包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。 作:瓜生史郎
クレアから許可を得た俺は、再度父さんに折り返しの電話をする。
「わかった。エレナもそちらで住むって事にするのねー」
「あぁ、すまないな父さん。まさかこうなってしまうとは」
申し訳ない気持ちで父さんに謝ると、笑いながら「いいよいいよ」と宥められる。
「エレナちゃんも日本に住みたいなーって言ってたし丁度良かったよ」
「そうなのか?」
「アイツもクレアと同じで日本が大好きなんだよ。だから前からお姉ちゃんばっかずるいって言ってたし」
確かにアニマートで日本のアニメグッズを買ってたし、日本の事は本当に好きなんだろうとは薄々勘づいてはいた。
正直心配するエレナのためとは言え、半ば無理やりこっちへ住ませることになっていて、可哀そうだなと思っていたけど満更でもなかったみたいでほっとする。
「そうか……良かった……」
「お前、植野さんの事で、まだ何か悩んでるのか?」
「なんでそれを……」
的確に俺の思考を読み取った父さんに驚く。
「俺を誰だと思ってるんだー?お前の父親だぞ」
「そうだったな……」
「何を悩んでるんだ。言ってみろ」
真剣に息子である俺に向き合ってくれているの父さんに感服した俺は今悩んでる事を全て打ち明けた。
エレナを家に迎え入れる事で告白された優奈が怒らないかなど。
「そんなにビビる事かなぁ?」
「クレアが周りに居ても機嫌悪くなるしさ……。エレナが住むって聞いたらどんな反応されるやら……」
「また女の子と住むの!?破廉恥!!」
「そんなこと言わねーよ!!てか気色の悪い声出すな」
急にだしてきた父さんの女性声に悪寒を覚える。
「でも似てただろ?」
「……全然」
「……ゴホン。まぁでもお前は、少しビビり過ぎだと思うぞ?」
「わかってはいるんだけどさ……」
わかってはいる……。だけど怖いものは怖いのだ。
俺が不安げな声で言ってるのを聞いて、父さんはため息をつく。
「そんなに不安なら、最初に優奈さんへ報告しといたらどうだ?」
「あー、その手があったか」
なんでそれを最初に思いつかなかったんだろう?クレアの時はそれをしなかったから、あんな事になったんだよな。
今回はそうならないように先手を打っておいた方が良さそうだ。
「それに、お前の将来のお嫁さんになるか娘かもしれないしな」
「いやまだはえーよ」
キレのあるツッコミをすると、父さんは「はっはっは」とまた大きく笑う。
「まぁ、ちゃんと植野さんには説明をするんだな」
「わかったよ」
少しずつ、父さんと話していて心に引っかかていた物が取れて、清々しい気分になっていた。
忘れないうちに、優奈に電話をしておかないと。
「あ、それとお前の家の住所とか教えて?エレナの荷物送りたいからさ……」
「いや住所変わってないけど」
「ちょっと忘れちゃってさー。頼むわ」
と言って、ぷつりと電話が切れてしまった。
自分の住んでいる家の住所くらい覚えていて欲しいものだ。
しょうがないので、父さんのLINEに俺の家の住所を書き送信すると、すぐに『さんきゅー』と返ってくる。
「ふぅ……。よし……」
LINEで優奈のトーク画面を開いて、通話ボタンを押そうとする。
いや……。電話じゃなくてもメッセージでも……。うーん?メッセージだと相手の反応が分からないか……。
てか反応ってなんだよ。俺は女の子か……。そう自分と葛藤しているとなんという偶然、優奈からLINE電話がかかってきた。
「も、もしもし」
突然かかってきた電話にスマホを落としそうになりながら、応答ボタンを押した。
「あ、友太?ごめんねこんな時間に」
「いや、良いよ別に。何か用?」
電話の後ろからは大勢の人の声がしていた。どこかのお店にいるんだろうか?
「今家族で旅行に来てるんだけど、お土産にキーホルダーか食べ物どっちが良いか聞いておこうと思って」
だから周りがガヤガヤと騒がしかったのか、今お土産さんから電話してるのか。
「うーん、どっちでもいいよ」
「むー……。どっちでもいいはダメ」
「じゃあ、食べ物で……」
「わかった」
「また明日届けに行くから。じゃあね」
まずい、このままでは電話を切られてしまう、言わなければ……。
「あ、優奈」
「何?」
よし、引き留める事には成功した。言え、言うんだ俺……。
また前にみたいに取り返しのつかないことになるかもしれないぞ。
「実は、エレナがこっちへ住むことになったんだ」
「……そうなんだ」
先ほどより優奈は声のトーンが下がっていた。
「何で、そんな事私に言うの?」
やばい、やばい。声のトーンからして今優奈の目は絶対、ハイライトがオフになってる……。
確かに別に言わなくても良かったじゃないか……。何をビビってるんだ。もう前みたいな事はやらかしたくないんだろ?正直に言うんだ俺。
「ごめん、でも前みたいに隠してたら優奈が怒るんじゃないかなって思ってさ……。別に優奈に自慢するつもりで言ったんじゃないよ?マジだから!」
途中から早口になってしまったが、馬鹿正直に全て話した。
これで優奈に怒られても致し方なしだ。だけど俺の予想に反して優奈は笑っていた。
「何それ、あ、わかった」
「な、なんだよ?」
「私が怖いんでしょ?」
「そ、そんな訳……」
「慌ててるー。友太可愛い」
「お、お前なぁ!!」
からかわれる俺は翻弄されっぱなしだった。
でも、優奈の機嫌が悪くならなくて良かったな。ほっと一安心だ。
「でも、正直に言ってくれて嬉しかったよ?ありがとうね」
「お、おう」
「じゃあまたね」
「お土産楽しみにしてる」
そのまま通話は終わる。
これで俺の心の奥につっかえていたものが完全に取れて気持ちが楽になっていた。
それにしても、女の子2人と暮らす事になるのか……。また厄介な事にならなければ良いのだが……。俺はそう願っていた。
今回で夏休み編終了です。次回からまた物語が大きく動き始める予定ですのでお楽しみに!