包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。 作:瓜生史郎
「お祭り?」
「この近くで花火大会があるんだってよ」
夜になり、昨日と同じようにリビングで晩御飯を全員で集まって食べていると、小原が突然そう言い出した。
「でも私達浴衣なんて用意してないけど……」
「大丈夫です。この別荘には浴衣もありますから」
「本当ですか?」
「やったね、友太君」
3人の女の子は大喜びだったが……。
俺達男の子はというと。
「なぁ、やっぱり男用の浴衣はないよな?」
「残念ながら……」
小原は心底申し訳なさそうにそう言う。
やっぱりこの別荘には女子用しかないらしい。まあ当たり前か、主が女の子だし……。
でも三瀬川のお父さんとかどうしてるんだろう?
「友太君、屋台楽しみだね? 何やる?」
そういうクレアはとてもウキウキだった。
「そういえば、クレアさんは日本のお祭り初めてですか?」
お茶を飲みながら三瀬川はそう聞く。
いつもなら優奈や中原が聞きそうなのにな……。その2人はひそひそと何やら話し合っている。
「はい、とても楽しみですー」
よっぽど楽しみなのか、クレアは笑顔で答えた。
そう言えば俺もお祭りなんて俺も長い事行ってなかったけ?
「そうですかー。てっきり行ったことあるのかと……」
「普通に初めてです。だから浴衣の着るのも楽しみですー」
「という事で、クレアさんも待ちきれないという表情をしているので皆さん早く食べちゃいましょう」
三瀬川の号令で女子たちは「はーい」と一斉に返事をした。
俺も着たかったな……浴衣。
女子たちが着付けに行って数十分。俺達は外で待っていた。
「俺達も持ってくればよかったな」
「祭りがあるって知らなかったのか?」
「ここに来て初めて知った」
小原は心底ガッカリした様子でそう言っていた、どうやら、嘘ではなさそうだ……。
「でも、クレアさんや植野さんの浴衣姿が見られるからいいだろ?」
「まぁたしかに……」
そう言って話していると玄関のドアが開き、女子たち4人が出て来る。
「おまたせー」
4人は色とりどりの花や鳥が描かれた浴衣を着て別荘から出て来てくる。
「「おー」」
俺達は浴衣を着た4人の女子たちを見て感嘆の声を漏らす。
「友太君どうどう?」
クルクルと舞を踊るようにクレアは俺に近づく。
クレアが着ていた浴衣は他のとは違って群青色の浴衣に薔薇が描かれた洋風なものだった。
「薔薇の浴衣って珍しいな」
「たまたま見つけたんです。クレアさん似合うと思って着てもらったんですよー」
鼻息をふんふんと荒くしながら、誇らしげにそう言っていた。
本当に綺麗な浴衣だな……。浴衣は和風なイメージだけど洋風の花ともよく合うんだな……。
まじまじと見ていると突然背中を指でつつかれる。
「私のも見てよ……」
「そうよ。妹ばっかり見て!女の子は他にもいるのよー?」
不服な表情で見せてきた優奈の浴衣は白色に朝顔の絵が描かれたものだった。
隣の中原は紫色でこちらは、百合の花が描かれていた。
「どっちも似合ってるよ、てか中原はやっぱ紫なんだな」
「ありがとう。紫が一番好きな色だからねー」
と2人で仲良く話していると、優奈が俺の頭を持って自分の方へと向ける。
「いだだだ!!! 何? 何?」
振り返ると頬を膨らませた優奈が俺を睨みつけていた。
「私にも、もっと感想が欲しい……」
「に、似合ってるよ、ゆ、優奈……。すごく……可愛い」
「ふふふ。ありがとう」
嬉しそうに微笑んで優奈は俺の頭を抑えていた手を離した。
「総司? 私への感想は……?」
2人に俺が言い寄られている姿を見て、三瀬川が小原に言い寄る。
三瀬川が着ていた着物は、赤い生地にピンク色の椿が描かれているものだった。
「麗奈もすごく似合ってるよ」
「ありがとうございます……」
似合っていると言われて、少し顔を赤らめて満面の笑みで言う。
イチャイチャしてるところを見せやがって……。
「よーし揃った事だし、行くかー!!」
小原の号令で俺達6人は祭りの会場である、近くの神社へと歩いて向かった。
神社へと到着すると、かなりの数の屋台が並んでいて、大勢の人でにぎわっていた。
時間を見るとまだ花火の打ち上げの時間にはまだ早いようだが、どうするんだろうか?
すると、小原と三瀬川はお互いにニヤリと顔を見合わせる。これは何か良からぬことを考えているのか?
「とりあえず、花火が始まるまで俺と三瀬川、お前ら4人で自由行動な」
「はい?」
「ではではー、また後でー」
有無を言わさず、小原と三瀬川は足早に去って行った。
何という速さ……。テレポートでも使ったんじゃないのかって言うくらいの早さだった。
「はやい……」
「友太君、早く屋台回ろう?」
屋台に早く行きたいのか、クレアは俺の腕をぐいぐい引っ張る。
「わかった、わかった!!」
後ろにいた優奈や中原にも早く行こうと、声をかけようと振り向くと2人は何やらひそひそと打ち合わせのような事をしているのか、ひそひそと落ち着かない表情で何かを話していた。
「どうするの? 本当に言っちゃうの?」
「うん。もう私決めたから」
「そっか。優奈がそう決めたのなら、私協力するね」
そう言って中原は震えている優奈の手を握りしめた。
決めたって何を決めたんだろう?何か祭りでやることがあるのかな?祭りで決意するほどの事はないと思うのだが……。ましてや手を震わせているって……。
「どうした?」
「別に……なんでもない。早く行こ?友太」
先ほどとは打って変わって、落ち着いた表情で屋台がある方と歩いて行った。
「どうしたんだろうね? 優奈さん……」
「さあ?」
不思議そうにクレアは屋台の方へ歩いて行く二人を見つめる。
「やっぱり友太君が何かしたんじゃないの?」
「全く覚えがないんだが……」
怪しげな表情で聞いてくるクレアに俺は首を傾げる。
「2人とも何してるのー?置いてくよー」
「友太ー! 早く行こうー!」
遠くの方から中々屋台の方へ来ない俺達を2人は呼び寄せる。
「あの様子だと、もう何もなさそうだね?行こ?友太君」
安心しきった表情でクレアは何時ものように俺の腕にくっつく。
「お、おう……。早く行こうか」
俺は呆れた表情をしながら、腕にくっついたクレアと共に屋台の方へと向かっていったのだった。