包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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13話 妹とスーパーで買い物をした

 家から徒歩数分の場所にあるスーパーの中に入ると、クレアの事が珍しいのか歩くたびに他のお客さんがこちらを振り向いていて、かなり注目されているようだった。主婦の奥様方からクレアに対するひそひそ話も聞こえて来ていた。

 

「皆から注目されてんな」

「うん、そうだね。だけどもう慣れたよ」

「向こうでも、注目されてたのか?」

「めっちゃ注目されてた!しかもナンパもされて大変だったんだから!!」

 

 確かにこの容姿だとイギリスでも注目されてそうだな……。容姿が良すぎるが故に苦労も耐えなさそうである。

 

「知ってる? イギリスの男の人ってすっごく自然に知らない女の子へ声を掛けてくるんだよ?しかも交際目的で!」

「え? そうなの?」

「学校でも、図書館でも、スーパーでも普通に声を掛けてくるの!すっごく怖かったんだから……」

 

 さすが外国の男の人は違うな……関心する。日本だとチャラ男とかそういう目的の人じゃないと女の子に声もかけないし、ナンパもしない。

 

 だいぶ前に見たテレビで外国の人が日本人はシャイな人が多いと言ってた気がする。俺はそうではなく外国の人がフレンドリー過ぎるのではないかなーと思う。日本人は他人行儀な人が多いのであまりそう言う事に慣れていないので、これも文化の違いというやつなんだろうか?

 

 そんな事を考えている間にも「日本は静かでいいねー」と語りながらクレアは調味料や食材などを次々と買い物かごへ入れていた。

 

「友太君、今日の晩御飯は何食べたい?」

「うーん……」

「友太君の好きな物なんでも作ってあげるよー」

 

 特に何も食べたいものはないんだよなぁと悩む俺。強いて言えば体がだるいし、食欲もないので何も食べたくない……。でも何も食べたくないって言うのも少し可哀そうな気がする……。さてどうするか……。

 

「野菜スープかなぁ」

「そんなんで良いの?」

「あぁ。今日はスープが飲みたい気分なんだ」

「じゃあミネストローネにしよっか!」

「いいじゃん」

「けってーい!」

 

 笑顔でそう言うと野菜コーナーへ行き颯爽とキャベツや人参などを買い物かごに入れていた。ミネストローネなら食べやすいし、栄養もあるしで風邪の時にもってこいな料理だ。野菜スープと言ったのは正解だったようだ。

 

そんな時クレアは突然「あっ!」と声を上げて買い物かごの中で何かを探していた。

 

「紅茶のティーバック入れるの忘れたー!ちょっと持ってくるから待っててねー!」

 

 そう言い残して足早にお茶売り場へ走っていくクレア。そう言えばアイツが紅茶飲んでるところあんまり見たことないな。いつ飲んでるんだろう?そんな疑問を頭に浮かべながら、玉ねぎとじゃがいもが数個入った袋を持つ。ミネストローネの材料ってこんなものだよな?とスマホを取り出そうとすると、後ろから見覚えのある声が聞こえてくる。

 

「麗奈ー、今日は何を作ってくれるの?」

「特に決めてないんですけど、リクエストはありますか?」

「うーん! ラーメン!」

「却下です」

 

 振り向くと今俺がいる位置から300m程離れた場所に小原がいた。その隣には体育の時間に彼女であると紹介された三瀬川麗奈もいた。何でいるんだよこんな時に……と心の底から湧き上がる感情を抑えながら、そろりそろりと野菜コーナーを離れようとすると、紅茶のティーバックを大量に買い物籠に入れたクレアがこちらに戻って来ているのが見えた。

 

 おいおいマジかよ……今クレアが戻ってきたらやばいって。俺はクレアにジェスチャーでこちらへ来るなと伝える。だが遠くから見ているクレアは何の事かわからず首を傾げてこちらへと距離を近づけていた。ダメだって来たら!小原がいるから!と必死でジェスチャーする。

 

「何やってんだ? お前?」

「おわぁぁぁぁ!!」

 

 突然後ろから掛けられた声に驚きとても情けない声で叫んでしまう。あぁ……終わったとクレアがいた場所を見ると既にいなくなっていた。どうやらクレアも小原がいたことに気づいたようだ。

 

「よお小原奇遇だなあ」

 

 俺は顔から湧き上がる汗を制服の袖で拭きながら小原に挨拶をする。それに対して小原は呆れた顔で両手にもっていた野菜を見つめる。

 

「何で、野菜なんて持ってるんだ?」

「晩御飯に使うんだよー」

「久野原さんもお料理されるんですね」

「えぇ、まぁ」

 

 そうおしとやかな声で喋った三瀬川に「まぁ本当はクレアが作るんだけどな」と内心嘘をついている事へ申し訳なさそうになりながら返事をした。

 

 ていうか三瀬川と喋るのは今日が初めてだな。普段はご令嬢様という事もあって近づきがたい存在だったからだ。本当に何で性格も容姿も真逆のこの二人が付き合ってるのか謎だ。

 

「てかクレアさんもいるのな?」

 

 小原がそう言うので振り向くと近くにクレアが立っていた。なんで来たんだよ!!と焦っていたが、そんな俺の焦りをよそにクレアはニコニコと笑って話しかける。

 

「こんにちは小原さん。とそちらの女性は?」

「初めまして。三瀬川麗奈と申します」

 

 先ほどの妹モードのクレアと違って淑女モードとなったクレアは丁寧に挨拶をする三瀬川と自己紹介をする。良かった、あくまで他人を貫いてくれるようだ。

 

 それにしてもこんなスーパーの野菜コーナーの一角に超絶美少女二人が立っているとすごく目立つな……。

 

「てか二人やっぱ付き合ってるのー?」

 

 と小原がからかうように言うと、それを聞いた三瀬川がすかさず小原の頭にチョップを入れる。

 

「あまり人をからかってはいけませんよ」

「はーい……」

 

 まるで親に叱られる子供のように萎む小原に俺は心の中で「やーいざまぁみろ」とほくそ笑む。それにしても三瀬川は本当に丁寧で且つ大和撫子のような言動で聞いていて全く不快感を感じられない。なるほど、これは人気が出るわけだ。

 

「私と久野原君は付き合ってませんし、たまたま会っただけですよ」

「そうですよねー」

「はい」

 

 一方こちらは英国淑女モードできっぱりと笑顔で断言するクレア。すごいこちらも大和撫子の三瀬川に負けていないぞ?

 

 ところでよく見ると三瀬川の買い物篭にもたくさんの調味料や食材が入っていた。さっきの言動からすると小原もうちのクレアと同じく何か作ってもらうんだろうか?

 

「てか小原たちはなんでスーパーに?」

「そんなの決まってるだろ? 三瀬川に晩御飯を作ってもらうんだよ」

「へー仲いいですねー」

「だろー?」

 

 目を輝かせるクレアに自慢するように言う小原にムカついた俺は「ふん、俺もこれからクレアに作ってもらうんだ。いいだろー?」と自慢してやろうかと思ったが、何とか抑え込んだ。またからかわれた面倒だしな。

 

「総司そろそろいきますよ? もうだいぶ遅くなってきましたから」

「わかった、また明日な久野原ー」

「おう、また明日」

「お二人ともごきげんようー」

 

 二人は手を振る俺とクレアの隣を通りすぎようとするが、俺の顔を見た小原が何か違和感に気づいたのか足をピタリと止めた。

 

「てか、お前さー。顔真っ赤でしんどそうだけど大丈夫か?」

「あー、まぁ何とか大丈夫」

 

 そうは言ったが俺の体はもうとっくに限界を迎えていた。倦怠感や悪寒は最高潮に達していて、さらには頭痛もセットと言う風邪の定番である3つがフルに襲い掛かっていた。だがこんなとこで倒れてしまえば大騒ぎになることは間違いないので気力を振り絞って立っている状態だった。

 

「まぁ教室でずっと寝てたもんな……無理するなよ」

「あぁ、ありがとうな」

 

 今度こそ二人はレジに向かって歩いて行った。それにしても三瀬川のご飯はどんなんだろうか?今度食べてみたいな……。

 

「友太君、本当にしんどそうだけど大丈夫?」

 

 小原たちが居なくなったのを確認すると、いつもの妹モードに戻ったクレアは俺のおでこに手を当てていた。

 

「大丈夫、大丈夫」

「死にそうな顔してるけど」

「心配しなくても、すぐ直るから……」

 

 俺は元気なことをアピールするために動こうとするが、体が重くてぎこちない動きしかできなかった。それを見かねたクレアは俺の両手に持っていたじゃがいもと玉ねぎが入った袋を取り上げる。

 

「友太君は外で休んでて」

「いやだから俺は大丈夫だって……」

 

 そう言いかけるとクレアは俺の口元に指を置いて「だーめ」と一言小さく囁いた。こんな公衆の面前でなんてことを……と思ったが運良く周りには人がいなかった。クレアめ……狙ってやったな……? 

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