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前話から続くボス連戦の二戦目。
対イビルビースト戦になります。
――――――――――イビルビーストAは するどいツメを ふりおろした!
――――――――――アルスに ダメージ!
「っ!?」
空から急接近してきたもう一体のモンスターの鋭い爪による二連撃を受け、唯一襲撃に反応できたアルス・クラネルが攻撃を受けて弾き飛ばされた。
「アルスっ!?」
未だ戦闘者としては甚だ未熟なベル・クラネルは、眼前の敵よりも負傷を負ったアルスの方に一瞬意識を奪われた。時間にすれば1秒や2秒の程度でも、モンスター達が次の行動を起こすには十分な時間。
「わっ!?」
視界の端でもう一体のモンスターがヘスティアの肩を掴み、空に浮かぶのを辛うじて視認した。
「た、助けてくれぇ――っ!?」
振り返った頃には、アルスに攻撃したもう一体のモンスターと共にヘスティアを掴んで飛び去ろうとしていた。
ヘスティアの助けを求める声に応えんとして、どうやってもブロンズナイフを持つ今のベルではモンスターを止められないと瞬時に判断し、武器を投げ捨てて背にあるクロスブーメランに持ち替える。
「駄目です! 下手をしたらヘスティア様に当たりま――きゃっ!?」
リリルカ・アーデの叫びに、全力でクロスブーメランを投擲しようと振りかぶっていた腕を止める。
上層とはいえ、モンスターを殺傷し得るクロスブーメランが万が一でも当たれば、神とはいえ只人と変わらない肉体強度しか持たないヘスティアが危ないと思ってしまったからだった。モンスターに必ずと当てると自信を持てなかったベルの迷い。
「っ!」
その横をリリルカを掻っ攫って抱えたアルスが駆けていく。
「くそっ!」
ベルも遅れまいと、先程捨てたブロンズナイフを拾って走り出す。
アルスがリリルカを抱えていることもあって、低空を飛行する有翼のモンスターを追う二人に直ぐに追いついた。
「なんでモンスターが神様を…………いや、今はそんなことはどうでもいい。リリ、あのモンスターは一体?」
「あれはイビルビースト、『いたずらデビル』のような強化種ではありませんが、中層に現れる獣人系のモンスターの一種です」
『どうの大剣』を持つ所為で、脇に抱えられているリリルカは物凄い揺れながらベルの質問に答えた。
――――――――――イビルビーストAは バギを となえた!
ヘスティアを掴んでいない方のイビルビーストが自分達が追われていると理解して、振り返りながら真空魔法を放つ。
身軽なベルは咄嗟に回避行動に移れたが、リリルカを抱えていたアルスにはその選択は取れなかった。
――――――――――アルスに ダメージ!
「ぐっ!?」
「きゃあっ!?」
リリルカを抱えている方を後方に半身にして庇ったが、その分だけダメージは大きい。
「アルス様、リリなど投げ出せば」
「っ!」
「で、ですがこれではリリはお荷物です!」
リリルカが邪魔になりたくないと暴れるが、半身を血に染めながらもアルスは足を止めない。
「リリはお荷物なんかじゃない! 僕たちはあのモンスターのことを知らない。教えて、あのモンスターのことを」
先の魔法攻撃を踏まえて、今度はイビルビーストの挙動を見逃すまいと睨みつけるように見上げながら、リリルカに情報を求める。
「…………あのイビルビーストは二体で行動するタイプのようですが、基本的な行動は他の個体と変わらないはずです」
アルスが自身を抱える腕の力を決して緩めることなく、ベルも自分の言うことを聞いてくれる様子はないとリリルカは諦めた。
「攻撃パターンは主に二つ。するどいツメと、特に危険な先程の風による範囲攻撃です」
ですが、と否定・逆説を表す接続詞を続ける。
「イビルビーストは中層のモンスターですが危険性は高くありません。寧ろ神々が言うところの安パイと言われています」
「僕は聞いたことないんだけど安パイってどういう意味?」
「ええと、簡単とか無難とかそういう意味らしいです」
「無難って、中層のモンスターなのに?」
「はい。弱点というか明確な対処法があるのです、イビルビーストには」
基本的にLv.1とLv.2の間には隔絶した差が存在しており、中層にはパーティーにLv.2以上がいないと潜るのは命取りだと言われている。
実際、戦った感触としてイビルビーストが上層にいるモンスターよりも強いと分かる。なのに、中層のモンスターの中で無難と言われたベルは困惑した。
「睡眠耐性が低く『ゆめみの花』の匂いを嗅ぐと簡単に寝てしまうので、簡単に倒せると割と有名なのです」
「そ、そうなんだ。確か『ゆめみの花』ってダンジョンに生えている花だよね。そんな効果があるなんて知らなかった」
「まだベル様達は冒険者になって二週間ほどなのでしょう? 無理はありませんよ」
そこまで言ったリリルカは肩を掴まれて飛んでいるヘスティアが「助けてくれぇええええ!!」と叫んでいるのを見上げる。
「リリはその『ゆめみの花』って持ってる?」
「いえ、今は残念ながら……」
「…………代わりになるものがあるなら、『ゆめみの花』は別に必要ないってことだよね」
「え、ええ」
「なら、手はある。けど、その前に神様を助けないと」
ベルに手があるというのなら任せるとして、リリルカはイビルビースト達が向かっている方向を確認する。
「このまま行くとダイダロス通りに入ってしまいます。あそこに入られると見失ってしまいます」
「ダイダロス通りって、オラリオのもう一つの迷宮って言われているあの? ど、どうしよう!?」
ダイダロス通りとは度重なる区画整理で秩序が狂った広域住宅街の名称で、住んでいる住人ですら一度迷ってしまったら複雑怪奇な領域に目的地を見失ってしまうと噂されるほどの場所。
一度も入ったことのないベル達が迷わない保証はどこにもない。
「先回りするしかありません。リリは生まれた時からオラリオにいますから、抜け道の一つや二つ知っています」
「そ、そうか。じゃあ、先回りする役目は……」
「きゃっ!?」
「わっ!?」
前振れもなくアルスがリリルカを投げて来たので慌ててキャッチするベル。
先回りは任せる、と血まみれの手で親指を立てるアルスの傷だらけの姿に不安を覚えたベルはポーションを取り出して渡す。
「この前、ミアハ様から貰ったポーションを飲んどいて」
「リリは人を荷物みたいに投げたことに対して文句を言いたいのですが」
アルスはリリルカの文句など聞いていないように、コルク栓を抜いてポーションを中空に投げる。
下を向いて落ちてきたポーションを器用に口部分で咥えてキャッチ。そのまま上を向いてゴクゴクと飲んでしまった。
「うわっ、器用ですね」
「器用というか、もう奇術の類で怖いよ」
ペッ、と行儀は悪いが飲み切ったポーションの瓶を道端に吐き出したアルスの傷は癒えていた。
じゃあ任せた、とばかりに速度を上げたアルスに、不承不承ながらもリリルカも先回りの為の道順を示し、ベルが従って道を進んでいく。
「もうどこを走ってるのか分からないよ。リリはよく分かるね」
「オラリオの住人なら、これぐらい簡単ですよ」
「…………リリは生まれた時からオラリオにいるって言ってたけど」
右に左と次々に通路を曲がりながら緊張を解す為の会話が続く。
「ええ、リリはソーマファミリアに所属していた冒険者夫婦の子供です。他の場所のことは話でしか聞いたことはありません。ああ、両親はとっくの昔に死んでいます。金を求めるあまり、力量と釣り合わないダンジョン階層に潜って、あっさりモンスターに殺されたそうです」
「そ、そうなんだ……」
「この街なら形は違えど良くある話ですから気に病まないで下さい。これから向かうダイダロス通りには冒険者の親を亡くした孤児もいることでしょうし」
「――リリは」
ふと、ベルの声の調子が変わった。
「冒険者が嫌いなの?」
ビクリ、とリリルカの体が震えた。
「な、なにを言っているのですか? リリも冒険者ですよ」
「なんとくなく、そう感じたんだ」
そんなはずないと、言いかけたリリルカはゴクリと唾と共に言葉を飲み込んだ。次に口から出した言葉次第で今後、ベル達との契約が続くかどうかが決まってしまうと感じたからだった。
「リリ、改宗して僕たちのファミリアに入らない?」
「へ?」
最も予想外の言葉に意味が直ぐに分からずリリルカの目が点になり、次いでその意味を反芻して頭に染み渡ってようやく理解した。
「どうしてそんなことを……?」
「リリが困っているなら助けたい。でも、違うファミリアだと出来ないことが多い」
後は単純に勧誘かな、と続ける。
「ヘスティア・ファミリアはたった二人しかいないから、せっかくリリと仲良くなれたのだからいっそと思ってね」
どうかな、と意向を問われたリリルカは、今までされたことがない勧誘に思考が追いつかない。
「ぁー―」
何かを言いかけたリリルカの言葉を掻き消すように、割と近くで爆音が轟いた。
「止まって下さいっ!」
「っ!」
リリルカの指示にベルが急ブレーキをかける。
少し開けた路地の地面に二本の筋をかけて止まったベルの腕からリリルカが降りる。
「先程の爆音から考えて恐らく後、十数秒でアルス様達がここを通ります」
「分かった。僕は上から奇襲をかけるよ」
「では、リリがヘスティア様を救助します」
壁のとっかかりを確認して、飛び上がろうとしたベルが動きを止める。
「いいの?」
「戦闘に参加は出来ませんが、お二人がモンスターに集中できるようにするのが
頷いたリリルカにベルは「ありがとう」と礼を告げる。
「返事、待ってるから」
背を向けて飛び上がって壁をかけ上げっていくベルに、リリルカは何も言えなかった。
一度足元を見下ろしたリリルカも、路地の端に体全体を隠せる大きな木箱が並んでいたので、その背後に回って身を隠す。
「ベル様は人が良過ぎです」
ベルの誘いに心が揺れなかったといえば嘘になる。
「冒険者なんて、みんな同じです」
ベルとアルスは、初めての冒険で得たお金の半分をリリルカの取り分として渡してくれた。それどころか今日の
「みんな、弱いリリに酷いことをする」
サポーターだからと身に覚えのない所業をでっち上げられ、搾取され続けてきた。モンスターに殺されかけても見向きもしない。治療もしてくれず、荷物を無くしたらただじゃおかないと蹴りが飛んでくる始末。
「ええ、ベル様。あなたの言った通り、リリは冒険者が嫌いなのです」
そう言い捨てたところで、路地の向こうから大きな物音が連続して響いた。
隠れていた木箱からリリルカが顔を僅かに出した瞬間に、ヘスティアを掴んだまま飛んでいるイビルビーストが現れた。
真上を陣取っていたベルがブロンズナイフを手にして、現れたイビルビーストに向かって飛び降りる。
「やっ!」
――――――――――ベルは スリープダガーを はなった!
「ギアァッ!?」
――――――――――イビルビーストBに ダメージ!
――――――――――イビルビーストBを ねむらせた!
直上からの奇襲に顔だけ振り向こうとしたイビルビーストの背に突き立ったブロンズナイフ。
睡眠属性を付与された斬撃を受けたイビルビーストが眠りに落ち、掴んでいたヘスティアが空中で放り出される。
「わわっ!?」
冒険者でもない、ただの一般人と肉体の強度が変わらないヘスティアが数メートル上空から落ちれば大怪我は免れない。
咄嗟の反応で、腕をジタバタと振り回すが無駄な足掻きでしかなかった。
「えいっ!」
ベルが攻撃を放った直後、彼を信用して木箱から飛び出していたリリルカが落ちてきたヘスティアをスライディングで受け止める。
「むぎゅぅっ!?」
低ステータスであっても一般人を超えた身体能力でヘスティアを見事に受け止めたリリルカだったが、デカすぎる胸が顔にジャストフィットしてしまった。
「メラ!」
「ギアァッ!?」
「やっ!」
「はっ!」
「ギ!? ギアァッ!?」
なんとかヘスティアの胸から脱出して彼女を地面に下ろす。
「た、助かったよ、サポーター君……」
「二人は!」
九死に一生を得たヘスティアの礼を流して、体を動かして彼女の体で見えない向こう側を見る。
墜落してもまだ眠ったままの仲間を背後に庇った傷だらけのイビルビーストと対峙する二人の背があった。
「ギアァッ!」
――――――――――イビルビーストAは バギを となえた!
――――――――――ベルに ダメージ!
――――――――――アルスに ダメージ!
「ぐっ!?」
「うっ!?」
傷だらけでも戦意が衰えないイビルビーストの魔法が二人を襲い、防具を超えてダメージを追いながらも二人が動く。
「メラ」
「やっ!」
――――――――――アルスは メラを となえた!
――――――――――イビルビーストAに ダメージ!
――――――――――ベルの こうげき!
――――――――――イビルビーストAに ダメージ!
バギを放った直後に飛び上がって空の利を得ようとしたイビルビーストにアルスが火炎魔法を放ち、ダメージで動きが止まったところにベルが追撃を仕掛けた。
地に叩き落とされたイビルビースト。
火炎魔法を食らった箇所が焼かれて焦げ付き、更に斬撃を幾つも受けたイビルビーストはもう虫の息だった。
――――――――――イビルビーストAは ボミオスを となえた!
――――――――――アルスたちの すばやさが すこし さがった!
トドメを刺さんとこちらに向かって来ようとした二人に向けて、イビルビーストが右手を向けながら魔法を放つと目に見える形で二人の動きが遅くなった。だが、イビルビーストが負っているダメージも重く、次の行動に移るよりもベルの攻撃の方が早かった。
中途半端に腕を上げているイビルビーストに、真正面から突っ込んだベルがブロンズナイフを突き刺した。
「やっ!」
――――――――――ベルの こうげき!
――――――――――イビルビーストAに ダメージ!
――――――――――イビルビーストAを たおした!
胸の中心を貫かれたイビルビーストが、魔石だけを残して消滅していく。
目の前に落ちた魔石という確実な敵を倒した証明に、安堵がベルの体を覆う。
「良くやった、ベル君!」
「アルス様!」
背後から聞こえた声にベルが振り返ると、喜んで駆け寄ってくるヘスティアとリリルカの姿。
ヘスティアなどモンスターに攫われた後だということもあって涙目で、ベルが苦笑して声をかけようとして駆け寄ってくる二人の背後に起き上がる大きな姿を見た。
「あ――」
――――――――――イビルビーストBは バギを となえた!
危ないと続ける前に、スリープダガーによる睡眠から目覚めたもう一体のイビルビーストがバギを放った。
「っ!?」
ベルが割り込むより早く『どうの大剣』を捨て、身軽になって駆け込んだアルスがその身を盾とした。
――――――――――アルスに ダメージ!
防御の姿勢も取れず、まともに真空魔法を食らったアルスの体から血が背後にいたヘスティアやリリルカに飛び散る。更に真空魔法を放った直後のイビルビーストBが、仲間を殺された怒りに燃えて追撃を仕掛ける。
ポミオスによって素早さが落ちているベルは、どれだけ必死になって急いでも間に合わない。
――――――――――イビルビーストBは するどいツメを ふりおろした!
――――――――――アルスに ダメージ!
振り上げた二撃を受けたアルスの体が力を失って、背後にいたヘスティア達二人を押しつぶして倒れる。
ようやく追いついたベルがブロンズナイフを振りかぶる。
「スリープダガー!」
――――――――――ベルの こうげき!
――――――――――イビルビーストBに ダメージ!
睡眠攻撃を放ったのにダメージを負っただけで、イビルビーストに眠る様子はない。
「くっ、眠らないっ!?」
「ギアァッ!」
――――――――――イビルビーストBの こうげき!
――――――――――ベルに ダメージ!
頼みの綱であるスリープダガーによる攻撃は効果を発揮しない。
攻撃は当てられているし、イビルビーストも相応のダメージは負っているがベルでは基本的なステータスで劣ってしまっている以上、戦いを続ければ負けるのは自分だと感じ取っていた。
本来、イビルビーストは中層に出現するモンスター。まだ
「それでも、やらなきゃならないんだ!」
ベルが身を削って耐えている間、ヘスティアとリリルカは二人がかりでアルスの体を抱え上げたところで、その体に刻まれた多数の傷を見ることになった。
「ひどい……」
「アルス君! アルス君! しっかりするんだ!」
「お待ち下さい、ヘスティア様!? これだけの傷を負っているのです。下手に動かすと危険です!」
目を閉じたままぐったりとしていて、意識がない様子のアルスの肩を揺り動かそうとするヘスティアを、リリルカが慌てて腕を掴んで止めた。
「これだけの傷と出血量では命に関わります。ヘスティア様はポーションなどの治癒薬はお持ちではありませんか?」
「持っていない。サポーター君は?」
「私も持ち合わせておりません。まさか
「普通はそうだろうね。ベル君達みたいに完全武装でいる方がおかしいんだ。くそっ、ベル君がまだ戦っているっていうのに!」
アルスが復活さえすれば、二人がかりで残ったイビルビーストを倒すことが出来るのは先例が証明している。しかし、それにしても決して余裕があったわけではなく、ベルだけで踏襲することは不可能だと戦闘の素人であるヘスティアにも分かる。
「助けは来ないのかい!?」
「…………このダイダロス通りに運良く
ダイダロス通りの住人達の視線は感じるが、助けに入ってくれる感じはしない。
仮に助けに入られても、一般人や大半を占める
安易な第三者の救援は望むべくもない。そしてアルスの傷を癒す治癒薬もまた手元にはなく、治癒魔法を使えるのもアルスだけ。
「Lv.2……?」
助けの手はない。自分で自分を助けられない。ならば、残るのは奇跡を祈るのみ。
祈る以外に奇跡を起こす方法はヘスティアの手の中にあった。
『後少しでレベルがアップしてしまう。もしもレベルが二桁になってランクアップなんてことになったら……』
ヘスティア自身が数日前に口にした言葉。
「なあ、サポーター君。冒険者は
「こんな時に何を……!」
「いいから答えてくれ!」
この危機的状況で、まったく関係ないと思われる話を上げたことにリリルカが激昂するよりも勢い強くヘスティアが言い募る。
場に合っていないながらも、気圧されたリリルカは自身の知る知識を思い起こす。
「…………又聞きですがLv.1の皮の上にLv.2の新しい皮を被せるようなものだと。だからこそ、たった1のLv.の差が天と地ほどの違いがあると聞いたことがあります」
「それだけかい?」
ヘスティアが聞きたいことは、そんな良く知られた当たり前のことではなかった。
「ランクアップに伴う肉体の変化は、それだけなのかい?」
この話の流れでリリルカもヘスティアが何を求めているのかを察した。
「今、ここでアルス様のステイタスを更新してランクアップさせると……? アルス様はまだ冒険者になって二週間強――」
「出来る」
そう、出来てしまう。出来たのにやってこなかった。あまりにも早過ぎたから。
「もう、どんな問題が起ころうが受け止めてみせる。全ては命があってのことだ」
アルスは
「サポーター君、アルス君を抱えてくれ」
「わ、分かりました」
リリルカに意識を失っているアルスの体を前から抱えてもらい、イビルビーストの攻撃によって損傷して最早意味をなしていない『皮のよろい』を外す。
『布の服』一枚となったアルスの背中に生地の上から
「出来たっ!」
ステータスの編纂が終了したと同時にアルスの体が発光する。同時にイビルビーストの攻撃を受けたベルが吹っ飛ばされた。
――――――――――アルスは、レベル10に あがった!
――――――――――アルスは、渾身斬りを覚えた!
「うっ!?」
全身傷だらけのベルが三人の直ぐ近くの地面に転がり込む。
ベルにトドメを刺さんと飛び掛かったイビルビーストが、するどいツメを振り上げている。
「ベル君っ!?」
せめて盾にならんとヘスティアがベルの前に飛び出すよりも早く、その横を通り過ぎる人物。
――――――――――イビルビーストBの こうげき!
――――――――――カウンター!
「はっ!」
――――――――――アルスの こうげき!
――――――――――イビルビーストBに ダメージ!
ベルとの戦いでダメージを負い、アルスのカウンターによる一撃が効いた様子のイビルビーストが恐れるように二歩、三歩と後退る。
ランクアップと同時に傷が全快し、MPすら回復したアルスが道中で拾った『どうの大剣』を両腕で右上に掲げると同時に刀身が光を放つ。
「はっ!」
――――――――――アルスは 渾身斬りを はなった!
「ギアァッ?!」
――――――――――イビルビーストBに ダメージ!
――――――――――イビルビーストBを たおした!
ベルとの戦いで蓄積したダメージの上に、カウンターで負傷を重ねたところに極大の一撃を袈裟切りに受けたイビルビーストの体が霧散する。
――――――――――イビルビーストたちを やっつけた!
――――――――――アルスたちは 121ポイントの経験値を かくとく!
――――――――――イビルビーストたちは 魔石を 落としていった!
「やったねアルス君!」
「凄いです!」
回復してからのモンスター打倒というあっという間の展開。ヘスティアとリリルカが諸手を上げると同時に、この戦いを見ていたダイダロス通りの住人達が興奮を爆発させた。
『――ッッ!!』
魔石を残して消滅したイビルビーストを前に振り下ろした『どうの大剣』がそのままだったアルスは、まるで血を払うように一度振ると背中の鞘に戻す。歓喜の声に応えようと右手を上げかけたところで何かが足を掴んだ。
「ぼ、僕に治癒魔法を……し、死ぬぅ……」
歓喜の波に乗る前に、黄泉路に足を突っ込みかけている双子の兄に
尚、帰りに豊穣の女主人に寄るとシルが待っていて財布を忘れ、遣いをさせてしまったことへの謝罪があったことを疲れ切ったベルが覚えているかは謎であった。
レベルアップでダメージ全回復を再現。
ドラクエ11でいたずらデビル・イビルビーストの連戦を、主人公(Lv.9)、カミュ(Lv.6)でしたら苦戦するだろうなと思います。
以下、第一部終了時点のステータス・装備になります
【アルス・クラネル Lv.1→2(レベル9→10)
HP:50→56
MP;27→29
ちから:25→27
みのまもり:12→13
すばやさ:29→32
きようさ:19→20
こうげき魔力:25→28
かいふく魔力:27→30
みりょく:22→24
【メラ】 ・火炎系魔法(小)
【ホイム】 ・治癒系魔法(小)
【ギラ】 ・閃光系魔法(小)
【イオ】 ・爆発系魔法(小)
《技能》
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
【ぶんまわし】 ・武器を振り回すことで範囲攻撃が可能
【渾身斬り】 ・敵一体に大ダメージ
《スキル》
【ドラゴン斬り】・ドラゴン種に対しての斬撃強化
【
《次のレベルまで:509》】
【そうび
みぎて 『せいどうのつるぎ(どうの大剣)』
ひだりて 『』
あたま 『皮のぼうし』
からだ 『皮のよろい』(破損によって損失)
アクセ1 『きんのネックレス』
アクセ2 『』 】
備考
〇片手剣装備時
ソードガード(3回に1回以上の割合で武器ガード率アップ)
装備時攻撃力+3
装備時攻撃力+6
装備時会心率+2%
〇両手剣装備時
ブレードガードド(3回に1回以上の割合で武器ガード率アップ)
装備時攻撃力+5
装備時攻撃力+10
装備時会心率+2%
【ベル・クラネル Lv.1(レベル6)
HP:48
MP;21
ちから:20
みのまもり:11
すばやさ:28
きようさ:23
こうげき魔力:20
かいふく魔力:0
みりょく:22
《魔法》
《技能》
【スリープダガー】 ・敵1体に攻撃、たまに眠らせる
【かえん斬り】 ・武器に炎を纏わせることが出来る
《スキル》
【スライムブロウ】 ・スライム種に対して投擲武器効果強化
【
《次のレベルまで:30》 】
【そうび
みぎて 『ブロンズナイフ(クロスブーメラン』
ひだりて 『』
あたま 『皮のぼうし』
からだ 『皮のよろい』
アクセ1 『きんのネックレス』
アクセ2 『』 】
備考
〇短剣装備時
装備時攻撃力+3
装備時会心率+2%
〇片手剣装備時
装備時攻撃力+10
装備時会心率+2%
〇ブーメラン装備時
装備時攻撃力+5
装備時命中率+5%