包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


56話 6人で別荘に行った part6

 女子がキッチンで夕飯を作ってある間、俺と小原はリビングのテレビで妖神をやっていた。

 

「楽しみだなぁ……。植野さんや中原やクレアさんが作る料理ー」

「そうだな」

 

 お母さんに好きな食べ物を作ってもらう子供の用に、ウキウキとしていた。

 

 あれ?でも三瀬川の名前は何故ないんだ?

 

「あれ?三瀬川は?」

 

 俺がそう言うと、小原は心底嫌そうな顔をこちらに向ける。

 

「アイツ、実はそこまで料理上手くない……」

「いやでも、この間スーパー今日は何作るの?って楽しみにしてたじゃん」

「あー。あの日は料理を修業したから、食べてと言われたんだ。けどそこまで変わってなかった……」

「あぁ……」

 

 なるほど……。まぁでもクレアや優奈が付いてるから大丈夫だな……。

 

 1人下手な奴が居ても他でカバーすれば、良いだけだからな。

 

「ちょっと、トイレ行ってくる……」

「おう」

 

 持っていたコントローラーを机に置き俺はリビングを出てトイレへ向かう。

 

 用をたし終えると、少しキッチンの様子が気になったので覗きに向かった。

 

 流石に大丈夫だとは思うけど、念のためだ。

 

「4人で別々のを作って良かったんですか?」

「大丈夫ですよ」

「総司喜んでくれるといいなー」

「私、煮物しか作れないけど良かったの?」

 

 キッチンを覗くと、4人はそれぞれ1人1つの鍋をかき混ぜていた。よく見ると中原と三瀬川だけはカレーじゃないものをかき混ぜているように見えた。

 

 「マ……、マジかよ……」

 

 まずいことになった。これはいち早く伝えなければ……。急いで小原のいるリビングへと走った。

 

「どうした?そんな慌てて……」

 

 慌てて走って来て、息を切らした俺を見て奇異そうな表情をする。

 

 息を整えて、小原に近づいて話す。

 

「アイツら、別々でカレー作ってるぞ……?」

「嘘だろ……?」

 

 話を聞いた瞬間震えおののいた表情を小原はした。

 

「で、でも……三瀬川だけが料理下手なら……」

「いや、中原も料理下手だった。アイツは1つの分野の料理しか作れない奴だ」

「終わった……」

 

 膝から崩れ落ちる小原。

 

 1つの希望が打ち砕かれた後の人ってこんな顔をするんだな……。

 

「とりあえず、対策を立てないと……」

「あぁ……当たり前だ……」

 

 2人で輪を組んで会議を開こうとすると、扉が開き……。

 

「おまたせー」

 

 4人がそれぞれカレーの入った鍋を持ってリビングに入ってきた。

 

 間に合わなかったかと……。俺たち二人は涙を飲んだ。

 

「4人でそれぞれ作ったんだねー」

 

 引きつった笑顔で小原がクレアに言う。

 

「はい、そうですー」

 

 クレアは笑顔でそう言う。あぁ分かった、発起人は絶対こいつだ。

 

 その後4人はそれぞれ自分の鍋から、4つの赤、青、緑、黄の花柄の皿にルーをご飯にかけた。

 

 わかりやすく、3つは普通のカレーだったが、1つはダークマターだった。

 

 俺達はまずは、優奈とクレアが作ったであろうカレーを探すことにする。

 

「とりあえず、俺はこれ……」

「じゃあ俺はこれを……」

 

 それぞれ、俺は赤い皿を手に取り、小原は緑の皿を手に取った。

 

 うん、おいしい……と俺達は顔を見合わせる。やっぱり優奈とクレアのカレーだったようだ……。

 

「当たりを先に引いちゃったか……」

「そうみたいですね」

 

 中原と三瀬川はがっかりした様子だった。

 

 別に悪気はないのに、なんなんだろうか?

 

「どっちを食うかじゃんけんで決めようぜ?」

 

 小原を気分の悪そうな顔でそう言って来た。

 

 俺は「そうだな」と言って手を出そうとすると。

 

「久野原君?この間はおいしいって言って食べてくれたよね?」

「総司、食べてくれないと破局ですよ?」

 

 そう言われてしまっては、食べるしかない訳で……。

 

 意を決して俺達は、それぞれ俺は中原のダークマター、小原は三瀬川のカレーを手に取って口に運んだ。

 

 飲み込んだ後、不思議な事に、そこからの記憶はなくなっていた。

 

「ここはどこだ……?」

 

 そこは何もない場所、無という言葉似合う場所だった。

 

「友太、こっちこっちー」

 

 声が聞こえた方向を見ると、亡くなった母がこちらに向かって手招きしているのが見えた。

 

「え、母さん……?」

「私寂しかったの、友太が来てくれると嬉しいな」

 

 そう言ってこちらへ何度もおいでよと言いながら、笑顔で手を差し伸べる。

 

「……そう言われても……まだ俺は……」

「友太君行っちゃダメ!!」

 

 クレアの大声で俺は目が覚める。

 

 気が付くと、目の前に3人の女の子の顔があり、俺は個室のベッドに寝ていた。

 

「良かった。友太……」

「良かったよー友太君ー」

 

 クレアが何時ものように目に涙を浮かべて、抱き着いてきて、優奈は不機嫌そうな顔でそれを見つめていた。

 

「俺どうなったの?」

「小原君と一緒にカレーを食べた瞬間倒れたの」

 

 なるほど通りでさっきまでの記憶が全くないわけだ。引きつった顔をしながら優奈は先ほどまでの出来事を説明する。

 

 どうやら俺達は白目を向いて、口から泡を吹きながら倒れていたらしい。危うく救急車で運ばれるところを近くにいた三瀬川の医療チームに治療され、一命をとりとめたらしい。なんという殺人カレーだ……。

 

 もう当分はカレーの姿も見たくないな。

 

「クレア、半年はカレーを作らないでくれ……」

「わかった」

 

 さてその殺人カレーを作った本人はというと……。

 

「悪かったわよ……。無理やり食べさせて」

 

 不貞腐れた様子で、椅子に座って机を指でなぞっていた。

 

「まぁ、食ったのは俺だからな。お前のせいじゃないよ」

「そう……。カレー練習しとく」

 

 中原は少し複雑な表情をしながら、俺の部屋から出て行った。

 

 煮物は絶品だったのになぁ……。なんで他はダメなんだろう?

 

「てかあのカレーどうしたの?」

「全部混ぜて私達で食べたわよ」

「あ、そうなの」

 

 だからクレアがさっきから気分の悪そうな顔してるのね……。

 

 おそらく発起人であるクレアが全責任を持って平らげたのだろう。これに懲りたらもう二度とやらないでくれ。

 

「まぁ今晩は休んだ方がいいよ?」

「とりあえず、ジュースとかゼリー置いとくから今晩は安静にね」

「おう、ありがとな」

 

 2人は俺が寝ているベッドの近くにある机へジュースやゼリーが入った袋を置き、部屋を出て行った。

 

 喉が渇いたので、ジュースの入ってるペットボトルに手を伸ばそうとすると、スマホの通知音が鳴る。

 

『よぉ、大丈夫か?』

『生死をさまようところだった』

『そうかそうか、生きててよかったわ。俺は今三瀬川に抱きしめられて……』

 

 メッセージが送られてきた瞬間に俺はトーク画面をすぐに閉じた。全く油断するとすぐこうだ。

 

 俺はジュース飲み、ゼリーを平らげるとそのままもう一度夢の中へと旅立とうとした時だった。

 

「友太君?添い寝してあげようか?」

 

 枕を持ったクレアが笑顔で部屋に飛び込んでくる。

 

「いや!いい!」

「三瀬川さんは添い寝してるらしいよー?」

 

 そう言いながらクレアは布団を捲りあげてベッドへ入ろうとすると……。

 

「クレアさんー!!ちょっと私の部屋来ませんか?」

 

 部屋の外から優奈の声が聞こえた。

 

「わかりました。今行きますねー。ごめんね友太行ってくるね」

「気にするな、俺の事は心配ない」

 

 助かった……。クレアは心底残念そうな顔をして俺の部屋から出て行ったのだった。

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