包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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29話 幼馴染の友達の店でバイトをした 後編

 開店時間前になると店の前にはかなりの人数のお客さんが集まっていた。

 

「わぁー、これは去年より多いなぁ……」

「大丈夫なんですか?」

「まぁ、大丈夫でしょ」

 

 俺の質問に少し焦っている様子で答える花瑠香。おそらく予想以上の人数だったのだろう。

 

 大丈夫かな?ちょっと心配になって来たぞ……。

 

「よし、開けるぞ? 準備は良いか?」

 

 開店時間になって花瑠香は俺と中原二人にそれぞれ声をかける。

 

 俺と中原が頷いたのを見てドアを開けると、花瑠香さんの「お待たせしましたー」という声と共に大量のお客さんが店の中に決壊した川のように流れこんでくる。

 

 俺と花瑠香の二人で、中で食べるお客さんを席に案内すると、すぐに席は埋まる。

 

「すみません。チーズケーキ3つください」

「ありがとうございます。3つで600円になります」

 

 中原は、少し焦った顔をしながらも、なんとか大量のお持ち帰りのお客さんの対応をしている。あっちは中原に任せておいてもよさそうだな。

 

「こちらチーズケーキになります」

「ごめん。久野原、悪いんだけどさ……これもって外に立ってくれない?」

 

 お客さんにチーズケーキを運んだ直後、花瑠香がだいぶ焦った顔で俺に街中とかでたまに見かける最後尾と書かれた、立札を手渡してくる。

 

「わかりました。いってきます」

「頼んだぞー」

 

 外に出るかなりの距離の行列が出来ていた。こりゃすげぇな。本当にあのチーズケーキ人気なんだなと改めて思う。

 

 だがそんな事を思ってる暇はない。俺は行列の最後尾らしき場所を急いで見つけて、立札を掲げる。

 

 「こちらが最後尾となっておりまーす!」

 

 そう叫ぶと、周りでどこが最後尾か迷っていたお客さんが集まって来てさらに後ろに並び始めた。

 

 まだこんなに居たのかお客さん……。やばいな、これはとてつもない人数だ……。全然減らないぞ?と途方に暮れていると、瑠香が焦った表情で店から顔を出す。

 

「おい、あっちこっち行かせて悪いが戻って来てくれないか?」

「わかりました! 今行きます! あ、これ持っててもらっていいですか?」

 

 最後尾のお客さんに最後尾の立て札を渡して、急いで店の中へと戻ると、花瑠香が困り果てた表情をして立っていた。

 

「奈津希がパンク寸前なんだよ……助けてやってくれ」

「うわぁ……本当だ……」

 

 お持ち帰りの大量お客さんを裁こうとして目を回している中原の姿があった。通りでさっきからほとんど進んでいなかったわけだ。

 

 俺は急いで向かい、中原を退かしてレジの前に立つ。

 

「ちょ、ちょっと何?」

「中原交代だ。俺がやる。お前は接客をしてくれ」

「わかった」

 

 少し納得がいかないような表情をして、中原は店内で座って待っている客に接客をするべく向かった。

 

 それを見た後。お持ち帰り用のお客さんの対応を始める。このくらいの人数。昔100人程いた友達を束ねていた俺なら余裕だ。

 

 レジの打ち方はなんとか花瑠香から教わった。後は個数とかお釣りの計算ミスをしなければいいだけ!!

 

 一心不乱に俺はレジを長時間打ち続けていたのだった。

 

 

 

 

「終わった……」

 

 閉店時間になり、バーテンダー服から、私服に着替えた俺は机に突っ伏す。疲れた、もう動けない……。

 

「お疲れさん」

「あ、どうも」

 

 そう言って花瑠香コーヒーを出してくる。その少し離れた机では、中原がカップに入ったコーヒーを突っ伏しながらストローで飲んでいた。

 

「とりあえず、後3日頼むよー」

「3日でいいんですか?」

「うん。さっきお母さんの退院の日程が3日後に決まってねー。だから後3日」

 

 嬉しそうに花瑠香は語っていた。後3日、こんなハードな仕事が続くのか。喫茶店だからって少し舐めてた。

 

 でもこれもクレアや優奈と出かけるための資金を確保するため……。頑張らなければ。

 

「お姉ちゃん。お腹空いたんだけど……」

「あーそういえば、お昼も忙しくて食べられてなかったなー。でも疲れたし作る気も起きないやー」

「はぁ……」

 

 呆れた表情で机に突っ伏す花瑠香を見る中原。

 

 あんなに客がくればそりゃ料理を作る気力もなくなるか……。

 

「とりあえず、これ渡すからどっかの店へ行って二人で飯でも食ってこい」

「はぁ?!」

 

 今度は威圧感が出たはぁ?が出た。よっぽど俺と2人で行くのが嫌らしい。

 

「でも久野原は妹が……」

「今日は、妹はバイトでいない」

「ほら、早く二人でいってこーい。お釣りは2人で分け合っていいからー」

「しゃーない。いくぞ」

 

 俺は花瑠香から万札を受け取り外に出ると、もうやけになったのか中原は「しょうがないか……」とぼそぼそ言いながら、俺に付いてきていた。

 

「別に俺と同じとこで食べなくていいんだぞ?」

 

 万札を渡そうとすると、中原手で押しのける。

 

「今金欠だから、あんたと食べるわ。本当は嫌だけど……」

「そうか」

「どうせあんたも金欠なんでしょ? それに私、行きたいお店があるの」

 

 そう言って歩き出した中原の後ろを俺はついて行く。

 

 本当に中原の私服、黒いフード付きのパーカーに、白いボトムス。本当に女の子っぽいというよりも、ボーイッシュという表現が似合いそうな服装だな。

 

 

 

「何?じろじろ見てるの?」

「いや、何も……」

 

 視線に気づいた中原がギロッと睨みつけながら、こちらを振り向く。

 

「どうせ、可愛くないとか思ってんでしょ?」

「別に可愛くて、似合ってると思うけどな」

「なッ……」

 

 予想もしていないことを言われたのか、リンゴのように顔が真っ赤に染まっていた。

 

「ま、まぁお世辞でも嬉しいわ。ありがとう」

 

 ニコっと笑い言う中原。こいつのこんな笑顔初めて見たかもしれない。毎回機嫌が悪そうな顔だったから少し新鮮だった。

 

 それから15分ほど歩いていると、少し大きいファミリーレストランが見えてきた。

 

「なんでここが来たい店?」

「入ってみればわかる」

 

 何の躊躇もなく入っていく中原の俺もその後ろについていく。すると奥からやってきたウェイトレスですぐに、中原が行きたいと言っていた理由が判明する。

 

「い……いらっしゃ……いませ……」

 

 可愛らしい水色のフリフリのウェイトレス衣装を身に着けた優奈がそこに立っていたからだ。

 

 入店してきたのが、中原だけかと思っていたのだろう、俺が後ろに立っていたのを見て呆然と立ち尽くしている。

 

 それを見て、中原はニヤニヤと笑いながら、指を二本立てる。

 

「どうしたのー? 優奈ー? 二名で案内してー」

「は、はーい。二名様ご、ご案内しまーす」

 

 ぎこちない動きで、俺達をテーブル席と案内する優奈。俺がいる事によって相当ガチガチ緊張しているな……。

 

 2人で席に着いたのを確認すると、優奈はメニュー表を置いて中原にひそひそ話を始める。

 

「ちょっと……友太を連れて来るなんて聞いてない……」

「いいじゃん。別に。本当は見てもらえてうれしいんでしょ?」

「そ、それは……」

「ね?」

 

 こちらに、メニュー表を見ていた俺に話を突然ふってくる中原。確かにあまり優奈が普段着ないような服ではあるが、服の色と優奈の雰囲気がマッチしていてとても可愛い。

 

「す、すごく似合ってるよ優奈」

 

 ぎこちなく俺がそう言うと優奈顔を赤らめて、「馬鹿……」と言いながらお盆で恥ずかしがっている自分の顔を隠していた。その優奈の様子はとても可愛かった。

 

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