包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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28話 幼馴染の友達の店でバイトをした 前編

 家に帰ってチーズケーキをクレアに渡すと、クレアは飛び上がるように喜んでリビングへと向かった。

 

「お前って、チーズケーキこんなに好きだったけ?」

「ショートケーキが一番好きだけど、チーズケーキも大好きだよー?」

 

 クレアはチーズケーキを一口食べて、幸せそうな顔をして「おいしいー」と何度も口ずさんでいた。

 

 いつ見てもいつも幸せそうに食べるな……。と観察しながら俺は紅茶をすする。

 

「友太君は食べないの?」

「俺は店で、食べて来たんだよ」

「そうなんだ……」

 

 もう1つケーキケースの中にはチーズケーキが残っていたが、さすがに1日2個は食べられない。

 

 一緒に食べたかったのか、とても残念そうな顔をしながらクレアはチーズケーキを平らげた。

 

「ところで今日さ、知らない男子生徒に変なこと言われたんだよね」

「変な事?」

 

 クレアの表情が急に曇り始める。まさか悪口でも言われたのだろうか?と身構える。

 

「なんか、久野原と一緒に出掛けるのやめた方がいいって……」

「マジかよ……」

 

 それを聞いて、俺は前に階段で俺の変な噂話をしていた男子生徒達の事を思い出す。

 

 あいつらマジで実行に移したのか。どこのどいつだかわからないが本当に気持ちが悪いな。

 

「それでね、優奈さんにも話してみたら、優奈さんも私とは別の男子に言われてた」

「俺の事がそんなに嫌いな奴がいるのかよ」

 

 マンモス校だから、俺の事を嫌いな奴はかなりの数がいるとは思っていたが、そこまで嫌っている奴がいるとは思わなかった。ここまで来るとただ嫌っているというよりも、嫌悪感を抱いていると思ってもいいかもしれない。

 

「うーん。そうじゃないみたいだよ?」

「どういうことだよ」

「優奈さんが言うには、あの学校にはファンクラブとか呼ばれる団体がいるらしいよ?」

「ファ、ファンクラブ……?」

 

 クレアの話をまとめると、特定の女子生徒が好きな、男子生徒が集まってできた団体らしく、あのマンモス校には何十個もあるらしい。例外なくクレアや優奈にもいて、そいつらが俺と2人で出かける噂を聞いて、嫌悪感を抱いたメンバーが二人に接触を試みたのではないか?と優奈が言っていたらしい。

 

 てことは階段で聞いた噂話もそのファンクラブとかいう団体のメンバーだったのか……。とんでもない厄介ファンだな。

 

「本当に迷惑な話だよねー」

「だな……。静かに見守っておけばいいのにな……」

 

 プンスコ、プンスコと擬音が出そうなくらいクレアはご立腹だった。

 

 普段滅多な事がないと怒らないクレアをここまで怒らせるなんて相当だぞ?ファンクラブのメンバーよ。

 

「ねー。優菜さんもめっちゃ怒ってた。次来たら叱り飛ばしてやるって! 私も次来たら、友太君はそんな奴じゃないって言ってやるんだから!!」

「別にそこまでやらなくてもいいよ」

 

 ファンクラブとかいう厄介ファンのお手本のような集団。俺に牙を向けて来なければいいけど。

 

 というか、絶対関わりたくないなぁ……。

 

 

 

 

 GW初日。開店一時間前に俺は喫茶ファンタジアの中にやってくる。

 

「おはよう、久野原ー。めっちゃ早いじゃん」

 

 店内をモップで掃除していた花瑠香が近づいてきて、頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

「まぁ、妹に起こされまして」

「どんな風に?お腹の上に勢いよく乗られたのか?」

「いやそんなんじゃないんですけどね……」

 

 言えるわけないよなぁ。勢いよくハグされて起こされたって。てかそんな起こし方してくる奴なんて居ないだろと呆れていた。

 

「まぁいいや。とりあえず服用意したから着替えてきてー」

「ど、どうも」

 

 花瑠香は俺に男性用のバーテンダー服を手渡す。

 

 これ新品かな?俺のためだけに用意してくれたのか?

 

「お姉ちゃん、ちょっとこれ……」

 

 後ろを振り向くと、かなり短めのスカートで、フリフリのフリルがついた、メイド服のような衣装を着た中原が顔を赤くして、恥ずかしそうに立っていた。

 

「似合ってるじゃん」

「私、スカートあんまり好きじゃないって言ったじゃん……。いつもの服どこ?」

 

 満更でもない表情をしている花瑠香と、心底嫌そうな表情をしている中原。対照的な二人はあーだこーだと姉妹喧嘩をしていた。

 

「久野原が来てるんだからちょっとは可愛いとこ見せないと……な? 久野原」

「え?」

 

 驚いた表情で俺を見る中原。俺が今までここにいたのに、気づいていなかったんだ。

 

「こっち見ないで、ばーか」

 

 短い髪の毛でボーイッシュのような見た目だけど、意外とこういうのも似合っていて可愛いな。ムカつくから、声に出しては言わないけど。

 

「可愛いでしょ? いつもは男っぽい服ばっかで可愛げがないんだよ」

「は、はぁ……」

「可愛げがない妹で悪うございました」

 

 「あはは……」と愛想笑いをしながら、着替えるべく俺は更衣室に向かった。

 

 

 

「かっこいい」

 

 バーテンダー服に着替えた俺は鏡で自分の姿を見ていた。我ながらかっこいいなと自負する。

 

 そういえば、クレアにバーテンダー服を着た姿を撮って来てと言われてたな。今のうちに撮っておくかと思いながらスマホのカメラで写真を撮る。

 

「うわー。あんたが自撮りとか引く」

「俺もしたくてしてるんじゃねーよ……」

 

 突然聞こえた中原の声でびっくりして、振り向くと、腕を組んでドン引きした顔をした中原が立っていた。

 

「また、妹のため?」

「そうだよ」

「ブラコンナルシスト」

「はぁ?」

 

 ニヤニヤと笑う中原にムカついた俺はスマホを向けて中原の姿を撮る。

 

「は? なんで撮ってるの? 消して?」

「その人を小馬鹿にするような顔が気に入らなかったからだ。とりあえず優奈に送信っと……」

「馬鹿!! やめてよ!!」

 

 慌ててこちらへ歩み寄ろうとすると、中原はちょっとした段差に躓き、俺の方へと倒れ込んでくる。

 

「きゃっ!」

「お、おい!!」

 

 咄嗟に避けようとするが、間に合わず、そのまま中原は俺事押し倒す形で倒れ込んでしまう。

 

「いてて……」

 

 目を開けると至近距離で、中原と目が合う。

 

 あまりまじまじと見たことがなかったが、こいつってこんな可愛い顔をしていたんだ……。そんな事を意識していると少し胸の鼓動が高鳴っていた。

 

 向こうも顔を真っ赤にしながら声にならないような悲鳴を上げて、俺からすぐにウサギのような跳躍力で離れる。

 

「お前ら、開店前にいちゃつくなよ……」

 

 一部始終を見ていたのか、後ろでは花瑠香が呆れた顔で頭を抱えていた。

 

「すいません。言い訳をさせてください」

「別に良いんだよ?」

「だから違いますって!!」

 

 必死に言い訳をするが、花瑠香には信じてもらえず、中原にはゴミを見るような目で見ながらお店に行くし……。最悪だ……。

 

 もうこんないたずらはやめようと誓ったのだった。

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