包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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5話 幼馴染とご飯を食べた

「ミートスパゲティでいいよね?」

 

 そう言って植野はキッチンの上に買い物袋を置き、中からトマト缶やひき肉やパスタ、調味料などを取り出す。

 

「うん、頼む」

 

 昨日コンビニで買ったなんて事は言えるはずもなくうんと頷くしかなかった。それにしても普通はレトルトを買ってきそうだが植野はミートソースから作ることができるらしい。植野の料理の腕は相当な物なのではないだろうか?

 

 クレアの料理の腕前はどれくらいなのかはわからないが、「任せて!」と自信をもって言えるくらいなのだろうから植野と張り合えるのだろうなと思う。

 

 俺もどちらかに料理を教えてもらおうかな?最近はコンビニの弁当も高くなってきたしそろそろ自炊もしたいなと思っていたところだ。凝ったものはできなくても簡単なものはできるようになりたいな。

 

「ねぇ……、なんで冷蔵庫の中にこんなに食材が入ってるの?」

 

 手に余ったトマトが置かれた皿を持ち、冷蔵庫を開けてそう叫ぶ植野。

 

 しまった……冷蔵庫を開けると思っていなかったから片付けるのを忘れていた。

そんな事を考えてる間にも植野はこちらを疑いの目で見つめている、とりあえずなんか言い訳しなければ……。

 

「あーこの間コンビニ弁当ばっかじゃダメだよって言われたから、料理しようと思ってな……」

「ふーん、そうなんだ。やっと料理する気になったんだね」

「そ、そうだよ!!」

 

 ふぅ、何とか乗り切った……。だがまだ油断はできないぞ。

 

「じゃあこれは何?」

 

 ぎゃあああああ!!!!今度は紅茶のティーバッグだぁぁぁぁ!!!!あの野郎、なんて物を買って来てたんだ。しかも冷蔵庫の上に置くなんて……。

 

 いやまぁこれは気づかなかった俺も悪いけど、さすがに紅茶のティーバックを買って来てるなんて予想もしていなかった。

 

 玄関にあった外国のローファー、そして紅茶のティーバッグ……これで感づかれなきゃいいが……。

 

 これは植野相当怪しんでいるな……さてどうするか……。

 

「もしかして……」

「なんだよ」

 

 まずい感づかれてしまったか?これは覚悟を決めるしかないか……。

 

「イギリス人の女の子が久野原のクラス転校してきたから流行りに乗ろうとしてる?」

 

 イギリス人という言葉に万事休すかと思ったが、なんとかギリギリセーフだったようだ。

 

「まぁ、そうだね……小原に飲もうと進められて……」

「そうなんだ。クレアさんって言うんだっけ?すごく可愛いらしいね。」

「まぁそれなりにな」

「私もあんな可愛い容姿にうまれたかったな」

 

 そう言いながら長い黒髪を指にくるくると巻き付ける。

 

 これは俺にお前も可愛いぞ?って言って欲しいやつなんだろうか?まぁ確かに植野は学校でも1、2を争うくらいの美少女ではあるが……。

 

「今、性格に難ありとか思ったでしょ?」

「な、なんでわかったんだよ……」

「久野原の考えてることなんてお見通しなんだから!!」

「まぁでも、性格が悪くても俺は植野の事可愛いと思うけどな」

「!!!お世辞はやめてよね……」

 

 顔を真っ赤にして、「すごく暑くなってきたね」と言って腕で仰いでいたが表情はとてもうれしそうだった。

 

 

 

 

 

「おかわりもあるからたくさん食べてね」

「おぉ…すげぇ……」

 

 机の上に置かれたミートスパゲティーを前にテンションが上がる俺。

 

 香辛料、そして長時間煮込んだ牛肉の風味が俺の鼻をくすぐる。俺は我慢できずに手を合わせてミートスパゲティにがっついた。

 

 ミートソースは濃厚で、牛肉の風味が口いっぱいに広がった。トマトの酸味と甘さが絶妙に調和しとても美味しい。

 

「久野原って本当にミートスパゲティが好きだよね」

「まぁな、死んだ母さんの得意料理だったから」

 

 小さい頃に死んだ母がよく俺が悲しんでいる時や頑張った時のご褒美に作ってくれたのがミートスパゲティだった。その味が好きで、今でもミートスパゲティが好物になっていた。

 

 子供っぽいとか思われるかもしれないが、やっぱり小さい頃に印象に残ったものや味は大きくなっても忘れられないものだ。

 

「ところでさ……」

「何?」

 

 植野は神妙な面持ちでフォークを皿の上に置き話しかけてくる。なんだろう?急に改まって。

 

「久野原、無理して友達を作ろうとしてない?」

 

 急に何を言い出すんだ?と思いながら俺は「いや別に」と聞き返す。

 

「嘘だ。だって急に料理を作ろうとか言い出すし、紅茶を飲んでみるとか言い出すから……もしかしてクレアちゃんと友達になりたいんじゃないかって」

 

 そんな事か……。ぶっちゃけクレアと一緒に住んでいる事を疑われてしまうかと思って身構えていたが、いらぬ心配だったようだ。

 

「私ね、正直久野原にはもうこれ以上友達を作ってほしくないって思ってるの」

「え……?」

「だって……もう久野原には……あんな思いしてほしくないから……」

 

 今でも時々夢をみるくらいに根強く記憶に残っている小学生の時の出来事。

 

 あの後植野をいじめていた男子に、俺は頭に血が上ってしまい気が付けば手にナイフを持って襲い掛かっていた。幸いいじめていた男子にけがはなかったが、そこから学校中にたちまち俺がしでかしたことが噂になってしまい、たくさんいた俺の友達は徐々にいなくなってしまっていた。

 

 そこから俺は友達のためにこんな思いをするくらいならはなから作らなければいいと思うようになり、残っていた友達との関係も切り、交友関係や人間関係を切るようになった。

 

 

 その事を植野はずっと自分のせいだと思うようになっていたようだが、それは違う。だけどそうは言ったって自分がいじめられてるの助けただけで俺に悪いうわさが流れてしまったのだから、そりゃ自分のせいだって思わない方が無理があるか……。

 

「わかってるよ」

 

 今はそう返事をするしかなかった。暫くして「ごめんね」と植野は謝って、わだかまりは溶けて、またもう一度食べ始めていた。

 

 

 

 

 

「ありがとうな、いつも」

「別にいいよ、料理を作るの好きだし」

 

 帰ろうとする植野を玄関で見送る俺。結局変な話をしてしまったお詫びとして明日の分のミートソースも作ってくれていた。

 

 ありがたいけど、これで3日連続ミートスパゲティになってしまうな……。

 

「じゃあ、また明日学校でね」

「おう、またな」

 

 小さく手を振りながら出ていく植野を見送ったあと、大きくふぅ……とため息をついた。何とか見つからずに終わった……。

 

 それを見て階段の上から「もう大丈夫かな?」と言いながら顔を出すクレアに俺は「あぁもういいよ」と言うと一目散にキッチンに走り、置いてあったミートスパゲティをレンジに入れた。あぁよっぽど食べたかったんですね……。

 

「わーい、植野さんのミートスパゲティが食べれるー」

「はぁ……バレなくて良かったぁ……」

「それにしても植野さんとすごく仲良かったね」

 

 ミートスパゲティーを綺麗にフォークに巻き付けて食べながらそう言うクレアに「まぁな」と返す。

 

「もしかして植野さん……久野原君の事が好きだったり……」

「そんな訳!!」

「冗談だよー」

 

 こいつ二階からこっそり見ていたな……。当分は植野の事でからかわれそうだ。

 

「ところで、昔植野さんと何かあったの?」

「もう終わったことだ、気にするな」

 

 クレアの質問に対して俺はそう言って答える。出来ればクレアには知ってほしくない出来事だから。

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