包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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70 話 妹の妹がやってきた part9

「さて、どうするか……」

 

 このままエレナが連れて帰えれば、クラスの奴らにクレアと住んでいることがバレるという恐怖から解放されるし、悠々自適な暮らしができるが、それ以上にとクレアがいていろいろ助かっていた場面もあったし、それはそれで困る。

 

 逆にエレナがこっちに滞在すれば、今度は2人の女の子と滞在している事をさらに隠さないといけないし、見つかる危険度もかなり上がる。そして何よりも、俺と住んでる女の子が増える事で優奈の機嫌がどうなることか。

 

 てか誘拐されそうになったのが小さい頃の出来事という事は父さんって結構クレアのお母さんとは長い事遠距離交際してたって事なのかな?

 

 そうなると、昔家で急に気持ちの悪い笑みを浮かべてたり、誰かと長電話してたりしてたのを見て不思議に思ってたけど。あれはそう言う事だったんだな。

 

 ていうか、よくよく考えれば俺はなんでこんな事で悩んでいるんだ?前の俺なら間違いなく前者を選んでいただろう。

 

 ……俺も少しは変わったという事なのかな?

 

「俺も変わってしまったなぁ……」

「何、ブツブツ言ってるんですか?」

「わぁー!!」

 

 突然後ろからエレナに声をかけられて、俺は驚いて大きな声を上げる。

 

「何だ、エレナか……」

「ふふん、今の良い叫び声でしたね。録音しとけばよかった」

「やめてくれ……」

 

 エレナへのツッコミを終えた所で、俺は咳ばらいをして話題を変える。

 

「お前、本当にクレアを連れて帰るのか?」

「出来ればそうしたいですね」

「日本はイギリスと違って、誘拐をしようなんて企む奴はいないし安心だぞ?」

 

 そう説得をするが、エレナはまだ何か不安要素が残っているのかいけ好かない様子だった。

 

「そこまで心配する事か?」

「心配するに決まってるじゃないですか!だって大切なお姉ちゃんなんですよ?」

 

 必死にそう力説エレナからは、クレアがエレナにとって大切な人なんだという気持ちがひしひしと伝わってきていた。

 

 彼女にとってクレアは血のつながった姉妹と言う括りでは納まらないんだろうな。

 

「1回だけじゃ私もここまで心配しません。何回もされそうになった事があるから心配してるんです」

 

 なるほどここまで父さんから聞いた通りだな。だけどまだもう1つ気になることがあった。

 

「それと前と変わっていないって言ってたけど、あれはどういうことだ?」

「あー……。お姉ちゃん、昔から誰に対しても優しかったんですよね……」

「別にそれは良い事じゃないのか?」

 

 そう聞くと、「まぁそうなんですけど……」とエレナ含みのある言い方をする。

 

「お姉ちゃんの優しいは、他と全然違って……。何て言うんですかね……聖母のような包容力があるんですよ。それで勘違いしちゃう男の人が多かったんです」

「あーなるほど……」

 

 確かにクレアは聖母みたいな包容力がある。しかも銀髪で相当綺麗な顔立ちだから女神様かな?とか何も知らない俺でも勘違いするかも。

 

 特に女性経験のない人は一番勘違いしやすいのかもしれない。

 

「だから、知らない人とかに誰に対しても過度に優しくするのはやめろーって言ってたのに、全然やめてなかったので……」

「そう易々と変われないよ」

「そうですかね……。でも変わってくれないと私は安心できません」

 

 本当に過保護になりすぎてんな……。別にそれは悪い事だとは思わない。俺だってクレアが何度も誘拐されそうになったらこんなに過保護であったかもしれない。

 

 なんか、本当にクレアの事が心配になりすぎてこのまま帰らずにいついてしまいそうだ。

 

「どうしようかなぁ……。お兄さんが連れて帰らないでくれって言ってるし……」

 

 俺もどうしようかなぁ。エレナをこちらに住まわせるかどうか、優奈から告白されていなければこんなに頭を抱える事はなかったぞ……。

 

「お兄さんもすごく悩んでますね」

「まぁ、いろいろとあるんだよ」

「ふーん……」

 

 少し俺達の周りが静まり返った後、何かに気づいたのか「あっ、もしかして」とエレナはこちらに向かってニヤっと笑う。

 

「な、なんだよ?」

「もしかして、お兄さんもお姉ちゃんの虜になってたり……」

「いやなってないけど……」

「嘘でしょ!?」

 

 度肝を抜かれた様子で俺の顔を直視するエレナ。

 

 そんなに驚く事かな?

 

「あのお姉ちゃんの虜になってないなんて……。やっぱりお兄さん……」

「違うからな?」

「ふふふ、冗談ですよ」

 

 キッパリとそう告げると、エレナはクスっと笑う。

 

「正直私、最初はお兄さんの事信用してなかったんです」

「え?」

 

 突然のエレナのカミングアウトに俺は唖然とする。

 

「お姉ちゃんが、お兄さんの事甘やかしてるって言われた時は凄く心配してたんですよ。またなんか変な人に優しくし過ぎてるんじゃないかって。でも今日来てよくわかりました。お兄さんすごく良い人ですね」

「当たり前だろ?」

 

 当たり前のことを言われて、俺はキレの良いツッコミをする。

 

「お姉ちゃんが甘やかしたくなるのも分かった気がします。でもやっぱりお兄さんが良い人だと知っても、お姉ちゃんがすごく心配なんです……。今すぐにでも連れて帰りたいくらい……。どうにかなりませんか?」

「どうにかなりませんかって言われてもなぁ……」

 

 正直、こちらに住んだらどうだ?とすぐにでも言いたいが、やはり優奈の事が気になってしょうがない……。

 

 マジでどうっすかなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、俺は眠れずリビングの机に座って頭を抱えていた。

 

「どうしたの?友太君?」

 

 そこへ心配そうな顔をしたクレアがやって来て、俺の目の前に座る。

 

「もしかしてエレナの事?」

「うん、まぁ……」

「ごめんね、エレナは凄く心配症だから……」

「別にクレアが謝る事じゃないよ」

 

 申し訳なさそうに謝るクレアの姿を見ていると、こちらも申し訳なくなってきていた。

 

 俺が勝手に悩んでいるというだけの話なのに。

 

「でも、エレナが心配するのも納得だ。お前だって昔何回も誘拐されそうになったんだろ?」

「そうだっけ?覚えてないや……」

「覚えてないって……」

「だってー、結構子供の頃の話だったから……」

 

 子供の頃、衝撃的だった出来事とか、トラウマ級の出来事は脳に刻まれるくらい覚えてると思うんだけどな……。

 

 クレアは違うのかな?

 

「友也さんに助けてもらったのも覚えてないんだよね。後から知ったの」

「それくらい覚えとけよ……」

 

 呆れながらそう言うと、クレアは「あははごめん」と謝った。

 

 それにしても何でクレアは自分の身に起こった事をまるで他人事のように覚えていないんだろう?と違和感を覚えていた。

 

「ていうか、何で悩んでるの?」

「エレナがお前を連れて帰るか……」

「それは絶対に嫌。せっかく友太君や優奈さんいろんなお友達ができたのに……」

 

 もう1つの選択肢を言う前にクレアは断固拒否する。

 

 よっぽど今イギリスに帰るのは嫌らしい。

 

「となると、エレナをこちらへ住まわせるという事になるけど……」

「良いの?」

「一応、父さんからの提案だからな……。母さんは知らないけど」

 

 意外とすんなりと受け入れたなと俺は内心驚く。

 

 妹が居なくて寂しかったのかな?

 

「ごめんね、エレナのわがまま聞いてもらって」

「別にいいよ……」

 

 さてクレアの許可ももらったし、後は父さんに連絡するだけか……。

 

「でも、頭抱えるほど悩んでた割にあっさり決めちゃうんだね」

「いや、まぁ……。うんそうだね」

 

 不思議そうに見つめるクレアに、俺は少し戸惑いながら返す。

 

 優奈の機嫌が気になるなんて、正直クレアには言えないよなぁ……。

 

「なんか他に気になる事とかあるの?」

「いや別にないけど」

「優奈さんの事とか……」

 

 そう言われた瞬間、俺の心の中でギクッという効果音が流れる。クレアめ、こういう時は勘が良い。

 

「まぁ正解と言えば、正解だな」

「言いたくない事だってのはわかる……。でも本当に我慢できないときはね、私に相談してほしいの」

「わかった……」

 

 前にクレアの事を黙っていて、優奈と揉めたばかりなのに本当に俺は学習しないな……。

 

 ぶっちゃけ言いたいのだが、やはり勇気がない……。俺にもっと勇気があればなあ。

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