包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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19話 幼馴染の友達に呼び出された。

 朝、学校へ行く俺の足取りは重かった……。学校へと向かう道のりもいつもより遠く感じる。

 

 あの後スマホを確認すると植野からたくさんのお見舞いトークとスタンプが来ており、ちゃんと充電さえしていれば回避出来たのではないか?とかいう浅はかな考えも頭の中で渦巻く。

 

 父さんが言っていた取り返しのつかない事が本当に起こってしまうとは夢にも思わなかった。

 

「はぁ……どう謝ろうかな……」

 

 俺の頭の中には昨日クレアと話したことが何度も再生されていた。

 

「明日ちゃんと植野さんに謝ろ?」

「わかってるよ……」

 

 家に帰った俺とクレアはお葬式ムードの状態で夕食を食べていて、おいしいはずのおかずも味がしない……。

 

 それほどまでに植野に最悪の形でバレてしまった事が俺にとって大きな痛手だったのだ。

 

「私の勘違いだったらごめんね? なんか、友太君から反省の色を感じられないの……」

「ちゃんと反省してるよ……」

 

 言葉の意味がわからなかった。俺はちゃんと今まで隠していた事への過ちを心の底から反省しているつもりなのに、なんでクレアには反省していないように見えるんだろうか?

 

「俺そんなに反省してないように見えるか?」

「私にはそう見えるって話だよ?」

 

 そう言いながらご飯を美味しそうに食べていた。私にはそう見えるって完全に個人の主観じゃねーのか?心配して損したとどこ吹く風と受け流す事にする。

 

 

 俺そんな顔してるかな?と道端にあったカーブミラーで自分の顔を見るも普通の貧相な顔だ。そんな事自分でわかるわけないかと学校へ向けて歩き出す。

 

 そしてもう1つ俺の中では、植野に言われた事が引っかかっていた。また私を1人にするの?ってどういうことだろう?俺が植野に決別を告げた時にも言ってきた言葉であるが、その意味を俺はまだわかっていない。意味をそのまま解釈するなら寂しいとなるが、アイツはそんなこと言うやつじゃないしなぁ……。

 

 うーん……考えても意味が分からない。どういうことなんだろう……と学校についても考えていた。

 

「考えても仕方ないか……」

 

 俺は自分の机にリュックを置き、植野のいるクラスへと向かった。

 

 俺のいるクラスは2-Çだがこの学校は全学年Hクラスまであり植野のクラスは一番後ろのHクラスだ。1クラス50人もいるってだけあって、広い教室に長い廊下でクラス間の移動だけでも一苦労である。

 

 さてHクラスの教室の前まで来たが、昨日の事を思い出すとすごく気まずいな……。と入口の前で立ち止まっていた。というか植野に謝って許してくれるのだろうか……?

 

 しばらく立ち尽くしているとそれを見た生徒達が俺を見て、何やらひそひそと話し始めた。聞こえてくる話は「なんでここに久野原が?」「アイツめ、ここに来るなよ」などと俺に対する酷評ばかりだった。やっぱり俺の事をよく思ってる奴なんてほとんどいないのだなと改めて感じる。

 

 そんな様子を見ているとだんだん自分の中で自暴自棄になってきていた。てかなんで俺謝ろうとしてるんだっけ?謝る必要なんて……、もう戻ろう……。今の俺が植野と話したらダメな気がしてきた。と思って自分のクラスに戻ろうとした時だった。

 

「久野原君?」

 

 後ろから一人の女子生徒の呼ぶ声が聞こえる。振り向くと体育の時に俺をからかってきた植野の友達である短髪の女の子がクラスの入り口から顔を出していた。

 

「誰だっけ?」

 

 俺がそう聞くと女子生徒は「久野原君。話があるんだけど」と睨みつけるような眼差しで俺の目の前で近づいてきており、クラスの生徒からのひそひそ声もなお一層多くなっていた。この状況だと話しづらいな……と躊躇していると、女子生徒もそれを察したのか。

 

「場所変えようか」

「わかった」

 

 

 

 空き教室にやってきた俺と短髪の女子生徒は、向かい合うように立つ。こいつマジで誰だっけ?二日前の体育の時間が終わった後にからかってきた女子という事しか記憶にはない。

 

 「そういえば自己紹介まだだったね。私中原奈津希よろしく」

 

 中原奈津希と言えば……吹奏楽部でフルートを担当している娘か……。とても美しい音色を奏でる事からフルートの精霊なんて言うあだ名も付けられている。

 

 それにしても、誰もこんなバスケ部とかバレー部をやっているような見た目の女の子が吹奏楽部やってるなんて思わないよな……。

 

「なんだよ話って」

「優奈のことなんだけど」

 

 その言葉で一気に心拍数が上がって行くのを感じた。いやでも植野の友達に呼ばれてそんな話はされない訳がないよな……となんとか落ち着きを取り戻す。

 

「もう俺に近づかないでくれって言えと言われたのか?」

 

 中原は「違うよ」と呆れ口調で返した。

 

「はぁ……失望した。本当にわかってないんだね……」

「じゃあ、昨日の事か?」

「なんでそれが先に出てこないの?」

「……」 

 

 自分でもわからなかった。なんでそんな事が先に言えなかったんだろう?向こうからしてもこいつマジで何を言ってるんだ……となってもおかしくない訳で……。

 

「ショックを受けてたよ? 友達だと思ってたのに裏切られたって……」

「そんなつもりはなかったんだけど」

 

 裏切られたか……。まぁそう思われても仕方ない事をしてしまったからそう思われても仕方ないのか……。

 

 だんだんと俺の中では取り返しのつかないことをしてしまったんだと言う実感が湧いて来ていた。

 

「てか、中原は植野から全部聞いたのか?」

「もちろん。貴方がずっと隠し事をしていたこともね……」

 

 どうやらクレアが妹であるという事は中原にはバラされていないみたいで少し安堵する。

 

「というか、優奈は隠し事が嫌いだって知ってたよね?」

 

 え?そうだっけ?と呆気に取られていた……。あーそういえば、小学生の頃そんな事も言っていたなぁと段々と思い出してきていた。

 

 だからあそこまで怒っていたのか……。

 

「それも忘れていたの? 本当に幼馴染?」

「そうだよ」

「はぁ……最低……こんな奴が優奈の幼馴染なんて……」

「悪かったな……こんなやつで」

 

 とても不信感を抱いた表情で中原は俺を見つめていた。もう早くこの状況から抜け出して植野の所へ謝りにいきたいよ……。なんで第三者にここまで言われなきゃいけないんだ……。

 

「とにかく優奈に謝ってください、そして守ってあげてください」

「守る?どういうことだよ」

「何もかもわかってないんだね……」

「だから悪かったって……」

 

 もう泣きそうだ……。何で今日知り合ったばっかりの女子にこんなに言われなきゃいけないんだ……。と泣きそうになりそうな顔をしていると、いい?と言って中原は話し始める。

 

「優奈は弱い人間なの、弱い自分を隠すために強い自分を演じてるんだよ?」

「強い自分を演じている……」

「でも強い自分を演じていても1人では限界がある」

「そのために俺が必要だって言うことか?」

「わかってきたじゃん」

 

 なんでこいつこんなに偉そうなんだというツッコミは置いといて……。ようやく自分を1人しないでという言葉の意味が分かってきた気がする。自分1人だけで強がりを続けることには限界があって助けや支えを必要としている。俺が助けて、支えてあげたりすることでアイツは新しい段階に進むための勇気や力を得ようとしていたって事だったのか。

 

 流石にこれは気づけなかったな……。

 

 という事を考えているとホームルーム開始のチャイムが鳴り響く。

 

「時間だね。私は戻るよ。」

「おう、ありがとな。なんていうかいろいろと」

「別にいいよ。後この際はっきり言っておくけど、私久野原君の事大嫌いだから……」

 

 それだけ言い残して中原は空き教室から出て行ってしまった。大嫌いか……ここまではっきり言われると逆に清々しいな。

 

 てかなんで嫌いなら俺にここまで教えてくれたんだ?そんな事を考えながら俺も教室へ戻って行くのだった。

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