包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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三章 妹と夏休み
49話 期末テストが終わった


「そこまで!」

 

 静寂した教室に野太い男性教員の声が響き渡る。

 

「終わった……」

 

 期末テスト最終日、ようやくテストが終わったという解放感にしたたる。

 

 教室にいた生徒達もようやく終わったと言いながら、次々と教室を後にしていった。

 

「よぉ!どうだった?」

 

 機嫌よくスキップをするように小原が近づいてきて話しかけて来る。

 

「まぁまぁかな……」

「お前そんな事言って意外といい点数取るもんな」

「成績維持が、仕送りの条件だからな」

 

 とはいってもほとんど勉強していないのが、正直なところではあるが。

 

 俺は、ただぺラぺラと教科書を捲るだけで、暗記してしまう。なのであまり書き写したりとか言う勉強方法をとらない、ただ読むだけだ。

 

 他の人に言ったら、すごく羨ましがられるんだろうな……。

 

「お前はどうなんだよ」

「うーん、まぁまぁかな」

 

 とても渋いお顔をしながら、緩急のない声で喋る。あぁマジで自信がないんだろうな……。

 

 こいつそう言えばいつも赤点ギリギリだったよな。学年で成績トップの三瀬川に怒られたりしないんだろうか?

 

「お前、赤点取ったらやばいんじゃなかったけ?」

「そうなんだよ……。赤点取ったら今1人で住んでるマンションの契約切られてしまうんだよ」

 

 絶望をした声で小原は俺に泣きついてくる。そういえば前にマンションの家賃は親に払ってもらってるって言ってたけ?

 

 こいつも俺と同じように親に条件出されているんだな。かわいそうに……。

 

「あー……。赤点取ったらどうしよう……」

「親に土下座でもするんだな」

「友太君、一緒に土下座して?」

「いやだ」

 

 なんで俺がこいつの親へこいつと一緒に土下座しなければいけないんだ。お前との家族のいざこざに俺を巻き込まないでくれ……。

 

「そんな冷たい……」

「お前の自業自得だろ」

「頼むってぇー」

「いーやーだ」

 

 涙目になりながらすがりつく小原を冷たい目で見ていると、俺の机へスクールバックを持った、クレアが近づいてくる。

 

「友太君……」

 

 なんだ?クレアもなんかやばそうな顔してるが……。まさか……。

 

「お前もどうしたんだよ……?」

「テストやばいかも……」

 

 顔面蒼白になりながら、ガタガタと体を震わせていた。

 

 日本の学校に来たばっかりだから大丈夫かな?と不安に思っていたが、その不安は的中していたようだ。

 

「クレアさん、今日の国語と数学と化学どれかが不得意だったんすか?」

「全部……」

「全部!?」

 

 俺と小原二人合わせて声を大にして叫んでしまった。

 

 「マジかよ……」と呟きながら、俺は頭を抱えた。妹が成績悪いと親父から何を言われるやら……。

 

「何で言わなかったんだよ……」

「だって……友太君忙しそうだったから……」

 

 そう言いながら、指をツンツンして気まずそうにする。別に忙しくもなんともなかったんだけどな……。

 

 でもよくよく考えればクレアが自分で苦手だと思い込んでるだけかもしれないし、もしかすれば……。

 

「でも、もしかしたらいい点数かもしれないぞ?」

「そうかも。そう思うと気分が晴れ渡ってきたー」

 

 不安が消えたのか、機嫌を良くしてルンルン気分でスキップをしながら、教室を出て行った。

 

「本当に大丈夫か?」

「結果が出ればわかる事だ」

 

 どうせアイツの事だろうから、すごい点数取って自慢してくるんだろうなぁと思っていた。

 

 はずだったのだが……。

 

「うげ……」

「友太く~ん……。ダメだったぁ……」

 

 テストが返却された日の放課後、中原の喫茶店のお店の机にこの世の終わりのような顔をして突っ伏していた。

 

 予想通り、かなりの点数の悪さである。予想はしていたけどいざ現実を目の当たりにすると来るものがあるな……。

 

「でも、赤点ではないじゃないですか」

「まぁ、そうですけどぉ……」

 

 優奈は励ましのつもりで言っているようだが、全く励ましになっていなかった。

 

 なんか、優奈が言うと煽りに聞こえるのは、気のせいだろうか?

 

「久野原君、ちゃんと勉強教えなきゃいけないじゃない」

 

 机の前に現れたのは、男性用にバーテンダー服を着た中原だった。

 

 彼女の手には、3人分チーズケーキとコーヒーと紅茶が乗ったお盆を持っていた。

 

「んなこと言ったって……。クレアが勉強できないの知らなかったし」

「だから妹の事はちゃんと見てあげてって言ったのはこういうことなんだよ?」

 

 呆れた表情で怒る優奈に俺はただ「すいません」としか返せない。

 

 何で、何もしてない俺がこんなに怒られなきゃいけないんだ……。

 

「2人とも大丈夫です。友太君は悪くないですから……」

 

 怒っている優奈と中原をクレアは止めようとするが、2人は全く聞く耳を持とうとしない。

 

「ダメ、そう言ったら友太がまたクレアさんの事見てくれなくなるよ」

「そうよ、久野原君ただでさえ妹の事なんてどうでもいいと思ってるのに」

「いや、俺そこまで思ってねーよ……」

 

 酷い言われようだ……。俺はそこまで思ってないのに。

 

 マジで泣いていいですか?

 

「じゃあ、今度の期末テストはちゃんとクレアさん勉強見てあげてね?」

 

 笑顔で優奈は俺の肩を持ちながら、そう言う。

 

 やばい、これマジだ。目が笑っていなくて怖いよ……。

 

「あぁ、そのつもりだよ」

「良かったね、クレアさん」

「はい……。友太君ありがと」

 

 そう言いながら、クレアは嬉しそうに俺の手を両手で包み込むように持った。

 

 流石に公共の場だからか、何時ものように抱き着くのは自重したようだ。

 

 毎回こんな感じで、家にいる時以外は自重してくれると良いんだけどなぁ……。

 

「おうよ……。ただし俺が見るからには赤点ギリギリなのは許さないからな……」

「えぇ……!?頑張りましゅ!!」

 

 クレアはかなり高いハードルを掲げられて、ビビったのか途中で噛んでしまっていた。

 

 正直言えばこのままクレアの成績が下がってしまえば、父さんからもぼろくそに言われると思っていたからだ。

 

「その代わり、テスト勉強の時は私も一緒に勉強するからね?」

「じゃあ私もそうさせてもらおうかなー」

「別に構わないけど……」

 

 別に何にもやましい事はないから、構わないけど……。2人が俺の事を嫉妬の目で見ているのはなんだ?

 

 これからまた、色々な事が起きそうだと、ため息を付きながらチーズケーキを頬張った。

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