包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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38話 幼馴染の友達と仲直りした

「あぁ? お前がここの責任者か? チーズケーキにカビが生えてたんだよ。ほら見ろ」

 

 ヤンキーの男は悪ぶりながら俺にチーズケーキを手渡してきた。

 

 確かにこれはこの店にあるチーズケーキだ。こいつらの言う通り、たしかに少し変色してしまっていて一見カビのようではあるが……。なるほどこいつらはチーズケーキの特徴を理解していないようだ。

 

「このケーキに使われているのはカマンベールチーズと呼ばれているものです。元々のチーズに白カビがついていますけど害はないです。相当熟成しているようなのでこのような色になってしまっていますが、多分食べても大丈夫だと思います」

「おい、お前、俺達にカビを食べろと言うのか?」

「だから、白カビは体に害はないんですって」

「けッ……。何が白カビだ……。これだからチーズケーキは嫌いなんだ……」

 

 俺がそう説得するも、ヤンキー達は聞く耳を持たない。

 

 やっぱりこいつらに何を言っても無駄だったか。こうなれば追い出すしかないとヤンキー達を追い出そうする準備をした時だった。突然俺の背後からとてつもない殺気が漂ってくる。

 

「おい!今なんつった?」

「ひッ……」

 

 振り向くとそこに立っていたのは、凄まじい形相をした花瑠香だった。

 

「うちのチーズケーキに大勢の客の前で文句言っておいて、チーズケーキ嫌いだぁ? いい度胸してるじゃねーか?」

「う、うわあああああああ!!!」

 

 流石のヤンキー達も花瑠香の凄まじい殺気に耐えられなかったのか、逃げるように店の中から立ち去って行った。

 

 怖すぎるだろこの人……。絶対昔はこの人もヤンキーで地元ではブイブイ言わせてたんだろうなぁと容易に想像できる。

 

 その隣で中原はヤンキー達がいなくなって安心したのかその場にペッたんと女の子座りで座りこんでしまっていた。

 

「ああいうやつ、たまに来るんだよなぁ……まったく……」

「すいません」

「いや、お前が謝ることないだろう? 奈津希とうちの商品をあの変なヤンキーから守ってくれたんだから」

 

 先ほどの恐ろしい形相とは打って変わって優しい笑顔でそう言う花瑠香。なんかさっきの殺気だった表情見た後だからその優しい笑顔も怖く感じてしまう……。

 

 俺は少しビビって「は、はい」と震えた声で返事をしてしまっていた。

 

「とりあえずお前は奈津希を見ててやってくれ……。店は私一人で何とかするから」

「わかりました」

 

 俺はほぼ放心状態の中原を担ぎ上げると、そのまま休憩室へと運んで行ったのだった。

 

 

 

 

 

 休憩室につき俺は中原を椅子に座らせる。

 

 ようやく中原も落ち着いたようで、いつの間にか正気を取り戻していた。

 

「久野原君、助けてくれてありがとう」

「別にいいよ……」

 

 改めて、お礼を言う中原に少し照れながら受け答えをする。

 

「それにしても、久野原君の前で恥ずかしいとこ見せちゃったな……」

「本当に固まるんだな」

「うるさい」

 

 頬を膨らませて、少し小馬鹿にされたことでいじける中原の顔はちょっとかわいかった。

 

「本当にあんたって優しいのね」

「なんで?」

「周りの男らがびびってるのにあんただけ出て来るんだもん……。優しいって言うレベルじゃない」

「そうかな?」

 

 よくよく考えてみればそうか、周りにいた男性達は皆ビビってたり、知らんぷりしてる人が多かった。そんな中で俺一人だけが中原を助けるために動いた。本当に周りから見れば勇気ある優しい奴だなとか思われてたんだろうか?

 

 最終的に花瑠香が出てきて事なきを得たけど、花瑠香が来なかったらどうなっていた事やら……。

 

「普通ならあそこまでできないよ、あんたは今の性格を誇るべきだね」

 

 誇るべきか……。あんまり好きじゃないんだよな俺の性格……。

 

「でも1つ忠告しといてあげる」

「なんだよ、忠告って……」

 

 急に真剣な表情をして顔を近づけて来る中原に少しビビりながら返事をする。

 

「その優しさはあまり女の子に振りまかない方がいいよ」

「どういう事だよ?」

「あんたは優しすぎる、絶対にいつか仇となってしまう時がくるよ?」

「いや、仇ってなんだよ……」

「まぁ忠告はしたからね……?」

「お、おう」

 

 そう言いながら中原は少し顔を赤らめていた。仇ってなんだよ……。優しすぎたらなんか悪い事でもあるのかよ?と少し内心腹を立てていたが、俺はこの時あまり仇となるという事の意味を全く理解しようとせず、また中原の変な戯言だと思って自分の頭の中に留めようとしなかった。

 

 あ、中原に言わなければいけないことがあったんだ。完全にヤンキーの事で吹き飛んでいて忘れるとこだった。口を聞いてくれている今なら……。

 

「そういえば、なんで昨日はなんであんなに怒ってたんだ? もし俺がお前のパンツを見たから怒ってるなら謝るよ」

 

 頭を下げながら中原に向かって謝罪をすると、「ぷっ」と吹き出して笑い出してしまう。

 

「やっぱり、なんで私が怒ったかわかってなかったんだね」

「違うのか?」

 

 ニヤニヤと笑う顔に少し腹立たしさを覚えながらも俺は如何にかこうにか我慢する。

 

「私は別にパンツ見られて怒ってるんじゃないよ。だって私がからかって起こってしまった不慮の事故だし」

「じゃあなんでだよ」

「あんたが紫は派手過ぎるって言ったからよ」

 

 そう言えばそんな事を言ったけ?と「あー」と曖昧な返事を返す。

 

 そうか。あの時の「最低」って言う中原のセリフはパンツを見られたからじゃなくて、紫が派手過ぎるって侮辱されてムカついたから出たセリフだったのか。

 

「もしかして、紫ってお前の好きな色なのか?」

「当たりー」

 

 やっぱりか……。確かにそう言われてみれば中原が身に着けている小物やアクセサリーは紫色の物が多い。

 

 髪に付けてるヘアピン、そしてブレスレッドはすべて紫色だった。もっと早く気づけていればあんな事言わなかったのになぁ。

 

「マジで、ムカついたんだから。何が紫色派手すぎるよ……。もう二度と言わないでよね」

「いやマジでごめんって……」

 

 頬を含まらませて不貞腐れるように言う中原へ俺必死に謝る。

 

 必死に謝る姿を見た中原はニヤニヤと笑うのではなく、万年の笑みで俺に向かって微笑んだ。

 

「まぁいいやー。今日は助けてもらったし許す」

「お、おうありがとう」

「さぁ、お姉ちゃん1人で任せっきりは申し訳ないし、店に戻るよ久野原君」

「そうだな。俺も早くレジ打ちに戻らないとだな」

 

 早く行こうと言わんばかりに中原はこちらへと手招きし、俺はそれに導かれるがままについて行ったのだった。

 

 それにしても一時は口を聞いてくれなくなってどうなる事かと思ったが、さっきの反応を見てる感じだと少しは中原に気に入られたという解釈で良いのかな?

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