包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。 作:瓜生史郎
エレナはスマホの地図アプリを見ながら、がっかりした様子でウインナーを頬張る。
「それにしても、イノン遠いですね……」
「しょうがないだろ?田舎なんだから」
「アニマートとかスイカブックスも近くにない……」
と頬を膨らませながら項垂れていた。
そんなにがっかりする事かな?
「わがまま言わない」
「アニマートなら、市内の駅にあるだろ?」
「本当ですか!?」
あ、立ち直った。
先ほどまで濁っていた、目には輝きが戻っていた。
「お兄さん?行ってもいいですか?」
「勝手に行けばいいだろ?」
満面の笑みで「やったー」と言うエレナに対して、クレアは不満そうな様子だった。
「友太君?もしかして一人で行かせる気?」
「まぁ、そうだけど……」
「エレナは中学生なんだよ?一人じゃ危ないよ……」
確かによくよく考えればまだエレナは中学生、遊びに来たこの娘を一人で行動させて何かがあれば俺が全責任を負う事になる。
「お姉ちゃん一緒に行ってよー」
「私、アニメ全く分かんない……」
そういえば、クレアはアニメとか漫画に全く興味がなかったっけ……?
となると……。
「お兄さん。一緒に行ってもらえませんか?」
おねだりをするようにエレナは俺に擦り寄ってくる。
こんな事をされてしまっては、いいえも言えない訳で……。
「わかったよ」
「やったー。お兄さん大好きー」
「こ、こら!エレナ!!」
「暑いから離れて……」
あぁ……また大きい物が腕に当たってる……。こんな所を優奈に見られたらどうなるんだろう?
そう思いながら窓の外を眺めていた。
次の日。いつものように電車に乗り市内の駅に到着すると、電車から降りたエレナは相当疲れた様子だった。
「大丈夫か?」
「市内に行くにもこんなに時間かかるんですね……」
顔を色を悪くしながら、フラフラとしながら歩いていると、クレアが横に立って他の歩行者にぶつからないようにガードをする。
「もうエレナそんなにフラフラしてたら危ないよ?」
「ごめん、電車には慣れてなくて……」
その後駅に隣接するアニマートの前に到着すると、クレアは別の店へ行こうとする。
「じゃあ私別の店行ってるから、終わったらLINEで連絡してね」
「クレア、何かあったらすぐにLINEか電話しろよ?」
「うん、エレナも友太君に迷惑をかけないようにね」
「おーけー。じゃあ行こうかお兄さん」
「お、おう……」
クレアと別れた後、アニマートに入った俺達がまず向かったのは妖神のコーナーだった。
「お兄さんは誰が好きなんですか?」
「別に好きなキャラはいないけど……、強いて言うならクロノスっていう娘かなぁ」
「あー、あの銀髪の娘ですねー。可愛いですよねー」
そう言いながら棚にあった、クロノスのイラストが描かれたキーホルダーを手に持つ。
「というか、どこかお姉ちゃんに似てるような……」
「そうかな?」
クロノスのキーホルダーをまじまじと見つめる、エレナと同じように俺は見つめてみる。
言われてみればちょっと似てるような気がする。
「実はお姉ちゃんの事好きなんじゃないですか?」
「そ、そんな事はねーよ……。まぁ家族としては好きだけど……」
「そうは言っても、顔が赤くなってますよ?」
ニヤついた顔をしながら、エレナはじりじりと迫ってくる。
「ちげーよ」
「まぁ、そう言う事にしておきます」
もう勝手にしてくれ……。俺はそう思いながらクロノスのキーホルダー、そしてエレナはアラブレアのキーホルダーをカゴに入れる。
「クロノスちゃんだけでいいんですか?」
「まぁ、別に他に好きなキャラいないからなぁ……」
「ほら貴方のデータの使用回数一位のエアルアちゃんもありますよ?」
今度は、エアルアという黒く長い髪の毛のキャラクターが描かれたキーホルダーを見せて来る。
「別にそこまで……」
「黒髪の女の子は好みじゃないか……」
「ちぇッ」と舌打ちを打ちながら、エアルアのキーホルダーを
「ただ強いから使ってるだけだからな……。ステータスも高いから頑張って育成したけど」
呆れながら俺がそう話すと、エレナは少しドン引きした様子だった。
「え……それって体だけの……」
「はっ倒すぞ」
それにしてもエアルアの顔とかをよく見てると、どことなく優奈に似ているような?……うん、エアルアのキーホルダーも買うか。
「エアルアちゃんも買うんですか?」
「まぁ、うん……」
「やっぱり好きなんじゃないですかー」
からかってくるエレナを無視して、エアルアのキーホルダーをカゴに入れた。
その後次に向かったのは本コーナーや、CDコーナーなどを回る。
よっぽど日本のアニメやゲームが好きなのか、かなりの数のグッズやCDを買い物かごに入れていた。
「この前発売した妖神のサウンドトラックーのCD。人気でなかなか買えないなぁーと思っていたのにここにあったとはー感動です」
そこまで感動するかなぁ?と思いながら見てると、それを察したのかエレナの機嫌が悪くなる。
「今、CDがあったくらいで大袈裟なとか思ってませんか?」
「ま、まぁ……」
「お兄さんは分かってないなぁ……」
何もわからない俺にやれやれというような顔をするエレナにイライラしてきていたが、相手は中学生だしと言い聞かせて何とか抑える。
「ごめん、分からないや説明して」
「説明しても、どうせわからないだろうから教えてあげませーん」
「……」
どうせ「宝を見つけた時みたいな感動があるんですよねー」って言うのだとは思ったが、大方予想通りの返答をもらって逆に安心した。
いや、でもなんかムカついてきたな……。
「どうしました?お会計に行きますよ?」
「あ、あぁわかった」
買い物かごに入れた、多くのアニメやグッズの会計を済ませて、アニマートを後にする。
「いやー、久しぶりに買った、買ったー」
というか、相当な量を買ったな……。軽く万は超えてそうだ。
「そんなに買って大丈夫なのか?」
「まぁお金はそれなりに、ありますからね」
そう言って財布の中を広げると、かなりの枚数の札が入っていた。
「え、お前中学生だよな?」
財布の中にあった大量の札を見て、俺は軽くドン引きしていた。
こいつまさか怪しい事に手を染めたりしていないだろうな……?
「まぁいろいろと我慢したりすれば、これくらい余裕でたまりますよ?」
「へ、へぇ……」
ふふんと誇らしげにエレナはドヤ顔をする。
これ相当我慢したんじゃないのか……?最近の中学生は凄いな。
「そろそろお姉ちゃんと合流しましょうか?私LINEしますねー」
機嫌良くポケットからスマホを取り出し、素早い指捌きでクレアにLINEを打ち始める。
それにしても、早くこの駅から抜け出したい……。今中学生の女の子と一緒にいるのを見られるのはまずい。
お願いですから、見つからないでください……。そう願っていた時だった。
「友太……?」
見覚えのある声と共に、荷物が床に落ちる音が背後から聞こえた。
後ろを振り向くとそこにいたのは……。
「ゆ、優奈……」
最悪のタイミングだ。目から輝きがなくなり、今にも泣きだしそうな顔になっていた優奈がそこに立っていたのだ。