ダンまち×ドラクエ   作:スターゲイザー

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第85話 ベル、リレミトを使え

 

 

 

 

 

 タナトスが眷属達に居場所を確認しているヴァレッタ・グレーデは手負いのフィン・ディムナを追っている最中、能無しの部下と侮ったラウル・ノールドが仕掛けた罠にまんまと引っ掛かった。

 メレンで神ニョルズが『食人花(ヴィオラス)』を引き付ける為、砕いた魔石を混ぜ込んだ粉末を浴びせられたヴァレッタ達。魔石を狙う極彩色のモンスター達の習性を利用して、そこら中にいた『晶黽(ヴァルグ)』を引き連れたアナキティ・オータム達が仕掛けた『怪物進呈(パス・パレード)』。

 『晶黽(ヴァルグ)』は胴体部分に紅いクリスタルを持っており、これをアクセサリーに加工して所有している者に対しては、仲間と認識して襲い掛からないという特性がある。しかし、いくら紅いクリスタルを持っていても、魔石の粉末によって特性よりも習性が優先されて敵味方の識別を失う。

 『晶黽(ヴァルグ)』が集る混戦の中でヴァレッタは得物である大剣を満足に震えず、仲間のサブウェポンを総動員した武芸百般全て二流のラウルが最適な武器を使った戦法によって逃走を許してしまった。

 

「クソ『闇派閥(ザコ)』どもがぁ!! 臭え粉を血で洗い落とすくらいしか役に立ちやしねぇ!!」

 

 極彩色のモンスターを引き寄せる魔石の粉を浴びたことで優先的に狙われる状況を回避する為にヴァレッタが取ったのは、部下達の血を自身にかけることで洗い落とすという方法だった。

 全身の粉を洗い落とすには一人や二人の血では足りない。

 Lv.5のヴァレッタでさえ危機を覚えるほどの『晶黽(ヴァルグ)』に集られる状況で加減が出来るはずも無く、そして人並みの情など持ち合わせていない彼女は部下達を問答無用で自らが助かる為の供物としたにも拘わらず、感謝の欠片すら抱かずに罵倒する。

 

「ちくしょう……取り逃がしたっ、取り逃がしたぁ……! くそったれぇ、フィン!」

 

 名前を覚える価値すらないと断じたラウル(雑魚)に出し抜かれ、満身創痍となっていたフィンを殺す機会を逃したことに怒りが収まらないヴァレッタ。

 

「怒りが収まらねぇ……! 血だっ、血が要りやがる――!!」

 

 憤怒で興奮状態になった彼女は激情を発散する対象を求めるも、周囲には冒険者もモンスターもいない――――――いないはずだった。

 

「――――早く急ぎましょう! この音、皆さんが近くで戦っています!」

「あぁん?」

 

 ヴァレッタの耳に届いたのは若い女の必死な声。

 姿は見えないが音の反響具合から後方分かれ道の一つ向こうから聞こえてきた。ヴァレッタは通路の壁に背を寄せ、息を潜めて声の主達が近づいてくるのを待つ。

 

「リーネ……もう、いいっ……俺を置いて、早く行けっ……!」

「頑張って下さい! 後もう少しなんです! 後もう少しで、私達は助かるんです! だから、皆さん希望を捨てないで!」

 

 一人で歩けない軽戦士の男性冒険者の肩を担ぎ、明らかな軽装備で後衛タイプの女性冒険者が励ましながら進んでいるのを、壁に身を隠しながら確認する。

 合計6人のパーティーのようだが、マッシュルームカットが特徴のエルフの男は左手を抑えており、金髪のロングヘアが特徴のランス使いの女はランスを支えにしなければ歩けない様子。ウェーブヘアーが特徴の槍使いの女は自爆兵に巻き込まれたのか火傷を負っている。小さい獣人と軽戦士の肩を担ぐ眼鏡の女は無傷だが、明らかに前衛系ではない。

 

「ひひっ」

 

 体の良い八つ当たりの相手と、ロキファミリアの団員を自分が殺したと知れば逃げられたフィンの顔を歪ませられるだろうと、ヴァレッタの血に塗れた口がグニャリと歪む。

 血に塗れた毛皮付きの長外套から『ポイズンスケイル』の刀身を血以上に赤い色をした短剣を取り出し、蛇のような静けさでパーティーの後を追う。

 

「ひひひっ」

 

 この先を進めば詳細を知らなければ行き止まり。当然、今日初めて『人造迷宮(クノッソス)』を訪れたロキファミリアが知るはずも無く、『地図作成(マッピング)』した道を辿るのでは無く、音を頼りに進んでいることからもこの先が行き止まりだと気づいていない証でもある。

 哀れな獲物は自ら屠殺場に足を踏み入れた。

 

「おい」

 

 行き止まりに気づいて引き返そうとしたパーティーの前にわざと姿を現す。

 

「あなたは――」

「死ね」

 

 声に反応して振り返ったリーネ・アルシェに一足で接近したヴァレッタの凶刃が迫る。

 Lv.5の前衛系の一閃はLv.2の治癒師の目にも止まらず、光が走ったとすら認識出来ない。だから、リーネが命を拾えたのは肩を担いでいたロイドがヴァレッタという『闇派閥(イヴィルス)』の存在を認識した瞬間に彼女を押し退けたから。

 

「ぎゃっ!?」

 

 斬られたロイドの左手が宙を飛ぶ。

 

「貴様はヴァレッダ・グレーデ!?」

 

 身を挺して庇ったロイドと共にバランスを崩して倒れたリーネの前に、パーティーの前衛系の中で傷が少ないアンジュが槍で攻撃を仕掛けるも、Lv.3で火傷によって精彩を欠いている彼女の動きはヴァレッタから見れば止まっているようなもの。

 一歩横に動き、腕を開いて迫ってきた槍を躱す。

 開けていた脇を槍の柄ごと締められるとLv.3の力でもビクと動かない。厳然たるLv.差にアンジュの顔が強張る。

 

「咄嗟に武器は手放せないよな!」

「ぐっ!?」

 

 最適な行動だと理解しても行動には移せないものだとロキファミリアから教えられたヴァレッタの蹴りがアンジュの胴体に刺さり、彼女の体を壁に叩きつける。

 ズルズルと壁から落ちるアンジュに気を取られたカロスの下へアンジュの槍を奪ったヴァレッタが滑り込む。

 

「っ!?」

「はははっ!」

 

 Lv.5の力で横薙ぎに振るわれた槍の刃が膝上を切断し、カロスの体が達磨落としのように地に落ちる。

 

「ハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 恐怖に打ち震える獣人の子供を見据え、楽しくて堪らないとばかりに狂笑を上げるヴァレッタ。

 

「叫べ!」

 

 左手を失ったロイドを壁に叩きつける。既に重傷を負っていたロイドはもう自分で動くことはできない。

 

「 喚け!」

 

 カロスの傷だらけの左手を親切にも切断してやる。残った右腕でも藻掻くも四肢の内の三肢を失ってしまえば、出血多量でやがて死に至る。

 

「泣け!」

 

 穂先が割れた槍を持ち主であるアンジュの腹に突き刺し、地面に縫い付ける。

 

「みっともなく命乞いをしろ!」

 

 短剣でリザを右肩から左脇腹まで切り裂くと、血をまき散らしながらアンジュの近くで倒れる。

 

「全員殺すがな!」

 

 槍で傷つけられて気を失ったルーニーを背後に庇うリーネを短剣で幾度も斬りつける。わざと浅く、しかし確実に傷を重ねる。

 直ぐに死ねないように、死なないように攻撃部位を調節して、ヴァレッタは趣味に走った、八つ当たりを楽しんだ。だからこそ、物音に気が付いてこの行き止まりに近づいて来る者たちに気づくのが遅れた。

 

――――――――――アルスたちが あらわれた!

 

 アルスの先導でこの階層にまで上がってきていたヘスティアファミリアパーティーは『晶黽(ヴァルグ)』と『食人花(ヴィオラス)』の襲撃を退け、近くまで来た時に声を聞きつけてやってきた。

 濃厚な血の香りが漂って酔ってしまいそうな凄惨な現場に足を踏み入れたパーティーの中で、ヴァレッタによって傷らだけにされたリーネの姿を見たカサンドラの手から『地図作成(マッピング)』の道具が落ちる。

 

「――何を」

 

 先頭に立って足を踏み入れたベルの頭が灼熱する。

 

「してるんですか、あなたは――っ!」

 

――――――――――ベルの こうげき!

 

「あん?」

 

――――――――――ヴァレッタは 攻撃を武器で はじいた!

 

 ヴァレッタは突然現れた、いるはずのない者達に驚きながらもベルの攻撃を短剣で受け止める。

 

――――――――――ヴァレッタの こうげき!

 

「うっ!?」

 

――――――――――ベルに ダメージ!

 

 ベルの速度に驚きながらも冷静に短剣で受け止めたヴァレッタは前蹴りを放ち、距離を無理矢理に作って襲撃者達を観察する。

 現れるならロキファミリアだと思っていた想定を外れ、雰囲気を持った7人のパーティー。特に全身鎧を着た『大獄剣』を持った剣士は自分に近い力を持っている。

 

「白髪赤目のガキに『小人族(パルゥム)』の魔導士…………そうか、お前らヘスティアファミリアか。なんだって『人造迷宮(クノッソス)』に?」

「…………アストロン」

 

――――――――――アルスは アストロンを となえた!

――――――――――リーネたちの からだが てつのかたまりに なった!

 

 特徴的なベルの風体と魔道士装備をしたリリルカを見て現れたパーティーがヘスティアファミリアと直ぐに気づいたヴァレッタがいるはずのない者達がいることに疑念を抱いている間、『プラチナヘッド』で口元が隠れているの利用したアルスが小さな声で『鋼鉄化魔法(アストロン)』を唱える。

 アルスの近くにいて『鋼鉄化魔法(アストロン)』の詠唱を聞いていたリリルカが『らいていの杖』を振るう。

 

「メラ!」

「おっと!?」

 

――――――――――リリルカは メラを となえた!

――――――――――ヴァレッタは すばやく みをかわした!

 

 放たれた『火炎魔法(メラ)』の火球を大きく飛び退いて躱したヴァレッタは内心で嘲笑う。

 ヴァレッタがいた背後には傷だらけで動けないリーネと彼女の背に庇われたルーニーがいる。武器と違って一度放たれた魔法を止めることは出来ない。『火炎魔法(メラ)』は人一人を容易く焼き尽くすに足る威力を有しており、ヴァレッタが避けたことでリーネとルーニーを焼き尽くすことだろう。

 助けに来たのに自らの手で焼死させては元も子もないだろうにと思っているところで、火球が自身がいた場所を通過する瞬間に鋼鉄と化したリーネ達にようやく気づいた。

 

――――――――――リーネたちの からだは てつのかたまりとなり なにものも うけつけない!

 

「なっ!?」

 

 『火炎魔法(メラ)』の火球が当たるも『鋼鉄化魔法(アストロン)』で鋼鉄化したリーネ達に被害はない。

 

「おらぁっ!」

 

――――――――――ヴェルフは 身構えつつ こうげきした!

 

 鋼鉄化しているリーネ達について思考を回させる余裕を与えない為にヴェルフが『シールドアタック』を敢行する。

 

「やっ!」

 

――――――――――ベルは デュアルカッターを はなった!

 

 正面から『ドラゴンシールド』を掲げて向かってくるヴェルフの後ろから、左右から分裂した『サザンクロス』が弧を描いてヴァレッタに迫る。

 逃げ道は無く、Lv.5とほぼ遜色のない二人の攻撃が迫る中、更にヴェルフの後ろには『らいていの杖』を掲げて火球を生み出している。リーネ達側に移動したアルスが構える『大獄剣』を覆うオーラから感じられる力はヴァレッタでさえ一瞬気を取られた。

 数的不利を理解していたヴァレッタは状況の変遷に甘んじて流されるような女ではない。回避方向にも理由があり、この行き止まりと思われる場所に自ら意味も無く足を踏み入れたわけではない。

 

「チィッ!?」

 

 一歩壁際に下がり、右足の靴の踵で壁を蹴る。すると、蹴った壁の部分がガコンと音を立てて引っ込み、ヴァレッタがいた場所の床が抜けた。

 

――――――――――ミス! ヴァレッタに よけられてしまった!

 

 重力に従って自ら落ちたヴァレッタの頭上を、ベルが放った『サザンクロス』が通過する。

 急に敵が消えたヴェルフは慌てて急ブレーキを立ててヴァレッタが落ちていった穴まで後少しで止まる。

 

――――――――――ヴァレッタは にげだした!

――――――――――ヴァレッタは いなくなった!

 

「……追うか?」

「止めておきましょう」

 

 『ドラゴンシールド』を前に出しながら穴を覗き込むヴェルフの言葉に、目前の脅威がいなくなったことで作り出していた火球を消したリリルカが答える。

 

「ここは『闇派閥(イヴィルス)』の拠点です。どんな罠があるのか分からないのですから、深追いは危険と見るべきです。それよりも――」

 

 『鋼鉄化魔法(アストロン)』の維持時間は発動時に込められた『精神力(MP)』と術者の意思に左右される。自分にかける分ならば融通は利くが、咄嗟の発動の場合は効果が切れるのも早い。

 鋼鉄化が解けるよりも早く、ヴァレッタの相手を仲間に任せていたカサンドラとダフネと命の三人は切り離されていた冒険者達の四肢を集め、本人の下へと運んでいた。

 

――――――――――リーネたちの アストロンが とけた!

 

 治療の優先度が高いのは両足と左手を斬られているカロス、次いで腹を槍が貫通しているアンジュであった。

 カサンドラは治癒師でありながらパーティーで最も回復能力が高いのはアルスだと理解している。

 

「アルスさんはそちらの方を!」

 

 指し示したのはカロス。鋼鉄化が解け、両足と左手の欠損部分から血が溢れ出すのを見て、カサンドラの指示を受けたアルスが『大獄剣』を鞘に収める時間すらも惜しいとばかりに投げ捨てる。

 カロスの前に駆けつける間にアルスは金色の光に光り輝く手を一度握り込み、眩しく目を打つほど強まった。

 

「ベホマ」

 

――――――――――アルスは ベホマを となえた!

 

 辿り着くと同時にアルスの手から放たれた光がカロスの全身に降り注ぎ、切り落とされた両足に沿うように置かれた場所に集中する。

 光に晒された胴体側と斬られた側の組織が伸びて繋がっていく様は回復というより再生に近いが、これほどの傷を回復させたことのないアルスの『治癒魔法(ベホマ)』は術者の未熟さを現わすように遅い。

 

――――――――――カロスの キズが かいふくした!

 

 アルスがカロスの両足を繋ぎ終わって左手の回復に取り掛かる頃には、アンジュの腹に刺さっていた槍を引き抜いたカサンドラは彼女の治療を既に終え、左手を切り落とされたロイドの治療にかかっていた。

 その間、回復技能と回復魔法をリリルカとヴェルフの回復側に走り、回復技能や魔法を持たないダフネと命も各自が常に持っている『回復薬(ポーション)』を使って回復側に向かう。新手が来る可能性もあるので、ベルは全体の警戒を怠らない。

 

――――――――――ミス! 呪いで かいふくしない!

 

「――――カサンドラ様、傷が塞がりません!?」

 

 リリルカの技能『しゅくふくの杖』はアルスの『治癒魔法(ベホマ)』やカサンドラの『治癒魔法(ベホイム)』に比べると大きく回復能力で劣る。故に過信せず、併用して『回復薬(ポーション)』もかけたのにリザの右肩から左脇腹までの切創は一向に塞がらない。

 

「まさか『呪詛(カース)』……?」

 

 他の者たちも同じで、ロイドの左手の治療を行っていたカサンドラも一向に繋がらないことに一つの結論を出した。

 

「『呪詛(カース)』って、この状況からして治癒阻害?」

「そんな怪しい魔力なんて…………いや、待て。さっきの女が持ってた短剣。『呪詛(カース)』が込められた『特殊兵装(スペリオルズ)』だったんだ!」

 

 リーネにかけた『回復薬(ポーション)』が効果を発揮しないのを見たダフネは、カサンドラの呟きを聞き取ってその効果を推測すると、ヴァレッタが持っていた短剣から変な感じを覚えていたヴェルフが気づいた。

 魔道士とは対の『呪術師(ヘクサー)』の手から生み出される忌み嫌われし武具。呪いの武具とも一括りにされるそれらは、その特異性から『特殊兵装(スペリオルズ)』の中でも更に希少。

 

「解呪しない限り、回復道具や回復魔法を幾ら使っても傷は癒せない……」

 

 カサンドラも耳にしたことはあるが、実物を目にしたことはない。治癒師でありながら傷を癒すことが出来ず、包帯で縛ることで少しでも出血を抑えることしか出来ない。幾らアルスの『どうぐぶくろ』に多くのアイテムが入るとしても、対『呪詛(カース)』のアイテムは所有していなかった。治癒師の敗北であった。

 指揮官であるダフネの判断は早かった。

 

「ベルの『迷宮脱出魔法(リレミト)』で地上に戻り、『戦場の聖女(デア・セイント)』を頼ろう」

「都市最高の治療師ですか。確かに彼女なら……]

 

 ディアンケヒトファミリアの団長を務めるアミッド・テアサナーレは都市最高の治癒師と謳われており、如何な治癒阻害の『呪詛(カース)』であろうとも彼女ならば確実に解呪出来るだろう。ダフネの提案に命も首肯する。

 

「最悪でも対『呪詛(カース)』のアイテムを探すなら地上に戻るしかない」

「そうですね。急いだ方が良いですが、包帯では止血するにも限界があります。出血を抑える為に傷口を凍らせておきますか?」

「…………頼む」

 

 都市最高の治癒師ですら解呪出来なければ専用のアイテムを探すことになる。どちらにしても速度が大事になるが、出血は今も続いているのでリリルカの提案にダフネは数秒悩んで迷っている時間も惜しいと決断する。

 リリルカが『らいていの杖』を掲げようとしたのをアルスが抑える。

 

→カサンドラ、キュア・エフィアルティスを使え

  ベル、リレミトを使え

 

「え?」

「キュア・エフィアルティス? 『呪詛(カース)』に解毒魔法を?」

 

 アルスの言葉に当のカサンドラが驚き、彼女の魔法のことを知っているダフネも訝しんだ。

 キュア・エフィアルティスは毒から回復するカサンドラが元から有する魔法で、『呪詛(カース)』を解くことは出来ないと思っていたから急いで地上に戻るべきと言おうとしたところでカサンドラが詠唱を始めた。

 

「――――――――、――――――――――――――、―――――――――――、―――――――――――――――、―――――――、―――――――――――――」

 

 詠唱が始まっては下手に止めれば『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』を引き起こすのでダフネも止めれない。

 そうこうしている内に詠唱を終え、『アメイジングタクト』を両手に持って集中していたカサンドラは数秒の沈黙の後大きく息を吸って叫ぶ。

 

「――――キュア・エフィアルティス!!」

 

――――――――――カサンドラは キュア・エフィアルティスを となえた!

――――――――――リーネたちの 呪いが とけた!

 

 『アメイジングタクト』から放たれた光が呪詛に覆われていた傷部分に降り注ぐと何かが砕けるような音が響いた。

 

「ベホマ」

 

――――――――――アルスは ベホマを となえた!

――――――――――リーネの キズが かいふくした!

 

 次の瞬間にはカサンドラが詠唱している間に準備していたアルスが『治癒魔法(ベホマ)』を使い、『呪詛(カース)』が解けたことで阻害する物が無くなった傷を癒やしていく。

 解毒魔法だと思っていたが実際には貴重な解呪効果を持つ解害魔法だった。

 傷が癒えても一度流れ出た血は戻らないので意識が戻らないリーネと、自身が解呪したのに驚いているカサンドラを何度も視線をやったダフネははたと我に返った。

 

「驚くのは後回し! 先に治癒を!」

 

 解呪魔法の持ち主など滅多にいない。唖然としているリリルカを含めて行動が遅れている者達に指示を出し、全員が行動に移る。

 治癒が完了するまで、そう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 




カサンドラのキュア・エフィアルティスは貴重な解呪効果を持つ解害魔法らしいです。ピクシブの元にしたのですがステイタスの掲載巻が分からない……。

尚、最善手はベルのリレミトで地上に戻り、アミッドの手を借りることです。

カサンドラが解呪してしまったので、地上に急ぐ必要がなくなったせいでこの後が大変なことに。
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