヴェルフ、私のファミリアに入らない?』

 

 神ヘファイストスにファミリア入りを誘われ、彼女が作った一振りの剣を見た時、ヴェルフは打ち震えた。

 『神の力(アルカナム)』は勿論、特別な力など一切持ち得ない女神が打った至高の作品を超える武器を作りたいと思ったのだ。

 

『ヴェルフなら魂を預ける半身を作ってくると信じた』

「そうだ、武器は使い手の半身だ! 苦楽を共にしてやれる、道を開いてやれる魂の片割れだ!」

 

 神アポロンが開いた『神の宴』でアルスが言ってくれた言葉がどれだけ嬉しかったことか。

 

『俺の命、お前に預ける』

 

 信じてくれたアルスの期待に応える為にはヴェルフの全てを懸けるしかない。

 ヴェルフはハンマーを振り下ろす。渾身の力を振り絞って打ち込む。打つ。 ひたすらに叩く。

 

――――――――――ひっさつチャージ!!

――――――――――ヘファイストスの炎

 

 全てを賭けて最高の作品を作り上げるべく、全身全霊でその一振りに魂を込めてハンマーを振るう。

 

――――――――――かいしんの てごたえ!

 

 今まで感じたことのない手応えがハンマーから返ってきた。

 忘我の境地にいたヴェルフは恐る恐る『ふしぎな鍛冶台』を覗き込む。

 

――――――――――ヴェルフは いま作っている インフェルノソードを じっくりと眺めた。

――――――――――いま 仕上がれば、 とてもいい できのよさの インフェルノソードに なりそうだ!

 

 後は地金に水を入れれば想定以上の魔剣が出来上がる。ヴェルフが喜色満面で振り返ると、頭上に影が差した。

 

――――――――――アンフィス・バエナは クラーゴンを ほうりなげた!

 

 双頭で『クラーゴン』を咥え上げた『アンフィス・バエナ』がヴェルフと桜花がいる場所に向かって放り投げたのだ。

 

――――――――――アンフィス・バエナは 海中にもぐって 移動しはじめた!

 

「うぉおおおおおおおおおお!?」

 

 ヴェルフを守る為に動けない桜花が叫びを上げ、鍛冶に集中し切っていて咄嗟のことで反応出来ないヴェルフがただ見上げるしか出来ない中、アルスが飛んだ。

 

「イオラ、イオラ」

 

――――――――――アルスは 連続で イオラを となえた!

――――――――――クラーゴンに ダメージ!

 

 二発の『爆発魔法(イオラ)』を叩き込み、僅かに『クラーゴン』の体が流れる。そこへ二刀を持って真後ろを向きかねないほどに体を捻ったアルスが飛び込む。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは 剣を ぶんまわした!

――――――――――クラーゴンに ダメージ!

 

 斃すことよりも叩き飛ばすことを重視した攻撃は思惑通りに効果を発揮し、『クラーゴン』はヴェルフ達の頭上を通過して近くの氷に砕いて海中に没する。蓄積したダメージで暫く行動不能には出来たが、全力の一撃を叩き込んだアルスはヴェルフ達の無事を確認することを優先してしまった。

 直後、アルスがいた足元の氷を下から砕いて『アンフィス・バエナ』が襲い掛かってきた。

 

「ぐっ!?」

 

――――――――――アンフィス・バエナは 大きく クチをひらき アルスめがけてくらいついた!

――――――――――なんと アルスは たべられてしまった!

――――――――――アルスは 攻撃を武器で はじいた!

 

 大口を開けて噛みついてきた『アンフィス・バエナ』にアルスは咄嗟に両手の剣で牙が食い込むのを防ぐ。しかし、上手く間に挟めた『ドラゴンキラー』と違って無理に挟んだ『ほのおのつるぎ』がバキリと音を立てて刀身に罅が入る。

 アルスは身動きが取れない中で、アンフィス・バエナの喉の奥から蒼炎が湧き上がってくるのを見た。

 

「アスト――」

『オオオッ!』

 

――――――――――アンフィス・バエナは 焼夷蒼炎を はきだした!

――――――――――つうこんの いちげき!

――――――――――アルスに ダメージ!

 

 『鋼鉄化魔法(アストロン)』で防ごうとしたが蒼炎が沸き上がる方が圧倒的に早い。『アンフィス・バエナ』に噛みつかれたまま、避けようもなく防御もしようもない状態でまともに『焼夷蒼炎(ブルー・ナパーム)』を受けてしまった。

 

――――――――――アンフィス・バエナは アルスを ほうりなげた!

――――――――――アルスに ダメージ!

 

「アルス!?」

 

 その瞬間、パーティーの目が蒼炎に焼かれて氷を叩き割って海中に落ちていくアルスに向いた。

 

――――――――――マーマンKは 命を ひきずりこんだ!

 

「命!?」

 

 氷上の端に立っていた命の足を掴んだ『マーマン』が一瞬の内に海の中へと引きずり込んだ。命も抵抗しようとしたが、そのタイミングで『デビルモード』が切れ、更に次々と他の『マーマン』達が命の四肢を掴んで水中へと引っ張っていく。

 

――――――――――アルテミスの加護が はつどうした!

――――――――――アルスが 水に かわった!

 

 海中にあっても中々消えない蒼炎にダメージを積み重ねていたアルスの体が水に溶けた。

 蒼炎が標的を失って周囲の海水を蒸発させ、やがて消え行く中で水となったアルスは不思議な光景を見ていた。

 

『ベル君、お願いだ。立ってくれ!』

 

 薄い皮膜越しのように霞んで見える視界の先で、地面に四肢を付いて項垂れているベルを鼓舞して槍を――――矢を持つヘスティアの姿がある。

 

『目を開いて、耳を澄まして――ー――ーあの子は今も泣いてるんだ。アルテミスを、救ってくれ!』

 

 歪む視界、伝わる思考がアルテミスに何があり、これからどうなるかを理解させた。

 

――――――――――アルスは ルーラを となえた!

 

 水に溶けた自らの存在をかき集め、『瞬間移動魔法(ルーラ)』で氷上へと上がったところで発動を止める。

 

「アルス!」

 

→ヴェルフ、剣を

 アルテミス様の所へ行かねば!?

 

「ああ、使え! お前の剣、『インフェルノソード』だ!」

 

 『ほのおのつるぎ』の刀身に黒を追加したような片手剣を投げつけてヴェルフは崩れ落ちる。

 片手剣を受け取ったアルスは『インフェルノソード+3』が持つ確かな力に一瞬瞠目し、期待以上の武具を作り上げてくれたのならば応えないわけにはいかないと刀身の根元に触れる。

 切っ先方向へと左手を動かすと、カジノで『大獄剣』で使った時とは比べ物にならないほどの轟炎が生まれる。轟炎は刀身を覆い尽くしても勢いは止まらず、ダンジョンの中なのに太陽が生まれたかのように熱量を増していく。

 ダフネを攻撃して後一歩まで追い込んでいた『アンフィス・バエナ』が自らを燼滅するに足る力を前にして優先順位を変更した。

 

『オオオッ!』

 

――――――――――アンフィス・バエナは 焼夷蒼炎を はきだした!

――――――――――カウンター!

――――――――――命は フツノミタマを となえた!

――――――――――アンフィス・バエナに 重圧が おそいかかった!

 

 太陽が放たれる前に『焼夷蒼炎(ブルー・ナパーム)』で逆に焼き尽くしてやろうとした『アンフィス・バエナ』の行動を遮るように重圧結界が襲い掛かった。

 海中で『マーマン』の群れに集られている命が放った『フツノミタマ』を見た桜花は走り出した。

 

「ダフネ、道を作ってくれ!」

 

 ギリギリで『フツノミタマ』の範囲外にいたダフネは痛む体を押して、『ドラゴンバスター』を持つ桜花の意図を察して最後の力を振り絞る。

 

――――――――――ダフネは 魔剣を はなった!

 

 桜花の走る先に、『アンフィス・バエナ』側に近づくほど大きくなるように意図して幾つも氷柱を産み出す。

 

『ォオオオ!』

 

――――――――――アンフィス・バエナは 紅霧を はなった!

 

 『フツノミタマ』を掻き消さんと『アンフィス・バエナ』が『紅い霧』を吐き出し始めたところで、桜花が氷柱を三段跳びして重圧結界の上に飛び上がった。

 

「バイシオン!」

 

――――――――――ダフネは バイシオンを となえた!

――――――――――桜花の こうげき力が すこし あがった!

 

 重力に従って重圧結界に突入した途端、体が何倍もの重さになったような感覚と共に急降下しているところに、ダフネが気絶する寸前に『攻撃力上昇魔法(バイシオン)』を使ったことで黄金の光が纏わりつく。

 狙うはアルスによって竜燐を破壊され、大きく傷ついている頭の根本。

 

虎喰(こくう)!!」

 

――――――――――桜花は 虎喰を はなった!

――――――――――かいしんの いちげき!

――――――――――アンフィス・バエナに ダメージ!

――――――――――赤いキリの チカラで 魔法は かきけされた! 

 

 『紅い霧』によって『フツノミタマ』が掻き消されるが、一瞬早く桜花の『虎喰』が決まって片方の首が切り落ちた。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォッ!?』

 

 赤い霧の残滓を纏わりつかせた桜花がそのまま切り落とした首と共に海中に落ちる中で、残った首が痛みか怒りかで咆哮を上げる。

 

「行け、アルス!」

 

 ヴェルフの言葉を合図に、力を貯めて貯めて貯め切ったアルスが疾走する。

 片方の首になって速度が増した『アンフィス・バエナ』もまた、この一撃に全てを賭けるように突進する。

 

『オォッ!』

「っ!」

 

――――――――――アンフィス・バエナの こうげき!

――――――――――カウンター!

――――――――――千草の こうげき!

――――――――――アンフィス・バエナに ダメージ!

 

 数は大分減ったとはいえ、Lv.1でありながらたった一人でモンスター達と戦っていたヒタチ・千草が『アンフィス・バエナ』の左目にピンポイントに矢を射た。

 

「ルーラ」

 

――――――――――アルスは ルーラを となえた!

 

 アルスが『アンフィス・バエナ』の目に矢が突き刺さった方へとステップし、姿を捉えようと首を巡らせるより早く『瞬間移動魔法(ルーラ)』を使って天井付近へと一瞬で移動する。

 強過ぎる勢いのまま回転して天井に足から着地したアルスが斜め下にいる『アンフィス・バエナ』に向かって飛んだ。太陽の如き熱量を放つ轟炎が斜め上から向かってくるのに『アンフィス・バエナ』も気づいて残った首を擡げる。

 

『オオオッ!』

 

――――――――――アンフィス・バエナは 焼夷蒼炎を はきだした!

――――――――――アルスに ダメージ!

 

 蒼炎を放って迎え撃つが、貯めていない咄嗟の『焼夷蒼炎(ブルー・ナパーム)』に一撃必殺の威力は無い。アルスはダメージを負い、蒼炎を全身に纏わりつかせながら突破。双頭の首の根本に轟炎の『インフェルノソード+3』を突き刺した。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスは、ビッグバンを ひきおこした!

――――――――――アンフィス・バエナに ダメージ!

 

 ヴェルフが作り上げた『インフェルノソード+3』によって増幅された『ビックバン』は、抑え込んでいた閃光と灼熱を存分に解放して『アンフィス・バエナ』の魔石どころか細胞の一片すら残さずとばかりに焼却する。

 

――――――――――アンフィス・バエナを たおした!

 

 周辺の氷どころか範囲外の海水すらも、水蒸気すら残さずに焼き尽くす。抉り取られた部分の海水が他から流れ込むのと同時に意識を失っている命を抱えた桜花が海面に顔を出した。

 14階層の気温が10℃は上がったかのような放射熱で姿が揺らめくアルスが、傷つき倒れた千草を前に動きを止めたモンスター達に目を向けると、階層主を倒されたことで恐れを為したように退却を始めた。

 

――――――――――まもののむれは にげだした!

――――――――――アルスたちは 25000ポイントの経験値を かくとく!

 

 モンスター達の退却を見送り、『インフェルノソード+3』を鞘に直したアルスは蒸気で濡れた髪を掻き上げて仲間達を回復させるべく歩き出す。

 

『――――ありがとう、オリオン。さようなら、アレトゥサ』

 

→アルスだっての……

  さようなら、アルテミス様

 

 アルスの右目から一滴だけ雫が垂れて頬を流れて行った。

 

 

 

 

 






後少し、アンフィス・バエナを倒すのが遅れたらダンジョン下層より汲み上げられた海水が14階層より上に押し上げられ、そのまま地上まで溢れかえるところでした。

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