包容力MAXのイギリス人が妹になったので一つ屋根の下で暮らします。   作:瓜生史郎

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73話 幼馴染が戦った

 昼休憩、少し眠気を感じた俺はエナジードリンクを買うために自販機が置いてある場所へ向かった。

 

 流石に今日のクレアのお弁当炭水化物多すぎた。このままだと午後の授業眠ってしまいそうだ。そう思いながら眠気と戦いながら歩いている時だった。

 

「久野原君」

 

 急に呼び止められたので後ろを振り向くと、そこに立っていたのは特徴的な黒いベレー帽の女の子だった。

 

「松原胡桃……」

 

 俺がそう名前を呼び掛けると、先ほどまで悲しそうな顔だったのがぱーっと晴れ渡るように表情を緩める。

 

「思い出してくれたんだね」

「ごめん、名前を聞いたんだけどさ……それでも君の事を全く思い出せなくて」

「そっか……そうだよね……」

 

 思い出せないと言って、傷つけてしまったかな?

 

 少し悪い事をしてしまったかと、戸惑っていると松原はまた笑顔になって近づいてくる。

 

「じゃあ、名前だけでも思い出してくれたご褒美にちょっとだけ教えてあげる」

「ちょっとだけって……」

 

 片津を飲んで、俺は松原の言う事に耳を傾ける。

 

「ねぇ覚えてる?昔私と久野原君がした約束……」

「約束ってなんだっけ?」

 

 覚えがなかった。そんな事この娘としたっけ?

 

「やっぱり覚えてないんだね……。悲しいな……」

 

 そう言いながらじりじりと俺に向かって近づく松原。

 

 なんだろう……?もの凄く圧を感じる。

 

 気付けば俺は壁に追い詰められていた。

 

「松原、近い、近い!」

「そうやって私を拒否するんだ……。わかったこっちにだって考えがある」

 

 咄嗟に制服のポケットから何かを取り出そうとした時だった。

 

「松原!!」

 

 急に聞こえた叫び声と共に俺は腕を引っ張られて救出される。

 

「優奈……」

「大丈夫……?」

 

 心配そうな顔で俺を見つめると、優奈はこちらに近づく松原の前に立ちはだかる。

 

「また邪魔をするの……?植野……」

「貴方こそ、諦めなさい。もう友太は私の物よ」

「はぁ!?」

 

 いやいや何時から俺は、優奈の物に……?

 

 まだ告白に対する返事もしていないぞ。

 

「嘘だって言ってよ……。久野原君……」

「えっと……」

 

 俺が悩んでいると、優奈が「本当だよ」って言えと念じているのを感じていた。

 

 しょうがない……。ここは優奈に従おうかな……?

 

「まぁ、うん……」

「久野原君……」

 

 松原は愕然と膝から崩れ落ちる。

 

 崩れ落ちた瞬間、ポケットからはみ出していた何やら紙のようなものがひらりと床に落ちた。

 

「あ……」

 

 急いで松原は拾おうとするがすかさず優奈が拾い上げた。

 

「隙あり!」

「ちょっと返して!!」

「何それ……?」

 

 折りたたまれていた紙を広げるとそこに書かれていたのは……。

 

「婚姻届け……?」

 

 恐らく小さい子が書いたであろう文字で「こんいんとどけ」とひらがなで書かれていた。

 

 その下には俺の名前と、松原の名前がひらがなで書き記されている。

 

「未だにこんなもの持ってたんだ」

「こんなものって!!」

「だって、こんなもの幼少期のお遊びみたいなもんでしょ?」

 

 呆れながら優奈がそう言うと、松原は優奈の手から引っ手繰るように奪い返した。

 

「あんたにはそう思うかもしれないけど、私にとっては大事な思い出なの……」

 

 顔を下に向けて、少し涙ぐみながら、そう言う松原を見た俺は少し可哀そうに思えて来てしまった。

 

「なぁ……。少し言いすぎじゃないか?」

「はぁ?何言ってるの!?」

「久野原君……」

 

 慌ててこっちを振り向く優奈の隣で松原は嬉しそうに顔を上げて、目を輝かせる。

 

 はぁ……。またやってしまった……。俺女の子の涙に弱いなあ……。

 

「もう友太……。優しくし過ぎたらダメって言ったでしょ?」

「……ごめん」

 

 つい推しに負けてしまって、謝ってしまったが謝るのは俺じゃなくて優奈の方なのでは……?

 

「そんなところも含めて、私は大好きだけど」

 

 そう言いながら、優奈は俺の頬に優しくキスをした。

 

「へ……?」

「な、な、な、な……何やってるのー!!??」

 

 キスをしたのを見て、松原は顔を赤くして驚いていた。

 

 驚いていたのは松原だけではない。キスをされた俺自身も驚いていた。

 

 ま、まさか優奈……。見せつけようと思ってわざと……?

 

「ふふん、私達は付き合ってるから……」

「え……?」

「はぁ!!??」

 

 いやいや、何言ってるんですか?そんな誇らしげに言ってもまだ俺らは付き合ってないじゃないですか?

 

「ひどいよ……。久野原君……。私達との約束を蔑ろにして他の娘と付き合うなんて!!」

「松原、これはちがっ……」

「うわああああん!!久野原君の馬鹿ぁぁぁ!!!」

 

 誤解を解こうと、近づくも、泣き叫びながら、松原は走り去って行ってしまった。

 

「優奈、なんであんな嘘を……」

「あーでもしないと、友太から離れて行かないでしょ?」

「そうだけどさぁ……」

 

 納得いかないような表情をしていると、優奈はムスッと顔をしかめる。

 

「友太は私の彼女嫌なんだ」

「そんな訳は……」

「ふんだ……」

 

 拗ねてその場に座り込んでしまった。めちゃくちゃ可愛い。

 

「別にお前とは付き合いたくない訳じゃないんだよ……。それだけは分かってほしい」

 

 じーっと下から上目遣いで俺の顔を見つめた後、くすっと笑う。

 

「なんだよ」

「友太って、女の子が拗ねたりすると……。凄く慌てるよね?」

「ま、まぁ……」

「そんな所がすごく可愛いなって思ってさ」

「うるせぇ……」

 

 頬が熱くなっていた。確かに俺もそうだと思うが、いざ指摘されるとすごく恥ずかしい……。

 

 そんな事を話していると、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。

 

「じゃあまた後でな」

「うん、また後で……」

 

 俺と優奈はその場で別れて教室へと戻る。

 

 あ、やばいエナジードリンク買うの忘れてた……。まぁなんとかなるでしょう。

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