ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第79話 プンプン、あれぐらい自分で対処できたもん!

 

 

 

 

 

 27階層から始まる『巨蒼の滝(グレート・フォール)』は29階層までの3層も文字通り貫いて繋がった多層構造になっている。滝、とあるように大瀑布から周辺の通路に霧の如く水飛沫が飛び散り、近づき過ぎれば雨に濡れたかのように全身ずぶ濡れとなるだろう。

 基本的にこの3層は中央を貫く『巨蒼の滝(グレート・フォール)』の周りを円を描くように通路が出来ている。この大瀑布からは時折水棲モンスターが飛び出してくることもあり、ギルドが公表している正規ルートは階層の壁伝いに進むことを推奨している。

 しかし、壁伝いが必ずしも安全とは言えない。

 『巨蒼の滝(グレート・フォール)』から溢れた水が集まり、水流を作って川があちこちに流れていて、ここからや大瀑布から現れる水棲モンスターは中層22階層に出現している個体とほぼ同じ種である。だからといって油断すると、水の中に引き込まれて最悪の場合は『巨蒼の滝(グレート・フォール)』に落とされてしまう危険性もある。

 しかも、この3階層には階層移動をする特殊な階層主アンフィス・バエナがいる。出現時期には第一級冒険者ですら水辺を避けるという。かといって、水辺から離れていれば安心とは限らない。

 

――――――――――マムーの こうげき!

――――――――――アルスは ひらりと みをかわした!

 

 カエルとゴリラを足して2で割ったような姿にモヒカンのような鬣を生やした緑色の身体を持つ巨獣のモンスターが巨腕を叩きつけてきたのを、アルス・クラネルは下手に受けるのは危険だと判断して後方に大きく飛び退いた。直後、先程までアルスがいた場所に叩きつけられた『マムー』の巨腕が固い地面を陥没させ、撒き散らされた土の破片がアルスの『あつでのよろい』にガンガンと大きな音を立てる。

 当たる土の破片の衝撃は一瞬アルスの動きを止めるほどで、ベル・クラネルと対峙していた紫色の毛皮を持つ邪悪なウサギの『アルミラージ』の変異強化種である『ゴールデンコーン』は見逃さなかった。

 

――――――――――ゴールデンコーンは マホトーンを となえた!

――――――――――アルスは、呪文を ふうじられた!

 

 目の前のベルや、最後衛でヴェルフ・クロッゾに守られながら魔法を放つ隙を伺っていたリリルカ・アーデでもなく、『マムー』と戦っていたアルスは予想外の魔法封じに反応出来なかった。

 

――――――――――ゴールデンコーンは ピオラを となえた!

――――――――――ゴールデンコーンの すばやさが かなり あがった!

 

「えいやっ!」

 

――――――――――命の こうげき!

――――――――――ゴールデンコーンは すばやく みをかわした!

 

 『デビルモード』となっている命が死角に回り込んで『デーモンスピア』を振るうが、『速度上昇魔法(ビオラ)』を使って全身に黄色の光を纏わせた『ゴールデンコーン』は上がった速度で身を翻す。

 その間にも『ゴールデンコーン』の『敵魔法封印魔法(マホトーン)』によって魔法を封じられて、アルスが一瞬硬直した隙を『マムー』は見逃さなかった。

 『マムー』が四足で飛び上がり、空中で体を捻って振り返りながらアルスの目前で着地する。

 

「おらぁっ!」

 

――――――――――ヴェルフは 身構えつつ こうげきした!

――――――――――カウンター!

――――――――――マムーは 足を おおきく あげて ヴェルフを けとばした!

――――――――――ヴェルフに ダメージ!

 

 アルスの硬直と『マムー』の飛び上がりを見た瞬間に両者の間に『シールドアタック』で飛び込んだヴェルフが代わりに放たれた両足の蹴飛ばしに吹っ飛ばされる。

 

「バギマ!」

 

――――――――――ダフネは バギマを となえた!

 

 背後に庇ったアルスごと蹴飛ばされたヴェルフを、反転して追撃しようとした『マムー』と命の攻撃を躱した『ゴールデンコーン』が重なったタイミングで、ダフネ・ラウロスが『真空魔法(バギマ)』を放った。

 

――――――――――まもののむれに ダメージ!

 

 見た目通りに頑強な『マムー』は踏み出しかけた一歩を押し留められる程度のダメ―ジ。逆に『ゴールデンコーン』はリリルカが杖を自身に向けたのを察して自ら飛んで『真空魔法(バギマ)』の真空の刃に吹っ飛ばされることで射角から外れた。

 射角を外そうとも、空中にいる『ゴールデンコーン』の顔はリリルカの方を向いている。

 

――――――――――ゴールデンコーンは マホトラを となえた!

――――――――――リリルカの MPが とられた!

 

 リリルカを包み込んだ紫色の霧が彼女から離れ、『ゴールデンコーン』へと吸い取られる。

 

「『精神力(マインド)』を吸い取られ――!?」

 

 『敵魔力吸収魔法(マホトラ)』によってMPを吸収されたリリルカの視線の先で、着地した『ゴールデンコーン』が雄叫びを上げるのを冷静に見ていたベルは既にブーメランを振りかぶっていた。

 

――――――――――ゴールデンコーンは はげしい いなずまを よびよせた!

 

「やっ!」

 

――――――――――カウンター!

――――――――――ベルの こうげき!

――――――――――ゴールデンコーンに ダメージ!

 

 『いなずま』を放ちかけていた『ゴールデンコーン』に最短距離でぶち当たった『サザンクロス』。

 ダメージよりも攻撃を阻むのを重視して放たれたベルの攻撃を受けた『ゴールデンコーン』は衝撃を受け流すようにクルリと後方一回転する。

 

「よくもやってくれましたね!」

 

 『ゴールデンコーン』が対処している間にMPを取られたリリルカが『らいていの杖』の掲げ、その先に無数の煌めきが天に差し上げられた『らいていの杖』の杖先一点へと渦巻いていく。

 

「――――ベギラゴン!」

 

――――――――――リリルカは ベギラゴンを となえた!

 

 超高温の熱風が凄まじい奔流となって、迸る閃光に空気と入り混じって燃え上って撃ち放たれた。

 本来ならば扇状に大きく広がる『閃光魔法(ベギラゴン)』が収束されて放たれたとはいえ、それでも『ゴールデンコーン』が咄嗟に回避行動を取っても逃げられない範囲。『ゴールデンコーン』は回避は不可能と見て耐えることを選んだが、その選択は失敗だった。

 

――――――――――ゴールデンコーンに ダメージ!

――――――――――ゴールデンコーンを たおした!

 

 少しの間は耐えたが熱線に飲み込まれて『ゴールデンコーン』は魔石とドロップアイテムを残して消滅する。

 

「はっ!」

 

――――――――――アルスの はやぶさのごとき 高速の 2回こうげき!

――――――――――マムーに ダメージ!

 

 ダフネに代わって前衛に戻ったアルスの『はやぶさ斬り』で二刀による三連撃が『マムー』を切り刻む。ダメージを受けても未だ倒れぬ『マムー』を見たダフネとカサンドラ・イリオンが目配せをする。

 治癒師であるカサンドラが命と同じ『デーモンスピア』を両手に握って突貫する。

 

「バイシオン!」

 

――――――――――ダフネは バイシオンを となえた!

――――――――――カサンドラの こうげき力が すこし あがった!

 

 ダフネの『攻撃力上昇魔法(バイシオン)』によって黄金の光を纏ったカサンドラが迫る姿に恐怖心を覚えたのか、後退する素振りを見せた『マムー』の動きを命が見逃さない。

 

「逃がしません!」

 

――――――――――命は サキュバスウィンクを はなった!

――――――――――マムーに ダメージ!

 

「やぁーっ!」

 

――――――――――カサンドラは けもの突きを はなった!

 

 『サキュバスウィンク』でのダメージ自体は大したことは無かったが後退の足は鈍った。そこへ飛び込んだカサンドラが振り上げた『デーモンスピア』が『マムー』の頭に突き刺す。

 上昇している攻撃力と合わせて『けもの突き』の効果でけもの系モンスターにダメージは1.5倍となる。

 

――――――――――マムーに ダメージ!

――――――――――マムーを たおした!

――――――――――まもののむれを やっつけた!

――――――――――アルスたちは 1406ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――まもののむれは 魔石を 落としていった!

――――――――――ゴールデンゴーンは おうごんのカケラを 落としていった!

 

「わ、私が下層のモンスターを倒せるなんて……!」

 

 ジーンと今の手応えに浸るように『デーモンスピア』を抱えるカサンドラに、『マムー』の『けとばし』を庇って受けて吹っ飛ばされていたヴェルフの下へ駆け寄っていたアルスが口を開く。

 

→カサンドラ、ヴェルフの回復を

  『マムー』に大半のダメージは俺が与えたものだけどな!

 

「はい、喜んで!」

 

 アルスはまだ『敵魔法封印魔法(マホトーン)』で回復魔法を使えないので、カサンドラはニコニコ笑顔で『アメイジングタクト』に持ち替えながらヴェルフの下へと向かう。

 

「あいてて…………戦闘前に自分で『守備力上昇魔法(スカラ)』使ってなかったらやばかったかもな」

 

→すまん、魔法を封じられて隙を晒した

  プンプン、あれぐらい自分で対処できたもん!

 

「そこは感謝で良いって。こういう時の盾役だからな」

 

 『ドラゴンシールド』に攻撃を受けたので見た目のダメージは無いが、大盾を持っていた手を通して『けとばし』の衝撃が体の奥深くにまで浸透している。アルスに気にするなと言いながら体を起こそうとしたヴェルフが痛みに顔を顰めたところで、『アメイジングタクト』を持って両膝をついて集中していたカサンドラがカッと目を開く。

 

「ベホイム!」

 

――――――――――カサンドラは ベホイムを となえた!

――――――――――ヴェルフの キズが かいふくした!

 

 やや長い集中から放たれた金色の光はヴェルフに降り注ぎ、途端に顰められていた顔から力が抜ける。

 アルスが『魔法封じ状態』になっているので、時間経過で状態異常が解けるまでは回復と休息に徹するのが最善とダフネは判断。指示を出して思い思いに休息を取る面々を見ながら自身も手頃な岩に腰を下ろす。

 

「流石は下層と言った方が良いのかね」

 

 ただ無為に休息を取るのは無駄でしか無く、リリルカは自身の『魔力の息吹』とカサンドラの『治癒魔法(ベホイミ)』を掛け合わせて、味方単体のMPが自動で回復する『女神の息吹』を各々にかけて回りながら反応する。

 

「この3層が特別だと思いますけどね。個々の強さの上下の振り幅が大きくて、強いモンスターは深層並って異常過ぎます。しかも、場合によってはアンフィス・バエナ(階層主)まで現れるとなれば、どんな魔境ですか」

「それでも皆さんは凄いです。私なんか『改宗(コンバージョン)』しても何も出来ていません」

「【聖竜の祝福を受けし者の加護(スキル)】に目覚めるまでは仕方ないさ」

 

 モンスター専用の探知系スキル【八咫黒鳥】で周囲を警戒している命に、ヴェルフがクラネル兄弟を除くヘスティアファミリアに入った者が須く抱く無力感を気にする必要は無いと声をかける。

 

「自分を卑下することは無いよ。随所で良いフォローをしてくれたお陰で戦闘が楽に進んでいる。今は焦らずやっていくしかないよ」

「分かってはいるのですが……」

 

 続くダフネのフォローにも命の表情は暗いままだった。

 

「み、命さんのお陰で私も『マムー』にトドメを入れることが出来ました」

「今の出来ることをやればいいんですよ。実際、こうやって命さんが警戒してくれたりするのも助かってますしね」

 

 カサンドラとベルも加勢し、ちょっとの休息のはずが『インフェルノソード+3』を座りながら抱えて寝ているアルスを除いた全員に励まされ、命もようやく気持ちを持ち直したようで少し表情が明るくなった。反対にどこか思案気な面持ちなリリルカにヴェルフが気がついた。

 

「どうした、リリ助? 腹でも減ったか」

「ヴェルフ様の中でリリは小さな子供ですか」

 

 カクリと右肩を落としたリリルカは姿勢を戻しながら、ヴェルフの分かった上でのニヤリとした笑みを睨み付ける。

 

「大したことではありません。さっき使った『閃光魔法(ベギラゴン)』は扇状に広がるところを直線状に収束することで威力を上げようと考えたのですが」

「上手くいかなかった、と?」

「ええ」

「でも、十分に凄い威力だったよ。現に『ゴールデンコーン』は倒してたし」

 

 ダフネの確認に頷いたリリルカに、ベルが首を傾げる。

 

「持続的な攻撃力という意味では目論見通りでしたが、感覚的に最大値は上がっていません」

 

 扇状に広がる部分を直線状に収束しても、目論んだ威力上限値はそのままだったことがリリルカが思案気な理由だった。

 

「恐らくリリ達の魔法は初期に使えるモノを除き、威力を下げることは出来ても恣意的に最大値を上げることは難しいのかもしれません」

 

 段階で言えば一番下にある魔法ならば多少の威力の上限を図ることが出来るが、『火炎魔法(メラ)』が『火炎魔法(メラミ)』を超えることは無いというのが分かったのが、この三日間(間に休養日を設けている)で27階層から29階層を攻略している間の試行錯誤の結果だった。

 リリルカと、ヘスティアファミリアの頭脳役であるダフネは顎に手を当てる。

 

「まあ、確かに単純な威力だけで言うなら『閃光魔法(ベギラゴン)』を放つよりも、『爆発魔法(イオラ)』を二発放った方が高かった。けど、そうなると『精神力(MP)』の消耗が大きい。単純に効率を考えるなら『閃光魔法(ベギラゴン)』の方がいい……」

「現状では魔法の威力を上げるのは難しいとなると、俺達独自だが新しい魔法の習得を待つしかないか」

 

 ヘスティアファミリアでは新しい魔法を習得したら、ダフネの提案で習得した魔法がどれだけの『精神力(MP)』を必要とするのかの検証を行っていた。威力の上限が上げられないのならば、ヴェルフとしては魔導士であるリリルカならばより上位の魔法に目覚めるのを待つのが良いだろうと楽観的に思った。

 しかし、リリルカは首を横に振る。

 

「それでは一種の思考停止です。必ず新たな魔法に目覚めるとは限りませんし、現状維持に甘んじていては成長はありません。試行錯誤を続けなければ」

 

 ああでもないこうでもないと一人でブツブツと呟いているリリルカの留まらない向上心に感心したダフネも真面目に考える。

 

「一つの魔法で駄目なら複数の魔法を組み合わせるとかは? ほら、25階層でメルトア相手に使ったみたいな。後はさっき使ってくれた『女神の息吹』みたいに魔法と技能を掛け合わせてみるとか」

 

 25階層のメルトア戦で、事前準備としてアルスの『電撃魔法(デイン)』、ベルの『地雷魔法(ジバリア)』、リリルカの『冷気魔法(ヒャド)』を組み合わせた『氷雷陣』を仕掛けた。元々は19階層で『サボテンゴールド』相手に偶然タイミングが合ったアルスの『閃光魔法(ギラ)』とベルの『地雷魔法(ジバリア)』が『火炎陣』となったことで生まれた連携魔法。

 

「魔法同士や技能と組み合わせる、ですか……」

 

 先程の仲間にかけて回った『女神の息吹』のように魔法と技能を組み合わせれば別の効果を発揮することも思考の埒外にあった。リリルカは一つの魔法での威力向上を目指していたが、仲間と協力するなどの柔軟さが失われていたことに気づいたところで、ドスンドスンと断続的な地響きと大きな足音が聞こえてきた。

 

――――――――――サイクロプスが あらわれた!

 

 現れた足音の主は青い肌をした一つ目の巨大なモンスター。17階層に現れる階層主『ゴライアス』には及ばないが、アルス達の二倍以上の背丈を有しており、右手に『天然武器(ネイチャー・ウェポン)』の棍棒を持っている。

 『サイクロプス』は警戒を高めているアルス達を認識すると持っていた棍棒を両手に握り、大きく斜め前方に飛び上がった。

 

――――――――――サイクロプスは ランドインパクトを はなった!

 

「ぐっ!?」「うっ!?」「きゃっ!?」「ぬぅっ!?」「なっ!?」「きゃぁっ!?」「うぐっ!?」

 

――――――――――アルス達は すっころんだ!

 

 振り上げた棍棒が力の限り地面に叩き付けられ、巨人な体格に見合った力でダンジョンそのものが揺れたかと錯覚するほどの衝撃と巻き上がった土砂によって全員が大なり小なり体勢を崩す。

 『サイクロプス』はアルス達が体勢を崩したのを確認して突進してくる。

 

「ちっ!? ヒャド!」

 

――――――――――リリルカは ヒャドを となえた!

 

 体重と装備が一番軽いリリルカが真っ先に姿勢を正し、向かってくる『サイクロプス』の足を少しでも止めて仲間達が戦闘に戻れるように『冷気魔法(ヒャド)』を放った。最速で放て、且つ物理的な障害になるように個体である氷の塊が『サイクロプス』に向かう。

 リリルカが放った『冷気魔法(ヒャド)』を見たアルスは尻餅をついた姿勢のまま右手を『サイクロプス』に向ける。

 

「メラミ」

 

――――――――――アルスは メラミを となえた!

 

 『爆発魔法(イオ)』では『冷気魔法(ヒャド)』の邪魔にしかならず、『閃光魔法(ギラ)』では足止めの効果は薄い。溜めの必要があったが『火炎魔法(メラミ)』ならばリリルカと同じように『サイクロプス』の足を止めるぐらいの威力はある。溜めの時間の所為でアルスが立ち上がるのが遅れるが、その間にベル達の姿勢は直る。

 二人が放った魔法には足を止める程度の威力しか無く、人並みの知性を持たないモンスターにも自らを害する力は無いと本能で判断した『サイクロプス』。この時、アルス達が最もやられたら嫌な行動は迎撃よりも防御よりも、無視して突破すること。『サイクロプス』は結果的に最も最適な判断をした。

 パーティーの距離的に、『サイクロプス』から遠かったが先に放ったリリルカの『冷気魔法(ヒャド)』と近かったアルスが遅れて放った『火炎魔法(メラミ)』が僅かに違う角度から全く同じ場所に、同時に着弾した時、異変が起こった。

 

――――――――――メラミと ヒャドが まじりあい すさまじい エネルギーが ほとばしる!

――――――――――偽・メドローアが  はなたれた!

――――――――――かいしんの いちげき!

 

 熱と冷という方向性は真逆でありながら全く同じエネルギー量の『冷気魔法(ヒャド)』と『火炎魔法(メラミ)』が混じり合い、別種のエネルギーとなって『サイクロプス』を襲った。

 

――――――――――サイクロプスに ダメージ!

――――――――――サイクロプスを たおした!

――――――――――アルスたちは 792ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――サイクロプスは 欠けた魔石を 落としていった!

 

 凄まじいエネルギーは胴体中央を空間ごと大きく抉り取り、そこにあったであろう魔石の一部まで巻き添えにしたこともあって体も灰となって消えてゆく。後に残ったのは欠けた魔石だけ。

 

「い、今のは――」

 

 理屈は分からない。論理的に破綻している。どんな相乗効果が起こったとしても、あのような現象が起こることはありえない。

 リリルカの求める暗中に先に光が灯ったこの瞬間は明確な隙だった。リリルカがいたのはパーティーの最後尾。本来ならばこの位置にダフネがいるのだが、先程の『サイクロプス』の『ランドインパクト』によって体重の軽いリリルカは吹き飛ばされ、最も背後の川に近い位置にいた。

 

――――――――――マーマンダインが あらわれた!

 

 川から『マーマン』の上位種である『マーマンダイン』が飛び出した。

 

「後ろ――!?」

 

 『マーマンダイン』が最初に現れるのは22階層。前に『クラーゴン』に22階層に落とされた時に遭遇経験のあった命が、モンスター探知系スキル『八咫黒鳥』の効果で注意喚起を促すが、水中を飛び出してきた『マーマンダイン』の行動の方が早い。

 

――――――――――マーマンダインは こちらが みがまえるまえに おそいかかってきた!

 

 思考を『サイクロプス』の一部を抉り取った現象に割いていたリリルカには、命の敵接近警告に反応が鈍い。振り上げられた鋭い爪を躱す術も受ける余裕も無かった。

 

――――――――――マーマンダインは するどいツメを ふりおろした!

――――――――――ベルは 攻撃を武器で はじいた!

 

 最も速度に優れたベルの行動は迅速だった。命が声を上げるよりも早く、彼女が顔を後ろに向けようとした瞬間には背後を振り返って疾走し、振り下ろされた『するどいツメ』に持っていた十字型のデザインをしているブーメラン『サザンクロス』を伸ばしてギリギリで受ける。

 

「ベル!」

 

 ヴェルフが歓喜の声を上げるも、攻撃を受け止められた『マーマンダイン』がもう片方の手を振り上げている。連続で『するどいツメ』を放つつもりなのだろう。

 リリルカとベルがいて巻き込みかねない魔法は使えない。位置的にダフネの鞭も同様で、ようやく一歩目を踏み出したところで他の者達の次の行動ではどうやっても間に合わない。リリルカもようやく振り返ったところで、ベルもまた疾走の勢いがついたまま。

 しかし、ベルの目に迷いや焦りは無い。偶然にも左手に持っている『サザンクロス』は十字を描いているので【技能】発動の条件は揃っている。

 

――――――――――マーマンダインは するどいツメを ふりおろした!

――――――――――カウンター!

――――――――――ベルは いのりを こめて  じゅうじを きった!

――――――――――ひかりが じゅうじかと なって マーマンダインを おそう!

――――――――――マーマンダインに ダメージ!

 

 『サザンクロス』の十字が光り輝き、『マーマンダイン』が放った『するどいツメ』を弾き飛ばし、その体に十字の傷を刻みながら弾き飛ばした。

 

「やぁーっ!」

 

――――――――――ダフネの スパークショット!

 

 距離が開いたことで『マーマンダイン』に振るわれるはダフネの鞭の【技能】。

 

――――――――――マーマンダインに ダメージ!

――――――――――マーマンダインを たおした!

――――――――――アルスたちは 203ポイントの経験値を かくとく!

――――――――――マーマンダインは 魔石を 落としていった!

――――――――――マーマンダインは てつのツメを 落としていった!

 

 地面に落ちたのは『マーマンダイン』の魔石とドロップアイテムだけ。命は注意深く自らのスキルを使って周辺を探知して肩から力を抜く。

 

「周辺にモンスターの反応はありません。すみませんでした、リリ殿。自分がもっと早く気づいていれば……」

「いえ、リリも余計な思考に拘ってしまい、反応が遅れました」

「『サイクロプス』を倒したアレに気を取られたんだろ? 仕方ないよ。ウチだって何が起こったんだって考えたんだ。みんな一緒だよ」

 

 謝り会う二人に待ったをかけるダフネ。

 ヴェルフは魔石とドロップアイテムを拾っているカサンドラを見ながら首を傾げる。

 

「それも気になるが、俺としてはベルが『マーマンダイン』に使ったあの光る十字の方が聞きたい。前はあんなの使ったこと無いだろ?」

「ああ、アレは……」

 

 最も疑問にリリルカが言い淀む。

 

「あれはアルテミス様に教えてもらった技だよ」

 

 続きを答えのはベルだった。

 

「旅の途中で、僕にはアルスやヴェルフ達みたいな接近戦用の技が少ないって話をしたら、オリオンならできるって教えてもらったんだ。元は昔にアルテミス様も人から教えてもらった技らしいよ」

「威力は見ての通りです。アルテミス様は生命力を集中させて放出していましたが、魔力持ちが使う場合は魔力で代用出来るようです」

 

 ベルに言わせてしまったことにリリルカが眉間に皺を寄せながら続きを引き継ぐ。

 

「アルテミス様の眷属でも使えたのは今までに殆どいなかったそうです。ベル様は直ぐに使えましたが」

「へえ、割と使い勝手が良さそうだが、リリ助はどうなんだ?」

「リリの場合は普通に魔法を使った方が威力も高いですし、消耗も少ないです。まあ、適性が無かっただけですが」

「カサンドラは?」

「…………同じく適性がなかったみたい」

 

 リリルカとカサンドラには適性がなく、習得できたのはベルだけということらしい。

 

「ただ、使い慣れたアルテミス様ならばともかく、神の眷属が使うと生命力があり過ぎて大威力になり、制御を間違えば魔力どころか生命力まで消費して強い反動で自爆技に成り兼ねないとのことです。出来るだけ威力を絞って撃つのがコツとも仰っておられました。ベル様、あの時(・・・)のようなことは無いように」

「突発的だったから制御が甘くなったかも。次からは気を付けるよ」

 

 あの時(・・・)がアルテミスを失った戦いであったことは明白であるが、気を付けると言ったベルの言葉はどこか空っぽだった。

 

(アンタレスには通用しなかったからね)

 

 ベルは内心で呟く。その目は今を見ていない。そこへアルスが話しかける。

 二人が話し始めたのを見て、ヴェルフの横にやってきたリリルカが口を開きながら『まほうのよろい』を肘で小突く。

 

「…………先に言っておかなかったのはリリ達の責任ですが、ようやく持ち直してきたところにアルテミス様を思い出させては意味が無いですよ、ヴェルフ様」

「すまん」

「そんなに大事なことは先に言っておいてほしかったよ」

「ええ、ダフネ様。次からは先に情報共有をするようにします」

「アンタレスのことが大きかったから……」

 

 後悔と反省を各々が行っている間、命はベルから『グランドクルス』のやり方を遠慮もなく聞いているアルスの姿を眺める。

 

(変に気を使い過ぎるよりも、アルスさんのように普段と変わらない方が良いような……)

 

 命はアルテミスのことは知らないが、その女神とベルに何かがあったらしいことは聞いていた。

 傍から見ても元気がないベルが『グランドクルス』の放ち方を説明している姿を見て、腫れ物のような扱いをするよりかはアルスのような自然体の対応の方が良さそうな気がするが、ヘスティアファミリアに『改宗(コンバージョン)』してから日が浅い為、遠慮して口には出せなかった。

 

「ダンジョン潜りがダメとなると、やっぱりアレか……」

 

 ヴェルフが一案を含む。

 尚、アルスは『グランドクルス』の適性は無かったようでガックリときていた。

 

 

 

 

 









――――――――――アルスは レベル42に あがった!
――――――――――ダフネは レベル34に あがった!

【アルス・クラネル Lv.5(レベル41→42) 称号:『白兎の剣士(ラビット・ソード)
 HP:346(+105)→355(+105) MP:158(+4)→162(+4) ちから:139(+22)→142+22) みのまもり:58(+4)→60(+4) すばやさ:126→129 きようさ:78→80 こうげき魔力:133→137 かいふく魔力:139→140 みりょく:105→109
《魔法》
 【メラ】【メラミ】【メラゾーマ】【ギラ】【ベギラマ】【ベギラゴン】【イオ】【イオラ】【ホイミ 】【ベホイミ】【ベホイム】【ベホマ】【ラリホー】【ラリホーマ】【デイン】【ライデイン】【トヘロス】【ニフラム】【ルーラ】【アストロン】
《技能》
 【かえん斬り】【はやぶさ斬り】【つるぎのまい】【ぶんまわし】【フリーズブレード】【ミラクルソード】【渾身斬り】【全身全霊斬り】【ビッグバン】【覇王斬】
《スキル》
 【二刀の心得】【メタル斬り】【ドラゴン斬り】【聖竜の祝福(ドラゴンクエスト)
《次のレベルまで:39177》】
【そうび みぎて『インフェルノソード+3』 ひだりて『プラチナトレイ』 あたま『プラチナヘッド』 からだ『やすらぎのローブ』『あつでのよろい』 アクセ1 『ようせいの首飾り』 
アクセ2『バトルチョーカー』 】

【ベル・クラネル Lv.4(レベル39) 称号:『白兎の脚(ラビット・フット)
 HP:333 MP:103 ちから:120 みのまもり:49 すばやさ:146 きようさ:140 こうげき魔力:127 かいふく魔力:0 みりょく:133
《魔法》
 【ジバリア】【ジバリカ】【ジバリーナ】【ザメハ】【インパス】【リレミト】
《技能》
 【グランドクルス】【スリープダガー】【ヴァイパーファング】【バンパイアエッジ】【アサシンアタック】【かえん斬り】【ミラクルソード】【デュアルカッター】【シャインスコール】【ぬすむ】【シャドーステップ】
《スキル》
            【二刀の心得】【スライムブロウ】【メタルウィング】【パワフルスロー】【ヒュプノスハント】【タナトスハント】【メタル斬り】【ドラゴン斬り】【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)
《次のレベルまで:4375》 】
【そうび みぎて『きせきのつるぎ』『よるのパピヨン』 ひだりて『サザンクロス』 あたま『しっぷうのバンダナ』 からだ『プリンスコート』『はやてのベスト』 アクセ1『バンデッドグローブ』 アクセ2『天使のサンダル』 】

【リリルカ・アーデ Lv.4(レベル39) 称号:『小さな爆弾娘(リトル・ボマー)
 HP:220 MP:230 ちから:79 みのまもり:40 すばやさ:116 きようさ:113 こうげき魔力:199 かいふく魔力:0 みりょく:103 
《魔法》
 【シンダーエラ】【メラ】【メラミ】【ギラ】【ベギラマ】【ベギラゴン】【ヒャド】【ヒャダルコ】【イオ】【イオラ】【ルカニ】【ルカナン】【ボミエ】【ボミオス】【マヌーハ】【メタパニ】【マホトラ】【マジックバリア】【マホトーン】【マホカンタ】【バイキルト】【ヘナトス】
《技能》
 【魔封じの杖】【しゅくふくの杖】【暴走魔法陣】【魔結界】【ぶきみなひかり】【魔力の息吹】 
《スキル》
 【縁下力持(アーテル・アシスト)】【悪魔ばらい】【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)
《次のレベルまで:6294》 】
【そうび みぎて『らいていの杖』 あたま『しあわせのぼうし』 からだ『プリンセスローブ』 アクセ1『りせいのサンダル』 アクセ2『はくはいのゆびわ』 】

【ヴェルフ・クロッゾ Lv.4(レベル39) 称号:『不冷(イグニス)
 HP:368→392 MP:103→112 ちから:132→143 みのまもり:61→66 すばやさ:53→60 きようさ:55→58 こうげき魔力:0 かいふく魔力:121→133 みりょく:144→156
《魔法》
 【ウィル・オ・ウィスプ】【ホイミ】【ベホイミ】【ベホイム】【スカラ】【モシャス】【トラマナ】【マジックバリア】
《技能》
 【シールドアタック】【まもりのたて】【かぶと割り】【蒼天魔斬】【まじん斬り】【鉄甲斬】【無心こうげき】【すてみ】【はやぶさ斬り】
《発展アビリティ》
 【鍛冶:G】
《スキル》
 【魔剣血統】【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)
《次のレベルまで:2852》 】
【そうび みぎて『キングアックス』 ひだりて『ドラゴンシールド』 あたま『サタンヘルム』 からだ『やすらぎのローブ』『まほうのよろい』 アクセ1『ようせいの首飾り』 アクセ2 『英雄のブーツ』 】

【ダフネ・ラウロス Lv.4(レベル33→34) 称号:『月桂の遁走者(ラウルス・フーガ)
 HP:311→319 MP:96→98 ちから:113→117 みのまもり:50→52 すばやさ:92→95 きようさ:72→75 こうげき魔力:82→84 かいふく魔力:126→130 みりょく:133→136
《魔法》
 【ラウミュール】【ピオラ】【ピオリム】【ボミエ】【ボミオス】【ザメハ】【バイシオン】【リホイミ】【リベホイ】【バギ】【バギマ】
《技能》
 【火ふき芸】【ツッコミ】【らせん打ち】【スパークショット】【愛のムチ】【ポワゾンキッス】【タップダンス】【かばう】【名乗り】【しばり打ち】【スリープダガー】【タナトスハント】【ヴァイパーファング】【ヒュプノスハント】
《発展アビリティ》
 【耐異常:G】
《スキル》
【二刀の心得】【ヒュプノスハント】【鉛矢受難(エリオス・バスシオン)】【月桂輪廻(ラウルス・リース)】【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)
《次のレベルまで:3825》 】
【そうび みぎて『あくまのむち』 ひだりて『ポイズンスケイル』 あたま『知力のかぶと』 からだ『プリンスコート』『はやてのベスト』 アクセ1『おしゃれなベルト』 アクセ2 『ハンサムスカーフ』 】

【カサンドラ・イリオン Lv.4(レベル30) 称号:『悲観者(ミラビリス)
 HP:201→210 MP:145→151 ちから:65→67 みのまもり:34→35 すばやさ:66→68 きようさ:77→80 こうげき魔力:0 かいふく魔力:127→132 みりょく:83→86
《魔法》
 【ソールライト】【キュア・エフィアルティス】【ホイミ】【ベホイミ】【ベホイム】【スカラ】【スクルト】【キアリー】【キアリク】【マヌーサ】【ピオラ】【ピオリム】【バギ】【バギマ】【マホトーン】【マホカトール】【ディバインスペル】【アバカム】
《技能》
 【けもの突き】【黄泉送り】【デビルンチャーム】【炎の旋律】【氷の旋律】【魔結界】【ぶきみなひかり】【水流のかまえ】
《発展アビリティ》
 【治療:G】
《スキル》
 【謳え悲劇世界の女王(ファイブ・ディメンション・トロイア)】【聖竜の祝福を受けし者の加護(ドラゴンクエスト)
《次のレベルまで:1847》 】
【そうび みぎて『アメイジングタクト』『デーモンスピア』 ひだりて『ホワイトシールド』 あたま『きんのサークレット』 からだ【シルクのビスチェ】『スパンコールドレス』 アクセ1『あみタイツト』 アクセ2『ガーターベルト』 】

【ヤマト・命 Lv.2 称号:『絶†影』
《魔法》
 【フツノミタマ】
《技能》
 【ヒップアタック】【サキュバスウィンク】【セクシービーム】【なぎはらい】
《発展アビリティ》
 【耐異常:I】
《スキル》
 【八咫黒鳥】【八咫白鳥】【デビルモード】
《次のレベルまで:》 】
【そうび みぎて『デーモンスピア』 あたま『ぎんのかみかざり』 からだ『布の服』 『バニースーツ』  アクセ1『あみタイツ』 アクセ2『バトルチョーカー』           】






ドラクエ11では『グランドクロス』ですが、本作では元ネタであるダイの大冒険の『グランドクルス』仕様で行きたいと思います。
本来ならばロウが覚える技なのですが、本作展開的にベルが習得とさせて頂きました。

メドローア周りに関してはある程度、本作オリジナルとさせて頂きたいと。本当ならヒャド系は物質として顕在してしまったら理屈が成り立たないのですが、そうなると色々と難しい面もあり何卒勘弁を。
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