包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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36話 幼馴染の友達にからかわれた

「おはようございまーす」

 

 何時ものように開店前のカフェ内に入るとまだ2人とも降りてきていなかった。流石に早くき過ぎてしまったようだ。俺はカフェ内にある椅子へ腰掛けて2人を待つ事にする。

 

 座ってしばらくすると奥の部屋から、綺麗な笛の音色が耳に入る。おそらく中原がフルートの練習をしているのだろう。気づけば綺麗なフルートの音色に誘われて奥の部屋に足を運んでいた。すると予想通り着替え終わった中原が椅子に座ってフルートを吹いていた。

 

 とても心地よくて、いつまでも聞いていたくなる音色だ。夢中になって聞いていると中原は俺の存在に気づいてフルートを吹くのやめて俺を睨みつける。

 

「何?」

「いや、いつもながらいい音色だなーと思って聞いてた」

「それはありがとう」

 

 中原は満更でもなさそうな表情をする。俺に褒められて少しは嬉しいようだ。

 

 そういえば、GW中学校へ行かず、ずっと店にいたが部活はどうしたんだろう。

 

「てかGW中、部活に行ってないみたいだけど休んだのか?」

「部長に行って、GW前半の4日は休ませてもらったの」

「マジかよ……。吹奏楽の部長、休みくれとか言うととむっちゃキレるって言うけど大丈夫だったのか……?」

「うちの部長をどんな人だと思ってるの……? 流石に親が入院したって聞いたら休みくれるでしょ?」

「ま……まぁそうだよな……」

 

 「やれやれ」と言いながら中原は呆れた表情でフルートをケースに片づけ始める。

 

 俺が通っている吹奏楽の部長は、かなりスパルタの厳しい女子で別名鬼畜部長と呼ばれている。なので今日、中原の話を聞いてちゃんと人間の心があったんだなと俺は安心する。

 

「まぁ、私の場合はちゃんと部に貢献してるからね」

「流石はフルートの妖精さん……だな」

「その呼び方やめて!!」

 

 心底嫌そうな顔をしながら、声を荒げる。

 

「なんで? すごく可愛いと思うけど」

「私そのあだ名嫌いなの……。そのあだ名のせいで髪の毛短くするハメになったし……」

「お前って、昔髪の毛長かったのか?」

 

 突然のカミングアウトに俺は驚愕する。

 

 だから吹奏楽部なのに、バレー部の部員みたいに髪の毛を短くしてたのかと謎に思っていたことがようやく判明してスッキリした気分だ。

 

「まぁその時はアンタと会った事ないからね。あの頃は髪の毛が腰まであったせいで大変だったし、切って正解だったな」

「ふーん……」

 

 それにしても髪が長い時の中原ってどんなんだったんだろう……?腰まであったって言ってたし優奈やクレアよりも相当長かったんだろうなと容易に想像できる。

 

 長い髪の中原の姿を頭の中で想像していると、不信感を抱いた表情で中原がまた俺を睨んでいた。

 

「何? どうせ髪の毛短くして、私の事あんまり可愛くなくなったなとか考えてたんでしょ?」

「いや別に。俺は今のお前も可愛いと思うけど」

「はぁ?」

 

 ぼんという擬音が出るくらい顔を真っ赤にして恥ずかしがる中原。

 

 急になんでそんなもじもじとしてるんだよ。

 

「で、でも……男っぽいし……、似合ってないと思うし……」

「別に中原は男っぽくないし、似合ってると思うぞ。髪の毛が短い中原も俺は好きだな」

「な、な、な……」

 

 似合ってるや可愛いと言われてキャパオーバーになったのか、中原は顔を真っ赤にしてその場にぶっ倒れる。そしてすぐ起き上がると顔をぶんぶんと回して、こちらニヤニヤとした表情で見る。

 

「ふーん。優奈もこんな事言って落としたんだー」

 

 あ、元の中原に戻ってきた。やっぱり中原はこうでなくっちゃな。

 

「んなわけねーだろ……」

「そっか、そっかーふーんー」

 

 ニヤニヤと笑いながら俺の顔を見つめる中原。そのにやけ顔をしてふと朝の事を思い出す。

 

「そういえばお前優奈に嘘ついただろ?」

「えー? 何のことー?」

 

 そう言いながらあほ面をする中原。こいつ絶対わざと知らない素振りをしているだろ……?

 

「優菜にちくっただろ? 俺が盗撮して押し倒してしまった事」

「ちくったって心外だわ。アンタが全部悪い癖に……」

「俺が悪いのは認めるよ……ごめん。でもパンツを見たって嘘を教えるのは違うと思うんだが」

「まぁ、そうね。私も悪ふざけが過ぎたかも……。ごめんね」

 

 案外素直に認めるんだなと、呆気にとられて「あぁ……」と微妙な返事をしてしまった。

 

 何はともあれこれで優奈も許してくれるだろう。良かった。良かった。

 

「ところで……、私のパンツ見たかったの?」

「は?」

 

 からかうように顔をにやつかせながら、スカートを素早く上下にパタパタさせる。

 

 やっぱりこいつはこの話を、穏便に終わらせるつもりはないようだ。俺はスカートから必死に目を逸らす。

 

「お、おいやめろ……」

「うわぁ……。見てる見てるー。スケベだぁ……」

 

 こいつ……。体を動かして俺の顔がある方向でスカートをパタつかせやがる……。

 

「ほーらほーら……」

「本当にやめ……」

 

 そう叫ぼうとした時だった。

 

「なつきー? ちょっと今良いか?」

「は、ひゃい!!!!」

 

 店の方から花瑠香の呼び声が聞こえると、その声にびっくりしたのか中原はパタつかせていたスカートを一気に捲りあげてしまう。

 

「!?」

「~~~!!」

 

 何も見てない。何も見てない。派手な紫の白いフリルをあしらった布が見えたような気もするが……。俺は知らない。

 

「見た?」

「中原……。紫は派手過ぎると思うよ……?」

 

 そう言った瞬間に俺の頬に一発の衝撃が被弾する。

 

「最低……」

「へぶしー」

「今の忘れろ!! このスケベ!!」

「ぶへー!!」

 

 勢いよく何発も、何発も俺の頬に涙目となった中原からのビンタが被弾する。痛すぎる……。もうやめてぇー。

 

「痛い! 痛い! マジで痛い! お前が見せて来たんだろうが!」

「うるさい! 大人しくビンタされろ! スケベ久野原!!」

 

 かなりの回数ビンタして、ようやく気が済んだのか中原は俺から離れてビンタをするのをやめてその場から足早に店の方へ立ち去ってしまう。

 

「ふん!」

「理不尽だ……」

 

 なんなんだ今日は、朝のクレアの件と言い、今日の俺にとってパンツは呪物なのか?恐らく星座占いがあれば今日の運勢は最悪で説明欄には女の子のパンツには注意しようと書かれていることだろう……。

 

 俺は立ち上がって頬を水で冷やして痛みが引くのを待った。幸いアイツの本気のビンタではなかったのか痛みは数十分で消えた。

 

 その後バイト中も、お昼休憩中も、バイトが終わってからも中原は口を聞いてくれなかった。

 

「なぁ、奈津希と何かあったのか?」

 

 俺と中原の異変に気付いた花瑠香は、バイト終わりで帰ろうとする俺に心配そうな顔をして尋ねる。

 

「いや、ちょっといろいろと……」

「あ、そう……」

 

 疲れ切ってしゃがれた声を出した俺を見て、察した花瑠香はやれやれまたか……と言った感じの顔をしていた。

 

 俺は何も悪くないんですよ、悪いのはからかいながらスカートをパタパタとしてきた中原なんです。とは今の状態では言えなかった。

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