包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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4話 イギリス人が転校してきた

 翌朝起きると、隣に寝ていたクレアはもういなかった。約束通り俺より早く家を出たらしい。

 あの調子だと「やっぱり友太君と行くー」って言い出して待ってそうな気がしたがそこのところはわきまえているみたいだ。

 

 リビングに降りると机の上には目玉焼きとトーストされたパンが置いてあった。卵なんて家にあったけ?と思ったが、おそらくコンビニで買ってきたのだろう。冷蔵庫を見ると他にもいろいろと食材が買って来てあった。

 

 クレアの作った朝食を食べ終えて家から出ようとすると、急に不安が襲ってきた。朝俺の家からクレアが出たところを見られていないだろうか?学校で問い詰められないだろうか?だけどそれは過度な心配だったようで、学校についても何も言われなかった。とりあえず一安心だ……。

 

 

 

「転校生を紹介します、では入ってください」

 

 先生の一言でクレアがドアを開けて入ってくると、教室内からは「可愛いー」「綺麗ー」など男子や女子から賞賛の声が上がる。

 

「イギリスから来ました、クレア・シルバーロックと言います。慣れないこともありますがよろしくお願いします」

 

「言ってくれたように、彼女はイギリスから来ました。慣れない事があると思うので助けてあげてくださいね」

 

 先生がそう言うと「俺が学校案内してあげるよ」や「私が案内しますー」などと言われて教室中の生徒の注目を浴びていた。

 

 休み時間クレアの周りには大勢の生徒が積みかけていた。「どこから来たの?」や「日本には何で来たの?」等と質問攻めにあっていた。

 

 揃いも揃って群れやがって……外国の人がそんなに珍しいのか?

 まぁでも日本人は珍しい物や珍しい体験に興味を惹かれやすいというし、それが生まれ根付いた(さが)なのかもしれない。

 

「クレアさん可愛いよなぁ……」

「そうだな……って……小原いたのかよ!」

 

 突如として現れた小原に対して少し驚いたが冷静にツッコミを入れる。

 

「お前もこんな所でいてないで、クレアさんに話しかけて来いよ」

「俺は別にいいよ」

「なんで?外国人の女の子と仲良くなれるチャンスだぞ?」

「興味ない」

 

 そんな事を小原と話していると、クレアはこちらに気づいて振り向き笑顔で俺に小さく手を振った。それを見た小原は「おいマジかよ」と驚いた表情だった。

 

「良かったな、お前クレアさんに手を振ってもらえて!!」

「別にそんな喜ぶほどでもない」

「なんでだよ」

「イギリス人は誰に対しても社交的なんだよ」

 

 俺がそう説明しても小原は「社交的……?」ときょとんとした様子で言葉の意味を理解していないようだった。

 

「つまり誰に対しても、親しいんだよ」

「あーそういうことね……」

 

 本当にわかってんのかなぁ?こいつ……。

 

 

 

 放課後何事もなく一日が終わった。正直名前を言った後久野原君の妹です。とか言い出したらどうしようと内心バクバクだった。本当に何事もなく終わって良かった。

 

 これで明日からいつもと同じように過ごせそうだ。後は卒業までバレなければいいのだが、まぁそんな訳にはいかない訳で……、とりあえずバレた時の言い訳も今のうちに考えておかないとな。

 

 もう少しで家に着く時スマホの通知音が鳴る。画面を見るとどうやら植野からのLINEのようだ。

 

 『今から久野原の家の向かうけど良いよね?』

 

 あぁそうか今日は植野が晩御飯を作りに来てくれる日だったか、そう言えば昨日行くって言ってたな。クレアの事で頭がいっぱいで忘れていた。

 

 ん?家に来る……?やばい!!俺の家にはクレアがいる……、今植野が俺の家にくれば……。俺は急いで走った。

 

 

「友太君おかえりなさい~」

 

 家に戻るとクレアが買い物袋から買ってきた食材を冷蔵庫に入れている最中だった。

 

 息を切らしながら帰ってきた俺に「大丈夫?」と言いながら近づいてきたので、息を整えて両方の腕でクレアの肩を持つ。

 

「どうしたの?友太君……急に私の体を触ってー」

「隠れてくれ……」

「な、なんで?」

「植野って言う、俺の幼馴染が来るんだよ!」

「え?友太君!お友達がいたんですかー!?」

 

 目を輝かせながら、「友太君に友達がー」と言っていたが、そんな事を言わせている場合じゃない……。

 

「植野にクレアと一緒に住んでいることがバレたらまずい、だから隠れてくれないか?」

「わ、わかった……、えっとどこに隠れればいい?」

 

 どこに隠れさせればいいんだろう……?そんな事を考えていると、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。やばい!もうそこまで来てる!もう考えてる暇はない!!!

 

「クレア!!!二階に隠れてくれ!!! 二階ならアイツ来ないから!!」

「わかった」

 

 そんな会話をしてる間にもチャイムは何度も何度も鳴っていた。入ってくるときに鍵をかけておいて正解だったようだ。

 

 クレアは急いで階段を登る。俺も机の上にあったクレアが買ってきた食材を冷蔵庫の中に急いで入れる。これでよし……。さて、早く玄関のドアを開けに行かないと……。

 

「遅い……。何してたの?」

 

 ドアを開けるとそこには機嫌を悪そうにして立っている植野がいた。白いブラウスに黒い短めのミニスカートと中々気合の入った私服で手にはクレアと同じスーパーの袋を持っていた。

 

「ごめん……、ちょっと部屋の中片づけてた」

「そっか、じゃあ入るね……」

 

 植野は「お邪魔しまーす」と言い家の中へ入ろうとした時だった。何かを見つけたのかじっと玄関の床を見つめていた。

 

「どうした?」

「なんで、久野原の家にローファがあるの……?」

 

 そう言って植野玄関に並べてある茶色のローファーを指差した。

 しまった!!クレアを隠れさせるのに夢中でローファを隠すのを忘れてた……。

 

「あー、えっと俺の靴だよ」

「でもこれ、どうみても女子用だよね……?それにこれ日本のものじゃない気がするんだけど」

 

 こいつ鋭い……、このままだとバレてしまう……なんとか言い訳を考えなければ……。

 

「えっと、父さんが今外国にいるって言ったじゃん?それで外国製のローファーを送ってくれたんだけどさー、父さん間違えて女子用買っちゃってさー」

 

 ごめん父さん、こんな言い訳しか思いつかなかったんだ。父さんがそんな人ではないって事は分かってるんだけど、今はそういう人ということにさせてくれ……!!

 

 こんな事を考えながら俺は「あはは」と愛想笑いしているが、俺の心臓はバクバクと音を立てながら高鳴っていた。頼む植野信じてくれ……。

 

「何それ、久野原のお父さん何してるの」

「そ、そうだよなー」

 

 良かった……信じてくれて……もしクレアが履いているところを学校で見られていたら終わっていた。

 

 お互い面白可笑しく笑い合ってなんとかなったようだ。だけどまだ油断はできない。

 このままクレアが家にいる事がバレずに終わればいいのだが……。

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